売値がそのまま手元に来るわけではない
家が3,000万円で売れたとして、3,000万円が手元に入るわけではありません。 売るためにかかる費用と、住宅ローンの完済額が引かれます。
費用の多くは決済の日にまとめて出ていきます。 売却代金が振り込まれ、そこからローンを返し、仲介手数料を払い、 登記の手続きをして、残った分が手元に来ます。 一日のうちに全部が動くので、事前に内訳を知らないと何が引かれたのか分かりません。
ここで扱うのは、上の図でいう「売却の諸費用」の中身です。 税金の計算とは別の話で、こちらは実際に現金として出ていくものです。
割合で覚えるより、項目で覚えるほうが使えます。 項目さえ分かっていれば、自分の売却価格から金額を出せますし、 見積もりに知らない項目が入っていたときに気づけます。
仲介手数料
不動産会社に買い手を探してもらう費用です。 諸費用のなかでいちばん大きく、多くの場合は全体の8割を超えます。
よく「3%」と言われますが、これは相場ではなく上限です。 法律にもとづく告示で、これを超えて受け取ってはならない額が決まっています。 しかも3%がかかるのは、価格のうち400万円を超える部分だけです。
- 200万円以下の部分 … 5%(税込5.5%)
- 200万円を超え400万円以下の部分 … 4%(税込4.4%)
- 400万円を超える部分 … 3%(税込3.3%)
区分ごとに分けて計算し、足します。 価格全体に3%をかけるのではありません。 3,000万円の家なら、税込でおよそ105万円です。
上限であって定価ではないので、交渉の余地はあります。 ただし手数料を下げると、広告にかける費用や営業の優先度が下がることもあります。 安く売れてしまえば、手数料で浮いた分は簡単に消えます。 金額そのものより、どう売ってくれるのかを確かめるほうが大事です。
払うタイミングも知っておくと、資金の計画が立てやすくなります。 仲介手数料は売買契約のときに半分、引き渡しのときに半分という形が 一般的です。契約から引き渡しまでは1か月から3か月ほどあくので、 契約の時点でまとまった額が必要になります。 売却代金が入るのは引き渡しの日なので、最初の半分は自分の手持ちから出すことになります。
もうひとつ、覚えておくと得なことがあります。 売るためにかかった費用の多くは、 税金を計算するときに譲渡費用として利益から引けます。 仲介手数料、売買契約書の印紙税、売るために行った測量や解体の費用が該当します。 領収書は捨てずに取っておいてください。
一方で、引けないものもあります。 抵当権を外す費用、住宅ローンの繰上返済手数料、引っ越し費用、 修繕のうち売却と直接の関係がないものは、譲渡費用に入りません。現金としては出ていくのに、税金の計算では引けないという項目があることは、 押さえておいてください。
価格ごとの上限額は仲介手数料の上限に、出典と確認日を付けて置いています。
売買契約書の印紙税
売買契約書には収入印紙を貼ります。 額は契約金額で決まり、いまは軽減措置が適用されています。
3,000万円の家なら1万円、6,000万円なら3万円です。 金額としては大きくありませんが、内訳を数えるときに抜けやすい項目です。
売買契約書は売主と買主がそれぞれ1通ずつ持つのが一般的で、 その場合はそれぞれが自分の分の印紙を負担します。 1通だけ作って写しを持つ形にすれば、印紙は1通分で済みます。 どちらにするかは契約の当事者で決めることです。
抵当権を外す費用
住宅ローンが残っている家には、金融機関の抵当権がついています。 売るときには、これを外す手続きが必要です。
かかるのは登録免許税と、司法書士に頼む場合の報酬です。 登録免許税は不動産1個につき1,000円で、 土地と建物で2個と数えるので2,000円になることが多いものです。 司法書士の報酬は、1万円台から3万円程度が目安です。
このほか、住宅ローンを期限前に全額返すことに対して、 金融機関が繰上返済の手数料を取ることがあります。 無料のところもあれば、数万円かかるところもあります。 固定金利の期間中だと高くなる場合があるので、 売ると決めたら早めに金融機関に確かめてください。
住宅ローンの残高そのものは費用ではありませんが、売却代金から返すので、手元に残る現金は大きく減ります。 そして売却価格がローン残高と諸費用の合計に届かなければ、 差額を自分の現金で埋めることになります。
この状態をオーバーローンといいます。 埋める現金がなければ、通常の方法では売れません。 くわしくは住宅ローンが残っている家は売れるかに書いています。
場合によってかかるもの
ここまでは、ほとんどの売却でかかるものです。 次は、物件や事情によってかかるものです。
- 測量費 … 土地の境界がはっきりしない場合に必要になります。数十万円かかることがあり、諸費用のなかでは大きな部類です。
- 建物の解体費 … 古い家を更地にして売る場合。木造の戸建てで100万円を超えることもあります。
- ハウスクリーニング・残置物の処分 … 数万円から十数万円。引き渡しの条件によります。
- 引っ越し費用 … 売却そのものの費用ではありませんが、住み替えなら必ずかかります。仮住まいが要るなら、その家賃も。
- 譲渡所得税 … 利益が出た場合にかかります。ただし納めるのは翌年で、決済の日ではありません。
譲渡所得税だけは、他と払うタイミングが違います。 決済の日ではなく、売った年の翌年の確定申告で納めます。売却代金を使い切ってしまうと、翌年に払えなくなります。住民税はさらに遅れて、その年の6月以降に通知が来ます。
お金が出ていく順番
費用の合計だけ分かっていても、いつ出ていくのかを知らないと資金が回らないことがあります。 売却の流れに沿って並べてみます。
まず売り出す前に、測量や解体が必要ならここで出ていきます。 数十万円から百万円を超えることもあり、 しかもこの時点では売れる保証がありません。 売り出してから買い手がつかなければ、費用だけが出た状態になります。
買い手が決まって売買契約を結ぶときに、 印紙税と、仲介手数料の半分を払います。 このときに買主から手付金が入るので、 そこから払えることが多いのですが、 手付金の額は売買代金の5%から10%程度が目安です。
引き渡しの日に、残りの代金が振り込まれます。 同じ日に住宅ローンを完済し、抵当権を外し、 仲介手数料の残りと司法書士の報酬を払います。 ここで手元に残った額が、最終的に自由に使えるお金です。
そして翌年に、譲渡所得税の確定申告があります。 さらにその年の6月以降に、住民税の通知が来ます。売ってから1年半ほど先まで、支払いは続きます。引き渡しの日に残った現金を全部次の家に入れてしまうと、 翌年に税金を払えなくなります。
合計でどのくらいになるか
3,000万円で売る場合の、標準的な内訳を並べてみます。
- 仲介手数料 … 約105万円(税込)
- 印紙税 … 1万円
- 抵当権抹消の登録免許税 … 2,000円
- 司法書士報酬 … 2万円前後
- 繰上返済の手数料 … 0円から数万円
合計で110万円前後、売却価格の約3.7%です。 ここに測量や解体が入ると、一気に増えます。 冒頭に書いた「4%から6%」という幅は、 こうした追加のぶんを見込んだものです。
自分の売却価格での内訳は、自分の金額で、諸費用と手元に残る額を計算するで出せます。ローンの完済額と譲渡所得税まで引いた現金が並びます。
