通帳に記帳された利息を見て、「金利から計算した額より少ない」と思ったことはないでしょうか。 預金の利息には税金がかかり、しかも受け取る時点ですでに引かれています。
預金の利息にも税金がかかる
預金や貯金の利子は、税法では「利子所得」と呼ばれます。給与や事業の収入と同じく、 所得として課税の対象です。国内の預貯金の場合、受け取るときに税金が差し引かれ、それで納税が完結します。 この仕組みを源泉分離課税といいます。
帯の右側が税金です。銀行が計算した利息のうち、およそ2割が引かれ、 残りが口座に入ります。通帳に載っている金額は、この引かれたあとの額です。
税金はいつ引かれるのか
利息が支払われるタイミングで引かれます。普通預金なら年2回の利払い時、 定期預金なら満期時や中間の利払い時です。給与のように年末調整で精算したり、 確定申告で計算し直したりする必要はありません。
裏を返すと、確定申告で取り戻すこともできません。 源泉分離課税は、その所得だけを他と切り離して課税を完結させる仕組みだからです。 他の所得と合算して税率を下げることも、損失と相殺することもできません。
給与と比べると違いがはっきりします。給与から引かれる所得税は概算で、 年末調整や確定申告で正しい額に計算し直されます。 払いすぎていれば戻り、足りなければ追加で払います。 預金の利息にはこの精算がありません。引かれた時点で終わりです。 手続きが要らないぶん簡単ですが、調整の余地もない、ということです。
| 給与 | 預金の利息 | |
|---|---|---|
| 引かれるタイミング | 毎月の給与から | 利息を受け取るとき |
| 年末に精算するか | 年末調整で精算する | 精算しない |
| 確定申告 | できる(する場合がある) | できない |
| 他の所得と合算 | する | しない |
国内の預貯金の利子の場合です。外貨預金や国外の預金は扱いが異なります。
引かれる率と、その内訳
引かれるのは、所得税・復興特別所得税が15.315%、地方税が5%。合わせて20.315%です。 預入額や預入期間によって変わることはなく、金額の大小にもよりません。
この率は、預ける金額や期間、預金の種類によって変わりません。 普通預金でも定期預金でも、10万円でも1,000万円でも、同じ20.315%が引かれます。 給与にかかる所得税のように、金額が大きいほど率が上がる仕組みではありません。 「たくさん預けると税率が上がるのでは」という心配は要らない、ということです。
15.315%という半端な数字は、所得税15%に復興特別所得税が上乗せされているためです。 復興特別所得税は所得税額の2.1%と決まっているので、15% × 1.021 で15.315%になります。 この上乗せは令和19年分までと期限が決まっており、 それ以降は所得税15%と地方税5%の合計20%になります。
率が一定なので、税引前と税引後の関係は単純です。 税引前の利息におよそ0.8を掛ければ、手取りの目安になります。 金利を比べるときも、どちらも同じ率が引かれるので、 税引前どうしで比べても順番は変わりません。 金額そのものを知りたいときだけ、税引後にそろえれば十分です。
| 年利 | 100万円を1年預けた場合の税引前 | 手取りの利息 |
|---|---|---|
| 0.001% | 10円 | 8円 |
| 0.02% | 200円 | 159円 |
| 0.2% | 2,000円 | 1,594円 |
| 0.5% | 5,000円 | 3,984円 |
仕組みを示すための概算です。実際には付利単位や日割りの計算で端数が変わります。最新の税率は /data/deposit-interest-tax で確認できます。
なお、地方税の5%は「利子割」と呼ばれ、都道府県が課すものです。 住んでいる自治体によって率が変わることはなく、全国どこでも同じです。 住民税の均等割のように自治体ごとの上乗せがある税とは、この点が違います。
率そのものは預金利息にかかる税金のページに、出典と確認日を付けて掲載しています。制度が変わったときに更新します。
自分の利息を確かめる
自分がいくら受け取っているかは、通帳や銀行アプリの明細で確認できます。 普通預金なら、多くの銀行が年2回、決まった月に利息を入金しています。 明細には「利息」「お利息」といった名前で、入金として記録されています。
