繰上げ返済とは
毎月の返済とは別に、まとまったお金を返して住宅ローンの元金を減らすことです。 毎月の返済日に自動で引き落とされる分(約定返済)はそのまま続き、 それに上乗せする形で任意のタイミングで行います。
住宅ローンは借入額が大きく、返済期間も長いのが特徴です。 2,500万円を年1.0%で25年かけて返す場合、返済総額のうち利息は約326万円になります。 繰上げ返済は、この利息の一部を発生させないようにする方法です。
注意したいのは、繰上げ返済は「得をする」行動ではなく「損を減らす」行動だということです。 投資のようにお金が増えるわけではなく、これから払う予定だった利息が減るだけです。 そのぶん確実ではありますが、手元のお金は同じ額だけ減ります。
上の図は、毎月94,219円を返している場合の内訳です。 1年目は約2.1万円が利息に、約5.4万円が元金に充てられています。 25年目になると利息はほとんどかからず、大半が元金に回ります。返済の初期ほど、払っている額に対して元金の減りが小さいのが元利均等返済の性質です。
返したお金は元金に充当される
繰上げ返済したお金は、その全額が元金の返済に充てられます。 毎月の返済のように利息が差し引かれることはありません。 100万円を繰上げ返済すれば、住宅ローンの残高はその場で100万円減ります。
ここが毎月の返済との大きな違いです。 毎月94,219円を払っていても、そのうち元金に回るのは初期だと5万円台です。 残りは利息として消えていきます。繰上げ返済にはこの差し引きがないため、払った額がまるごと借金を減らすことになります。
なお、繰上げ返済の手続きをした日から次の返済日までの利息(経過利息)が 別途かかる場合があります。金融機関によって扱いが異なるため、 実際に必要な金額は手続きの際に確認してください。
なぜ利息が減るのか
住宅ローンの利息は、その月の残高に対してかかります。計算のしかたは単純です。
残高2,500万円・年1.0%なら、その月の利息は 2,500万円 × 1.0% ÷ 12 = 約20,800円です。 これが毎月、残高に応じて計算されます。残高が減れば、翌月からの利息もその分だけ小さくなるという関係です。
繰上げ返済で100万円の元金を消すと、その100万円にかかるはずだった利息が、 完済までの全期間ぶん発生しなくなります。 月あたりでは100万円 × 1.0% ÷ 12 = 約833円ですが、 これが残りの期間ずっと積み重なるため、合計では大きな金額になります。
残り25年の時点で100万円を繰上げ返済(期間短縮型)すると、 利息の削減額は約27.7万円、完済は約1年1か月早まります。 返した100万円は借金の返済であって費用ではないので、27.7万円がまるごと効果ということになります。
全額繰上げ返済と一部繰上げ返済
繰上げ返済には、残高の一部を返す一部繰上げ返済と、 残高すべてを返して完済する全額繰上げ返済があります。 多くの人が検討するのは前者です。
- 一部繰上げ返済:残高の一部を返す。何度でも行える。 返した後も住宅ローンは続くため、団体信用生命保険も続く
- 全額繰上げ返済:残高すべてを返して完済する。 抵当権の抹消手続きが必要になり、団体信用生命保険も終わる
一部繰上げ返済には、返し方が2種類あります。 毎月の返済額を変えずに完済を早める期間短縮型と、 完済時期を変えずに毎月の返済額を下げる返済額軽減型です。 同じ金額を返しても効果が違うので、期間短縮型と返済額軽減型の違いで整理しています。
受付の単位も金融機関によって異なります。 インターネットからの手続きなら1万円単位や1円単位で受け付けるところが多く、 窓口だと100万円以上といった条件がある場合もあります。
繰上げ返済の前に確認すること
利息が減るのは確実ですが、それだけで決めない方がよい理由が3つあります。
1. 返したお金は引き出せない
住宅ローンに返したお金は、必要になっても取り戻せません。 急な出費が来たときに使える手段が新しい借入しか残らないと、 住宅ローンより高い金利を払うことになります。 住宅ローンは借金の中では金利が低いほうなので、 急いで返すことの優先度は他の借入より低くなります。
2. 住宅ローン控除を利用中なら、影響を確認する
控除額は年末残高で決まるため、繰上げ返済すると控除も小さくなります。 さらに期間短縮型で償還期間が10年未満になると、 その年以後は控除そのものを受けられなくなります。 詳しくは住宅ローン控除中に繰上げ返済してもいい?にまとめています。
3. もっと金利の高い借入がないか
カードローンやリボ払いの残高がある場合、そちらの金利は年15%前後です。 年1%前後の住宅ローンより先に返したほうが、減らせる利息ははるかに大きくなります。返す順番は、金利の高いものからが基本です。
手続きのしかた
多くの金融機関では、インターネットバンキングや専用のアプリから手続きできます。 手数料は、インターネット経由なら無料としている金融機関が多く、 窓口や電話だと数千円〜数万円かかる場合があります。
- 返済用口座に、繰上げ返済する金額を入金しておく
- 会員サイトやアプリで、繰上げ返済の申込みを行う
- 期間短縮型・返済額軽減型のどちらにするかを選ぶ
- 実行日と必要な金額(経過利息を含む)を確認する
申込みから実行までに数日〜1か月かかることがあります。 「今月の返済日に間に合わせたい」という場合は、余裕をみて手続きしてください。
手続きの前に、次の3つを金融機関に確認しておくと確実です。 手数料の有無、受付の最低金額、そして実行日です。 特に受付の最低金額は差が大きく、1円単位で受け付けるところもあれば、 100万円以上でないと受け付けないところもあります。
団体信用生命保険についても触れておきます。 一部繰上げ返済であれば住宅ローンは続くので、保障もそのまま続きます。 全額繰上げ返済で完済すると保障は終わります。完済すると団信の保障がなくなることは、 資金に余裕があって全額返済を考えている場合に見落とされやすい点です。
実行後は、返済予定表が新しくなります。 残高・毎月の返済額・最終返済年月が想定どおりになっているかを、次の返済予定表で必ず確認してください。 特に住宅ローン控除を利用中の場合、最終返済年月は重要な情報です。
自分の条件だと利息がいくら減るのかは、住宅ローン、繰上げ返済したらいくら利息が減る?で計算できます。返済予定表にある残高・金利・残り期間を入れると、 期間短縮型と返済額軽減型の両方の結果が出ます。 そのあとで、いま返してよい状態かを3問で確認できます。
よくある行き違い
「繰上げ返済すると毎月の返済が楽になる」と思われがちですが、 期間短縮型を選んだ場合は毎月の返済額は変わりません。 軽くなるのは返済額軽減型を選んだときだけです。申込みのときにどちらかを選ぶので、意図と違う方を選ばないよう注意してください。
もうひとつ、繰上げ返済しても返済日そのものは変わりません。 毎月の引き落としは今までどおり続きます。 変わるのは完済の時期か、引き落とされる金額のどちらかです。

