預金・生活防衛資金

生活防衛資金とは?何か月分を、どこに置いておくか

「生活費の6か月分」という言い方をよく見かけます。ただ、この数字に公的な裏づけはありません。何か月分が必要かは、収入が止まったときに立て直すまでの時間で決まります。

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この記事の要点

  • 生活防衛資金は、収入が止まっても暮らしを変えずにいられる期間を買うためのお金です。
  • 金額ではなく「月の必須支出の何か月分」で数えます。必要額は支出の大きさで決まるためです。
  • 「6か月分」に公的な基準はありません。働き方・収入源の数・扶養家族で変わります。
  • 必須支出には、収入が止まっても払い続ける支出だけを入れます。娯楽費まで含めると必要額が過大になります。
  • 置き場所は、利回りではなく引き出しやすさで選びます。値動きのある商品には置きません。

生活防衛資金とは

収入が止まっても、暮らしを変えずにいられる期間を買うためのお金です。 病気やけがで働けなくなったとき、勤め先が変わるとき、 事業の入金が遅れたとき。そういう時期に、生活のしかたを急いで変えずに済ませるために手元に置いておきます。

貯蓄と混ざりやすい言葉ですが、目的が違います。 旅行や家電の買い替えのために貯めているお金は、使うことが目的です。 生活防衛資金は使わないことが目的で、収入が止まったときにだけ取り崩します。 同じ口座に入っていても、頭の中では分けておく必要があります。

このお金があると、判断の質が変わります。 手元にお金がない状態で仕事を探すと、条件を選べません。 値下がりしている投資信託を売らざるを得ない場面も出てきます。 生活防衛資金は、不利な条件で決めなくて済む時間を確保するためのものです。

マネック案内役):「増やすためのお金」じゃないんだ。だから利回りで選ばないし、減らないことすぐ出せることだけで置き場所を決めるよ。

なぜ「何か月分」で数えるのか

「200万円あれば安心」という言い方をしないのは、必要な額が人によって違うからです。 月に15万円で暮らしている人と、40万円かかる人では、 同じ200万円が持ちこたえる期間がまったく違います。

生活防衛資金 = 月の必須支出 × 残す月数

金額ではなく期間で数えると、この違いが吸収されます。 「6か月分」と言えば、支出の大きい人には大きい額、小さい人には小さい額を指すことになります。

月の必須支出3か月分6か月分12か月分
15万円45万円90万円180万円
20万円60万円120万円240万円
30万円90万円180万円360万円

必須支出が変われば、必要額もそのまま比例して変わります。

残す月数を長くすると、必要な生活防衛資金はそのまま比例して増える月の必須支出 20万円のとき3か月分60万円6か月分120万円12か月分240万円必須支出を下げると、どの月数でも必要額が下がります
月の必須支出20万円の場合の例です。何か月分が正しいかに公的な基準はなく、収入が止まってから立て直すまでの見込みで決まります。厚くするほど安心は増えますが、そのぶん動かせるお金は減ります。

この表から分かるのは、必須支出を下げると必要な防衛資金も下がるということです。 固定費を月2万円削れば、6か月分の目標は12万円下がります。 積むのが大変に感じるときは、目標額を追いかける前に支出側を見直すほうが早いことがあります。

もうひとつ、期間で数えることには利点があります。 年数が経って生活が変わっても、考え方をそのまま使い続けられることです。 「200万円あればいい」と金額で覚えてしまうと、 家賃が上がったときや家族が増えたときに、その数字が合っているのかどうか分かりません。 月数で覚えておけば、必須支出を出し直すだけで必要額が更新されます。

必須支出に何を入れるか

入れるのは、収入が止まっても払い続ける支出だけです。 いま使っている金額をそのまま入れると、必要額が実態より大きく出ます。

入れる入れない
家賃・住宅ローン旅行・レジャー
食費(自炊の範囲)外食・飲み会
水道光熱費こづかい
通信費趣味・サブスクの一部
保険料被服費のうち買い替え以外
医療費・薬代贈答・交際費
子どもの学費・保育料習い事のうち止められるもの

