役員報酬

役員社宅の家賃は、いくら払えばいい?

役員社宅で払う額は、家賃の何割という決め方ではありません。見るのは固定資産税の課税標準額と床面積で、家賃とは別の場所から決まります。

読了めやす7分更新1回読まれています

この記事の要点

  • 賃貸料相当額を受け取っていれば、社宅を貸したこと自体は給与として課税されません。足りなければ差額が給与になります
  • 相当額は家賃からは決まりません。建物と敷地の固定資産税の課税標準額、それに床面積から計算します
  • 「家賃の50%を払えばよい」は使用人のルールです。役員にその線はありません
  • 小規模な住宅(法定耐用年数30年以下は132㎡以下、30年超は99㎡以下)かどうかで式が変わります
  • 社会保険は税務とは別の制度で、住宅の現物給与価額という別の定めで報酬に換算します

いくら受け取れば、給与にならないか

会社が借りた住宅を役員に貸すとき、役員から賃貸料相当額を受け取っていれば、社宅を貸したこと自体は 給与として課税されません。受け取る額がそれより低ければ、 その差額が給与になります。無償で貸せば、相当額の全額が給与です。

受け取るべき額は、家主へ払う家賃から決まるのではありません。 建物と敷地の固定資産税の課税標準額、それに床面積から決まります。

ここが、この話でいちばん取り違えられるところです。 家賃20万円の部屋だから10万円は払わないといけない、という決まり方では ありません。家賃が高くても相当額が低いことがありますし、その逆もあります。 家賃と相当額は、別の場所から来る数字です。

マネック(案内役):まず「家賃のいくら」という考え方から離れてね。見るのは固定資産税の書類だよ。

受け取る額を決めるとき、まず押さえておきたいのは 「いくら受け取れば足りるか」であって「いくらまで下げられるか」ではない、 という向きです。下げるほど役員の手元に残る現金は増えますが、 相当額を割った瞬間に、割った分だけが給与として課税されます。 課税される側では所得税と住民税がかかり、社会保険の報酬にも響くので、 下げた額がそのまま手元に残るわけではありません。

「家賃の50%」はどこから来たのか

役員社宅の話で必ず出てくるのが「家賃の50%を払えばいい」という説明です。 これは使用人のルールで、役員には当てはまりません。 役員と使用人は別の通達で扱われていて、 使用人には「受け取る額が賃貸料相当額の50%以上なら、差額は課税しない」 という線があります。役員には、その線がありません。

半分でよいのは使用人。役員には、その線がない役員ここまで受け取って、はじめて課税されない使用人半分以上で課税されない賃貸料相当額の半分帯ぜんぶ=賃貸料相当額
帯ぜんぶが賃貸料相当額です。使用人は半分以上を受け取っていれば差額が課税されません。役員は満たすまで、足りないぶんがそのまま給与になります。どちらも相当額の計算そのものは同じ式です。

紛らわしいのは、役員の話にも50%という数字が出てくることです。 ただし意味がまったく違います。小規模でない住宅を会社が借り上げて貸すとき、家主へ払う家賃の50%と、自社所有の式で計算した額を比べて、高いほうを賃貸料相当額とする、という決まりです。 受け取る額の下限を「家賃の半分」と定めたものではありません。

同じ「50%」でも、使用人の話では「ここまで下げてよい」、 役員の話では「ここより下げてはいけない額を決めるときの比較対象」です。 方向が逆なので、取り違えると足りない額で決めてしまいます。

もうひとつ見かけるのが「家賃の10%でいい」という説明です。 こちらは根拠が見当たりません。小規模な住宅の計算をすると、 結果として家賃の1割前後になることはありますが、それは計算した結果であって、 先に1割と決めてよいという意味ではありません。

