投資信託の手数料には、いくつも名前があります。購入時手数料、信託報酬、 信託財産留保額、売買委託手数料。似たような言葉が並びますが、かかる時点が違うと分かると整理できます。
手数料がかかる3つの時点
投資信託の費用は、買うとき・持っているあいだ・売るときの3つに分かれます。 このうち、金額として効いてくるのがどれかは、持つ期間で変わります。
買うときと売るときは1回きりです。持っているあいだの費用だけが、 日数に応じてかかり続けます。数か月で売るなら買うときの手数料が効きますが、 10年20年と持つなら、圧倒的に効いてくるのは保有中の費用です。
買うときの手数料
購入時手数料は、買った金額に対してかかります。 「3.3%(税込)」なら、10万円ぶん買うと3,300円が手数料で、 実際に運用に回るのは96,700円です。
同じ商品でも、どこで買うかによって変わることがあります。 これは信託報酬との大きな違いです。信託報酬は商品ごとに決まっていて 販売会社では変わりませんが、購入時手数料は販売会社が決めます。
近年は、この手数料を取らない商品が増えました。 「ノーロード」と呼ばれるもので、購入時手数料が0円です。 つみたて投資枠の対象商品は、購入時手数料が0円であることが条件に 含まれているため、その枠内の商品ならかかりません。
つみたて投資枠の対象商品の条件や、実際の商品数はつみたて投資枠対象商品の信託報酬にまとめています。
持っているあいだの手数料
信託報酬が、ここに当たります。 年率で示され、預けている残高に対してかかります。 請求されるのではなく、毎日の基準価額を計算するときに差し引かれます。
この費用のいちばんの特徴は、止まらないことです。 売買をしなくても、相場が動かなくても、持っているだけでかかります。 そして残高が育つほど、同じ率でも払う額は増えます。
| 購入時手数料 | 信託報酬 | |
|---|---|---|
| かかる時点 | 買ったとき1回 | 持っているあいだ毎日 |
| かかる対象 | 買った金額 | 預けている残高 |
| 販売会社で変わるか | 変わることがある | 変わらない |
| 下げる方法 | 取らない販売会社で買う | 別の商品に替える |
どちらも「手数料」ですが、性質はかなり違います。
表の最後の行が実用上いちばん大事なところです。 購入時手数料は買う場所を変えれば避けられますが、 信託報酬は商品を変えないかぎり下がりません。
もうひとつ、購入時手数料には「取られ損」に見えやすい性質があります。 買った瞬間に元本が減るので、そのぶんを取り返すまではマイナスから始まります。 3%かかったなら、運用で3%以上ふえてようやく元に戻る計算です。 年5%で回ったとしても、半年以上かかります。
長く持つなら、この差はいずれ埋まります。ただし、同じ商品が0円で買える場所があるなら、払う理由はありません。 比べるのは手間ではなく、率が0かどうかだけです。
売るときに引かれるもの
信託財産留保額は、売るときに基準価額から差し引かれるものです。 率で決まっていて、0.3%程度のものが多く、設定されていない商品もあります。
これは手数料とは少し性質が違います。運用会社の収入になるのではなく、売らずに残る人のために、投資信託の中に留め置かれるお金です。 誰かが解約すると、その分の資産を売る必要が出て、そこに費用がかかります。 その費用を、解約する人に負担してもらう仕組みです。
だから「取られる」というより「精算する」に近いものです。 設定されていない商品が良いとも限りません。設定されていなければ、 解約にかかった費用は残った人たちが負担することになります。
率はどこに書いてあるか
手数料の率は、買う前にすべて確認できます。どこを見ればよいかを整理します。
交付目論見書
投資信託ごとに必ず作られる書類で、「ファンドの費用・税金」という欄があります。 購入時手数料の上限、信託報酬の率とその配分、信託財産留保額が並んでいます。 買う前に交付されることになっているので、証券会社の画面で必ず見られます。
ここに書かれている購入時手数料は上限であることに注意してください。 実際にいくらかかるかは販売会社が決めるので、 目論見書に「3.3%を上限とします」と書かれていても、 その証券会社では0円ということがあります。
証券会社の商品ページ
そこで実際に買う場合の手数料が出ています。目論見書の上限ではなく、 その会社で適用される率です。信託報酬は商品ごとに決まっているので、 どの証券会社で見ても同じ数字が出ます。
税抜きと税込みが混ざりやすいのもここです。 目論見書は税抜き、商品ページは税込みで書かれていることがあります。比べるときは、どちらかにそろえてください。 消費税のぶんだけ、税込みのほうが1割ほど高く見えます。
運用報告書
こちらは買ったあとに確認するものです。決算ごとに作られ、 その期間に実際にかかった費用が金額と率で載ります。 事前に率が決まらない費用も、ここではじめて数字になります。
新しく設定されたばかりの商品には、まだ運用報告書がありません。 その場合は目論見書の率で判断するしかなく、 実際の負担が分かるのは最初の決算を迎えたあとになります。
どれを気にすればよいか
持つ期間で答えが変わります。
数年で売るつもりなら
買うときと売るときの費用が効きます。購入時手数料が3%かかると、 その時点で3%のマイナスから始まることになり、 取り返すのに時間がかかります。ここは0円の商品を選ぶだけで避けられます。
10年以上持つつもりなら
信託報酬と実質コストが効きます。買うときの1回分は、 何年もかかり続ける費用の前では小さくなります。年0.5%の差は、20年でおおよそ元本の1割ほどの差になります。
長く持つなら、見るのは信託報酬と実質コストです。 購入時手数料は0円のものを選べば済む話で、 比べる手間をかけるところではありません。
自分の場合にいくらの差になるかは、投資信託の手数料、20年でいくら差がつく?で計算できます。持っている額と積み立てている額を入れると、 率の差が円でいくらになるかが出ます。
最後に、手数料を減らすことと運用の成果を上げることの違いに触れておきます。 成果は事前に分かりませんが、手数料は買う前に分かります。選べるものと、選べないものという違いです。
運用がうまくいくかどうかは相場しだいですが、 どの商品を持つかは自分で決められます。 そのうえで、同じ対象に投資する商品どうしなら、 コストの低いほうを選ぶのは確実に効く判断です。 相場がどうなっても、下げた分は残ります。
手数料の名前を全部覚える必要はありません。買うとき・持っているあいだ・ 売るときの3つに分けて、自分がどれくらいの期間持つつもりかを決める。 そこまで決まれば、どこを見るべきかは自然に絞られます。
