同じ相手に同じ金額を振り込んでも、手数料は毎回同じとは限りません。 アプリからか、ATMからか、窓口からか。同じ銀行あてか、他行あてか。 振込手数料は、この組み合わせで決まります。
振込手数料とは何に対する料金か
振込は、口座から口座へお金を移す手続きです。同じ銀行の中で完結する場合は、 その銀行のシステムの中で数字を書き換えるだけで済みます。 ところが銀行をまたぐ場合は、銀行どうしをつなぐ仕組みを通ることになります。
日本ではこの仕組みを全銀システムと呼び、参加している金融機関が共同で運営しています。 利用のたびに費用が発生し、その一部が利用者の手数料に含まれます。振込手数料は「送る」という行為への料金ではなく、どの経路を通ったかへの料金だと考えると、 料金が細かく分かれている理由が見えてきます。
もう一つ含まれているのが、手続きにかかる人と設備の費用です。 窓口で用紙に記入して渡す場合は、それを受け取って確認して入力する人が要ります。 ATMなら機械の費用がかかり、アプリなら利用者自身が入力するので、そのどちらも要りません。
同じ銀行あてと、他行あて
最初に効くのが、送り先が同じ銀行かどうかです。 同じ銀行あては銀行の中で完結するため、アプリからなら無料にしている銀行が多くあります。 他行あては銀行間の仕組みを通るため、無料にはなりにくく、 アプリからでも150円前後の設定が一般的です。
ただし「同じ銀行あてだから無料」と覚えると外します。 窓口からの振込は、同じ銀行あてでも有料の銀行がありますし、 現金で振り込む場合はさらに高くなります。 送り先だけでは決まらず、どこから振り込むかとの組み合わせで決まります。
アプリ・ATM・窓口で違う
手続きに人の手が入るほど高くなる、という順番になっています。 多くの銀行で、アプリ・ネットバンキングがいちばん安く、次にATM、窓口がいちばん高い設定です。 同じ他行あて・同じ金額でも、窓口はアプリの3倍から4倍になることがあります。
この順番は、銀行が意地悪をしているわけではありません。 窓口での振込は、受け付ける人、内容を確認する人、システムに入力する人の時間がかかります。 ATMは人こそ要りませんが、機械の設置と保守、現金を扱う場合はその管理も必要です。 アプリからの振込は、利用者自身が画面で入力して確定するため、 銀行側の作業がほとんど発生しません。かかっている費用の差が、そのまま料金の差になっています。
| どこから | よくある水準 | なぜその水準か |
|---|---|---|
| アプリ・ネットバンキング | 最も安い。同行あては無料が多い | 利用者が入力し、機械も人も要らない |
| ATM(キャッシュカード) | 中くらい | 機械の設置・保守の費用がかかる |
| ATM(現金) | 高い | 現金の取り扱いが加わる |
| 窓口(口座から) | 高い | 人が受け付けて確認する |
| 窓口(現金) | 最も高い | 人の対応と現金の取り扱いの両方 |
実際の金額は金融機関によって違います。同じ銀行でも口座の種類やサービスの契約で変わることがあります。
ここが、振込手数料でいちばん減らせる余地のあるところです。振込の回数を減らさなくても、方法を変えるだけで下がるからです。 必要な支払いを止める必要はありません。窓口やATMで済ませている振込のうち、 アプリに移せるものがないかを見るだけで、年間の負担が変わります。
ATMから振り込む場合は、振込手数料とは別にATMの利用手数料がかかることがあります。 明細に2行に分かれて記録されるため、片方だけを見て「安い」と判断しないよう注意してください。 ATMの利用手数料についてはATM手数料の記事で整理しています。
金額でも変わる
振込金額そのものでも料金が変わります。3万円を境に分ける銀行が多く、 ゆうちょ銀行のように5万円で分ける金融機関もあります。 境目を1円でも超えると上の料金になるため、29,999円と30,000円で手数料が違うということが起こります。
