預金・生活防衛資金

預金が多すぎるとどうなる?元本が減らないことと、価値が減らないことの違い

預金は元本が減りません。ただ、金額が変わらないことと、その金額で買えるものが変わらないことは別の話です。使う予定のないお金ほど、この差が積み上がります。

読了めやす6分更新11回読まれています

この記事の要点

  • 預金は元本が減りませんが、物価が上がった年は同じ金額で買えるものが減ります。
  • この目減りは明細に出ません。損をした実感がないまま進むのが、預金だけを持つことの難しさです。
  • 預金保険で保護されるのは、1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までです。
  • 備えを厚くしても、安心は比例して増えません。必要額を超えた分は、目的を決めたほうが働きます。
  • 「預金が多すぎる」は、全額を投資に回すべきという意味ではありません。順番の話です。

元本が減らないことと、価値が減らないこと

預金は元本が減りません。100万円を預ければ、来年も100万円あります。 ただしこれは金額が変わらないという意味であって、その金額で買えるものが変わらないという意味ではありません。

物価が上がった年を考えます。去年100万円で買えたものが、 今年は103万円になっていたとします。預金の100万円は減っていませんが、 同じものが買えなくなっています。この差が、実質的な目減りです。

実質的な増減 = 預金の金利 − 物価の上昇率
預金の金額は変わらないが、物価が上がると同じ金額で買えるものは減る通帳の残高その金額で買えるもの10年でこれだけ開くいま10年後実質的な増減 = 預金の金利 − 物価の上昇率
金利0.2%、物価3%が続いた場合の例です。預金の残高はほぼ横ばいですが、その金額で買えるものは毎年減り、差は年を追うごとに開きます。明細には出てこないため、損をした実感がないまま進みます。将来の物価や金利を予測するものではありません。
この引き算は目安です。厳密には割り算で、 率が大きくなるほど引き算のほうが不利な数字を出します。 桁を知りたいだけならこれで足ります。 正しい式と使いどころは実質金利とは?にあります。

普通預金の金利が年0.2%、物価の上昇が年3%なら、差し引き2.8%のマイナスです。 金額は0.2%増えていますが、買えるものは2.8%減っています。

注意しておきたいのは、これは毎年必ず起きることではないという点です。 物価がほとんど動かない年もあれば、下がる年もあります。 預金の金利のほうが高い時期には、逆に買えるものが増えます。 ここで言えるのは「必ず損をする」ということではなく、金額を見ているだけでは判断できないということです。

物価の動きは、総務省統計局が消費者物価指数として毎月公表しています。 自分の生活実感と一致しないこともありますが、 預金の金利と並べて見る数字としては、これが基準になります。

マネック(案内役):「元本保証」って言葉、金額の保証であって 価値の保証じゃないんだ。ここが分かれ目だよ。

目減りが明細に出ない

投資信託なら、値下がりすれば評価額が下がって画面に出ます。 痛みが見えるので、対処するかどうかを考えます。

預金の目減りは、どこにも表示されません。 残高は増えこそすれ減らないので、損をしている実感がないまま進みます。 これが、預金だけを持つことの難しさです。判断のきっかけが来ません。

預金値動きのある商品
元本減らない減ることがある
買えるものの量物価次第で減る物価次第で減る/増える
減ったことが見えるか見えない見える
いつ使えるかその日売却してから

この表で言いたいのは、預金が悪いということではありません。すぐ使えることは預金にしかない性質で、生活防衛資金や近い将来使うお金は、この性質のためにこそ預金に置きます。

問題になるのは、使う予定のないお金まで預金に置いているときです。 10年使わないお金に、その日引き出せる性質は要りません。 その性質のために、目減りを受け入れていることになります。

「見えない」ことのもうひとつの影響は、比べる相手がいなくなることです。 投資信託を持っていれば、指数と比べて良かったか悪かったかを考えます。 預金だけを持っていると、比べる相手が去年の自分の残高しかありません。 残高が増えていれば前進しているように見えますが、 その間に物価がどう動いたかは、意識して調べないかぎり視界に入りません。

「多すぎる」とはどの状態か

金額では決まりません。1,000万円が多すぎる人もいれば、足りない人もいます。 基準になるのは、備えとして必要な額をどれだけ超えているかです。

生活防衛資金と、近い将来に使うと決まっている支出を引いて、 それでもなお大きく残るなら、その分は目的の決まっていないお金です。

ToMiの診断では、もっとも厚い12か月分を残してもなお同額以上が残る場合に 「現金過多型」と判定しています。 月の必須支出が25万円なら、12か月分は300万円。 それを引いて300万円以上が残る、つまり預金600万円以上がこの状態にあたります。

この線引きに公的な根拠はありません。ToMiの編集判断です。 「12か月分の2倍」を境目にしているのは、 もっとも慎重に見た備えの倍を持っているなら、 少なくとも一度は使い道を考える価値がある、という意味合いです。

注意したいのは、目的が決まっていれば「多すぎる」にはならないということです。 3年後に住宅を買うために貯めている1,000万円は、 目的の決まったお金です。値動きのある商品に移すべき性質のものではありません。

逆に言えば、「多すぎる」という判定が出たときにまずやることは、 投資先を探すことではなく目的を思い出すことです。 子どもの進学費用、住み替え、車の買い替え、親の介護。 金額と時期を書き出してみると、余っていると思っていた分の多くに すでに行き先があった、ということは珍しくありません。

