違いを1枚で
どちらも保険料の払込を止める手続きですが、残るものが違います。 先に全体を並べます。
| 払済保険に変更 | 解約 | |
|---|---|---|
| 今後の保険料 | 止まる | 止まる |
| 契約 | 残る | 終わる |
| 死亡保障 | 小さくなって残る | 無くなる |
| 医療などの特約 | 原則として消滅 | 消滅 |
| 手元に入る現金 | 原則として無い | 解約返戻金を受け取る |
| 将来の返戻金 | 払済後の契約に応じて残る | 無い |
| 元に戻せるか | 復旧できる場合がある | 戻せない |
| 税金 | 受け取りが無いので、その時点では課税されない | 利益が出れば課税されることがある |
払済保険への変更と、解約
表の上から3つは、どちらも保険料の支払いが止まる点で同じです。 毎月2万円払っていたなら、どちらを選んでもその2万円は手元に残ります。 ここを同じだと理解しておくと、残りの違いが見やすくなります。 違うのは、止めたあとに何が残るかだけです。
いちばん大きい違いは、現金が入るかどうか
払済に変更しても、解約返戻金が手元に振り込まれることはありません。 その返戻金は、組み替える保険の原資としてそのまま使われます。
ここを取り違えると、手続きの目的から外れます。いま現金が必要なら、払済は答えになりません。 逆に、現金は要らないが保険料の支払いを止めたいだけなら、 解約まで進む必要はないかもしれない、ということになります。
もうひとつ、現金が入らないことには良い面もあります。 受け取らないので、その時点で税金がかかりません。 解約して利益が出ていれば一時所得として課税される可能性がありますが、 払済ではその場面になりません。受け取りを先に延ばすという見方ができます。
現金が要る場合でも、解約の前に確かめられることがあります。 契約者貸付です。解約返戻金の範囲内で借りられる仕組みで、 契約を残したまま現金を用意できます。ただし利息がかかり、 返さないまま置いておくと返戻金から差し引かれていきます。 短期で返せる見込みがあるかどうかで、使えるかが変わります。
残る保障の差
払済にすると、保障はゼロにはなりませんが、小さくなります。 どれだけ小さくなるかは、そのときの解約返戻金で買える分だけです。
そして特約は原則として消えます。 医療特約やがん特約を主契約に付けている場合、 払済にした時点でその保障は無くなります。 「保障が残る」という説明を、医療の保障まで残ると受け取らないでください。
どのくらい小さくなるかは、契約の進み具合で変わります。 払込期間の終盤まで来ていれば、積立が十分に貯まっているので、 もとの保障にそれなりに近い額が残ることがあります。 逆に、契約してまだ数年なら、残る保障はかなり小さくなります。 場合によっては、組み替える原資が足りず、そもそも払済にできません。同じ「払済にする」でも、何年目かで結果がまったく違います。
差が出るのは死亡保障です。払済なら小さくなって一生涯残り、 解約ならゼロになります。葬儀費用として何か残したいのか、 それとももう保障としての役割は終わっているのか。 そこが判断の分かれ目になります。
将来の金額の差
金額で比べるときは、払わずに済む保険料まで足してそろえます。 どちらも保険料の支払いが止まるので、ここは条件が同じです。
払済の側には「払済後の契約から将来受け取れる額」が残り、 解約の側には「いま受け取った返戻金」が残ります。 いまの返戻金が同じでも、 払済後の契約の中で積立が増えていく商品なら、時間が経つほど払済の側が増えます。
逆に、払済にしたあとほとんど増えない商品もあります。 その場合は、受け取って別に置くのとあまり変わらない、という結論になりえます。どちらなのかは、払済後の返戻金の推移を取り寄せないと分かりません。
もうひとつ、比べる時点をどこに置くかで結論が動くことがあります。 5年後で比べると解約が多く、20年後で比べると払済が多い、ということが起こります。 払済後の契約の中で積立が増え続ける商品だと、時間が経つほど払済の側が伸びるためです。何年後の話をしているのかを決めてから比べてください。 決めずに並べると、都合のよい時点の数字を選んでしまいます。
| 案 | 保険会社に訊くこと |
