結論から
個別の会社を選んで買う方法に対して、 指数に連動する商品をまとめて買う方法をインデックス投資と呼びます。 日経平均、S&P500、全世界株式などがその対象になります。
この記事では、そもそも指数とは何なのか、 なぜこの方法を選ぶ人が多いのか、そして何が解決されないのかを整理します。
指数とは決まりごと
日常の会話では「S&P500を買った」と言いますが、 その言い方は少し省略されています。省略された部分に、 結果を左右する要素が入っているので、まずそこをほどきます。
まず押さえておきたいのは、指数そのものは買えないということです。 指数は「どの銘柄をどれだけの割合で持つか」という決まりごとで、 実物ではありません。
買えるのは、その決まりごとのとおりに株を買い集めた投資信託やETFです。 決まりごとが1つでも、それを実行する運用会社は複数あるので、 同じ指数に連動する商品が何本も存在します。
このため、同じ指数を選んでも、どの商品を買うかで結果が少し変わります。 実物を持って運用する以上、費用がかかるからです。 指数そのものには費用がかかりませんが、商品には必ずかかります。 この差は毎年積み重なるので、長く持つほど効いてきます。
費用がどれくらい効くかは、自分の保有額で信託報酬の差を試算すると、円で確かめられます。
なぜ選ぶ人が多いのか
仕組みが分かったところで、次はなぜこの方法が選ばれるのかを見ます。 手間の少なさが理由としてよく挙がりますが、それだけではありません。
この方法が広まったのは比較的最近のことです。 かつては手数料が高く、少額で市場全体を持つこと自体が難しかったためです。 いまは低い費用で買える商品が増えたので、選びやすくなりました。
理由はいくつかありますが、突き詰めると「当てにいかなくてよい」という一点です。
個別の会社を選ぶには、その会社の事業や財務を読み、 いまの株価が高いか安いかを判断する必要があります。 これを続けるには時間も知識も要りますし、続けたからといって当たるとも限りません。
指数をまとめて持てば、この作業が要らなくなります。 どの会社が伸びるかは分からなくても、 市場全体が長期的に成長するなら、その平均は受け取れます。
当てにいかないことの意味は、当たらないことを認めるという意味でもあります。 個別の会社を選べば、うまくいけば市場の平均を大きく超えられます。 その可能性を手放す代わりに、大きく外す可能性も手放す、という取引です。 どちらを重く見るかで、この方法が合うかどうかが決まります。
| 個別の銘柄を選ぶ | 指数をまとめて持つ | |
|---|---|---|
| 調べる手間 | 会社ごとに必要 | 指数を選ぶだけ |
| 外したときの影響 | その1社の分がまるごと | 全体の中の一部にとどまる |
| 当たったときの伸び | 大きい | 平均どまり |
| 費用 | 売買のたびにかかる | 毎年の信託報酬 |
もうひとつの理由は費用です。 頻繁に売り買いすれば、そのたびに手数料と税金がかかります。 まとめて持って動かさない方法は、この分が減ります。
「安全な方法」ではない
利点を並べてきましたが、ここからは解決しない部分の話です。 ここを飛ばすと、始めたあとで想定と違うと感じることになります。
もうひとつ、この方法には向き不向きがあります。 市場の平均を受け取る方法なので、平均を大きく超える結果は望めません。 短い期間で大きく増やしたい人には合いません。 逆に、長い時間をかけて市場の成長ぶんを受け取りたい人には向いています。
ここを取り違えると、いちばん困ったことになります。 インデックス投資は、減らない方法ではありません。
分散されているのは「どの会社を選ぶか」という危険だけです。 市場全体が下がるときには、その中身も全部下がります。 1社の不祥事で資産が消える危険は減りますが、 景気が悪くなって株全体が下がる危険は、そのまま残ります。
過去にも、株式全体が数年にわたって戻らなかった時期があります。 「長く持てば必ず増える」という言い方を見かけますが、 必ずと言えるほどの根拠はありません。
もう少し正確に言うと、株式という資産そのものが持つ値動きの荒さは、 どれだけ分散しても残ります。 景気、金利、戦争、感染症のように、市場全体に効く出来事があるからです。 個別の会社の事情は分散で薄められますが、こうした全体に効くものは薄められません。
指数を選ぶということ
「インデックス投資を始めた」と言っても、 それだけでは何をどれだけ持っているかは決まりません。 どの指数を選んだのかまで含めて、はじめて中身が決まります。
インデックス投資といっても、どの指数を選ぶかで中身はまるで違います。 日経平均なら日本の225社、S&P500なら米国の500社、 全世界株式なら先進国と新興国の広い範囲になります。
「インデックス投資だから分散されている」とひとくくりにすると、 この違いが見えなくなります。1つの国の指数を選んだ時点で、その国に集中しています。
どれを選ぶかは、何に賭けるかを選ぶことでもあります。 国を選びたくないなら全世界、 米国の成長に賭けたいならS&P500、というように、 選択そのものが判断を含んでいます。中立な選択肢はありません。
始めるときに決めること
ここまでの話をまとめると、この方法は 「銘柄を選ばなくてよくなる代わりに、別の判断が残る」ものだと言えます。 残る判断のほうが、実は結果を大きく左右します。
この方法を選んだあとに残る判断は、次の3つです。 どれも商品選びの前に決まっているほうが、迷いません。
- どの指数にするか。国を選ぶか、選ばないか
- いくら入れるか。なくなっても暮らしが続く範囲で
- どれくらい下がったら売るか。あるいは、売らないと決めておくか
3つ目がいちばん大事です。 インデックス投資の成績は、持ち続けた人の成績です。 下がった局面で売ってしまえば、その成績は自分のものになりません。 だから、下がる前に決めておく必要があります。
その線を決める材料は、過去の下落から作れます。 いくらまで減っても持ち続けられるかを先に決め、 その資産が過去にいちばん下げた率で割れば、投じてよい額の目安が出ます。
自分の金額で確かめられます。過去の下落を自分の金額に当てはめて試算すると、その資産が荒れたときに何円まで減ったかが分かります。
最後に、この方法を選んだあとも、放っておけばよいわけではないことに触れておきます。 何年かに一度は、選んだ指数がいまも自分の考えに合っているか、 商品の費用がほかと比べて高くなっていないかを見直す価値があります。 費用の低い商品はあとから出てきますし、 自分の事情も、始めたときとは変わっていきます。
ただし、見直しと売買は別のことです。 相場が下がったから見直す、というのは見直しではなく反応です。 あらかじめ決めた時期に、決めた項目だけを確かめるようにすると、 値動きに引きずられずに済みます。
