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長期投資でも元本割れする?

「長期・分散・積立なら大丈夫」は、判断を助ける言葉であって、損をしない方法ではありません。

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この記事の要点

  • 長期投資でも元本割れします。「長く持てば必ず増える」と言えるほどの根拠はありません。
  • 日本株には、高値からその水準に戻るまで30年以上かかった時期があります。
  • 米国株にも、10年以上ほとんど増えなかった期間があります。
  • 売る時期を自分で選べるとは限りません。お金が必要になったときに相場が下がっていれば、下がった値段で売ることになります。
  • 長期投資の実績は、最後まで持ち続けた人の成績です。途中で売った人は、その数字を受け取っていません。
  • 備えられるのは、売らずに済む状態を作っておくことです。相場の予想は要りません。

結論から

長期投資でも元本割れします。「長く持てば必ず増える」と言えるほどの根拠はありません。確かなのは、期間が長いほど下げた時期を通り過ぎる機会が増える、という程度のことです。

「長期・分散・積立なら大丈夫」という言い方をよく見かけます。 この3つが判断を助けるのは本当ですが、 損をしない方法という意味ではありません。

この言い方が広く使われるのは、それが多くの場合に役立つからです。 短期で売り買いを繰り返すより、長く持つほうが結果はよくなりやすい。 そこまでは言えます。問題は、そこから先に一歩進んで 「だから損しない」と読み替えてしまうところにあります。

この記事では、どういう場合に長期でも元本割れするのか、 そのうえで何ができるのかを整理します。

なぜ「長期なら大丈夫」と言われるのか

まず、この言い方がどこから来ているのかを確かめます。 まったく根拠のない話ではないので、そこを押さえてから検討します。

この言い方が広まった背景には、短期の売買で損をする人が多いという事実があります。 頻繁に売り買いするより、長く持つほうが結果がよかった、という比較は数多くあります。 その比較自体は妥当ですが、そこから「長期なら損しない」まで進むと、話が飛びます。

主な根拠は、過去のデータです。 米国株のように長期的に上がってきた市場では、 保有期間を15年、20年と伸ばしていくと、 どの時点で買っても最終的にプラスになった、という調べ方の結果があります。

これは事実として起きたことですが、特定の市場の、特定の期間についての話です。別の市場、別の期間では、同じ結論にはなりません。

もうひとつの根拠は、期間が長いほど1年ごとの上下が均されることです。 1年だけを見れば大きく上下しますが、 20年を通した年率で見れば、その幅は小さくなります。 ただしこれは「幅が小さく見える」だけで、 最終的な金額が元本を上回ることを保証するものではありません。

もうひとつ、言葉の意味がはっきりしていない点もあります。 「長期」が何年を指すのかは、話す人によって違います。 5年を長期と呼ぶ人もいれば、20年以上を指す人もいます。 何年持つ前提の話なのかが決まらないまま「長期なら大丈夫」と言われても、 自分に当てはまるかどうかは判断できません。

年ごとの増減と、それを均した平均。平均の1本には、下げた年が残らない1年目+28%2年目-19%3年目+34%4年目-8%5年目+22%年率で均すと5年ぶん
左は年ごとの動きで、右はそれを均した1本です。均したあとの数字だけを見ると、下げた年があったことは分かりません。年率は結果を要約する道具であって、経験を表すものではありません。

実際には戻らなかった時期がある

根拠として挙げられるデータには、いくつかの偏りがあります。 意図的なものではなく、データの集まり方からくるものです。 ここを知っておくと、示された数字の重みが違って見えます。

過去のデータを見るときに気をつけたいのは、 いま存在している市場のデータしか残っていないことです。 長く成長してきた市場のデータは残り、途中で消えた市場のデータは目に入りません。 残っているものだけを見ると、実際より良い結論になりがちです。

日本株には、指数が高値をつけてから、 その水準に戻るまで30年以上かかった時期があります。 その間に買って持ち続けた人は、長期に持っていても元本を割ったままでした。

米国株にも、10年以上ほとんど増えなかった期間があります。 長い目で見れば右肩上がりに見える市場でも、 切り取る期間によっては、長く持っても報われないことがあります。

どこから数えるかで、同じ指数でも答えが変わる好調な時期から数える大きく増えた高値の直前から数えるほとんど増えない暴落の直後から数えるとても大きく増えた
始まりの月を変えるだけで、同じ指数から別の結論が出ます。過去のリターンを読むときは、いつからいつまでを数えたのかを必ず見てください。都合のよい期間を選べば、都合のよい数字が出ます。