|---|---|
| 続ける | 将来の解約返戻金(5年後・10年後・払込満了時・満期時) |
| 払済にする | 変更後の死亡保障額と、将来の解約返戻金 |
| 解約する | いま振り込まれる額(貸付や控除を引いたあと) |
比べるときに必要な数字
戻せるかどうか
ここは、2つの選択肢のあいだでいちばん性質が違うところです。 金額や保障は程度の差ですが、戻せるかどうかは有無の差になります。
解約は戻せません。同じ契約には二度と入れず、 入り直すときは、そのときの年齢と健康状態で保険料が決まります。
払済は、一定期間内であれば変更前の契約に戻せる場合があります。 これを復旧といいます。ただし無条件ではありません。
- 診査または告知が必要。健康状態が変わっていると通らないことがある
- 止めていた期間の積立の不足額を払い込む必要がある
- 会社によっては、所定の利息(複利)も払い込む
- 復旧を取り扱っていない会社や商品もある
期間の制限もあります。復旧できるのは変更から一定期間内で、 その期間は会社や商品によって違います。 何年も経ってから思い立っても、間に合わないことがあります。戻す可能性が少しでもあるなら、その期限を先に聞いておくほうが確実です。
「あとで戻せるから、とりあえず払済に」という判断は、 条件を確かめてからにしてください。 戻せないことが分かったうえで選ぶのと、戻せると思って選ぶのとでは、意味が違います。
税金のかかり方が違う
解約してお金を受け取ると、利益が出ていれば課税されることがあります。 払済への変更では、その時点でお金を受け取らないため、課税の場面になりません。
| 受け取り | 課税 | |
|---|---|---|
| 払済に変更 | 無い | 変更の時点では課税されない |
| 解約 | 解約返戻金 | 利益が出れば一時所得になることがある |
課税の場面
ただし、課税されるかどうかは利益が出ているかで決まります。 元本割れしている契約を解約した場合、利益がないので課税されません。 貯蓄型の保険を途中で解約する人の多くは元本割れしている状態なので、実際には税金がかからないことも珍しくありません。 心配して解約をためらう前に、払込の累計と受け取る額を見比べてください。
一時所得になるのは、保険料を負担した人と受取人が同じ場合です。 受け取った額から払い込んだ保険料と特別控除50万円を引き、 残りの2分の1が課税対象になります。受け取った額がそのまま課税されるわけではありません。
どちらを選ぶかの分かれ目
金額の順位だけでは決まりません。先に確かめるものがあります。
| 順番 | 確かめること | 結果の使い方 |
|---|---|---|
| 1 | いま必要な保障額 | この契約が無くなって足りるか |
| 2 | 健康状態で入り直せるか | 難しいなら、保障を失う影響が大きい |
| 3 | 近く現金が要るか | 要るなら、保険の中にあるお金は使えない |
| 4 | 3案の将来資産 | ここまで確かめてから金額を見る |
確かめる順番
実際には、4まで行かずに決まることもあります。 保障がもう要らず、入り直す必要もなく、近く現金も使わない。 その3つが揃っているなら、残るのは金額の比較だけです。 逆に、どれか1つでも引っかかるなら、金額は参考値にしかなりません。4つのうち最初の3つは、金額の重みを決めるためのものだと考えてください。
迷ったときに、いったん止めるという選択もあります。 払済にも解約にもせず、1年だけ払い続けて考える。 その1年ぶんの保険料が、判断を急がずに済ませる費用になります。 ただし低解約返戻金型で払込満了が近い場合など、 時期そのものが効く契約もあるので、予定表の位置は確かめておいてください。
この順番にしているのは、金額を先に見ると、そこから動けなくなるからです。 「解約のほうが50万円多い」と知ったあとで保障の話をしても、 50万円が頭に残ったまま判断することになります。 保障の確認は、金額を知る前に済ませておくほうが素直に進みます。
1と2で引っかかるなら、金額がどうであれ、保障を残す方向で考えることになります。 3で引っかかるなら、金額の多さより、使えるかどうかが効きます。 そこまで確かめたうえで、4の金額を見ます。