境目は「収入がゼロになった月にも払うか」です。迷うものは入れておくと安全側になります。

毎月の支出は、収入が止まっても払い続ける分と、止められる分に分かれるいま使っている額(例:月28万円)止められない(例:月20万円)止められる家賃・食費・光熱費通信費・保険料・学費旅行・外食交際費・こづかい生活防衛資金 = この左側 × 残す月数
生活防衛資金の計算に使うのは、左側の「止められない支出」だけです。右側まで含めて計算すると、必要額が実態より大きく出ます。金額は説明のための例で、実際の割合は世帯によって変わります。
総務省統計局の家計調査で公表されている「消費支出」は、 娯楽費や交際費を含んだ合計です。そのまま必須支出として使うと、 必要な生活防衛資金が過大になります。目安として使う場合は、 止められる支出を差し引いてください。

正確に出すには、通帳や口座アプリの引き落とし履歴を1か月分見るのがいちばん早い方法です。 家賃・光熱費・通信費・保険料は、そこにそのまま並んでいます。 食費だけはカード明細と現金に散らばりますが、月の合計をおおまかに足せば足ります。

ボーナス払いや年払いの支出(自動車税、保険の年払いなど)がある場合は、 12で割って月あたりに直して足してください。年に一度だけ来る支出は忘れやすく、 そこで防衛資金を取り崩すことになりがちです。

月ごとに数字が動く支出は、多い月に合わせるのが安全です。 光熱費は夏と冬で倍近く変わることがあります。 平均で計算しておいて、いざ取り崩す時期が冬だった、というのはよくある外し方です。

3か月・6か月・12か月、どれを選ぶか

「6か月分」という数字をよく見かけますが、これに公的な基準はありません。 法律で決まっているわけでも、官庁が推奨しているわけでもありません。 必要な期間は、収入が止まってから次の収入が入るまでの見込みで決まります。

判断の軸は「収入が止まったあと、立て直すまでにどれくらいかかりそうか」の一点です。 ここが長く見える条件がそろっているほど、厚めに持ちます。

厚めに見たほうがよい条件

  • 自営業・フリーランス:会社員が受けられる傷病手当金や失業給付にあたる制度がありません。働けない期間の収入の落ち込みを、自分の資金で埋めることになります
  • 世帯の収入源が1つ:そこが止まると世帯の収入がゼロになります。共働きなら、片方が止まってももう片方が残ります
  • 住宅ローンがある:金額を下げられず、滞納すると住まいそのものを失います。賃貸なら、いざとなれば家賃の安い場所へ移る選択肢があります
  • 扶養している家族がいる:支出を削れる幅が小さくなります。ひとり暮らしなら食費も光熱費も絞れますが、子どもの学費や医療費は絞れません
  • 1年より先に大きな支出の予定がある:住宅・車・進学など。手元を薄くしすぎると、その時期に無理が出ます

薄めでよい条件

  • 正社員・公務員で、傷病手当金や失業給付の対象になっている
  • 世帯に収入が2つ以上ある
  • ローンのない持ち家で、住居費の負担が小さい
  • 扶養している家族がいない

これらは点数化して機械的に決められるものではありません。 同じ条件でも、失業したときにすぐ次が決まる職種と、 決まるまで半年かかる職種では話が違います。自分の場合、次の収入まで何か月かかりそうかを考えて、そこに月数を合わせてください。

マネック案内役):迷ったらまず3か月分を目標にするといいよ。 いちばん厚い月数から目指すと遠すぎて続かないから、届く目標に置き直すのがコツ。

ToMiの 生活防衛資金の診断 では、この条件を5問に整理して目安の月数を出しています。 ただし3・6・12か月分の金額はすべて表示していて、選び直せるようにしてあります。 断定できる数字ではないためです。

どこに置いておくか

選ぶ基準は2つだけです。必要になったその日に引き出せることと、引き出すときに金額が減っていないこと。 利回りは基準に入りません。

置き場所向くか理由
普通預金向くその日に引き出せる。金額も減らない
定期預金(中途解約可)条件つきで向く解約すると利息は下がるが、元本は戻る
個人向け国債一部だけなら発行から1年間は換金できない。全額をここに置かない
投資信託・株式向かない必要になった月に値下がりしている可能性がある

