残クレとは
残価設定型クレジット(残クレ)は、車両価格の一部を「残価」として最後まで払わずに残し、残りを分割して払うクレジットです。 メーカーによって呼び名が違い、トヨタは残価設定型プラン、日産はBVC(バリュー・ビルディング・クレジット)、 ホンダは残価設定型クレジットと呼んでいます。仕組みはどれも同じです。
契約が終わったときに選べるのは3つです。車を返す、同じ販売店で新しい車に乗り換える、 残価を払って買い取る。返す場合と乗り換える場合は、 条件を満たしていれば最終回の支払いがありません。買い取る場合は残価を払います。
ここで多いのが「最終回0円」という言葉の読み違いです。 0円で終われるのは車を返すからであって、安く買えたからではありません。 返した時点で、手元には車がありません。 同じ年数を現金やローンで買った人は、その時点で車を持っていて、売れば代金が入ります。 比べるときは、終わったあとに車があるかどうかをそろえる必要があります。
なぜ月々が軽くなるのか
通常のクレジットは、車両価格の全部を支払回数で割ります。 残クレは、車両価格から残価を引いた分だけを割ります。割る対象が小さいので、1回あたりの額が下がります。
たとえば車両価格が同じでも、残価を車両価格の4割に設定すれば、 分割するのは残りの6割です。回数が同じなら、毎月の支払は単純計算で6割の水準になります。 この「軽さ」は値引きでも割引でもなく、払う時期をずらしただけです。
棒グラフにすると、残クレの毎月の棒は低いかわりに、最終回に高い棒が1本立ちます。 月々の額だけを並べた比較は、この1本を数えていません。 トヨタは公式サイトに、買い上げを選んだ場合は 「最終回のお支払額(残価)を含めたお支払合計額は、一般的なクレジットの方が軽くなる場合があります」と書いています。 売る側が自分で書いていることなので、ここは疑わなくて大丈夫です。
もうひとつ、月々の軽さには回数も効いています。 残クレの契約期間は3年・4年・5年から選べる会社が多く、長いほど1回あたりは下がります。 ただし期間を延ばすと、残価の設定は低くなるのが普通です。 5年後の車は3年後の車より値打ちが下がっているので、当然といえば当然なのですが、「長くすれば月々も軽く、最後も軽い」とはなりません。どちらかを軽くすれば、もう一方が重くなります。見積書を何パターンか出してもらうと、この関係が見えます。
残価は「将来いくらで売れるか」ではない
残価は、契約のときに決める最終回の支払額です。 その金額でその車が売れることを保証するものではありません。ここは混ざりやすいので、分けて覚えてください。
| 残価 | 将来の売却価格 | |
|---|---|---|
| 決まる時期 | 契約のとき | 売るとき |
| 決める人 | 販売会社・信販会社 | 買取業者・中古車市場 |
| 性質 | 契約上の支払額 | そのときの相場 |
| 条件を満たせば | 返却でこの額の支払いが不要になる | 条件という概念がない |
この2つがずれると、どちらに転んでも影響があります。 相場が残価より高く育っていれば、買い取って売ったほうが手元に残ります。 相場が残価より低ければ、返してしまうほうが得をします。どちらに転ぶかは、契約のときには分かりません。残クレは、この振れ幅を自分で負わない代わりに、その分の費用を払う仕組みだと考えると分かりやすくなります。
ただし、残価が保証される条件は契約ごとに違います。 トヨタは公式サイトで「残価を保証していない販売店も一部ございます」と書いています。 保証されていると思い込まないほうが安全です。
利息は、残した分にもかかる
ここが残クレでいちばん誤解されるところです。 残価は「最後まで払わない」のであって、借りていないわけではありません。 その分のお金は契約期間中ずっと借りたままなので、分割手数料(利息)がかかり続けます。
通常のクレジットなら、毎月の返済で元本が減っていきます。 残クレは残価の部分の元本が最後まで減らないため、同じ年数・同じ利率でも、 利息の総額は通常のクレジットより大きくなりがちです。 月々が軽いことと、払う利息が少ないことは別です。
実際にいくら違うのかは、見積書の金額を入れれば計算できます。 月々の額、最終回の額、実質年率の3つがあれば足ります。
向いている場面
仕組みを分かったうえで選べば、残クレが合う場面はあります。
- 数年で乗り換えるつもりがはっきりしている。売却の手間と、相場が下がったときの影響を自分で負わずに済む
- 手元の現金を減らしたくない。頭金を抑えて乗り始められる
- 走る距離が短く、契約の距離条件に余裕がある
- 車の状態をきれいに保てる見込みがある
とくに1つ目は、残クレの本来の使いどころです。 返すことを前提にした契約なので、返す予定の人にとっては条件と使い方が一致します。 逆に、長く乗るつもりの人が月々の軽さだけで選ぶと、仕組みと使い方がずれます。
引っかかりやすいところ
走行距離と車の状態に条件が付く
返すことが前提の契約なので、返ってくる車の価値を保つための条件があります。 走行距離の上限、事故修復歴がないこと、違法改造をしていないこと、内外装の損傷が一定の範囲内であること。 条件を外れた分は、返却のときに精算になります。
条件の公表のしかたは会社ごとに違います。 日産は走行距離も内外装の減点も車種区分つきの表で公表し、 ホンダは100点分の免責(1点=1,000円)という形で公表し、 トヨタは「各店舗にて定める走行距離」として全国共通の数字を公表していません。3社が公表している返却条件にまとめてあります。
途中でやめにくい
残クレは契約期間を前提に残価と支払額が組まれているため、原則として途中で解約できません。 事情があってやめる場合の精算のしかたも契約ごとに違います。乗る年数が決まっていないうちに契約期間を決めると、あとから動かせません。
乗り続けるには、もう一度お金の話になる
契約が終わってもその車に乗り続けたい場合、残価を一括で払うか、 組み直して分割にするかを選びます。組み直す場合は新しい審査があり、 そのときの金利が適用されます。契約時の金利がそのまま延びるわけではありません。
見積書で確かめる4つ
残クレの見積書を受け取ったら、次の4つを探してください。 どれも必ず書かれていて、この4つがあれば自分で計算できます。
| 確かめるもの | なぜ要るか |
|---|---|
| 最終回支払額(残価) | 契約が終わるときに残る額。乗り続けるならこれを払う |
| 実質年率 | 利息の重さ。銀行ローンと比べるときの共通の物差しになる |
| 支払回数(契約期間) | 何年後に最終回が来るか。乗る年数とそろえる |
| 走行距離の条件と、超えたときの精算 | 返す前提なら、ここが合わないと精算になる |
4つ目は見積書に書かれていないことがあります。その場合は契約書か、販売会社への確認になります。 距離の上限は販売会社ごとに違い、年1万kmを基準にする商品が多く見られますが、共通のルールではありません。自分の契約の数字を確かめてください。
銀行ローンとの違いは残クレと銀行ローンの違いで、所有権・金利・途中で売れるかという観点から整理しています。
