消費者物価指数とは
家計が買っている財やサービスの値段を集めて、全体としてどれだけ動いたかを1つの数字にしたものです。 総務省統計局が毎月公表しています。英語の頭文字をとってCPIとも呼ばれます。
大事なのは、「物価」という単一のものがどこかにあるわけではない、という点です。 米も家賃も電気代もスマートフォンの通信料も、それぞれ別に動きます。 それを、家計がどれだけ支出しているかに応じた重みを付けて平均したものが、 消費者物価指数です。
重みが付いているのが要点です。支出の大きい費目が大きく動けば全体も動き、 支出の小さい費目が大きく動いても全体はあまり動きません。値上がりのニュースになった品目と、指数の動きが一致しないのは、 そのためです。
指数と前年比は別のもの
消費者物価指数には、性質の違う2つの数字があります。指数そのものと、前年に対する上昇率です。 報道で「物価が◯%上がった」と言うときは、たいてい後者を指しています。
| 指数そのもの | 前年同月比 | |
|---|---|---|
| 何を表すか | 基準年を100としたときの水準 | 1年前と比べた上昇率 |
| 単位 | 指数(100が基準) | % |
| 下がるとき | 値段が実際に下がった | 上がる勢いが弱まった、または下がった |
| よく使う場面 | 水準の比較、実質値への換算 | 「インフレ率」として語るとき |
ここでよく起きる読み違いがあります。前年比が下がっても、値段が下がったとは限らないことです。
値段が実際に下がったといえるのは、指数そのものが前より低くなったときだけです。 前年比がマイナスになれば指数も下がっています。 プラスであるかぎり、幅がどれだけ小さくなっても、値段は上がり続けています。
ToMiが持っているのは前年同月比のほうです。基準年が変わると指数の数字は 飛びますが、前年同月比は基準改定をまたいでも意味が変わらないためです。
総合・生鮮食品を除く・エネルギーも除く
公表されているのは1本ではありません。よく使われるのは3つです。
- 総合:対象のすべてを含めたもの。家計の実感にいちばん近い
- 生鮮食品を除く総合:天候で振れる野菜・魚などを外したもの。コアCPIと呼ばれる
- 生鮮食品及びエネルギーを除く総合:原油と為替で振れる電気・ガス・燃料も外したもの
なぜ分けるのかというと、一時的な振れと、続きそうな動きを見分けるためです。 台風で野菜が高くなった月と、賃金や家賃が上がって全体が押し上げられている月とでは、 同じ「物価上昇」でも意味が違います。
3つを並べると、その違いが見えます。総合だけが高ければ、 生鮮食品やエネルギーが押し上げている可能性があります。 3本ともそろって高ければ、幅広く上がっていることになります。
外している品目に意味がないわけではありません。 野菜が高い月は、家計の負担としては確かに重くなります。 外すのは、それが来年も続くとは限らないからです。 天候が戻れば値段も戻ります。原油や為替も同じで、 上がった分がそのまま定着するとは限りません。
逆に言えば、生鮮食品もエネルギーも除いた指数が上がっているときは、 一時的な要因では説明できない上がり方をしていることになります。 その状態が続くかどうかは別の話ですが、振れではない部分が動いていることは分かります。
ToMiの 消費者物価指数のページ では、この3本を同じ画面に並べています。 出どころは総務省統計局で、基準月と取得日を添えています。
基準年と、基準改定で起きること
指数は「基準年を100」として作られます。基準年は5年ごとに見直され、 そのときに品目の構成と重みも入れ替わります。これを基準改定といいます。
入れ替えるのは、家計が買うものが変わるからです。 固定電話の支出が減り、通信料の支出が増える。 そうした変化を反映しないと、いまの家計を表さない指数になります。
改定のときに気をつけること
- 指数の数字そのものは、基準が変わると連続しません。古い基準の数字と直接は比べられません
- 前年同月比は、基準をまたいでも意味が変わりません。長い期間を見るときはこちらが使いやすい
- 過去にさかのぼって数字が改定されることがあります。「前に見た数字と違う」は起こりえます
自分の生活費と一致しない理由
