ATMでお金を下ろすと手数料がかかることがあります。同じ金額を下ろしているのに、 ある日は無料で、別の日は220円引かれている。その差がどこから来るのかが分かると、 どこを変えれば減らせるのかも見えてきます。
ATM手数料は、なぜかかるのか
ATMは、置いておくだけでお金がかかる設備です。機械そのものの代金に加えて、 設置場所の賃料、通信回線、現金を補充して回収する警備輸送、故障したときの保守。 利用者からは見えませんが、1台あたり年間で数百万円規模の費用がかかると言われます。
この費用を、銀行がすべて負担している場合と、利用のたびに一部を利用者が負担する場合があります。 前者が「無料のATM」、後者が「有料のATM」です。つまりATM手数料は、そのATMを維持している費用を、誰がどこまで持つかという配分の話です。
この見方をすると、料金が条件で細かく分かれている理由も分かります。 自分の銀行が置いたATMを、混みにくい平日の日中に使う人と、 他社が置いたATMを深夜に使う人とでは、銀行から見た費用が違います。 その差が、そのまま料金の差になっています。
同じ銀行でも料金が変わる理由
「うちの銀行のATM手数料は◯◯円」と一言で言えないのは、料金が枝分かれしているからです。 どのATMを使うか、いつ使うか、という順に条件をたどった先に、はじめて金額があります。
枝の数は銀行によって違います。自行のATMと提携ATMで2つに分け、 そこから平日・土日祝で分け、さらに時間帯で分ける。 これだけで1つの銀行に10通り以上の料金が並ぶことになります。 実際、主要な銀行の公式ページを見ると、ATMの種類ごとに別々の表が用意されています。
だから「自分がいくら払っているか」は、料金表を眺めるより明細を見るほうが早いのです。銀行アプリや通帳の記録には、 実際に引かれた額がそのまま残っています。
時間帯と曜日で変わる
多くの銀行が、平日の日中を無料または安い時間帯として設定しています。 区切りは銀行ごとに違い、8時45分から18時までのところもあれば、21時までのところもあります。 その前後は110円、深夜早朝は220円、というように段が付きます。
| いつ使うか | よくある扱い | 考え方 |
|---|---|---|
| 平日の日中 | 無料または最も安い | 利用が分散し、銀行の負担が小さい |
| 平日の朝夕 | 有料になることが多い | 無料の枠から外れる時間帯 |
| 土日・祝日 | 終日有料の銀行が多い | 曜日そのもので区分される |
| 深夜・早朝 | 最も高い、または使えない | 現金の補充や監視の体制が要る |
区切りの時刻と金額は銀行によって違います。利用している金融機関の公式ページで確認してください。
注意したいのは、曜日と時間帯が別々に効くことです。 「平日の日中は無料」という銀行でも、土曜日の同じ時刻は有料ということがあります。 平日という条件と、時間帯という条件の、両方を満たしてはじめて無料になります。
月末や特定の日だけ無料になる銀行もあります。給与日や引き落とし日に利用が集中するため、 その日に限って手数料を下げる設定です。自分が使っている銀行にそうした日があるかどうかは、 手数料のページで確認できます。
自行ATMと提携ATMの違い
いちばん大きく効くのが、そのATMを誰が運営しているかです。 自分の銀行が置いたATMなら、費用は銀行の中で完結します。 コンビニのATMは、セブン銀行やローソン銀行といった別の会社が運営しているため、 利用のたびに銀行からその会社へ支払いが発生します。
この支払いは利用者からは見えませんが、料金の差としては現れます。 自行ATMなら時間外でも110円のところが、コンビニATMでは平日の日中でも220円、 時間外なら330円になる、といった具合です。便利さの分だけ、費用がかかっていると考えると分かりやすくなります。
運営者の違いは、料金だけでなく「どこまで無料にできるか」にも効きます。 自行のATMなら、銀行は自分の判断で無料の時間帯を広げられます。 他社が運営するATMでは、利用のたびに支払いが発生するため、 銀行がそれを丸ごと引き受けないかぎり無料にはなりません。 優遇条件を満たしたときに「コンビニATMも月◯回まで無料」と書かれているのは、 その回数分を銀行が肩代わりしている、という意味です。
- 自行ATM … 銀行の中で完結する。無料の範囲が広い
- 提携金融機関のATM … 銀行どうしの取り決めによる。中くらい
