結論から
この問いには、はっきりした答えを期待して来る人が多いところです。 けれど答えを出すには、これから相場がどう動くかを知っている必要があります。 知っている人はいないので、答えは出せません。出せるのは、判断のしかたのほうです。
手元に100万円あるとき、いま全部入れるか、 毎月少しずつ入れるかは、多くの人が迷うところです。 どちらが正解かという答えはありませんが、 何が違うのかをはっきりさせれば、自分で選べます。
何が違うのか
まず、2つの方法が具体的に何をすることなのかを確かめます。 違いは思っているより少なく、そこが分かると判断がしやすくなります。
比べる前に、条件をそろえておきます。 同じ商品を、同じ合計金額だけ買う場合の話です。 商品が違えば結果も違いますし、金額が違えば比べる意味がありません。
違いは1つだけです。買う値段が1つか、複数か。
一括で買えば、その日の値段がそのまま取得価格になります。 積立なら、買った時期ごとに値段が違うので、 取得価格はそれらの平均に近い値になります。
もうひとつ、見落とされやすい違いがあります。 一括なら最初から全額が市場に置かれますが、 積立では入れ終わるまで、まだ入れていないお金が手元に残ります。 つまり積立は、市場に置いている期間が短くなります。
長い目で見て市場が上がるなら、置いている期間が長いほうが有利です。 この点だけを見れば、一括のほうが理屈のうえでは有利ということになります。 ただしこれは「上がるなら」という前提つきの話です。
どちらが増えるかは相場次第
違いが分かったところで、では結局どちらが得なのかを考えます。 結論を先に言うと、その問いには答えが出ません。理由を順に見ていきます。
この2つの違いは、買い終わるまでのあいだにしか効きません。 全額を入れ終わったあとは、どちらの方法で買ったかに関係なく、 同じ商品を同じだけ持っている状態になります。 違いが出るのは、その入り口の部分だけです。
だから積立の期間が短いほど、一括との差は小さくなります。 3か月に分けて入れる程度なら、結果はほとんど変わりません。 差が意味を持つのは、1年、2年と時間をかける場合です。
結果を決めるのは、これから相場がどう動くかです。 そしてそれは、事前には分かりません。
| これからの相場 | 有利なのは | 理由 |
|---|---|---|
| 上がり続ける | 一括 | 早く入れたぶん、長く値上がりに乗れる |
| 下げてから戻る | 積立 | 安い時期にも買えるので、取得価格が下がる |
| 上がってから下げる | 積立 | 高い時期に全額を入れずに済む |
| 横ばい | ほぼ同じ | どちらも大きな差にならない |
過去のデータで比べると、一括のほうが結果が良かった期間のほうが多い、 という調べ方をした結果はあります。 市場が長期的には上がってきたので、早く入れたほうが有利だったからです。
ただしこれは「過去の期間ではそうだった」という話で、 次の期間もそうなる保証はありません。 高値の直前に一括で入れれば、その後しばらく元本を割ったままになります。
積立はリスクを消さない
ここからは、積立について広く信じられている説明を検討します。 言葉の印象と、実際に起きることのあいだにずれがあります。 そのずれを埋めておかないと、あとで想定と違う動きに見えます。
ここは誤解が多いところなので、少していねいに書きます。 積立という言葉には「少しずつだから安心」という響きがありますが、 安心の根拠がどこにあるのかは、はっきりさせておいたほうがよいものです。
積立について、よくある誤解があります。 「時間を分散すればリスクが減る」という説明です。
減るのは、買うタイミングを間違える危険だけです。 買い終わったあとの値動きは、一括で買った場合とまったく同じように受けます。
10年かけて積み立てたお金も、積み立て終わったあとは まとまった1つの資産です。そこから相場が半分になれば、半分になります。 積立を選んだからといって、下落を受けないわけではありません。
もうひとつ、積立には続けられるという利点があります。 毎月の決まった額なら、家計から無理なく出せることが多く、 相場を見ながら判断する場面も減ります。 この「判断しなくてよい」という点は、金額の話とは別に価値があります。
本当に選んでいるもの
ここまでで、どちらが有利かは相場が決めること、 積立でも下落は受けることが分かりました。 では何を基準に選べばよいのか、という話に移ります。 基準は相場の側にはなく、自分の側にあります。
相場が読めない以上、どちらを選んでも結果は運に左右されます。 そこで考え方を変えて、結果ではなく自分の側から決める方法を取ります。
どちらが増えるかが事前に決まらない以上、 実際に選んでいるのは増え方ではありません。どちらの後悔なら受け入れられるかを選んでいます。
- 一括で入れた直後に下がったら、「待てばよかった」と思う
- 積立にして相場が上がり続けたら、「一度に入れればよかった」と思う
どちらの後悔も起こりえます。 自分がどちらに耐えられるかは、人によって違いますし、 それを他人が決めることはできません。
判断の材料になるのは、金額の大きさです。 その資産が過去にいちばん下げた率を、いま入れようとしている額に当てはめてみてください。 その減り方を見て「これなら待てる」と思えるなら一括でよく、 「これは無理だ」と思うなら、金額を減らすか時期を分けるかです。
自分の金額で、過去の下落を当てはめて確かめると、その額が何円まで減った時期があったかが出ます。
決め方
ここまでの内容を、実際に手を動かせる形にまとめます。 考える順番を決めておけば、迷う時間そのものが短くなります。
最後に、実際に決めるときの順番を書いておきます。 結果を予想しようとせず、自分の側の条件から決めていく形です。
迷ったときの整理のしかたを書いておきます。 どちらかが正しいという前提を捨てるところから始めます。
どちらを選んでも間違いではない、という前提に立つと、 問われるのは金額のほうだと分かります。 方法の選択で結果が大きく変わるなら、その金額が自分にとって大きすぎるのかもしれません。
- その金額を一度に入れて、半分になっても持ち続けられるか考える
- 持ち続けられるなら、一括でも積立でもよい。理屈では一括がわずかに有利
- 持ち続けられないと思うなら、金額そのものが大きすぎる可能性がある
3つ目が肝心です。積立にすれば大丈夫、という話ではありません。 最終的に同じ額が市場に置かれるなら、受ける下落も同じです。 時期を分けることは、金額を減らすことの代わりにはなりません。
なお、一括と積立のあいだを取る方法もあります。 半分をいま入れて、残りを何回かに分けるやり方です。 理屈のうえで最適というわけではありませんが、 どちらの後悔も半分ずつに抑えられるので、決めきれないときの逃げ道になります。
大事なのは、決めきれないまま何もしないでいるより、 決めた方法で入れてしまうほうが、たいていの場合はよい結果になることです。 迷っているあいだ、そのお金は預金のまま置かれています。 方法の違いより、入れるか入れないかのほうが、結果への影響は大きくなります。