消費者物価指数は平均的な家計の物価変動を表します。 自分の生活費の上がり方とは、まず一致しません。理由は単純で、 買っているものの構成が人によって違うからです。
| 条件 | 指数との差が出やすいところ |
|---|---|
| 持ち家か賃貸か | 住居費の扱いが大きく違う |
| 車を持っているか | 燃料・保険・維持費の影響 |
| 子どもがいるか | 教育費・食費の比重 |
| 外食が多いか | 食料の中でも動き方が違う |
| 都市部か地方か | 家賃と交通費の水準 |
いちばん差が出るのは住居費です。 持ち家で住宅ローンを完済していれば、家賃の上昇は関係ありません。 賃貸なら、更新のたびに直撃します。 同じ地域に住む同じ収入の2人でも、物価上昇の受け方はまったく違います。
子どもの有無も大きく効きます。 教育費が家計に占める割合は時期によって跳ね上がり、 その時期に教育関係の値段が動けば、指数の何倍も影響を受けます。 逆に、その支出がない家計にはまったく効きません。
だから「自分にとってのインフレ率」は、指数とは別に考えることになります。 正確に出すのは大変ですが、去年と今年の家計の合計を比べるだけでも見当はつきます。 同じ暮らしをしていて支出が5%増えていたなら、 その人にとっての物価上昇はそれに近い値です。
もっとも、資産の置き場所を考えるときに必要なのは、 小数点以下まで合った数字ではありません。桁が合っていれば足ります。 年0%なのか、年2%なのか、年5%なのか。この区別がつけば判断は変わります。
いつ、どこで公表されるか
消費者物価指数は月に1回、総務省統計局から公表されます。 公表されるのは前の月の分で、 いま見られるいちばん新しい数字は1か月前後さかのぼったものになります。
公表には順番があります。先に東京都区部の速報が出て、 そのあとに全国の結果が出ます。 東京都区部のほうが早いぶん、報道では先にこちらが取り上げられます。
| 東京都区部 | 全国 | |
|---|---|---|
| 公表の早さ | 早い(当月分が月末に出る) | 遅い(前月分が翌月に出る) |
| 対象 | 東京都区部のみ | 全国 |
| 水準 | 全国とは異なる | — |
| 家計の話に使うなら | 速報として | こちらを基準に |
資産の話に使うなら全国のほうです。 速さより、自分の暮らしに近いほうを取ります。 東京都区部の数字を「日本の物価」として読むと、水準がずれます。
数字が変わることがある
一度公表された数字が、あとから改定されることがあります。 季節による変動を調整した数値や、基準改定にともなう遡及の見直しなどです。「前に見た数字と違う」は起こりえます。
だから、どこかに書き写して置いておくより、 必要なときに出どころから取るほうが確実です。 ToMiの 消費者物価指数のページ が基準月と取得日を必ず添えているのは、 いつ時点の数字なのかが分からないと使えないためです。
資産の話でどう使うか
資産管理で消費者物価指数を使う場面は、大きく2つです。
- いまの状況を知る:預金の金利と並べて、実質金利がプラスかマイナスかを見る
- 先を試算する仮定に使う:将来の見通しを立てるときの前提として、 いくつかの率を置いて幅を見る
2つ目で、いちばんやってはいけないのが直近の前年比をそのまま将来の前提に据えることです。 先月の数字は実績であって、見通しではありません。 10年後まで同じ率が続く根拠にはなりません。
代わりに、いくつかの率を並べて幅を見ます。 年1%だったら、2%だったら、3%だったら。 この3本を並べると、率を1つ当てなくても判断できます。 「どの率でも結論が同じ」なら、率の議論をする必要がありません。
自分の金額で見るなら、 預金の価値、インフレで何年後にどれだけ減る? が使えます。1%・2%・3%を同じ表に並べているので、 率を選ばなくても幅が分かります。
金額だけを手早く動かしたいなら、 インフレ実質価値計算機 のほうが早いです。金額・年数・率の3つを動かすだけで、 いまの物価に直した価値がその場で変わります。
最後に、指数を見るときの姿勢を一つ。 消費者物価指数は過去に起きたことの記録です。 これから何が起きるかは書いてありません。 記録として正確に読み、見通しは別に立てる。この線を引いておくと、 数字に振り回されずに済みます。

