住宅ローン

住宅ローン控除中に繰上げ返済してもいい?

繰上げ返済で減らせる利息より、失う控除のほうが大きいことがあります。控除中に検討するなら、金額の比較より先に確認したいことが2つあります。

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この記事の要点

  • 控除中でも繰上げ返済はできます。制限があるのは手続きではなく、控除の側です。
  • 控除額は年末残高で決まります。繰上げ返済で残高が減れば、その年の控除も小さくなります。
  • 期間短縮型で償還期間が10年未満になると、その年以後は控除を受けられません。判定は当初の借入年月から行われます。
  • 返済額軽減型は償還期間が変わらないため、この要件には触れません。
  • 「年末残高×0.7%」は上限であって、戻ってくる金額ではありません。実際は納めている所得税額等が限度です。

控除中でも繰上げ返済はできる

住宅ローン控除を受けている期間中でも、繰上げ返済そのものは自由にできます。 金融機関の手続きに制限があるわけではありません。

ただし、控除の側に2つの影響があります。年末残高が減ることによる控除額の減少と、償還期間が短くなることによる適用要件からの脱落です。 前者は金額が小さくなるだけですが、後者は控除そのものが受けられなくなります。

繰上げ返済しても手続き上の制限はありません。 問題になるのは「控除額がいくら減るか」と「控除の対象から外れないか」の2点です。

この記事では、この2つを分けて整理します。 制度の数値そのものは住宅ローン控除の適用条件にまとめています。

年末残高が変わるとどうなるか

住宅ローン控除の額は、その年の12月31日時点のローン残高をもとに計算されます。

その年の控除額の上限 = 年末残高 × 0.7%

年末残高が3,000万円なら、控除額の上限は21万円です。 繰上げ返済で残高を2,500万円まで減らすと、上限は17.5万円になります。返した500万円の0.7%、つまり3.5万円だけ控除が小さくなるという関係です。

繰上げ返済で年末残高が減ると、その年の控除額も減る年末残高 × 0.7% = その年の控除額の上限返済前3,000万円21万円返済後2,500万円17.5万円控除の上限は3.5万円下がる。減った利息と並べて比べるこの21万円・17.5万円は上限であって、戻る金額ではありません。納めている所得税額等が小さければ、そこまで使い切れません。
控除額の上限は、その年の12月31日時点の残高に0.7%をかけた額です。繰上げ返済して残高が減れば、この上限も下がります。さらに実際に控除されるのは納めている所得税額等が限度なので、上限がそのまま戻るとは限りません。

ここで大事なのは、この21万円・17.5万円が上限であって、戻ってくる金額ではないことです。 実際に控除されるのは、その人が納めている所得税額(と一部の住民税額)が限度になります。 納税額のほうが小さければ、上限まで使い切れません。

「年末残高 × 0.7%」を確定のメリットとして繰上げ返済の損得を計算すると、 控除の側を過大に見積もることになります。 自分がその年に実際いくら控除を受けているかは、源泉徴収票や確定申告書で確認してください。

なお、年末より前に繰上げ返済すればその年の控除から影響し、 年明けに実行すればその年は影響しません。 年末が近い時期に繰上げ返済を検討している場合、実行を年明けにずらすだけで1年分の控除を保てることがあります。

ただし、ずらせばよいという話でもありません。 年明けまで待つ間も利息はかかり続けます。 控除の減少分と、待つ間に増える利息のどちらが大きいかは、 残高と金利によって変わります。残高が大きく金利が高いほど、待つコストのほうが大きくなる関係です。

マネック案内役):12月に返すか1月に返すかで、その年の控除額が変わるんだ。 急ぐ理由がないなら、年明けにずらすのも手だよ。

返済期間を短縮する場合の重要な注意点

こちらが本題です。住宅ローン控除には償還期間が10年以上であることという要件があります。 期間短縮型で繰上げ返済すると、この期間が短くなります。

国税庁は、繰上返済後の償還期間によって要件を判定するとしています。 繰上げ返済の結果、償還期間が10年未満になった場合、その年以後は控除を受けられません

繰上げ返済で償還期間が10年未満になると、その年以後は住宅ローン控除を受けられない償還期間=最初の返済月から最終返済月までそのまま12年対象期間短縮後8年対象外ここが10年判定に使うのは借入時からの期間。残りの返済期間ではない。当初の借入年月が分からないと、こちらでは判定できません。
要件は残りの期間ではなく、最初の返済月から最終返済月までの期間で判定されます。期間短縮型で完済を前倒しすると、この期間が10年を割ることがあります。返済額軽減型は期間が変わらないため、この要件には触れません。

判定に使うのは、残りの返済期間ではなく、最初の返済月から最終返済月までの期間です。 借入から5年経っていて残り7年、という状態であれば償還期間は12年なので要件を満たします。 しかし期間短縮型で4年分を縮めると、償還期間は8年になり、要件を割ります。

この判定には当初の借入年月が必要です。残高・金利・残りの期間だけでは判断できません。 ToMiの診断でも、控除を利用中に期間短縮型を選んだ場合は削減額で結論を出さず、 返済予定表と国税庁の案内での確認をお願いしています。

気をつけたいのは、これがその年だけの話ではないことです。 要件を満たさなくなると、その年以後の控除がすべて受けられなくなります。 控除期間が5年残っていれば、5年分の控除をまとめて失うことになります。 繰上げ返済で減らせる利息と比べて、どちらが大きいかは計算が必要です。