見てみると、思っていたより小さい額に驚くかもしれません。 残高100万円で年利0.2%なら、半年分の利息は税引後で800円ほどです。 これは金利が低いからで、税金のせいで極端に減っているわけではありません。引かれるのは利息の2割であって、元本には一切かからないという点は、 押さえておく価値があります。
金利そのものは、通帳の記載や銀行アプリの「金利」のページで確認できます。 普通預金の金利は銀行によって差があり、同じ銀行でも預金の種類で変わります。 ただし、その差を追いかける前に確認したいことがあります。 その口座で、年間いくら手数料を払っているかです。
金利を0.1%上げても、100万円なら増える利息は税引後で年800円ほどです。 有料のATMを月1回減らせば、年2,640円が減ります。減らすほうが、増やすより効くことが実際にあります。
手数料と比べるときは税引後で
預金について考えるとき、利息と銀行手数料を並べて見る場面があります。 このとき必ず税引後の利息で比べてください。 手数料は、税金を払ったあとの手元のお金から払っているからです。 税引前の利息と比べると、違う土俵で比べることになります。
この例では、受け取る利息が年1,594円なのに対し、 有料のATMを月2回使うだけで年5,280円が出ていきます。 金利を0.2%から0.3%に上げても、増えるのは税引後で800円ほどです。手数料を止めるほうが、金利を追うより効きます。
預金の金利を比べる前に、その口座で年間いくら手数料を払っているかを出してみてください。 手数料のほうが大きければ、先に止めるべきはそちらです。
自分の場合の金額は、銀行の手数料、1年でいくら払っている?で計算できます。預金残高を入れると、税引後の利息と並べて比べられます。 手数料をどこから減らすかは銀行手数料を減らす方法にまとめています。
なぜ申告できない仕組みなのか
利子所得だけが確定申告できないのは、対象の数があまりに多いためです。 預金口座は国内に数億単位で存在し、その一つひとつに年2回の利払いがあります。 これをすべて申告の対象にすると、受け取る側も、集計する側も、手続きだけで動かなくなります。
そこで、支払う銀行の側でまとめて差し引いて納める形が取られています。 利用者は何もしなくてよく、申告漏れも起こりません。 そのかわり、個別の事情を反映させることもできなくなりました。 所得が少ない人でも率は同じですし、他の所得の赤字と相殺することもできません。手間をなくす代わりに、調整の余地を手放している仕組みだと言えます。
同じような仕組みは、他の金融商品にもあります。 株式の配当や投資信託の分配金も、受け取るときに税金が引かれます。 ただしこちらは申告を選ぶこともでき、他の損失と相殺できる場合があります。 預貯金の利子だけが、選択の余地なく完結する扱いです。
例外と、知っておきたい点
ここまでは国内の預貯金についての話です。次の場合は扱いが変わります。
- 外貨預金 … 利子は同じ扱いですが、為替差益には別の課税が加わります
- 国外の銀行に預けた預金 … 源泉徴収されないため、確定申告が必要になる場合があります
- 法人の預金 … 個人とは扱いが異なります
- 障害者等の少額貯蓄非課税制度(マル優)… 元本350万円までの利子が非課税になります
こうした例外があるのは、利子所得の課税が「国内で支払われる利子は、 支払う側が源泉徴収する」という前提で作られているためです。 支払う側が国外にいる場合や、そもそも課税しないと決めている場合は、 この前提から外れるので別の扱いになります。
マル優が使えるのは、身体障害者手帳の交付を受けている方、 遺族年金を受け取ることができる妻である方など、要件に該当する方に限られます。 該当するかどうかと、手続きの方法は金融機関で確認してください。
税金が引かれることを気にして、利息の付く預金を避ける必要はありません。 引かれるのは受け取った利息の2割で、元本が減ることはないからです。気にすべきは、利息より大きい手数料を払っていないかのほうです。
利息にかかる税金の仕組みは、覚えることが多くありません。 率は一定で、引かれるタイミングも決まっていて、手続きも要らないからです。 知っておく意味があるのは、 金額を比べるときに土俵をそろえられるようになる、という一点です。 預金の利息、国債の利子、投資の分配金。 どれも受け取るときに税金が引かれるので、税引後で並べればそのまま比べられます。 税引前の数字と税引後の数字を混ぜて比べると、判断を誤ります。
