投資信託のコスト

信託報酬とは?

年0.5%と言われても、高いのか安いのか分かりません。円に直すところから始めます。

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この記事の要点

  • 信託報酬は、持っているあいだ毎日かかり続ける費用です。買うときの手数料と違い、1回きりでは終わりません。
  • 残高に対してかかるので、同じ率でも残高が育つほど払う額は増えます。100万円で年1%なら1年に1万円です。
  • 運用会社・販売会社・受託会社の3者に配分されます。どこで買っても率は変わらず、下げるには商品を替えるしかありません。
  • 毎日の基準価額の中で引かれるため、入出金の明細には出てきません。自分で率と残高を掛けないと金額が分かりません。
  • 引かれた分はそれ以降ふえないので、失う資産は払った手数料の合計より大きくなります。期間が長いほど差が開きます。
  • 率だけで高い低いは決まりません。何に投資しているかで手間が違うので、同じ対象の商品どうしで比べてください。

投資信託を選ぶときに必ず出てくるのが「信託報酬」です。 年0.1%のものもあれば、年2%を超えるものもあります。 この率が何を意味していて、実際にいくら払うことになるのかを整理します。

信託報酬とは何か

信託報酬は、投資信託を持っているあいだ、ずっとかかり続ける費用です。 年率で示され、預けている資産の残高に対してかかります。 100万円を預けていて年1%なら、1年で1万円ぶんです。

買うときにかかる手数料や、売るときに引かれる金額とは性質が違います。 そちらは1回きりですが、信託報酬は保有している日数のぶんだけかかります。 1年持てば1年ぶん、20年持てば20年ぶんです。

率そのものは、目論見書や証券会社の商品ページに書かれています。 「信託報酬 年0.1%(税込0.11%)」のような書き方です。 税抜きと税込みの両方が書かれていることが多いので、 商品どうしを比べるときはどちらかにそろえてください。

マネック案内役):買うときの手数料は目立つけど、長く持つなら効いてくるのはこっちだよ。

誰に払っているのか

信託報酬は、1つの会社に払っているわけではありません。 投資信託は3つの立場が関わって動いていて、それぞれに配分されます。

  • 運用会社 … 何をどれだけ買うかを決め、実際に運用する
  • 販売会社 … 証券会社や銀行。口座を通じて売買を取り次ぎ、報告書を届ける
  • 受託会社 … 信託銀行。資産を預かり、運用会社の指示で売買を実行する

目論見書には、この3者への配分まで書かれていることがあります。 同じ商品でも、どの証券会社で買っても信託報酬は変わりません。 販売会社への配分は決まっているので、買う場所を変えても信託報酬は下がりません

下げられるのは商品を変えたときだけです。ここは購入時手数料と違うところで、 購入時手数料は同じ商品でも販売会社によって違うことがあります。

どうやって引かれるのか

信託報酬は、請求されるものではありません。銀行の手数料のように 口座から引き落とされることもなければ、入出金の明細に出てくることもありません。

信託報酬は、基準価額の中で引かれているその日の運用の成果値上がり・値下がり信託報酬を差し引く1年ぶんを日割りで基準価額として発表引いたあとの数字
請求されるものではなく、毎日の基準価額を計算する途中で引かれています。入出金の明細に出てこないのは、このためです。

毎日発表される基準価額は、その日の運用の成果から信託報酬を差し引いたあとの数字です。 年率の信託報酬を日割りにして、毎日少しずつ引かれています。だから「払った」という感覚がまったく残りません

これは仕組みとして自然なことで、隠しているわけではありません。 ただ、気づきにくいのは事実です。銀行のATM手数料なら明細に1行出るので 「今月は何回使った」と数えられますが、信託報酬はそれができません。 自分で率を調べて、残高を掛けて、はじめて金額になります。

年0.X%は、大きいのか小さいのか

率のままでは大きさが分かりません。円に直すのがいちばん早い方法です。

1年ぶんの信託報酬 = 預けている残高 × 信託報酬の年率
残高年0.1%年0.5%年1.5%
100万円1,000円5,000円15,000円
500万円5,000円25,000円75,000円
1,000万円10,000円50,000円150,000円
3,000万円30,000円150,000円450,000円

1年ぶんの概算です。実際には残高が動くので、日々の残高に応じて変わります。

こうして並べると、同じ率でも残高によって重さが変わることが分かります。 残高が小さいうちは年数千円で、気にするほどではないかもしれません。 ただ、積み立てを続けて残高が育つと、同じ率でも払う額は増えていきます。

そしてこの表は1年ぶんです。投資信託は数年で売るものではなく、 10年20年と持つことを前提に選ぶものなので、この額が毎年かかり続けると考える必要があります。

引かれた分は、それ以降ふえない

長期で見るときに見落とされやすいのが、ここです。 信託報酬として引かれたお金は、単に出ていくだけではありません。 そのお金が将来生むはずだった分も、一緒に失われます。

早く引かれた分ほど、失うものが大きい1年後10年後20年後30年後引かれた手数料ふえるはずだった分
濃いほうが引かれた手数料そのもの、薄いほうが「引かれなければふえていたはずの分」です。手数料の額は変わらないのに、時間が経つほど失うものは増えます。

