ローンが残っていても売れる
住宅ローンが残っている家は売れます。 むしろ、売られる家の多くはローンが残っている状態です。 転勤、住み替え、離婚、収入の変化など、 完済を待たずに手放す理由はいくらでもあります。
仕組みとしては、売却代金でローンを一括返済します。 買主から代金が振り込まれ、その場で金融機関に返し、 家についている抵当権を外して、買主に引き渡す。 これが決済の日に、一日のうちで行われます。
抵当権というのは、返せなくなったときに金融機関が家を処分できる権利です。 これがついたままでは買主が安心して買えないので、引き渡しの時点で外れていることが条件になります。 外すにはローンを全額返す必要があり、だから売却代金で返すのです。
売れるかどうかを決めるのは、価格と残高の差
問題になるのは、売却代金でローンを返しきれるかどうかです。 返しきれるなら、手続きは普通に進みます。
このうち諸費用が、売却価格の4%から6%ほどかかります。 内訳は家を売るときにかかる費用に書きました。
売却価格が、ローンの完済額と諸費用の合計を上回っていれば、 差額が手元に残ります。この状態をアンダーローンといいます。 住み替えなら、この残りを次の家の頭金にできます。
上回っていなければ、差額を自分の現金で埋めることになります。 これがオーバーローンです。
足りないとき(オーバーローン)
売却価格がローン残高に届かない場合、差額を用意できなければ通常の方法では売れません。 抵当権が外せないからです。
取れる手は、いくつかあります。
- 貯蓄から差額を出す … いちばん単純です。売却後に借金が残らないのも利点です。
- 住み替えローンを使う … 次の家の住宅ローンに、返しきれなかった分を上乗せして借ります。新しい家の購入とセットになるので、売却と購入を同時に進める必要があります。
- 売る時期をずらす … 返済が進めば残高は減ります。数年待てるなら、それだけで解消することがあります。
- 任意売却 … 返済が滞っている場合に、金融機関の同意を得て売る方法です。信用情報に影響が残ります。
オーバーローンかどうかは、売り出す前に分かります。自分の金額で、いくらで売れれば足りるかを逆算すると、ローンを完済できる最低の売却価格が出ます。 不動産会社の査定額がこれを下回っていれば、 その時点で売る前に手を考えておけます。
残高と完済額は同じではない
見落とされやすい点があります。いまの残高と、一括で返すときに必要な額は違います。
一括返済のときには、残高のほかに次のものがかかります。
- 返済日までの利息 … 前回の返済日から完済日までの日数分。
- 繰上返済の手数料 … 金融機関によります。無料のところもあれば、数万円かかるところも。固定金利の期間中は高くなることがあります。
- 抵当権抹消の費用 … 登録免許税が不動産1個につき1,000円。司法書士に頼むなら報酬が2万円前後。
手元の返済予定表に書かれている残高は、 あくまで次の返済日時点の見込みです。 決済の日にいくら必要なのかは、金融機関に「完済見込額」を出してもらうのが確実です。
売らずに貸すという選択肢
ローンが残っている家を手放す方法は、売却だけではありません。 人に貸して、家賃でローンを返し続けるという形もあります。 転勤で数年だけ離れる場合には、こちらのほうが合うこともあります。
ただし注意が要ります。住宅ローンは自分が住むための家に対して貸されるものです。 賃貸に出すと契約の条件に反することになり、 金融機関によっては一括返済を求められます。 転勤などのやむを得ない事情なら認められることが多いので、 黙って貸さずに、必ず先に相談してください。
住宅ローン控除も、住まなくなった時点で原則として使えなくなります。 転勤の場合には、戻ってきたときに再開できる仕組みがありますが、 手続きが必要です。貸している期間の分は取り戻せません。
お金の面では、家賃がローンの返済額を上回るかどうかで判断します。 上回っていても、固定資産税、管理会社への手数料、 入居者がいない期間の返済、修繕の費用が乗ってきます。家賃と返済額を並べるだけでは足りません。
そして、3,000万円特別控除には期限があります。 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日を過ぎると使えません。貸しているあいだに、この期限が過ぎることがあります。数年貸してから売ると、控除が使えず税金が出ることになりかねません。 貸すか売るかを決めるときは、この期限も一緒に見てください。
売却と購入、どちらを先にするか
住み替えの場合、売るのと買うのをどう並べるかで進め方が変わります。
売りを先にする(売り先行)と、 手元に入る金額が確定してから次の家を探せます。 資金計画が崩れにくく、オーバーローンかどうかも早く分かります。 代わりに、次の家が決まるまでの仮住まいが要ることがあります。
買いを先にする(買い先行)と、 仮住まいなしで移れます。ただし、売れる前に買うことになるので、 売却価格が想定を下回ったときに資金が足りなくなります。 二重にローンを抱える期間が出ることもあります。
税金の面でも、順番は関係してきます。 3,000万円特別控除を使うと、新しい家の住宅ローン控除が使えなくなります。 どちらが得かは売却益と新しい家の借入額で変わるので、3,000万円特別控除の記事もあわせて読んでみてください。
いくらで売れるかを、自分で確かめる
手元にいくら残るかは、売却価格で決まります。 その売却価格を、不動産会社の査定だけで決めてしまうのは危ういところがあります。
査定額は「この額で売れます」という約束ではありません。 媒介契約を取りたい会社は高めの額を出しがちで、 売り出してから下げていく、という流れになることがあります。 最初から複数の会社に出してもらい、開きがあればその理由を聞いてください。
自分でも確かめられます。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、 実際に取引された価格が公開されています。 地域と広さが近い物件がいくらで売れたのかを見れば、 査定額が現実的かどうかの目安になります。 レインズ・マーケット・インフォメーションでも、 成約価格の情報を見ることができます。
売り出し価格と成約価格は違います。不動産のポータルサイトに出ている金額は売り出し価格で、 そこから値下げして売れることが多いものです。 周辺の売り出し価格だけを見ていると、高く見積もることになります。
ローンが残っている場合は、逆算して考えるほうが実用的です。 完済額と諸費用の合計から、最低いくらで売れば足りるのかを先に出す。 その額が相場より高ければ、いまは売り時ではない、という判断ができます。 値下げ交渉が入ったときに、どこまで応じられるかの線も引けます。
まず確かめる3つ
売るかどうかを考え始めた段階で、確かめておくとよいものが3つあります。 どれも費用はかかりません。
- 金融機関に「完済見込額」と「繰上返済の手数料」を聞く … 電話で聞けます。残高だけでは足りません。
- 不動産会社の査定を複数取る … 1社だけだと高いのか安いのか判断できません。無料です。
- 買ったときの売買契約書を探す … 見つからないと税額が数百万円変わることがあります。
3つ目は、売るかどうかに関わらずやっておく価値があります。 理由は取得費が分からないときの考え方に書きました。探すのに費用はかかりませんが、 見つからないときの差は大きいものです。
査定を取るときは、売る時期を決めていなくても構いません。 「いま売ったらいくらか知りたい」と伝えれば応じてもらえます。 その場で媒介契約を結ぶ必要はありませんし、断っても費用はかかりません。 いまの価値を知っておくことは、売らない場合でも 資産の全体を把握するうえで役に立ちます。
3つがそろえば、手元にいくら残るかを実際の数字で出せます。自分の金額で、売ったあと手元に残る額を計算するで、諸費用と税金まで引いた現金が出ます。