「長期なら大丈夫」という言い方は、 こうした期間を含まない範囲で数えたときにだけ成り立ちます。 どこから数えるかで結論が変わることは、実績の読み方の基本です。

マネック案内役):「長期ならプラス」と言うとき、その長期がどこからどこまでかを見てみてね。 期間を変えると、同じ市場でも答えが変わることがあるんだ。

いつ必要になるかで結果が変わる

市場が戻るまで待てるかどうかは、市場の側の問題ではありません。 待てるだけの余裕が手元にあるかどうかで決まります。ここを見ていきます。

ここまでは市場の側の話でした。 ここからは、自分の側の事情がどう効いてくるかを見ます。 実はこちらのほうが、結果を左右することが多くあります。

もうひとつ大事なのは、売る時期を自分で選べるとは限らないことです。

長く持つつもりでも、住宅の購入、家族の事情、収入の変化などで、 お金が必要になることがあります。 そのときに相場が下がっていれば、下がった値段で売ることになります。

条件元本割れの起こりやすさ
使う時期が決まっていない低い。回復を待てる
数年以内に使う予定がある高い。待てないまま売ることになる
生活費に近いお金高い。下げた局面ほど売る必要が出る

つまり元本割れするかどうかは、市場の性質だけでは決まりません。自分がいつ売る必要に迫られるかが、同じくらい効きます。ここは市場と違って、ある程度は自分で決められる部分です。

本当の危険は、途中で売ること

市場の話と自分の事情の話をしてきましたが、 この2つが重なるところに、いちばん大きな落とし穴があります。 それは、市場が下がっている時期と、売りたくなる気持ちが重なることです。

ここまでの話をふまえると、注意すべき場所がはっきりしてきます。 市場が下がること自体は避けられませんが、 そのときにどう振る舞うかは、ある程度まで自分で決められます。

長期投資の実績としてよく示される数字は、最後まで持ち続けた人の成績です。 途中で売った人は、その数字を受け取っていません。

そして人が売るのは、たいてい大きく下げた局面です。 資産が半分になった月に、あと何年か待てば戻ると信じて持ち続けるのは、 言葉で言うほど簡単ではありません。

だから、長期投資でいちばん大きな危険は、市場が下がることそのものではなく、 下がったときに売ってしまうことです。 売ってしまえば、そこで損が確定し、そのあとの回復には乗れません。

この点は、事前にどれだけ理屈を理解していても、 実際にその場面に立つと違って感じられるものです。 だからこそ、下げた局面で判断しなくて済むように、 始める前に金額と方針を決めておく意味があります。

「長期で持てば大丈夫」と考えて始めると、 下げた局面で「話が違う」と感じて売ることになりがちです。 下がることを織り込んで始めたほうが、結果として持ち続けられます。

できる備え

ここまで、できないことばかりを書いてきました。 最後に、できることを整理します。数は多くありませんが、効きます。

では何ができるのか。相場を当てにいく話ではありません。 自分の側の条件を整えて、下げた局面で売らなくてよい状態にしておくことです。

将来の相場は分かりませんが、 自分の側で決められることはあります。

  • 近く使う予定のお金を、投資に回さない
  • 生活防衛資金を先に確保して、下げた局面で売らずに済むようにする
  • いくらまで減っても持ち続けられるかを、始める前に決めておく

3つ目は数字にできます。 耐えられる金額を、その資産が過去にいちばん下げた率で割れば、 投じてよい額の目安が出ます。 この決め方なら、相場の予想をしなくても金額を決められます。

手元に残す額の目安は、生活防衛資金の診断で確かめられます。 そのうえで、過去の下落を自分の金額に当てはめると、投じてよい額まで出ます。

これらをやっても、元本割れしなくなるわけではありません。 変わるのは、元本割れしている期間を売らずに通り過ぎられるかどうかです。 長期投資が効くとすれば、そこにおいてです。

最後に、この記事は投資をやめるべきだと言っているわけではありません。 元本割れしうることを知ったうえで始めるのと、 知らないまま始めて下げた局面で驚くのとでは、 同じ相場でも結果が変わります。変わるのは相場ではなく、そのときの自分の判断です。

預金には元本割れがない代わりに、物価が上がれば買えるものは減っていきます。 どちらにも避けられない性質があり、どちらを選んでも何かは引き受けることになります。 引き受けるものを知ったうえで選ぶ、というのがこの記事で言いたいことです。

長期投資でも元本割れします。長く持つことは、下げた時期を通り過ぎる機会を増やすだけで、増えることを保証しません。 備えられるのは、売らずに済む状態を作っておくことです。

よくある質問

20年持てば元本割れしませんか?
そうとは限りません。米国株について、保有期間を15年、20年と伸ばすとどの時点で買ってもプラスになった、という調べ方の結果はありますが、これは特定の市場の特定の期間についての話です。日本株には、高値から30年以上戻らなかった時期があります。
分散すれば元本割れを避けられますか?
避けられません。分散で減るのは、特定の銘柄や国が悪くなったときの影響です。世界の株がまとめて下がる局面では、分散していてもまとめて下がります。
元本割れを避けるにはどうすればよいですか?
投資である以上、避ける方法はありません。できるのは、元本割れしている期間を売らずに通り過ぎられる状態を作ることです。近く使う予定のお金を投資に回さないこと、生活防衛資金を先に確保すること、いくらまで減っても持ち続けられるかを始める前に決めておくことの3つです。

参照した一次情報

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