まず、小規模な住宅かどうか

計算式は、住宅が小規模な住宅に当たるかどうかで変わります。 分かれ目は床面積で、基準は建物の法定耐用年数によって違います。

建物の法定耐用年数小規模な住宅となる床面積
30年以下132㎡以下
30年超99㎡以下

法定耐用年数は建物の構造で決まります。木造や軽量鉄骨は30年以下、 鉄筋コンクリート造は30年を超えるのが一般的です。 同じ120㎡の部屋でも、木造なら小規模、鉄筋コンクリートなら小規模ではない、 ということが起こります。

マンションのような区分所有の建物では、専有部分の面積だけで判定しません。 共用部分の床面積を按分して専有部分に加えたうえで比べます。 専有面積だけで判定すると、小規模でない住宅を小規模として計算してしまい、 相当額が実際より小さく出ます。

床面積が240㎡を超える場合は、別の判定が入ります。 取得価額や支払賃貸料、内外装の状況などから豪華社宅に当たるかどうかを見ることになり、 当たると下に書く計算式は使えません。 240㎡以下でも、一般的な住宅にはないプールなどの設備があれば該当します。

小規模な住宅の計算(3つの合計)

小規模な住宅の賃貸料相当額は、次の3つを足した額です。すべて1か月あたりで、 固定資産税の課税標準額はその年度分を使います。

賃貸料相当額は、3つを足して決まる1建物の固定資産税の課税標準額から2建物の総床面積から3敷地の固定資産税の課税標準額から合計が、1か月あたりの賃貸料相当額家主へ払う家賃からは決まりません
小規模な住宅のときの形です。3つとも固定資産税の課税標準額か床面積から決まり、家主へ払う家賃は入っていません。家賃が高くても相当額が低いことも、その逆もあります。小規模でない住宅は別の式になります。
  1. 1建物の固定資産税の課税標準額に、0.2%を掛けた額
  2. 212円に、建物の総床面積を3.3㎡で割った数を掛けた額
  3. 3敷地の固定資産税の課税標準額に、0.22%を掛けた額

2つめで使うのは建物の総床面積です。 その役員が住んでいる部屋の面積ではありません。 大きな建物の一室を借りている場合、ここを部屋の面積に置き換えると、 相当額が本来より小さく出ます。

マネック(案内役):3つめを忘れがちだよ。土地のぶんも入るから、建物だけで計算すると足りなくなるんだ。

自分の数字で計算するなら、会社と個人でいくら変わるかまで試算すると、相当額と、いまの想定額で給与課税される差額が同時に出ます。

小規模でない住宅の計算

小規模な住宅に当たらない場合は、住宅を会社が所有しているか、 他から借りているかで変わります。

会社が所有している場合

建物の課税標準額に12%(法定耐用年数が30年を超える建物は10%)を掛けた額と、 敷地の課税標準額に6%を掛けた額を足し、それを12で割った額が 1か月あたりの賃貸料相当額になります。

他から借りている場合

会社が家主に支払う家賃の50%に当たる額と、 上の自社所有の式で計算した額を比べ、高いほうが賃貸料相当額になります。

ここで「家賃の50%でよい」と読まないでください。 比べた結果、自社所有の式のほうが高ければ、そちらが相当額になります。 課税標準額が分からないからといって家賃の50%だけで決めると、 本来の相当額を下回ることがあります。

足りないと、何が起きるか

受け取る額が賃貸料相当額に足りないと、その差額が給与として課税されます。 ここで起きることを、順に見ておきます。

  • 差額に所得税と住民税がかかります。役員本人の負担が増えます
  • 社会保険の報酬にも影響します。標準報酬月額の等級が上がれば、本人と会社の保険料がどちらも増えます
  • 会社から出ていくお金は変わりません。家賃を払っていることに変わりはないためです
足りない状態は、会社の経費が増えるかわりに、本人の税と社会保険料も増えます。 節税のつもりで手元に残るお金が減る、という形になりやすいところです。

会社の側から見ると、支出の名前が変わるだけで額は変わりません。 家賃として出ていった分のうち、相当額に足りない部分が給与として扱われる、 という整理になります。会社が新たに負担を増やすわけではないので、 「会社の経費が増えるから得」という話にもなりません。 増えるのは、受け取る側の税と、労使それぞれの社会保険料です。

