ETFは信託報酬が低いと言われます。実際、同じ指数に連動する商品どうしで比べると、 ETFのほうが低いことが多くあります。ただ、それだけで安く済むとは限りません。 コストの出てくる場所が違うためです。
どちらも投資信託ではある
ETFは「上場投資信託」の略で、中身は投資信託です。 お金を集めて運用会社が運用し、信託銀行が資産を預かる仕組みは同じです。 違うのは売買のしかたです。
一般的な投資信託は、1日1回計算される基準価額で売買します。 注文を出した時点では価格が分かりません。 ETFは証券取引所で株と同じように売買するので、 取引時間中はいつでも、そのときの価格で売買できます。
この違いが、コストのかかり方の違いにつながっています。 取引所で売買するということは、株を買うときと同じ費用が発生するということです。
コストが出てくる場所が違う
信託報酬は、どちらも残高から自動で引かれます。 ここは同じです。違うのは、それ以外の費用です。
投資信託の場合、多くの費用が信託報酬の中か、投資信託の財産の中で処理されます。 自分で何かを払う場面がありません。 ETFの場合、売買の手数料は自分の口座から出ていきます。
「自動で引かれる」か「自分で払う」かの違いは、気づきやすさに影響します。 自分で払うほうは明細に出るので分かりますが、 自動で引かれるほうは意識しないと分かりません。気づきやすさと、金額の大小は別の話です。
売買のたびにかかるもの
ETFを売買するときにかかるのは、証券会社に払う売買手数料です。 無料にしている証券会社もありますが、対象の銘柄が決まっていることがあります。
もうひとつ、取引所での売買には価格の幅があります。 買いたい人が出している価格と、売りたい人が出している価格には差があり、 その差のぶんだけ実質的な負担になります。取引の少ない銘柄ほど、この幅が広がります。
海外のETFを買う場合は、為替の手数料も加わります。 円をドルに替えるときと、戻すときの両方でかかります。積み立てで毎月買うなら、この費用が毎月発生します。
| 投資信託 | ETF | |
|---|---|---|
| 1回あたりの売買費用 | 多くは0円 | 証券会社の手数料 |
| 価格の幅 | 無い(1日1回の基準価額) | ある(買値と売値の差) |
| 為替の手数料 | 商品の中で処理されることが多い | 自分で負担することがある |
| 少額での積み立て | 100円から買えるものが多い | 1口の価格による |
毎月少額を積み立てる使い方では、この差が効いてきます。
売買のたびにかかる費用は、1回あたりで見ると小さく感じます。 ただ、毎月買うなら年12回、20年なら240回です。 1回500円でも12万円になります。回数の多い買い方をするほど、ここが効いてきます。
逆に、年に1回まとめて買う使い方なら、20年でも20回です。 同じETFでも、買い方によって負担がまったく変わります。 信託報酬のように率で決まる費用と違い、 こちらは自分の行動で大きく動かせる部分です。
分配金の扱いが違う
長期で持つ人にとって、ここが実務上いちばん大きい差になります。
投資信託には、分配金を出さずに再投資する仕組みを持つものがあります。 運用で得た利益をそのまま運用に回すので、自分では何もしなくても複利で回ります。
ETFは仕組み上、分配金を出します。受け取った分配金を再び投資に回したいなら、 自分で買い直す必要があります。買い直すたびに売買手数料がかかり、 課税口座なら分配金を受け取った時点で税金も引かれます。
課税口座では、手取りが減る
分配金には約20%の税金がかかります。受け取って再投資すると、 税金を引かれたあとの金額を投資に回すことになります。 再投資する仕組みを持つ投資信託なら、この段階での課税が起こりません。
NISA口座なら分配金に税金はかからないので、この差は小さくなります。 ただ、買い直す手間と手数料は残ります。
どちらが安く済むか
信託報酬だけを見ればETFが低いことが多く、 売買や分配金の再投資まで含めると使い方によって逆転します。
ETFのほうが安く済みやすい場合