書き出したうえで、それでも行き先のない分が残る。 そのときにはじめて、置き場所を検討する段階になります。

預金保険で守られる範囲

預金が大きくなると、もうひとつ確認しておくことがあります。 預金保険制度で保護されるのは、1金融機関あたり預金者1人につき元本1,000万円までとその利息です。

  • 普通預金・定期預金などは、合算して1金融機関あたり1,000万円までが保護対象
  • 決済用預金(無利息・要求払い・決済サービスを提供できる預金)は全額保護
  • 1,000万円を超える分は、金融機関が破綻した場合の状況に応じて支払われる
  • 同じ金融機関の複数の支店に分けても、合算されるため意味はない
1金融機関に置いた額のうち、保護されるのは元本1,000万円までA銀行に1,500万円を置いた場合1,000万円 保護される500万円 あふれる1金融機関あたりの枠2行に分けると、枠が2つ立つA銀行 1,000万円B銀行 500万円
複数の支店に分けても合算されるため、枠は広がりません。金融機関そのものを分けると、枠がそれぞれに立ちます。決済用預金は全額が保護の対象です。金額は説明のための例です。

対応は単純で、金融機関を分けることです。 1,500万円を1行に置くより、2行に分けたほうが保護の範囲に収まります。 手続きは口座を作って移すだけで、費用もかかりません。

分ける手間を減らしたい場合は、超えた分の置き場所を変えるという方法もあります。個人向け国債は預金保険の対象ではありませんが、 発行しているのが国であるため、金融機関の破綻とは切り離されます。 証券会社が破綻しても、預けている国債は分別管理されており、投資者保護基金による補償の対象にもなっています。

この保護は金融機関の破綻に備えるものであって、 物価の上昇による目減りを防ぐものではありません。 1,000万円以内に収めても、使う予定のないお金であれば、 買えるものが減っていく状況は変わりません。

全額を投資に回すという話ではない

「預金が多すぎる」と聞くと、投資を勧められていると受け取られがちですが、この記事はそういう話ではありません。順番の話です。

先に生活防衛資金を確保し、次に近い将来使うと決まっている支出を分けます。 その残りが、動かしてよい上限です。 上限が分かってから、置き場所を考える順番になります。

置き場所は投資だけではない

  • 金利の高い預金に移す:手続きが軽く、元本も減りません。まずここから検討できます
  • 個人向け国債:満期前に換金しても国が額面で買い取ります。ただし発行から1年間は換金できません
  • 借入の繰上げ返済:借入があるなら、預金の金利より借入の年率のほうがはるかに高いのが普通です
  • 値動きのある商品:長く使わないお金なら選択肢に入りますが、必ず余裕資金の範囲で
マネック(案内役):借入があるなら、そっちが先だよ。預金の金利を0.1%上げるより、15%の借入を減らすほうが金額としてはずっと効くからね。

どの置き場所がいくら効くかは、金額と条件で変わります。 預金を国債にしたら、 住宅ローンを繰上げ返済したら は、それぞれ金額を入れて比べられます。

超えた分をどうするか

手順としては3つです。順番を入れ替えないことだけが条件になります。

  • 上限を出す:預金額・月の必須支出・1年以内の支出から、動かしてよい額を計算します
  • 全額を動かすと決めない:上限の半分から始める、いくつかに分ける、で構いません
  • 置き場所を比べる:借入があるなら返済、なければ預金の金利や国債から

最初の上限は 生活防衛資金の診断 で出せます。 預金額と月の必須支出を入れるだけで、3・6・12か月分それぞれの余裕資金が出ます。 置き場所を比べる段階に進むのは、この上限が出てからで間に合います。

最後に、増やすことだけが答えではない点を書いておきます。 預金が厚いことには、選択肢が広いという価値があります。 仕事を変えるとき、住む場所を変えるとき、家族の状況が変わったとき。 そのときに動けるかどうかは、手元にいくらあるかで決まります。

目減りを気にして、必要な備えまで動かしてしまうのは本末転倒です。 この記事が言っているのは、備えを超えた分については一度考える価値がある、 というところまでです。

考えた結果、預金のままにするという結論でも構いません。 値動きのある商品を持つと、下がった時期に落ち着いていられるかどうかという別の負担が生まれます。 そこに耐えられないと分かっているなら、金利の高い預金に移すだけでも十分な選択です。自分が続けられる方法かどうかは、期待できる利回りと同じくらい重要な条件になります。

決めたら、その理由を一行でも残しておくことをおすすめします。 「1年以内に使う予定がないので、300万円を国債にした」と書いておけば、 次に見直すときに、前回の自分が何を前提にしていたかが分かります。 金額だけが残っていると、そこから先の判断がまた最初からになります。

よくある質問

預金は元本保証なのに、なぜ目減りするのですか?
元本保証は「金額が減らない」という意味で、「価値が減らない」という意味ではありません。物価が上がると、同じ金額で買えるものが減ります。預金の金利が物価の上昇に追いつかない年は、実質的に目減りします。
預金はいくらまで保護されますか?
預金保険制度により、1金融機関あたり預金者1人につき元本1,000万円までと、その利息が保護されます。これを超える分は、金融機関が破綻した場合の状況に応じて支払われます。決済用預金は全額保護の対象です。
預金が多いと分かったら、すぐ投資を始めるべきですか?
先に生活防衛資金と、近い将来に使うと決まっている支出を確保してください。その残りが、動かしてよい上限です。上限が分かってから、置き場所を検討する順番になります。

参照した一次情報

あわせて読みたい

この記事は考え方を説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては総務省統計局の家計調査のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。