返済額軽減型なら、この要件には触れない

返済額軽減型は返済期間を変えずに毎月の返済額を下げる方法なので、 償還期間は変わりません。控除の要件から外れる心配がありません。

控除を利用中で、それでも繰上げ返済したい場合、 返済額軽減型を選ぶという判断はここから出てきます。 利息の削減額は期間短縮型より小さくなりますが、控除を失うリスクはなくなります。 2つの方式の違いは期間短縮型と返済額軽減型の違いにまとめています。

控除終了後まで待つ考え方

控除期間が残り数年であれば、それが終わるまで待つという選択肢があります。 待つ間、繰上げ返済に回す予定だったお金は預金として手元に残ります。

この判断は、次の2つの比較になります。

  • いま返す:利息が早く減り始める。かわりに、その年から控除額が小さくなる
  • 控除終了後に返す:控除を満額まで使える。かわりに、それまでの利息は払い続ける

どちらが有利かは、住宅ローンの金利と、実際に受けている控除額で決まります。 金利が1%を大きく下回っていて、控除を上限近くまで使えているなら、 待つほうが有利になりやすい関係です。 逆に金利が高い、あるいは納税額が小さくて控除を使い切れていないなら、 待つ意味は小さくなります。

「控除率0.7%より金利が低ければ待つべき」という単純な比較を見かけますが、 控除を上限まで使えていない場合はこの前提が崩れます。 自分が実際に受けている控除額を確認してから比べてください。

判断するときに比較する数字

控除を利用中に繰上げ返済を検討するなら、次の4つを並べます。

  • 繰上げ返済で減らせる利息(金額)
  • 繰上げ返済で減る控除額(金額)。上限ではなく実際に受けている額で
  • 繰上げ返済後の償還期間。10年を割らないか
  • 返済後に手元に残る現金

1つ目と2つ目の差し引きが、金額としての損得です。 3つ目が要件の判定で、ここに引っかかると1つ目と2つ目の比較そのものが意味を失います。 4つ目は金額の話ではなく、返してよいかどうかの話です。

この4つのうち、こちらで計算できるのは1つ目だけです。 2つ目は納税額しだい、3つ目は当初の借入年月しだい、4つ目はご本人の家計しだいだからです。 だからこそ、削減額の大きさだけで決めないことが重要になります。

どこで確認すればよいか

必要な情報は、次の書類から取れます。

  • 返済予定表:当初の借入年月、最終返済年月、現在の残高。 繰上げ返済後の償還期間はここから計算します
  • 年末残高等証明書:金融機関から毎年10月頃に届きます。年末残高の見込みが分かります
  • 源泉徴収票・確定申告書:実際に受けている控除額。 「住宅借入金等特別控除の額」の欄です

数字がそろったら、まず利息の削減額を計算します。住宅ローン、繰上げ返済したらいくら利息が減る?で残高・金利・残り期間を入れると出ます。 この診断では、控除を利用中に期間短縮型を選んだ場合、 削減額を大きく見せずに確認を先に促す作りにしています。

要件の解釈で迷う場合は、国税庁のタックスアンサーか、 所轄の税務署に確認してください。 金融機関の窓口は繰上げ返済の手続きには詳しいですが、税制の適用可否を判断する立場にはありません

マネック案内役):ここだけは、計算より先に確認してほしいところ。控除を失うほうが、減らせる利息より大きいことがあるからね。

確認しておく順番

書類がそろっているなら、次の順に見ると迷いません。 まず返済予定表で当初の借入年月と最終返済年月を確認し、 繰上げ返済後に償還期間が10年を割らないかを見ます。ここで割るなら、期間短縮型はその時点で候補から外れます

割らないことが確認できたら、源泉徴収票で実際に受けている控除額を見ます。 上限まで使えていれば、繰上げ返済で減る控除も上限どおりに減ります。 使い切れていなければ、減り方はもっと小さくなります。 そのうえで、減らせる利息と並べて比べてください。

なお、繰上げ返済の申込みを受け付ける金融機関の窓口は、 税制の適用可否まで判断してくれるわけではありません。 「期間短縮型で申し込んだが、控除が受けられなくなった」という結果になっても、それを事前に止めてくれる仕組みはないと考えておいてください。 確認は自分で行う必要があります。

手続きの前に、繰上げ返済後の最終返済年月を金融機関に確認できれば、 そのまま償還期間の判定に使えます。申込みの段階で聞いておくと確実です。

控除の要件は入居年によって細かく異なります。この記事で扱った償還期間10年以上は どの年に入居した場合にも共通ですが、控除期間や借入限度額は入居年で変わります。 自分がどの区分に当たるかは、住宅ローン控除の申告時の書類で確認できます。

よくある質問

住宅ローン控除を受けている間は、繰上げ返済できませんか?
できます。手続き上の制限はありません。ただし年末残高が減ることで控除額が小さくなり、期間短縮型の場合は償還期間が10年未満になると控除そのものを受けられなくなります。
繰上げ返済すると控除はいくら減りますか?
控除額の上限は年末残高の0.7%です。500万円繰上げ返済すれば、上限は3.5万円下がります。ただし実際に控除されるのは納めている所得税額等が限度なので、上限まで使えていない場合は減り方も小さくなります。
償還期間10年の判定は、残りの返済期間で見ますか?
いいえ。最初の返済月から最終返済月までの期間で判定されます。借入から5年経って残り7年なら償還期間は12年です。期間短縮型で4年縮めると8年になり、要件を満たさなくなります。
控除が終わるまで待ったほうがいいですか?
住宅ローンの金利と、実際に受けている控除額の比較になります。金利が低く控除を上限近くまで使えているなら待つほうが有利になりやすく、納税額が小さくて控除を使い切れていないなら待つ意味は小さくなります。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁の住宅ローン控除のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。