家計・ライフプラン

インフレ率2%だと、お金の価値はどうなる?

年2%が10年なら、2×10で20%——ではありません。物価は前の年に対して上がるので掛け算で積み上がり、買えるものはその逆数で減ります。実際は約18%です。

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この記事の要点

  • 年2%が10年続くと、100万円で買えるものは約82万円分になります。引き算の20%ではなく、約18%の減少です。
  • 率が1%違うだけで、30年後には大きく変わります。年1%なら74万円、年3%なら41万円です。
  • 率より期間のほうが効きます。同じ年2%でも、10年で18%減、30年で45%減です。
  • 2%は日本銀行が掲げる物価安定の目標であって、将来そうなるという予測ではありません。
  • 減る額だけでは何をすべきかは決まりません。決めるのは、そのお金をいつ使うかです。

2%は、毎年同じ額が減るのではない

年2%のインフレが10年続いたとき、100万円で買えるものは何%減るか。 2×10で20%、と考えたくなりますが、実際は約18%です。

物価は前の年の水準に対して上がるので、掛け算で積み上がります。 買えるものは、その逆数で減っていきます。

将来買えるもの = いまの金額 ÷ (1 + 物価上昇率) の年数乗

100万円 ÷ 1.02の10乗 で、約82万円です。減ったのは18万円分。 引き算で考えた20万円分より、2万円ぶん少なく済んでいます

2%は、毎年同じ金額が減るのではない毎年2万円ずつ引いた場合実際に買えるものいま15年後30年後縦軸は、いま100万円で買えるものを100としたときの量
年2%が続いた場合に、100万円で買えるものがどう減るかです。直線は「毎年2万円ずつ減る」と考えた場合、曲線は実際の計算です。短いうちはほとんど重なりますが、20年30年では離れます。実際には曲線のほうが緩やかで、引き算で見積もると減りを大きく見積もることになります。将来の物価を予測するものではありません。

短いうちは、この差はほとんど意識しなくて構いません。 5年なら引き算で10%、実際は9.5%。誤差の範囲です。 離れてくるのは20年30年になってからです。

マネック案内役):複利って増えるほうの話でよく聞くけど、減るほうにも同じように効くんだよ。 ただし減るほうは、掛け算のぶんだけ緩やかになるんだ。

5年・10年・20年・30年でどうなるか

年2%が続いたと仮定して、100万円で買えるものがどう変わるかを並べます。 比較のために、年1%と年3%も置きます。

年1%年2%年3%
5年後95.1万円90.6万円86.3万円
10年後90.5万円82.0万円74.4万円
20年後82.0万円67.3万円55.4万円
30年後74.2万円55.2万円41.2万円
率が1%違うだけで、30年後には大きく変わります。 年1%なら74万円、年3%なら41万円。同じ100万円の話です。

この表から読み取ってほしいのは、1つの率を当てることに意味がないということです。 30年先の物価上昇率を当てられる人はいません。 並べて幅を見て、どの率でも同じ結論になるかを確かめるほうが役に立ちます。

もうひとつの読み方として、買えるものが半分になるまでの年数を見る方法があります。 年1%ならおよそ70年、年2%ならおよそ35年、年3%ならおよそ23年です。 年数×率がだいたい70になる、と覚えておくと見当がつきます。

年2%で35年というのは、いま30歳の人が65歳になるころ、 という長さです。老後資金のように何十年も先まで持つお金では、 この長さが現実の期間に入ってきます。 一方で、3年後に使うお金にとっては関係のない話です。

もうひとつ、期間のほうが率より効くことも見えます。 年2%で10年なら18%減ですが、同じ2%でも30年なら45%減です。 率を1%動かすより、期間を10年動かすほうが結果は大きく変わります。

金額が変われば、割合は変わらない

100万円の表ですが、金額が変わっても減る割合は同じです。 1,000万円なら10倍、3,000万円なら30倍して読めます。 年2%で10年なら、1,000万円は820万円相当、3,000万円は2,461万円相当です。

自分の金額でそのまま見たいときは、 インフレ実質価値計算機 が早いです。金額・年数・率を動かすと、その場で変わります。

2%は目標であって、予測ではない

そもそも、なぜ「2%」がよく出てくるのか。 日本銀行が消費者物価の前年比上昇率2%を物価安定の目標として掲げているからです。

2%は目標であって、将来の予測ではない目標(日本銀行)そこを目指すという方針。達成の時期も約束ではない。予測そうなると見込むこと。誰にもできない。1つの率を当てるより、いくつか並べて幅を見るほうが判断に使えます
2%という数字は、日本銀行が掲げる物価安定の目標から来ています。目標は「そこを目指す」という意味で、「そうなる」という見通しではありません。試算の前提に置くのは構いませんが、上下に振って確かめるほうが役に立ちます。

目標は「そこを目指す」という方針であって、 「そうなる」という見通しではありません。 達成の時期も約束されていません。2%で計算した結果を「10年後の予測」として読まないのが、 この数字を扱ううえでいちばん大事なところです。

実際の物価上昇率は毎年変わります。 日本では長く0%付近が続いた時期があり、 それより高い時期も、マイナスの時期もありました。 直近の実績は 消費者物価指数のページ で見られますが、これも実績であって見通しではありません

