株の損失と申告

株の損失の繰越控除とは?何年使える?

繰り越せるのは損失であって、税金ではありません。将来の利益が出なければ使われないまま終わります。

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この記事の要点

  • 繰り越せるのは、損失が出た年の翌年以後3年間です。4年目には残っていても使えません。
  • 期限は損失が出た年ごとに別々に進みます。合計額だけを持っていると、どれがいつ消えるか分かりません。
  • 繰越を続けるには、使うまでの各年に連続して確定申告書を出す必要があります。
  • 株の取引がなかった年も申告が要ります。1年でも抜けると、その先へ損失を運べなくなることがあります。
  • 繰り越した損失は古い年のものから先に使います。新しいほうから使うと、期限の近いものが残って消えます。
  • 繰り越せるのは損失そのもので、税金ではありません。将来の利益が出なければ使われません。

損失が出た年に相殺する相手がいなければ、その年に戻る税金はありません。 それでも申告する意味があるのは、使い切れなかった損失を 翌年以後に持ち越せるからです。ただし、黙っていても持ち越せるわけではありません。

繰越控除とは何か

繰越控除は、今年使い切れなかった損失を、翌年以後の利益から差し引ける仕組みです。 今年の損失を来年の利益にぶつけて、来年の課税対象を小さくします。

相殺する相手がいない年は、戻らずに繰り越す今年の譲渡損失売って確定した分今年の利益・配当なし今年戻る税金0円翌年以後へ繰り越す損失が消えるわけではありませんただし、繰り越すには今年の確定申告が要ります出さないと、来年に利益が出てもこの損失は使えません
今年の利益がゼロなら、差し引く相手がいないので戻る税金もゼロです。ただし損失そのものは残り、申告しておけば翌年以後に持ち越せます。

差し引ける相手は、損益通算のときと同じです。 上場株式等の譲渡益と、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当。 繰り越した損失を、給与所得から差し引くことはできません。

繰り越せるのは損失そのものであって、税金ではありません。 将来、差し引く相手の利益が出なければ、繰り越した損失は使われないまま終わります。

ここが「将来戻る税金」と言えない理由です。 繰越損失に税率をかけた金額は、あくまで上限です。 その金額が手に入ると決まっているわけではありません。

繰り越した損失を一般株式等(非上場株式など)の利益から差し引くことはできません。 区分が違うためです。

繰越控除が働く順番も決まっています。まずその年の損益を通算し、 それでも残った利益があれば、そこから繰越損失を差し引きます。 今年の損失と過去の損失が両方あるときは、今年の分を先に使い切る形になります。

差し引いた結果、課税対象がゼロになれば、その年に株の利益から源泉徴収された 税金は戻ってきます。利益が小さくて繰越損失を使い切れなければ、 残りはさらに翌年へ持ち越されます。期限が来るまでは、この繰り返しです。

何年使えるか

繰り越せるのは、損失が出た年の翌年以後3年間です。 その年に出た損失は、翌年・翌々年・その次の年まで使えます。 4年目には残っていても使えません。

繰越の期限は、損失が出た年ごとに別々に進む1年目2年目3年目4年目5年目6年目1年目に出た損失使える期間2年目に出た損失使える期間3年目に出た損失使える期間いちばん古い損失が、いちばん先に使えなくなります
古い損失から先に期限が来ます。合計額だけを持っていると、どれがいつ消えるのかが分かりません。使う順番も古いほうからです。

大事なのは、この時計が損失が出た年ごとに別々に動くことです。 3年続けて損失が出ていれば、期限の違う損失を3つ抱えることになります。 合計額だけを覚えていると、どれが先に切れるのかが分かりません。

損失が出た年使える期間使えなくなる年
1年目2年目から4年目まで5年目から
2年目3年目から5年目まで6年目から
3年目4年目から6年目まで7年目から
マネック(案内役):残高をひとつの数字でメモしてると、ここで困るんだ。 「いつ出た損失がいくら」で持っておくと、期限が見える。

3年という期間は、損失が出た年を含みません。損失が出た年は その年のうちに損益通算を済ませる年で、繰越が始まるのはその翌年からです。 「3年」と聞いて損失が出た年から数えると、1年ぶん短く見積もることになります。

期限の数え方は年単位で、月は関係しません。1月に出した損失も12月に出した損失も、 同じ年に出たものであれば期限は同じです。年末に売るか年明けに売るかで、 使える期間が1年ずれることになります。

毎年の申告が要る

繰越控除は、申告書を1回出せばあとは自動、という仕組みではありません。使うまでの各年に、連続して確定申告書を出し続ける必要があります。

  1. 1損失が出た年に、付表を付けた確定申告書を出す
  2. 2その後の年も、連続して付表を付けた確定申告書を出す
  3. 3実際に差し引く年にも、付表と計算明細書を付けた申告書を出す

付表というのは「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る 譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」のことです。 これが付いていない申告書では、繰越が続きません。