境目が3万円なのか5万円なのかは金融機関によって違い、 同じ金融機関でもチャネルによって分かれ方が変わることがあります。 自分がよく使う金額が、どちらの側に入るのかを一度確認しておくと、 毎月の振込で無意識に高いほうを選び続ける状態を避けられます。
この仕組みを知っていると、判断が変わる場面があります。 たとえば3万円をわずかに超える振込を毎月しているなら、 金額の内訳を見直せるかどうかを考える価値があります。 ただし、無理に金額を下げて回数を増やすと、かえって合計が増えることもあります。 回数と単価の両方で計算してから決めてください。
無料回数がある場合
給与の受け取りや残高、カードの利用といった条件で、 他行あての振込を月に数回まで無料にする銀行があります。 この場合、有料になるのは無料回数を超えた分だけです。
自分が何回まで無料なのかを把握していないと、 「振込は毎回お金がかかる」と思い込んで窓口を避けたり、 逆に無料枠を使い切ったあとも同じ感覚で振り込み続けたりします。回数の上限を知っているかどうかが、そのまま負担の差になります。
無料回数は、月ごとにリセットされるのが一般的です。 月に3回まで無料の口座で、月末に4回目の振込をすると、その回だけ有料になります。 翌月に回せる支払いであれば、月をまたぐだけで済むこともあります。 もっとも、支払期日のある振込を遅らせるのは本末転倒なので、 あくまで時期を選べるものに限った話です。
無料回数を増やすために、使う予定のないサービスを契約するのは避けてください。 月に1〜2回の振込のために年会費のかかるカードを作ると、 減らせる手数料より負担のほうが大きくなります。
振込以外の方法もある
お金を送る方法は、銀行振込だけではありません。 相手や金額によっては、別の手段のほうが安く済むことがあります。
同じ銀行に口座を持っている相手なら、同行あての振込にすれば安くなります。 相手にその銀行の口座があるかどうかを一度確認するだけで、 毎月の振込が無料になることもあります。家族への仕送りのように、 相手と相談できる送金では検討する価値があります。
少額でよく送る相手がいる場合は、送金アプリという選択肢もあります。 ただし、受け取る側もそのアプリを使っている必要があり、 出金するときに手数料がかかる場合もあります。受け取る側の手間と費用まで含めて比べないと、 自分の手数料を相手に付け替えただけになります。
逆に、避けたほうがよいのは現金書留のような手段です。 銀行振込より高くつくことが多く、届くまでの日数もかかります。 相手の口座が分からない、といった事情がないかぎり、 振込のほうが安全で早いのが一般的です。
いずれの方法でも、まず出すべきはいまの振込方法で年間いくら払っているかという数字です。 その額が分かってはじめて、別の手段に切り替える手間が見合うかを判断できます。
年間コストにするといくらか
振込手数料も、1回ごとに見ると小さな額です。年単位にすると印象が変わります。
月1回・1回220円なら年2,640円、月2回なら年5,280円です。 窓口で振り込んでいて1回660円なら、月1回でも年7,920円になります。 同じ振込をアプリに移して1回165円になれば、年1,980円まで下がります。振込をやめずに、年間で6,000円近く変わるという計算です。
まず年間いくら払っているかを出し、そのうち方法を変えれば下がる分がどれだけあるかを見ます。 金額が分かってから、手間に見合うかを判断すれば十分です。
自分の場合の金額は、銀行の手数料、1年でいくら払っている?で計算できます。ATMと振込を合わせた年間の負担が出ます。
振込の手数料は、いちど設定してしまえばそのあとは意識しないまま続きます。 家賃の支払いを窓口で始めた人が、10年後も同じ方法で続けている、 ということが実際に起こります。1回660円なら10年で79,200円です。 最初に方法を決めるときだけ少し考えると、そのあとの負担が変わります。
