保険と税

貯蓄型保険は解約したほうがいい?

払った額より戻る額が少ない。その差は、続けても解約しても戻りません。判断に使えるのは、これから払う保険料と、これから受け取る額だけです。

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この記事の要点

  • すでに払った保険料と現在の解約返戻金の差は、続けても解約しても戻りません。判断の材料になりません。
  • 比べるのは、これから払う保険料と、これから受け取る額だけです。
  • 選択肢は2つではなく、続ける・払済にする・解約するの3つ。減額や特約の解約まで入れると5つあります。
  • 払済と解約の側には、払わずに済む保険料を足してから比べます。足さないと、続けるほうが必ず有利に見えます。
  • 解約すると保障が終わります。健康状態によっては入り直せないため、金額の順位だけでは決められません。
  • 将来の返戻金は商品ごとに決まっていて、いまの返戻率からは逆算できません。保険会社の予定表が要ります。

「元本割れするから続ける」は判断になっていない

貯蓄型の保険を解約しようとすると、たいていこの数字にぶつかります。

項目金額
これまで払った保険料800万円
いま解約すると戻る額650万円
差−150万円

よくある状況

ここで「150万円も損するなら続けよう」と考えるのは自然です。 ただし、この150万円は、続けても解約しても戻ってきません。 すでに保険会社に渡ったお金で、今日からの選択では動かせない部分です。

判断に使えるのは、これから払う保険料と、これから受け取る額だけです。 過去の差額を取り戻そうとすると、今後の損得と関係なく「続ける」を選ぶことになります。

この記事では、何と何を比べれば判断できるのかを整理します。 解約をすすめる記事でも、続けることをすすめる記事でもありません。 比べ方が決まっていないと、どちらを選んでも後から不安になるからです。

戻らないお金を、判断から外す

戻らない部分と、これから動かせる部分いまこれまで払った保険料戻らない。判断に使えないこれから払う/受け取るここだけで比べる左を取り戻すために右を決めると、ほぼ必ず「続ける」になる
すでに払った保険料と現在の解約返戻金の差は、続けても解約しても戻りません。判断に使えるのは、これから払う保険料と、これから受け取る額だけです。左側を取り戻そうとすると、右側の損得と関係なく「続ける」を選ぶことになります。

図の左側が、すでに出ていったお金です。 続けても解約しても、ここは変わりません。 右側だけを見て、どちらが多く残るかを比べます。

それでも左側が気になるのは、人の感覚としては当然のことです。 ここまで払ったという事実は重く、無かったことにはできません。 ただ、その重さは、これからの損得を変えません。 重さを感じたまま、右側だけで比べる。この切り分けができるかどうかが、 この判断のほとんどを決めます。

マネック(案内役):「取り返したい」が出てきたら、いったん止めて。 取り返せるかどうかは、これから受け取る額だけで決まるよ。

過去の差額には、もうひとつ役割があります。契約の実績を知ることです。 20年払って元本割れしているなら、その契約は貯蓄として効率がよくなかった、という事実が分かります。 ただしそれも「これから先も同じとは限らない」ので、 将来の返戻金を保険会社から取り寄せて確かめることになります。

選択肢は2つではなく3つ

「続けるか、解約するか」で悩んでいる人が多いのですが、 間にもうひとつあります。払済保険への変更です。

今後の保険料保障手元に入る現金
続ける払い続けるいまのまま無い
払済にする止まる小さくなって残る無い
解約する止まる無くなる解約返戻金

3つの選択肢

払済は、保険料の支払いだけを止めて契約を残す変更です。 解約返戻金は手元には来ず、保障額を下げた保険の原資として使われます。保険料は止めたいが、保障をゼロにはしたくない場合の選択肢になります。