途中の年で申告が抜けると、その先へ損失を運べなくなることがあります。 抜けた年の申告をさかのぼって手当てできるかは、個別の事情で変わります。 心当たりがあれば、税務署か税理士に確かめてください。

なぜ毎年の申告が要るのかというと、繰越損失は申告書の上でしか存在しないためです。 証券会社が管理しているのは口座ごとの損益までで、 繰り越している損失の残高を持っているわけではありません。 残高をつないでいるのは、毎年提出する申告書そのものです。

裏を返せば、自分でも残高を記録しておく必要があります。 申告書の控えを捨ててしまうと、いくら繰り越しているのかを あとからたどるのが難しくなります。控えは期限が切れるまで取っておくことになります。

取引がなかった年も出す

見落としやすいのがここです。その年に株を1回も売買していなくても、申告書を出す必要があります。 繰越を次の年へつなぐための申告だからです。

「今年は何も取引していないから、申告することがない」と考えて出さないでいると、 そこで繰越が途切れます。翌年に大きな利益が出ても、 せっかくの損失が使えなくなります。

繰越を続けているあいだは、取引の有無にかかわらず毎年申告する。 これが繰越控除でいちばん落としやすい条件です。

取引がなかった年の申告は、書く金額もほとんどありません。 繰り越している損失の額を付表に書いて提出するだけです。 手間としては小さいのですが、出さなければ意味がないという点で、 忘れたときの損失だけが大きくなります。

会社員で、ふだんは年末調整だけで済ませている人ほど当たりやすい落とし穴です。 繰越を始めた年から、使い切るか期限が来るまでは、確定申告が続くことになります。

古い損失から先に使う

繰り越している損失が複数ある年は、古い年に出た損失から順に使います。 新しいものから使うと、先に期限が来るほうが残って消えてしまうためです。

同じ金額を繰り越していても、使う順番で最終的に消える額が変わります。 たとえば3年前の損失と1年前の損失を同じだけ抱えていて、 今年の利益がその片方ぶんしかないとき、どちらに当てるかで結果が変わります。

  • 3年前の損失に当てる … 期限の近いほうが片付き、1年前の損失はまだ2年使える
  • 1年前の損失に当てる … 3年前の損失は今年で期限が来て、使われずに消える

自分がいま何年分の損失をいくら抱えていて、今年どれが使われ、 どれが消えるのかは、金額を入れれば並びます。繰り越せる損失と期限を確かめると、発生した年ごとに分けて出ます。

期限が来るとどうなるか

期限の年までに使い切れなかった損失は、そこで消えます。 繰り延べたり、ほかの損失に付け替えたりはできません。

消えること自体を避けるために取引をするのは、順番が逆です。 期限に合わせて利益を確定させると、税金のために投資の判断を変えることになります。 ただ、いつ消えるのかを知らないまま過ごすのとは別の話です。 知ったうえで何もしないことは選べますが、知らなければ選べません。

ToMiは「期限が近いから売りましょう」とは言いません。 出しているのは、いつまでに使わないと消えるのかという事実までです。
どの損失が差し引ける相手を持っているのかは株の損益通算とは?に、配当と相殺する場合の条件は株の損失と配当は損益通算できる?にまとめています。

損失が出た年に申告しなかった場合

繰越控除は、損失が出た年に申告しておくことが出発点です。 その年に出していなければ、翌年に利益が出ても差し引く損失がありません。 申告書の上に存在しない損失は、使えないからです。

ここで気になるのが、あとから出せるのかという点です。 確定申告をする義務がなかった年について、あとから申告書を提出できる場合があります。 ただし条件や期限があり、提出できる期間を過ぎていれば受け付けられません。一律に「あとからでも大丈夫」とは言えないところです。

さかのぼれるかどうかは、その年に申告の義務があったか、 すでに申告済みか、どれだけ時間が経っているかで変わります。 自分のケースに当てはまるかは、税務署で確かめてください。

実務的には、損失が出た年に申告しておくのがいちばん確実です。 その年に戻る税金がゼロでも、翌年以後の選択肢を残すための手続きになります。 申告の手間と、使えなくなる損失の大きさを比べて決めることになります。

もうひとつ、口座を解約したり証券会社を変えたりした場合も、 繰り越している損失そのものは消えません。損失は人に紐づいていて、 口座に紐づいているわけではないためです。 ただし金額の根拠として、当時の年間取引報告書や申告書の控えが要ります。

よくある質問

株を売買していない年も確定申告が必要ですか?
繰越を続けているあいだは必要です。取引がない年に申告を出さないと、そこで繰越が途切れ、翌年に利益が出てもその損失を使えなくなることがあります。
繰り越している損失は、給与の税金から差し引けますか?
差し引けません。繰り越した損失を使える相手は、上場株式等の譲渡益と、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当だけです。一般株式等の利益からも差し引けません。
期限が近い損失があります。利益を確定させたほうがよいですか?
税金のために投資の判断を変えることになるため、一律にはすすめられません。ただし、いつ消えるのかを知らなければ選ぶこともできません。期限と金額を把握したうえで決めてください。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁 No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除や、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。