賃貸には無い、持ち家だけの費用
住宅ローンの返済額と家賃を並べて「こちらのほうが安い」と考えると、 持ち家の負担を小さく見積もることになります。 持ち家には、返済とは別に毎年出ていくお金があるからです。
賃貸では、建物の税金も修繕も保険も、大家が負担しています。 もちろんその費用は家賃に織り込まれていますが、 借りている側が別途払うことはありません。 設備が壊れたときの交換も、多くは大家の負担になります。
持ち家では、これらが全部自分に来ます。買ったあとにかかり続けるお金を数えずに比べると、 持ち家のほうが安く見えてしまいます。持ち家を持つということは、 住まいを手に入れることであると同時に、建物を管理する側に回ることでもあります。 その手間と費用は、家賃には含まれていません。
どのくらいの額になるかは、物件の種類・広さ・地域・築年数で大きく変わります。 金額そのものより、何にいくらかかるのかを項目で押さえておくことが先です。 項目さえ分かっていれば、検討している物件の資料から自分の数字を拾えます。
もうひとつ、忘れられやすいものがあります。設備の交換です。 給湯器、エアコン、食洗機、インターホンといった住宅の設備には寿命があり、 十数年のあいだにどれかは必ず入れ替えることになります。 賃貸なら大家に連絡すれば済みますが、持ち家では自分で手配して自分で払います。 住宅ローンの返済額を家賃と見比べているときには、まず意識に上らない部分です。
火災保険と地震保険も、賃貸とは規模が違います。 借りている側が入る火災保険は家財が中心ですが、 持ち家では建物そのものが対象になるため、保険料の桁が変わります。 住宅ローンを借りるときに長い期間でまとめて払うこともあり、 そのときは毎年の支出として意識しにくくなります。 比べるときは、支払った総額を年数で割って年あたりに直しておくと、 家賃との比較がそろいます。
固定資産税と都市計画税
住宅を持つと、毎年固定資産税がかかります。 地域によっては都市計画税も加わります。 どちらも市区町村が課すもので、住んでいるあいだずっと続きます。
税額は、売買した価格そのものではなく固定資産税評価額という別の金額をもとに計算されます。 評価額は市区町村が決めていて、一定の年ごとに見直されます。 そこに税率をかけたものが税額になります。 固定資産税の税率は1.4%、都市計画税は0.3%です。
ただし、この2つの率の意味は違います。1.4%は標準税率で、 市区町村は条例でこれと違う率を定められます。0.3%は制限税率で、 「これを超えてはいけない」という上限です。 都市計画税はそもそも課すかどうかも市区町村が決めるので、 かからない地域もあります。自分の街の率は、その市区町村の条例で決まります。
住宅として使っている土地には、負担を軽くする特例があります。 200㎡までの部分は課税標準が評価額の1/6、 それを超える部分は1/3になります。 効くのは土地だけで、建物には効きません。 新築の建物には、最初の3年度分(地上3階以上の中高層耐火建築物なら5年度分)、 床面積120㎡までの部分の税額が半分になる仕組みがあります。 要件は面積や建物の種類で細かく変わるので、検討している物件について市区町村の資料で確かめるのが確実です。
買うときには、これとは別に不動産取得税が1回かかります。 こちらは都道府県の税で、標準税率は4%ですが、 住宅と土地については3%に軽くする特例が続いています。 宅地は課税標準が評価額の1/2になり、新築住宅なら価格から1,200万円を引けるので、 評価額がその範囲に収まれば税額は0になります。 率と特例の一覧は住まいにかかる税の率にまとめています。
注意したいのは、新築の軽減は永久には続かないことです。 戸建てなら4年目、マンションなら6年目に、建物の分が元に戻ります。 期間が終わると税額が上がります。買った年の税額だけを見て 「毎年これくらい」と考えていると、数年後に想定が崩れます。
軽減そのものにも期限があります。新築住宅の減額は、 いま新築されたものが対象になる期限が令和13年3月31日までと決まっていて、 不動産取得税の3%と宅地の1/2は令和9年3月31日までです。 これまでは期限が来るたびに延長されてきましたが、 延長されるかどうかはそのときの税制改正で決まります。 数年先の負担を見積もるときは、いまの軽減が続く前提を置いていないかを 一度確かめてください。
マンションの管理費と修繕積立金
マンションでは、毎月管理費と修繕積立金を払います。 管理費は日常の清掃・管理員・共用部分の電気代などに使われ、 修繕積立金は十数年ごとの大規模修繕のために積んでおくお金です。
この2つは、住宅ローンを払い終わっても払い続けます。 「ローンが終われば住居費がゼロになる」と考えていると、ここで食い違います。 駐車場を使うなら、その使用料も別に毎月かかります。
積立金が計画どおりに集まっていない建物では、 大規模修繕のときに一時金を求められることもあります。 中古のマンションを検討しているなら、修繕積立金がいくら貯まっているかも確かめておくと安心です。
戸建ては自分で積んでおく
戸建てには管理費も修繕積立金もありません。 そのぶん毎月の支出は軽く見えますが、修繕が要らないわけではありません。 屋根や外壁の塗り直し、給湯器やエアコンの交換、 水回りの修理は、どこかの時点で必ず来ます。
違いは、マンションが強制的に積ませるのに対して、 戸建ては自分で積んでおくかどうかが自由だという点です。 積んでいなければ、必要になった時点でまとまった現金が要ります。 そのときに手元になければ、借りるか、先送りにするかになります。
- 屋根・外壁の塗り直し(十数年ごと)
- 給湯器の交換
- 水回りの設備の修理・交換
- シロアリの防除
- 火災保険・地震保険の保険料
比べるときは、マンションの修繕積立金にあたる額を、戸建てにも同じように置くのが公平です。 置かないまま比べると、戸建てだけ維持費がかからないように見えます。 ToMiの診断で「年間の税・管理・修繕・保険」をまとめて入れてもらっているのは、 この置き忘れを防ぐためです。
手を入れた分が売るときの価格に返ってくるかというと、そうとは限りません。手入れは価値を上げるためというより、下がり方を緩めるためと考えるほうが実際に近くなります。 ここは家の資産価値は30年後どうなる?で詳しく扱っています。
維持費は年数とともに上がる
維持費でいちばん見落とされやすいのが、年数が経つほど重くなるという性質です。 いまの金額を30年分かけ算すると、実際よりかなり小さく出ます。
理由は2つあります。ひとつは、物価が上がれば工事の費用も上がることです。 もうひとつは、建物が古くなるほど手を入れる場所が増えることです。 マンションの修繕積立金が段階的に上がる計画になっているのも、この2つを見込んでいるからです。
ToMiの診断では、家賃が上がる率とは別に 「維持費が毎年上がる率」を入れられるようにしています。 同じ率にしてしまうと、持ち家側の費用を小さく見積もることになるためです。
持ち家と賃貸、30年後の純資産はいくら違う?で、維持費を入れた場合と入れない場合でどれだけ結果が動くかを確かめられます。 年間の維持費を10万円変えるだけでも、30年では大きな差になります。
将来の額が読みにくいなら、いまの金額をそのまま使うのではなく、 少し多めに置いておくほうが安全です。少なく見積もって足りなくなるより、 多めに置いて余るほうが、家計への影響は小さくて済みます。 比べた結果が「多めに置いても持ち家側」であれば、その結論は動きにくいものになります。
