結論から
「金より希少なのに金より安い」という説明を見かけます。 採れる量が少ないのは事実ですが、希少さがそのまま値段の高さになるわけではありません。 値段を決めるのは、採れる量と使われる量の関係です。
この記事では、プラチナが何に使われている金属なのか、 どこで採れるのか、そして過去に何が起きたのかを整理します。
何に使われている金属か
プラチナの需要は、大きく4つに分かれます。 自動車、工業(化学や医療など)、宝飾品、そして投資です。 このうちいちばん大きいのは自動車向けで、 ガソリン車やディーゼル車の排ガスを浄化する装置に使われます。
- 自動車:排ガス浄化装置の触媒
- 工業:化学プラントの触媒、ガラス製造、医療機器
- 宝飾品:指輪などの装身具
- 投資:地金・コイン・ETF
ここが投資判断に直結します。 自動車の需要が大きいということは、ガソリン車が減れば、長い目で見た需要も減るということです。 電気自動車には排ガス浄化装置が要りません。
触媒には、プラチナのほかにパラジウムも使われます。 この2つは用途が重なる部分があり、一方が高くなりすぎると、もう一方へ置き換える動きが出ます。 自動車メーカーは値段の差を見ながら配合を変えるため、 プラチナの需要は「自動車が何台つくられたか」だけでは決まりません。 パラジウムとの値段の関係も効いてきます。
供給の側にも、鉱山以外の経路があります。 使い終わった自動車の触媒から回収されるリサイクルです。 値段が上がると回収が進んで供給が増えるため、 値上がりにはそれ自体が上げ止まりの力を生む面があります。
反対に、水素を使う技術や化学分野での新しい用途が増えれば、 自動車の減り方を補う可能性もあります。 ただし、それがいつどれだけ増えるかは分かりません。見通しを根拠に買うなら、その見通しが外れた場合まで考えておいてください。
採れる場所が偏っている
プラチナの供給は、限られた国の鉱山に集中しています。 とくに南アフリカの比重が大きく、そこにロシアなどが続きます。 金や銀に比べると、産地の偏りがはるかに強い金属です。
偏っているとどうなるか。 その国の事情が、そのまま値段に出ます。 鉱山の労働争議、電力不足、政治の変化、輸出をめぐる制裁。 どれも会社の業績とは関係のないところで起きて、供給を止めます。
供給が止まれば値段は上がります。つまり、プラチナの値上がりは、良くない出来事をきっかけに起こることがあるということです。 持っている側にとっては利益でも、原因は歓迎できるものとは限りません。
需要と供給の状況は、業界団体が四半期ごとにまとめて公表しています。 数字は毎回動くので、記事の中で覚えるより、 気になったときに一次情報を見に行くほうが確実です。
金より安い、が続いてきた
かつてプラチナは金より高い金属でした。 希少で、工業でも必要とされ、宝飾品としても金より格上とされた時期があります。 その関係は、いまは逆転しています。
理由は1つではありませんが、需要の構成が大きく効いています。 金は世界中の中央銀行や投資家が資産として買います。プラチナにはその買い手がいません。 工業の需要が細れば、値段を支える力が弱くなります。
| 金 | プラチナ | |
|---|---|---|
| 需要の中心 | 投資・宝飾 | 自動車・工業 |
| 中央銀行が買うか | 買う | 買わない |
| 産地の広がり | 世界各地 | 南アフリカなどに集中 |
| 採れる量 | 多い | 少ない |
| 持っている間の収入 | なし | なし |
「本来は金より高いはずだから、いつか戻る」という見方があります。 それは1つの考え方ですが、戻る保証はどこにもありません。 需要の構成が変わった結果としての値段だと考えるなら、 元の関係に戻る理由も無いことになります。
金そのものについては金(ゴールド)とは?で扱っています。比べて考えるなら、先にそちらを見ておくと整理しやすくなります。
戻らなかった期間がある
プラチナには、高値を付けたあと10年以上その水準を下回り続けた期間があります。 「いつか戻る」と考えて持ち続けた人が、長く報われませんでした。
ここで効いてくるのが、収入を生まないという性質です。 株式なら、株価が戻らなくても配当が入ります。 債券なら利息が入ります。 プラチナは待っているあいだ、何も入ってきません。 むしろ保管料や経費のぶん、少しずつ減ります。
過去の実績を見るときは、どの年を起点にするかで答えが変わります。 下げ切ったあとから数えれば良い数字になり、 高値の直前から数えれば厳しい数字になります。同じ資産でも、切り取る期間で結論が反対になります。
自分が入れようとしている金額で、過去にどうなっていたかは試算できます。自分の金額で、下げた時期も含めて確かめると、途中でいちばん低かった月まで合わせて出ます。
買い方と、かかる費用
日本からプラチナを持つ方法は、おおむね次の3つです。 値動きは同じですが、費用と手間が変わります。
| 方法 | 費用のかかり方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 地金・コイン | 売買の差と保管 | 買う値段と売る値段に差がある |
| 純プラチナ積立 | 買付手数料と年会費 | 少額から始められるが、費用の率は高めになりやすい |
| ETF・投資信託 | 毎年の経費 | 証券口座で完結する。現物は受け取らない |
どの方法でも、持っているだけでは増えません。 増えるのは値段が上がったときだけで、 その間も保管料や経費は引かれ続けます。 値段が動かなかった年は、その分だけ確実に減ります。
宝飾品として買ったものを資産として数えるのは、勧めにくいところがあります。 加工の費用が値段に乗っているため、売るときには金属としての値段までしか付きません。 投資として持つなら、地金かETFなど、金属そのものの値段で売買できる形を選んでください。
資産全体の中での置き方も、先に決めておいてください。 プラチナは、金のように「とりあえず一定割合を持っておく」という位置づけで語られる資産ではありません。持つなら、なぜ持つのかを言葉にできる範囲の金額に収めるのが現実的です。 「値上がりしそうだから」だけでは、下げたときに続ける理由が残りません。
そして出口も決めておいてください。 配当も利息も入らない資産は、売って初めて結果が確定します。 いつ売るのか、どうなったら売るのかを買う前に決めていないと、 上がれば「もっと上がるかも」、下がれば「戻るまで待とう」となり、 待っているあいだの費用だけが積み上がります。
売るときの手順も、買う前に確かめておいてください。 地金やコインは、買った店でしか引き取ってもらえないことがあります。 ETFなら証券口座で売れますが、取引のある時間帯は市場に合わせて決まっています。換金までにかかる手間と日数は、持ち方によって変わります。必要になってすぐ現金にできるとは限らないので、使う予定のあるお金は入れないでください。 売る手順を知らないまま買うと、必要になった日にそこで初めて調べることになります。 買う前に、売るときの窓口と手数料まで一度見ておいてください。
最後に金額です。生活費や近く使う予定のお金は入れないでください。 手元にいくら残すかは生活防衛資金の診断で決められます。そこを決めてから、残りの中でいくらまで振り向けるかを考える順番になります。