さらに細かく見ると、選択肢は5つあります。 保障額を減らす「減額」と、特約だけをやめる「特約の解約」を入れると、 保険料を一部だけ軽くする道もあります。

方法保険料残るもの
減額減らした分だけ安くなる小さくなった保障と、特約
特約の解約特約の分だけ安くなる主契約はそのまま
払済止まる小さくなった主契約のみ
延長(定期)保険止まる同額の死亡保障。期間は短くなることがある
解約止まる何も残らない。現金を受け取る

保険料を軽くする・止める方法

一時的に苦しいだけなら、減額や特約の解約のほうが戻しやすいことがあります。 払済や延長に変えると、払込を再開することはできません。 収入が戻ったときに元に戻すには復旧の手続きが要り、告知か診査が必要になります。

ただし、払済にできる契約とできない契約があります。 解約返戻金が少なければ変更できず、保険種類によっては取扱いがありません。 詳しくは払済保険とは?で扱っています。

同じ資金条件にそろえて比べる

3つを比べるときに、ほとんどの人が落とす項目があります。払わずに済む保険料です。

続ける人は保険料を払い続けます。払済と解約の人は払いません。 保険会社が示す将来の返戻金だけを並べると、 払っていないぶんのお金が消えた比較になり、続けるほうが必ず有利に見えます。

払わずに済む保険料まで足して、はじめて比べられる保険から続ける浮いた保険料保険から払済にする浮いた保険料保険から解約する続ける側は払い続けるので、浮いたお金が無い
払済と解約は保険料の支払いが止まるので、そのお金を別に置けます。保険会社の示す返戻金だけを並べると、払っていないぶんが消えた比較になり、続けるほうが必ず有利に見えます。棒の高さは形を示す仮の値で、実際の金額ではありません。

月2万円の保険料で、あと10年払う契約なら、払わずに済む額は240万円です。 これを現金のまま置いておくのでも、別の置き場所に移すのでも、手元に残っているという事実は変わりません。 3案を並べるときは、この240万円を払済と解約の側に足してから比べます。

具体的に並べると、こうなります。月2万円・あと10年・いまの返戻金180万円の契約で、 保険会社から「続けた場合の10年後は500万円、払済にした場合は210万円」と返ってきたとします。 払わずに済む保険料は240万円です。現金のまま置く前提で足すと、次のようになります。

案保険から払わずに済む保険料合計
続ける500万円0円500万円
払済にする210万円240万円450万円
解約する180万円240万円420万円

同じ条件でそろえた例(利回り0%・税金は考慮せず)

この例では続ける側が多く残ります。 ただし、払済と解約の側に240万円を足さなければ、500万円・210万円・180万円という並びになり、差はまったく違って見えます。 足すか足さないかで、結論ではなく差の大きさが大きく変わる、というところが重要です。

比べるのは「保険からいくら戻るか」ではなく、 「手元にいくら残るか」です。保険の外にあるお金まで含めて数えます。
置いた利回りで結論が変わる場合は、その利回りが得られる前提に根拠があるかを確かめてください。 利回り0%(現金のまま)でも解約側が上回るなら、その結論は運用成果に依存していません。

金額で決められない部分

ここまでは金額の話でした。 ただし、この判断は金額だけでは決められません。解約すると保障が終わるからです。

年齢や健康状態によっては、同じ条件で入り直せません。 10年後の資産が多いほうを選んだ結果、 途中で入院や死亡があったときに何も出ない、という状態になりえます。

解約した場合の金額には、失う保障を別で用意するときの費用が入っていません。 同じ保障を買い直すと新しい保険料がかかり、そのぶん解約側の数字は小さくなります。 必要な保障がほかで足りているなら、この費用はかかりません。 足りていないなら、買い直す費用まで含めて比べることになります。

  • いま必要な保障額はいくらか
  • その契約が無くなったとき、足りなくなる額はいくらか
  • 足りない分を別で用意する場合、保険料はいくらか
  • 健康状態で、入り直せるか

