複利は「お金が雪だるま式に増える」と説明されることが多い言葉です。 ただ、その言い方だと何が雪で、何が転がっているのかが分かりません。 仕組みそのものは、引き算も掛け算もない、ごく単純な話です。
複利とは、利息にも利息がつくこと
100万円を年5%で預けたとします。1年目につく利息は5万円です。 ここまでは単利も複利も同じです。
分かれるのは2年目です。 利息の5万円を受け取ってしまえば、2年目も元の100万円に対して5%なので、 また5万円。 受け取らずに残しておけば、2年目は105万円に対して5%になるので、5万2,500円。 増えた2,500円が、1年目の利息についた利息です。
これが複利です。式にすると、残高に毎年(1+利率)を掛けていくだけになります。
100万円・年5%・20年なら、100万円 × 1.0520 で約265万円。 同じ条件の単利は、5万円を20回足して200万円です。
単利との違いは、受け取るか残すか
単利と複利は、別の商品の種類ではありません。同じお金の、扱い方の違いです。
預金の利息を毎回使ってしまえば単利と同じ増え方になりますし、 使わずに同じ口座へ置いたままなら複利になります。 債券の利子も、受け取って生活費に回せば単利、同じものを買い増せば複利に近い形です。
| 単利 | 複利 | |
|---|---|---|
| 利息のつき方 | いつも元本に対して | そのときの残高に対して |
| 利息の扱い | 受け取る | 残す |
| 20年後(100万・年5%) | 200万円 | 約265万円 |
| 差がつき始める時期 | — | 後半 |
差が開くのは、終わりのほう
複利の説明でいちばん誤解されやすいのが、増え方の時期です。 「早く始めたほうがいい」と言われるのは、 始めた直後に効くからではありません。むしろ逆です。
さきほどの100万円・年5%で見ると、5年後の差は約3万円しかありません。 10年後で約13万円、15年後で約28万円、20年後でようやく約65万円です。差のほとんどは、最後の5年で開いています。
| 経過 | 単利 | 複利 | 差 |
|---|---|---|---|
| 5年後 | 125万円 | 約128万円 | 約3万円 |
| 10年後 | 150万円 | 約163万円 | 約13万円 |
| 15年後 | 175万円 | 約208万円 | 約33万円 |
| 20年後 | 200万円 | 約265万円 | 約65万円 |
早く始めることが効くのは、後半の年数が増えるからです。 5年しか置けないなら、複利かどうかはほとんど結果を変えません。 言い換えると、複利を理由に早く始めるのであれば、 その先20年なり30年なり置いておけることが前提になります。
年率を月率に直すとき、流儀が2つある
毎月積み立てる場合、年率のままでは計算できません。 月ごとの利率に直す必要があります。ここに流儀が2つあって、 出てくる数字が少し変わります。
1つは年率を12で割る方式です。年3%なら月0.25%。 計算は簡単ですが、これを12か月ぶん複利で回すと 1.002512 = 約1.0304 となり、1年で3.04%になります。「年3%」と言いながら、1年で3.04%増えることになります。
もう1つは、12乗して年率になるような月率を逆算する方式です。
年3%ならおよそ0.2466%。これを12か月ぶん回すと、ちょうど3%になります。 ToMiの計算機はこちらを使っています。 入れた年率と、1年後の増え方を一致させるためです。
積立の複利は、元本が増え続ける
ここまでは、最初に置いた100万円がそのままの話でした。 毎月積み立てる場合は、元本そのものが毎月増えていきます。 そのぶん計算の形も変わります。
毎月同じ額を月末に積み立てて、月利率がずっと同じだとすると、 n か月後の残高はこうなります。
前半が、もともと持っていた資産が増えていく分。 後半が、毎月足していくお金が積み上がる分です。 月利率が0のときは割り算ができなくなるので、 そのときは「元の資産 + 毎月の積立額 × か月数」で計算します。
大事なのは、この式で出た金額の中身を分けて見ることです。 毎月3万円を20年なら、自分で出したお金は720万円。 年3%を置いた試算では約981万円になりますが、 その差の約261万円が運用でついた分で、残りは自分が出したお金です。将来の金額だけを見ると、この2つが混ざります。
複利は、下がるときにも同じように働く
複利の説明は増える側ばかりが語られますが、 式は利率がマイナスでもそのまま成り立ちます。減った残高に対して、次の年の下落がかかります。
100万円が1年で50%下がると50万円。 翌年に50%上がっても75万円で、元には戻りません。 下げ幅と上げ幅が同じでも戻らないのは、掛け算だからです。 50%下がったものが元に戻るには、100%上がる必要があります。
実際の運用では、利率は毎年違います。 一定の年率を置いた計算は、全体の見当をつけるためのもので、 その通りに進むことを示すものではありません。 平均すると年3%だったとしても、 途中には3割下がった年が混ざっていることがあります。
複利の話で読み違えやすいところ
年率は、約束された数字ではない
預金の利率は契約で決まっていますが、投資信託や株式に決まった利率はありません。 「年率5%で計算すると」という前提は、その数字で計算したらこうなるという意味であって、 5%が得られるという意味ではありません。
税金と手数料は、複利の式に入っていない
課税口座なら、売って利益を確定したときに約20%の税金がかかります。 投資信託なら、保有している間ずっと信託報酬が差し引かれています。 式に出てくるのは利率だけなので、これらは別に考える必要があります。 手数料は毎年かかるので、こちらも複利で効きます。
物価が上がると、同じ金額の意味が変わる
20年後の981万円は、いまの981万円と同じ買い物ができるわけではありません。 物価が年2%上がり続けた場合、20年後の981万円は いまのお金でいうと約660万円ぶんの価値になります。自分で出した720万円を下回ります。複利で増えた分が、物価の上昇に追いついていない形です。
これは「だから投資しても無駄」という話ではなく、現金のまま置いた場合はもっと減るという比較の話です。 同じ20年で、現金720万円は年2%の物価上昇のもとでは いまの約485万円ぶんの価値になります。
自分の金額で計算してみる
複利の式は単純ですが、毎月の積立が入ると手では計算しづらくなります。 自分の積立額と年数を入れれば、 出したお金と運用でついた分を分けた形で出せます。
置いた年率を-2%から7%まで動かすと、同じ積立でも結果が大きく変わります。どれが起こりやすいかではなく、置き方でどれだけ変わるかを見てください。 幅の広さそのものが、この計算の性質を表しています。