個人向け国債は元本が戻る商品ですが、 発行から1年間は原則として中途換金できません。 生活防衛資金の一部を置くなら、1年以内に必要になる可能性のある分は預金に残すという分け方になります。

預金保険制度により、1金融機関あたり元本1,000万円までとその利息が保護されます。 生活防衛資金がこの額を超えることは通常ありませんが、 預金全体では超えることがあります。その場合は、金融機関を分けることで対応できます。

置き場所を分けること自体には、もうひとつ効果があります。 給与の入る口座とは別の口座に移しておくと、あるものとして数えなくなります。 残高が見えている口座に入れておくと、判断のときに無意識に足し込んでしまいます。

足りないときの積み方

目標に届いていない状態は、珍しいことではありません。 問題は、目標が遠すぎて手をつけないまま時間が過ぎることのほうです。

  • まず1か月分:これがあるだけで、急な出費で借入をせずに済む場面が増えます
  • 次に3か月分:多くの人にとって、ここが現実的な最初の到達点です
  • そこから先は必要に応じて:条件が厚めなら6か月分、12か月分へ

積むペースは、月の必須支出から逆算できます。 月20万円の必須支出で3か月分(60万円)を目指すなら、 月3万円で20か月、月5万円で12か月です。期間が現実的に見えるかどうかが、続くかどうかの分かれ目になります。

長すぎると感じたら、目標額そのものを下げられないか見てください。 必須支出を月2万円削れれば、3か月分の目標は6万円下がり、 同時に毎月2万円ずつ積める余地も生まれます。両側から効きます。

借入がある状態で生活防衛資金を積むかどうかは、金利で判断が分かれます。 年率15%のリボ払いを抱えたまま普通預金に積むと、 支払う手数料のほうが大きくなります。ただし、防衛資金がまったくない状態で 全額を返済に回すと、次の急な出費でまた借りることになります。繰り上げ返済の診断では、返済後に残る現金まで含めて確認できます。

確保できたあとに考えること

防衛資金が目安に届いたら、そこから先は置き場所の話になります。 必要額を超えた分をどうするかで、預金のまま置くか、 国債にするか、借入の返済に回すかを比べることになります。

ここで大事なのは、超えた分の全額を動かす必要はないということです。 防衛資金を引いた残りは動かしてよい上限であって、目標額ではありません。 半分だけ動かす、いくつかの置き場所に分ける、という決め方で構いません。

その上限がいくらになるかは 余裕資金の考え方 にまとめています。 逆に、超えた分が大きすぎる状態で何もしないとどうなるかは 預金が多すぎるとどうなる? で扱っています。

最後にひとつ。生活防衛資金は、一度決めたら終わりではありません。 引っ越しで家賃が変わったとき、家族が増えたとき、働き方が変わったとき。 必須支出も、必要な月数も動きます。年に一度は見直してください。

見直しは、必須支出を出し直すところからです。 金額が変わっていれば、必要額も月数のかけ算でそのまま更新されます。 手順そのものは最初と同じなので、二度目からは短い時間で終わります。

よくある質問

生活防衛資金は生活費の何か月分が必要ですか?
万人共通の正解はありません。会社員で共働き・扶養家族なしなら3か月分から、自営業や収入源が1つの世帯では12か月分を見ることもあります。収入が止まってから次の収入が入るまでの期間をどう見るかで決まります。
貯蓄と生活防衛資金は何が違いますか?
使い道が違います。生活防衛資金は「使わないこと」が目的で、収入が止まったときだけ取り崩します。旅行や家電の買い替えのために貯めているお金は、生活防衛資金には数えません。
生活防衛資金はどこに置いておけばよいですか?
必要になったその日に引き出せる場所です。普通預金のほか、解約に手数料のかからない定期預金も選べます。値動きのある商品は、必要になったときに減っている可能性があるため向きません。
月の必須支出には何を含めますか?
家賃・住宅ローン・食費・光熱費・通信費・保険料・医療費など、収入が止まっても払い続ける支出です。旅行費・交際費・こづかいのように、いざとなれば止められる支出は含めません。

参照した一次情報

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この記事は考え方を説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては総務省統計局の家計調査のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。