まとまった金額を一度に買って、長く持ち続ける場合です。 売買の回数が少ないので、1回あたりの手数料が薄まります。 信託報酬の差が、そのまま効いてきます。
投資信託のほうが安く済みやすい場合
毎月少額を積み立てる場合です。売買のたびに手数料がかかると、 信託報酬の差を上回ることがあります。 分配金を自動で再投資できることも、長期では効いてきます。
「ETFのほうがコストが低い」は、信託報酬だけを見た話です。 毎月の積み立てで長期に持つなら、投資信託のほうが総額で下回ることがあります。 自分の買い方に当てはめて比べてください。
率の差が金額でいくらになるかは、投資信託の手数料、20年でいくら差がつく?で計算できます。信託報酬の差だけを比べたいときにも使えます。
NISAでの扱いの違い
NISA口座で持つ場合、投資信託とETFで扱いが少し変わります。 コストだけでなく、この違いも判断に影響します。
つみたて投資枠で買えるかどうか
つみたて投資枠の対象になるには条件があり、 その条件を満たす商品はあらかじめ届け出られています。 対象商品の大半は投資信託で、ETFは数えるほどしかありません。
つみたて投資枠で積み立てたいなら、選べる範囲は投資信託が中心になります。 ETFを買いたい場合は成長投資枠を使うことになり、 枠の使い方そのものが変わってきます。
分配金にかかる税金
NISA口座なら、分配金にも税金はかかりません。 課税口座で問題になった「受け取るたびに約20%引かれる」という点は、 NISAでは起こりません。ETFの不利な点がひとつ消えることになります。
ただし、受け取った分配金を再び投資に回すには、 新しくNISAの枠を使うことになります。枠には年間の上限があるので、分配金の再投資に枠を使うと、そのぶん新しく積み立てられる額が減ります。 再投資型の投資信託なら、この問題は起こりません。
枠の使い方まで含めて考える
コストの比較だけを見ていると、この点は抜け落ちます。 年間の枠を使い切るつもりで積み立てている人ほど、 分配金の再投資に枠を取られることの影響が大きくなります。
逆に、枠に余裕がある使い方をしているなら、 この点はあまり気にしなくてかまいません。 自分がどれくらい枠を使っているかで、重さが変わります。
コスト以外で決まること
コストは選ぶ理由のひとつでしかありません。 扱いやすさの面で、はっきりした違いがあります。
- 金額を指定して買えるか … 投資信託は「1万円ぶん」で買える。ETFは口数で買う
- 自動で積み立てられるか … 投資信託は設定すれば自動。ETFは対応していないことがある
- 価格が分かるタイミング … 投資信託は注文したあと。ETFは注文する前
- 取引できる時間 … 投資信託はいつでも注文できる。ETFは取引所の時間内
毎月決まった額を自動で積み立てたいなら、投資信託のほうが向いています。 価格を見ながら自分のタイミングで買いたいなら、ETFのほうが向いています。どちらが優れているかではなく、どちらが自分の使い方に合うかです。
コストの低さだけで選び替えると、続けられない仕組みに移ってしまうことがあります。 自動で積み立てていたものを、毎月自分で発注する形に変えると、 忙しい月に止まります。続くかどうかは、率よりも結果に効きます。
同じ指数に連動する商品でも、中身がまったく同じとは限りません。 為替をどう扱うか、どの時点の指数に合わせるかで差が出ます。 コストを比べる前に、何に投資している商品かを確かめてください。
どちらを選ぶかで迷ったときは、コストの差を金額にしてから考えてください。 年0.05%の差なら、500万円で年2,500円です。
この額のために、自動で積み立てられる仕組みを手放して 毎月自分で発注する形に移るかどうか——そう並べると判断しやすくなります。率の差だけを見ていると、手間の大きさと釣り合っているかが分かりません。 金額に直せば、比べられる形になります。
コストは選ぶ理由のひとつですが、唯一の理由ではありません。 続けられる仕組みかどうかまで含めて、自分の使い方に合うほうを選んでください。 途中で止まってしまえば、率の差は意味を持ちません。