- コンビニATM … 運営会社への支払いが発生する。高いことが多い
ただし、コンビニATMが常に損というわけではありません。 24時間、店舗数の多い場所で使えることには相応の価値があります。 自行のATMを探して遠回りするより、220円払って近くで済ませるほうが合理的な場面もあります。 判断するために必要なのは、その220円が年間でいくらになるかを知っておくことです。
無料回数と優遇条件
多くの銀行が、一定の条件を満たした人に無料回数を付けています。 条件としてよく使われるのは、給与や年金をその口座で受け取っていること、 一定の残高があること、紙の通帳ではなくアプリを使っていること、 その銀行のカードやサービスを利用していること、などです。
ここが、多くの人にとっていちばん減らせる余地のあるところです。 条件を満たしているのに設定をしていない、あるいは条件があること自体を知らない、 という状態は珍しくありません。銀行アプリの「手数料」「優遇」「ステージ」といったページで、 いまの自分がどの扱いになっているかを確認できます。
条件は毎月判定される銀行が多く、先月は無料だったのに今月は有料、ということが起こります。 給与の受け取りが1か月ずれた、残高が判定日にたまたま下回っていた、 といった理由で扱いが変わるためです。手数料が急に増えたと感じたら、 回数が増えたのか、条件から外れたのかを分けて考えると原因にたどり着けます。
条件を満たすために新しい支出をするのは避けてください。 使う予定のないカードを作る、必要のない残高を移す、有料のサービスを契約する。 こうした行動は、減らせる手数料より大きな負担になることがあります。すでにやっていることで条件を満たせるかを先に確認するのが順番です。
明細で自分の額を確かめる
料金表を読み解くより、明細を見るほうが確実です。 銀行アプリの入出金明細には、引き出した金額とは別の行に手数料が記録されています。 「ATM手数料」「ATM利用手数料」「時間外手数料」といった名前で並んでいます。
見るときのこつは、直近1か月ではなく3か月分をまとめて眺めることです。 月によって使い方に波があるためで、たまたま出張の多かった月だけを見ると、 実際より多く見積もることになります。逆に、月末にまとめて下ろした月だけを見れば、 少なく見積もります。3か月分を数えて4倍すれば、年間のおおよその負担が出ます。
もう一つ確認したいのが、有料だった回の時間帯です。 明細には取引の日時も残っているので、その回が本当に時間をずらせなかったのかを後から検証できます。 仕事の帰りに寄っただけで、休日の昼に済ませられたはずの回が混じっていることがあります。 こうした回は、生活を変えずに減らせる候補です。
明細に手数料の行が見当たらない場合は、引かれていない可能性があります。 無料の範囲だけで使えているということなので、この記事の内容は当てはまりません。 その場合は預金の置き方そのものを見るほうが効きます。
1年でいくらになるか
1回110円や220円という額は、その場では小さく感じます。 問題は、それが毎月続くことです。回数と単価を掛けて12倍すると、年間の負担が出ます。
月2回・1回220円なら年5,280円、10年で52,800円です。 預金100万円を年利0.2%で置いたときに受け取る利息は、税引後でおよそ1,594円ですから、利息の3倍以上が手数料で出ていっていることになります。 金利の高い預金を探す前に、こちらを止めるほうが早い、という状況が実際に起こります。
自分の場合にいくらになるかは、銀行の手数料、1年でいくら払っている?で計算できます。有料で使っている回数と1回あたりの手数料を入れるだけです。
減らすときに気をつけること
手数料を減らすこと自体が目的になると、かえって不便になります。 まとめて下ろせば回数は減りますが、多額の現金を持ち歩くリスクが増えます。 無料のATMを探して遠回りすれば、時間という別の費用がかかります。
減らす順番は、失うものが少ないものからです。時間帯を変えられる回だけ移す、 使えていない無料回数を使う、といった手順は何も失いません。 それでも残る分は、便利さに払っている費用として受け入れる、という判断もあります。
振込の手数料も同じ構造で分かれています。そちらは振込手数料の記事で整理しています。両方を合わせた年間の金額を出してから、 どこを直すかを決めるのが遠回りに見えていちばん早い順番です。
