積立投資は「毎月決まった額を、同じ商品に出し続ける」やり方です。 仕組みとしてはそれだけで、特別な商品でも制度でもありません。 ただ、何がよくて、何がよくないのかは、 説明されている内容がばらついています。
積立投資とは、同じ額を定期的に出し続けること
毎月1日に3万円、同じ投資信託を買う。やっていることはこれだけです。 英語では定額購入法(ドルコスト平均法)と呼ばれます。
ポイントは「同じ口数」ではなく「同じ金額」を買うところにあります。 毎月3万円ぶん買うので、値段が高い月は少ししか買えず、安い月は多く買えます。 毎月10口ずつ買うやり方だと、この性質は出ません。
積み立てる先は、投資信託であることが多いですが、 株式でも金でも同じ考え方です。 共通しているのは、値段が決まっていないものを買っていることです。 値段が動かないもの(定期預金など)を積み立てても、この話は当てはまりません。
同じ額だから、安い月ほど多く買える
実際の数字で見ます。 毎月3万円を出し、1口の値段が1万円 → 5千円 → 1万5千円と動いた3か月です。
1月は1口1万円なので3口。2月は5千円に下がったので6口。 3月は1万5千円に上がったので2口です。 出したお金は毎月同じ3万円なのに、買えた口数は月によって3倍の差があります。
平均取得単価は、値段の単純平均より低くなる
3か月で出したお金は9万円、買えた口数は合計11口。 1口あたりの平均は 90,000 ÷ 11 = 約8,182円です。
一方、3つの値段の単純平均は(10,000+5,000+15,000)÷ 3 = 1万円。平均取得単価のほうが約1,800円低くなっています。
| 計算 | 結果 | |
|---|---|---|
| 値段の単純平均 | (10,000+5,000+15,000) ÷ 3 | 10,000円 |
| 実際の平均取得単価 | 90,000 ÷ 11口 | 約8,182円 |
これは偶然ではなく、同じ金額を出し続けるかぎり必ずこうなります。 安い月に多くの口数を買っているので、 平均を出すときに安い値段の重みが大きくなるためです。
有利になる仕組みではない
ここが読み違えられやすいところです。 「平均取得単価が下がる」は事実ですが、それは「一括で買うより儲かる」という意味ではありません。
比べる相手が違うからです。 平均取得単価と比べているのは「3か月の値段の単純平均」であって、 「最初にまとめて買った場合」ではありません。 最初の月に9万円をまとめて出していれば9口買えていて、 3月末の評価額は13万5千円。積立の11口は16万5千円なので、 この例では積立が上回ります。 ただし値段が上がり続けた場合は、逆になります。
| 値動き | 積立が有利になりやすい | 一括が有利になりやすい |
|---|---|---|
| 下がってから戻る | ○ | |
| 上がり続ける | ○ | |
| 下がり続ける | ○(損失は小さい) | |
| 横ばい | ほぼ同じ | ほぼ同じ |
どちらが有利かは、買ったあとに値段がどう動いたかで決まります。 事前には分からないので、積立にすれば有利、とは言えません。 実際の比較は一括投資と分けて投資した場合の比較で、過去の相場をすべての開始月で試す形にしてあります。
もう少し踏み込むと、理由ははっきりしています。 値段が上がり続ける相場では、早く買ったお金ほど長く値上がりに乗ります。 積立は、後から出すお金ほど乗っている期間が短くなるので、 全額を最初に出した場合に追いつけません。 逆に下がってから戻る相場では、安い時期に出したお金が多くなるので積立が上回ります。
つまり積立が効くのは、値段が下がる期間を含んでいるときです。 そして、その期間が来るかどうかは買う前には分かりません。 積立を選ぶ理由は「有利だから」ではなく、 まとまったお金が無いから、あるいは毎月の収入から出すしかないから、 というのが実際のところだと思います。それは十分な理由です。
いちばん結果を悪くするのは、途中でやめること
積立で実際に結果を悪くするのは、選んだ商品でも始めた時期でもなく、値下がりしている最中にやめることです。
値段が下がっているときは、同じ3万円で多くの口数が買えています。 やめると、その期間の口数が手に入りません。 しかも、やめた人が買い直すのはたいてい値段が戻ってからなので、安い期間を飛ばして、高いところから再開することになります。
これは知識や意志の問題というより、金額の問題です。 毎月の額が自分にとって大きすぎると、 下がったときに「いま止めておこう」という判断が合理的に見えてきます。 続けられる額にしておくことが、仕組みとしていちばん効きます。
続けられる額かどうかで決める
毎月いくら積み立てるかは、将来の金額から逆算するものではありません。いまの家計から決まります。
手取りから必須の生活費を引いた残りが、毎月の余力です。 その全部を積立に回すと、予定していない出費が出るたびに崩すことになります。 冠婚葬祭、家電の故障、医療費。 金額も時期も読めないものが、必ず何度か来ます。
回せる額の決め方は手取りから、いくら投資に回せるかに分けて書いています。 引く順番(手取り → 生活費 → 生活防衛資金 → 残り)が要点です。
目安として、毎月の余力をすべて積立に回さないことです。 手取りから必須生活費を引いた残りが10万円なら、 その8割にあたる8万円を積み立てると、残りは2万円。 月によってはそれで足りないことが出てきます。 半分くらいにしておくと、何かあっても積立を止めずに済みます。
もう1つ、積立額は後から変えられます。 最初に決めた額を守り続ける必要はありません。 収入が増えたら上げ、生活が変わったら下げる。 むしろ、年に1度は手取りと生活費を見直して、 いまの額が合っているかを確かめたほうがよいです。 下げることを失敗とは考えないでください。 止めてしまうより、額を下げて続けるほうがずっと結果が残ります。
順番の前に確かめることが1つあります。生活防衛資金があるかどうかです。 現金が手元に無い状態で積み立てると、 急な出費のたびに積立資産を売ることになります。 その時期は選べないので、値下がりしている最中に売る形になりがちです。
積立でも、元本は保証されない
長く続ければ必ず増える、ではない
「20年続ければ元本割れしない」という説明を見ることがありますが、 それは過去のある指数を、ある期間で区切ったときの結果です。 将来も同じになる保証はありません。 分散した指数でも、3割前後下がった局面は何度もありました。
積み立てる先によって、話が変わる
同じ積立でも、何を買っているかで性質はまったく違います。 世界中の株式に分散した投資信託と、1つの会社の株式では、 下がったときの戻り方が別物です。 積立というやり方そのものが、商品の性質を変えることはありません。
手数料は、持っている間ずっとかかる
投資信託は、保有している間ずっと信託報酬が差し引かれています。 積立は長く持つやり方なので、この差が効く期間も長くなります。 同じ指数に連動する商品でも、信託報酬には差があります。
NISAの枠には上限がある
つみたて投資枠は年120万円まで、 非課税で持てる額は生涯で1,800万円までです(2026年10月時点)。 毎月10万円を15年続けると元本が1,800万円に達するので、 その先は枠の外になります。 制度の条件はNISAの投資枠・加入ルールで確かめてください。
自分の積立で確かめる
いまの積立額を続けると将来いくらになるかは、計算で出せます。 そのうちどれだけが自分で出したお金なのかも、 分けて見ておいたほうが判断を誤りません。
そのうえで、その額をいまの家計で続けられるかのほうが、 将来の金額より先に決まっている必要があります。 手取り、必須生活費、生活防衛資金、近いうちに使う予定。 この4つから確かめられます。