この4つが先です。金額の順位は、そのあとに見ます。

保障の必要額は、年齢とともに下がっていくのが普通です。 子どもが小さいうちは、万一のときに教育費と生活費を長く賄う必要がありますが、 独立すれば必要額は大きく減ります。契約したときに必要だった額と、いま必要な額は違います。 「当時は必要だった」ことと「いまも必要」であることは別なので、 そこは数え直す価値があります。

逆に、死亡保障ではなく貯蓄の置き場所として入っている契約なら、 失う保障はそもそも小さいことになります。 その場合は金額の比較がそのまま判断材料になります。 自分の契約がどちらなのかは、証券の死亡保険金額を見れば見当が付きます。 払った保険料の総額に近い金額しか設定されていないなら、 保障として買っていたものは多くありません。

解約を検討する価値がある場面

解約がすすめられる場面、という書き方はしません。 どの契約にも事情があり、一律には決まらないからです。 代わりに、比べておく価値が高い場面を挙げます。

場面なぜ比べる価値があるか
保険料の負担が重い払い続けられないなら、止める方法を先に知っておく必要がある
近く大きな現金支出がある保険の中のお金は、使いたいときにすぐ動かせない
必要な保障が別契約で足りている保障を失う影響が小さい
払込が終わっている今後の保険料がゼロなので、続ける側の負担がない

比べておく価値が高い場面

逆に、健康状態で入り直せない場合は、金額の順位より先に保障を確かめることになります。 失う保障は、資産の多さでは埋め合わせられません。

急いで決めないほうがよい場面もあります。 低解約返戻金型の契約で、払込満了まであと数年という場合です。 この型は払込期間中の返戻金を低く抑えてあり、満了すると返戻率が上がります。 満了の直前に解約すると、その段差をまたぐ直前で降りることになります。 あと何年で満了するのかは、証券か返戻金予定表で確かめられます。

「いま解約すると損だから、満了まで待つ」という判断も、 満了後の返戻金を確かめてから決めてください。 待てば必ず得になるわけではなく、 待つあいだに払い続ける保険料のほうが大きいこともあります。

決める前にやること

順番があります。数字を取り寄せる前に決めようとすると、推測で判断することになります。

順番やること
1いま必要な保障額を数える
2保険会社に、いまの解約返戻金を確認する
3払済に変更できるか、変更後の保障額と将来の返戻金を取り寄せる
4続けた場合の、将来の返戻金を取り寄せる
53案を同じ条件で並べる

決めるまでの順番

2から4は同じ電話で頼めます。 コールセンターでも代理店でも、契約番号を伝えれば試算を出してもらえます。 その場で答えが出ないこともありますが、書面で郵送されるか、 契約者向けのページで確認できる形になることが多いはずです。

3と4が揃うまで、3案の順位は出せません。 将来の返戻金は商品ごとに決まっていて、 いまの返戻率から逆算することはできないからです。 とくに低解約返戻金型は払込期間の前後で段が付くので、 いまの率を伸ばした数字は実際とまったく違います。

取り寄せた数字で、3案の将来資産を比べる

解約で利益が出る場合は、税金がかかることがあります。 扱いは保険の税金のデータにまとめています。

よくある質問

元本割れしている保険は、続けたほうが得ですか?
元本割れしているかどうかでは決まりません。すでに出た差額はどの道を選んでも戻らないためです。判断に使うのは、これから払う保険料と、これから受け取る額です。続けた場合の将来の返戻金を保険会社から取り寄せて、解約して別に置いた場合と比べてください。
解約と払済、どちらを選べばいいですか?
現金が必要なら解約、保障を残したいなら払済が候補になります。ただし払済は契約によってはできません。まず保険会社に、払済に変更できるか、変更後の保障額と将来の返戻金がいくらかを確認してください。その数字が揃ってから金額を比べます。
解約する前に確認することは?
いま必要な保障額、その契約が無くなったときに足りなくなる額、足りない分を別で用意する場合の保険料、健康状態で入り直せるか。この4つです。金額の順位は、そのあとに見ます。

参照した一次情報

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