社会保険については、もうひとつ知っておくことがあります。 社会保険で住宅を報酬に換算するときに使うのは、税務の賃貸料相当額ではなく、住宅の現物給与価額という別の定めです。都道府県ごとに額が違い、 税務で課税されない負担額でも、社会保険の報酬には入ることがあります。 税務の結論をそのまま社会保険に当てはめることはできません。

そもそも社宅と認められないもの

会社がお金を出していることと、社宅であることは別です。 次のものは社宅の貸与とは認められず、給与として課税されます。

やり方扱い
現金で住宅手当を支給する給与
本人が家主と契約している家賃を、会社が負担する給与
会社が家主と契約し、役員に貸して相当額を受け取る社宅の貸与

違いは誰が家主と契約しているかです。 個人名義のまま会社が家賃を払っても、社宅にはなりません。 すでに個人で借りている部屋を社宅にしたい場合は、 家主の承諾を得て法人名義へ切り替える手続きが要ります。

マネック(案内役):名義の切り替えは家主の都合もあるから、先に聞いておくと話が早いよ。

あわせて用意しておきたいのが社宅規程です。 誰に貸すのか、使用料をどう決めるのか、退去のときにどうするのかを書いた 社内の決まりで、役員だけを特別扱いしていないことを示す材料になります。 使用料は給与から天引きする形にしておくと、受け取った記録が毎月残ります。 現金でやり取りすると、受け取っていたかどうかが後から確かめにくくなります。

計算の前に、そろえるもの

3つの式はどれも固定資産税の課税標準額を使います。 賃貸物件でも必要で、推定では代えられません。 推定した額が本来の相当額を下回れば、その差額が給与として課税されるためです。

  1. 1建物の固定資産税の課税標準額(家主、または物件のある市町村から)
  2. 2敷地の固定資産税の課税標準額(同じく)
  3. 3建物の総床面積と、貸す部屋の床面積(区分所有なら共用部分の按分も)
  4. 4建物の構造(法定耐用年数が30年以下か、30年超か)

課税標準額は、固定資産税の課税明細書に載っています。 賃貸物件では家主が持っているものなので、依頼して写しをもらうか、 物件のある市町村で固定資産課税台帳の閲覧を申請することになります。

課税標準額は年度で変わります。変わった年には、相当額も計算し直してください。 社宅規程に「賃貸料相当額とする」と書いておくと、金額が動いたときに 規程まで直さずに済みます。

そろったら、賃貸料相当額の計算機に入れると、1画面でその場で出ます。

よくある質問

役員社宅は、家賃の50%を払えば課税されませんか?
されます。50%以上で課税されないのは使用人の扱いで、役員には当てはまりません。役員の話に出てくる50%は、小規模でない住宅を借り上げたときに「家主へ払う家賃の50%」と「自社所有の式で出した額」を比べて高いほうを賃貸料相当額とする、という意味です。払う額の下限ではありません。
固定資産税の課税標準額が分かりません。家賃から計算できますか?
できません。3つの計算式はどれも課税標準額を使います。賃貸物件でも必要で、家主から課税明細書の写しをもらうか、物件のある市町村で固定資産課税台帳を閲覧して確かめます。推定した額が本来の相当額を下回ると、その差額が給与として課税されます。
個人で借りている部屋の家賃を会社が払えば、社宅になりますか?
なりません。入居者本人が家主と契約している住宅の家賃を会社が負担するものは、社宅の貸与とは認められず給与として課税されます。現金で支給する住宅手当も同じです。社宅にするには、会社が家主と契約する形に切り替える必要があります。
役員社宅にすると、社会保険料も下がりますか?
税務とは別の判定になります。社会保険では、住宅を現物で支給したぶんを厚生労働大臣が定める現物給与価額で報酬に換算します。都道府県ごとに額が違い、税務で課税されない負担額でも社会保険の報酬には入ることがあります。税務の結論をそのまま当てはめることはできません。

参照した一次情報

あわせて読みたい

この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁 役員に対する給与のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。