「先月2%だったから、これから10年も2%」という考え方は、 今日の天気で10年後の天気を決めるのと同じです。 仮定として置くのは構いませんが、根拠にはなりません。 置いた仮定は仮定として明示し、上下に振って確かめてください。

ではどう置くか。実務的には、低め・中くらい・高めの3本を並べるのが扱いやすい方法です。 どの率でも結論が同じなら、率の議論は不要になります。 率によって結論が変わるなら、そこが判断の分かれ目だと分かります。

預金の金利と一緒に見る

ここまでは金利0%として計算しています。 実際には預金にも利息がつくので、目減りはこれより小さくなります。

効くのは金利と物価の差です。 金利が0.2%で物価が2%なら、差は1.8%ほど。 金利が3%で物価が2%なら、買えるものは増えます。 この関係を年率で表したものを実質金利といいます。

注意したいのは、利息には税金がかかることです。 表示金利のまま差を取ると、実際より有利な数字になります。 税引後の金利で比べてください。詳しくは預金利息にかかる税金にあります。

金利が上がったからといって、実質で得をしているとは限りません。 金利が上がる局面は物価も上がっていることが多く、 差がどうなったかは別に確かめる必要があります。 名目金利だけを見て「預金でよい」と決めると、そこを見落とします。

よくある3つの誤解

1. 「給料も上がるから大丈夫」

物価が上がる局面では、賃金も上がる傾向があります。 ただし同じだけ上がるとは限りません。 上がる時期にもずれがあり、物価が先に動いて賃金が後から追う形になりがちです。

もうひとつ、これは働いているあいだの話です。 退職後は賃金がありません。いま持っている資産の目減りは、給料では埋まりません。 老後の資金を考えるときに、この違いが効いてきます。

2. 「年金も上がるから大丈夫」

公的年金には、物価や賃金に応じて改定する仕組みがあります。 ただし、財政の調整により物価の上昇より抑えられることがあります。 上がる前提で置くのは構いませんが、 物価と同じだけ上がると置くのは楽観に寄ります。

見通しを立てるときは、年金が物価に追いつかない場合も試してみてください。 追いついても成り立ち、追いつかなくても成り立つなら、 そこは判断の分かれ目ではないと分かります。

3. 「預金が減るなら、全部投資に回すべき」

これがいちばん危ない読み替えです。 目減りの計算はいくら減るかを示すだけで、 何に移すべきかも、いつ移すべきかも示しません。

生活防衛資金や近く使うお金まで動かすと、 必要なときに必要な額がない状態になります。 目減りより、そちらのほうが大きな問題です。余裕資金の範囲を先に決めてから、 その範囲の中で考える順番になります。

「インフレだから投資」という言い方は、 結論だけが同じでも理由が飛んでいます。 その預金をいつ使うのか、生活費が混ざっていないか、 値動きを受け入れられるか。この3つを確かめてからでないと、 移すことが正しいかどうかは決まりません。

いくら減るかより、いつ使うか

ここまで減る額を計算してきましたが、その額だけでは何をすべきかは決まりません。 決めるのは、そのお金をいつ使うかです。

  • 1年以内に使う:物価より、使う日に必要な額があることが優先。動かさないのが正解
  • 生活費が含まれている:目減りを承知で現金のまま持つお金。先に残す額を決める
  • 10年以上使わない:置きっぱなしにする理由が薄い。置き場所を考える意味がある

同じ1,000万円でも、来年使うお金と30年使わないお金では答えが逆になります。 目減りの金額は用途に関係なく同じですが、 それに対して何をすべきかは用途で変わります。

マネック案内役):「2%で30年だと45%減る」って数字だけ見ると焦るけど、 その前に30年使わないお金なのかを 確かめるほうが先だよ。

そして、目減りを避けるために動かすことにも代償があります。 物価に追いつく可能性のある資産は値段が動くものが中心で、下がる年を引き受けるということでもあります。 動かないものを選べば目減りを受け入れ、動くものを選べば下落を受け入れる。 どちらもリスクを取らない選択ではありません。

自分の預金がどちらなのかは、 預金の価値、インフレで何年後にどれだけ減る? で確かめられます。金額と年数を入れると目減りが出て、 そのあと3問で、いつ使うお金かによって次にやることが変わります。

生活費が混ざっているかどうかがはっきりしないなら、先に 預金、いくら残しておけば安心? で残す額を決めてください。分けたあとの残りが、 置き場所を考える対象になります。

よくある質問

なぜ2%×10年が20%にならないのですか?
物価は前の年の水準に対して上がるため、掛け算で積み上がります。買えるものはその逆数で減るので、100万円÷1.02の10乗で約82万円。減ったのは18万円分で、引き算で考えた20万円分より少なくなります。
2%という数字はどこから来ているのですか?
日本銀行が消費者物価の前年比上昇率2%を物価安定の目標として掲げていることから来ています。目標は「そこを目指す」という方針で、「そうなる」という見通しではありません。達成の時期も約束されていません。
預金の金利を入れると、どれくらい変わりますか?
効くのは金利と物価の差です。金利0.2%・物価2%なら差は1.8%ほどで、目減りはその分だけ小さくなります。ただし利息には税金がかかり、物価の上昇にはかからないため、税引後の金利で比べてください。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては総務省統計局の家計調査のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。