1年目に引かれた1万円は、そのあと20年運用されていれば 2万円以上になっていたかもしれません。引かれた時点で、その可能性ごと消えます。 だから払った手数料の合計より、失う資産のほうが大きくなります

この差は期間が延びるほど開きます。5年ならほとんど変わりませんが、 30年になると無視できない差になります。 若いうちに始める人ほど、コストの差が効いてくるということです。

コストを比べるときは、率でも、1年ぶんの金額でもなく、持ち続ける期間ぶんの資産の差で見てください。 そこではじめて、手間をかけて見直す価値があるかが判断できます。

実際にいくらの差になるかは、投資信託の手数料、20年でいくら差がつく?で計算できます。保有額と積立額、いまの率と比べたい率を入れると、 5年・10年・20年・30年の差が出ます。

自分の率を確かめる

いま持っている商品の信託報酬は、次のどれかで確認できます。

  • 証券会社や銀行の商品ページ … いちばん早い。保有商品の一覧からも辿れることが多い
  • 交付目論見書 … 「ファンドの費用・税金」の欄に載っている
  • 運用報告書 … 実際にかかった費用の合計が載っている

気をつけたいのは、税抜きと税込みが混ざることです。 目論見書では税抜きで書かれ、商品ページでは税込みで出ていることがあります。比べるときは、どちらかにそろえてください。 消費税のぶんだけ、税込みのほうが1割ほど高く見えます。

もうひとつ、目論見書に載っている率と、実際にかかった率は一致しません。 売買のときの手数料や、海外の資産を保管する費用などが上乗せされるためです。 こちらは投資信託の実質コストで扱います。

つみたて投資枠の対象商品なら、信託報酬に上限が決められています。 実際にどのあたりに集まっているかはつみたて投資枠対象商品の信託報酬にまとめています。自分の率が高いか低いかの目安になります。

率は変わることがある

信託報酬は、買ったときの率がずっと続くとは限りません。 運用会社の判断で引き下げられることがあり、実際にここ数年は 同じ指数に連動する商品どうしで引き下げ競争が起きています。

引き下げられた場合、こちらから手続きをする必要はありません。 持っている商品の率が下がるので、そのまま持ち続ければ恩恵を受けられます。安い商品に乗り換えたつもりが、元の商品も下がっていたということも起こります。

率が変わったときは、運用会社から通知が出ます。 証券会社に登録しているメールアドレスに届くことが多いのですが、 気づかずに過ごすこともあります。年に一度、自分の持っている商品の率を 確認する機会を作っておくと、こうした変化に気づけます。

逆に引き上げられることは、ほとんどありません。 信託報酬の引き上げには、投資家への通知や、 場合によっては書面決議といった手続きが必要になるためです。下がる方向には動きやすく、上がる方向には動きにくいと考えてよいでしょう。

なお、率が下がったからといって運用の中身が変わるわけではありません。 指数に連動させる商品なら、追いかける指数はそのままです。 コストだけが下がるので、投資家にとっては単純に良い変化です。

高い・低いをどう判断するか

率だけを見て「高い」「低い」とは言えません。何に投資している商品かで、 かかる手間が違うからです。

指数に連動させるだけの商品は、何を買うかが機械的に決まるので手間が少なく、 信託報酬も低くなります。一方、独自に銘柄を選ぶ商品や、 複数の資産を組み合わせて配分を調整する商品は、そのぶん高くなります。高いこと自体が問題なのではなく、その差に見合う成果が出ているかが問題です。

見合っているかを確かめるには、同じ期間の指数と比べます。 指数を上回ることを目指す商品なら、信託報酬を引いたあとで 指数を上回っているかどうかが判断の材料になります。 これは短い期間では分からないので、数年単位で見る必要があります。

コストが低いというだけで選ばないでください。 信託報酬が低くても、自分が投資したい対象と違う商品では意味がありません。まず何に投資するかを決めて、そのうえで同じ対象の商品どうしでコストを比べる—— この順番を逆にすると、安いけれど狙いと違うものを持つことになります。

もうひとつ、いま持っている商品を売って乗り換えるときは、コスト以外のことも関わります。 利益が出ている状態で売れば、その利益に税金がかかります。 コストの差より税金のほうが大きいこともあるので、 金額を並べてから決めてください。

よくある質問

信託報酬はいつ払うのですか?
支払う場面はありません。毎日の基準価額を計算するときに、1年ぶんを日割りにした額が投資信託の財産から差し引かれています。口座から引き落とされるわけではないので、入出金の明細にも出てきません。発表されている基準価額は、すでに引かれたあとの数字です。
証券会社を変えれば信託報酬は下がりますか?
下がりません。信託報酬は商品ごとに決まっていて、どの販売会社で買っても同じです。販売会社によって変わることがあるのは購入時手数料のほうです。信託報酬を下げたいなら、商品そのものを替えることになります。
年0.5%と年0.1%では、どれくらい違いますか?
残高と期間によります。500万円を20年持つなら、率の差は0.4%でも、引かれた分がふえなくなる影響まで含めると元本の1割近い差になります。自分の金額で確かめるには、投資信託の手数料の診断で保有額と積立額を入れてください。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては金融庁のつみたて投資枠対象商品のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。