いちばん大きな違いは金利ではない
銀行の自動車ローンと、販売会社で組む残価設定型クレジット。 比べるときに真っ先に見られるのは金利ですが、使い方を決めるのは金利ではなく、契約の形のほうです。
この違いは、乗っている間ずっと効きます。 銀行ローンなら、距離を気にせず走れますし、途中で売ることもできます。 残クレは、契約で決めた距離を超えれば精算になり、原則として途中でやめられません。 年に2万km走る人と、5,000kmしか走らない人とでは、同じ契約でも意味が変わります。
車が自分のものになるかどうか
銀行ローンは、借りたお金で車の代金を販売会社に払います。 車は買った人のものになり、ローンは銀行との間に残ります。 販売会社との関係は、買った時点で終わります。
残クレは、信販会社が代金を立て替え、返すことを前提にした分割払いの契約になります。 契約が終わるときに、返す・乗り換える・買い取るのどれかを選びます。 返す前提の契約なので、戻ってくる車の価値を保つための条件が付きます。
| 銀行ローン | 残価設定型クレジット | |
|---|---|---|
| 車の扱い | 自分のものになる | 返すことが前提 |
| 走行距離の制限 | なし | 契約で決めた上限がある |
| 傷・修復歴の条件 | なし | 返却時に査定され、条件を外れると精算 |
| 途中で売る | できる(残債は完済が必要) | 原則としてできない |
| 契約終了時 | 払い終われば終わり | 返す・乗り換える・買い取るから選ぶ |
| 申し込み先 | 銀行(車が決まる前でも申し込める行がある) | 販売会社 |
金利の比べ方
銀行の自動車ローンは、どの行も金利を幅で公表しています。 審査の結果でその範囲のどれかに決まるので、公表されている下限で借りられるとは限りません。 同じ銀行でも、借入額・使いみち・ほかの取引によって率が変わります。
刻み方も行ごとに違います。借入額が大きいほど下がる段を持つ行、 電気自動車なら引き下げる行、住宅ローンを使っていれば引き下げる行があります。銀行別の自動車ローン金利に、公式サイトから読んだ条件をまとめてあります。
残クレの金利は「実質年率」として見積書に書かれています。 こちらは車種・販売会社・契約時期で変わり、公表された一覧がありません。比べられるのは、自分の見積書に書かれた実質年率と、銀行の提示金利です。一般論としての「残クレは高い」「銀行は安い」は、自分の2つの数字の前では意味を持ちません。
実質年率という言葉にも触れておきます。これは、利息だけでなく 手数料も含めた年あたりの負担を1つの率に直したものです。 分割手数料の総額だけを見せられても、期間が違えば重さは比べられません。 実質年率なら、期間の違う見積書どうしでも同じ物差しに乗ります。見積書に実質年率が書かれていなければ、書いてもらってください。分割払いの契約では表示されることになっている数字です。
もうひとつ、銀行の金利には「引き下げの条件」が付くことがあります。 住宅ローンを同じ銀行で使っていれば下げる、電気自動車なら下げる、 借入額が大きいほど段階的に下がる、といった形です。 これは審査で決まる幅とは別に効くので、自分に当てはまる条件があるかを先に確かめると、 提示される率が変わることがあります。
返済期間を延ばすと何が起きるか
銀行ローンで月々を軽くする方法は、返済期間を延ばすことです。 ただし、延ばした分だけ元本の減りが遅くなり、払う利息は増えます。月々が下がったぶん負担が消えたわけではありません。
ここで効いてくるのが、乗る年数と返済期間のずれです。 7年ローンで買った車を5年で手放すと、その時点でまだ残債があります。 売った代金が残債に届けば差額が手元に残り、届かなければ差額を払って完済することになります。
残クレも形は似ています。残価の部分が最後まで元本として残るので、 契約の途中では残債が大きいままです。違うのは、残クレには返すという出口があることです。
金利以外にかかるお金
金利だけでは比べられません。銀行ローンには、金利とは別に費用がかかる行があります。
- 融資時の事務取扱手数料。無料の行もあれば、定額でかかる行もある
- 繰上返済の手数料。窓口では有料で、アプリやネットバンキングなら無料という行がある
- 保証料。金利に含まれている行と、別に必要な行がある
- 条件変更の手数料、印紙代
桁の感覚をつかむために、具体的に置いてみます。 200万円を5年で借りるとき、金利が0.1%違うと利息の差はおよそ5,000円です。 事務手数料3,300円や繰上返済手数料5,500円は、その差と同じ桁になります。 小数点以下の金利を比べる前に、手数料の有無を見たほうが早いことがあります。
残クレ側にも、金利に現れない費用があります。返却時の精算です。 走行距離の超過や内外装の損傷は、返すときに初めて金額になります。 契約の時点で分かっているのは、条件と、超えたときの計算方法までです。
この精算は、見積書の支払総額には出てきません。 返すときにいくら請求されるかは、そのときの車の状態で決まるからです。 ゼロで済むこともあれば、十万円を超えることもあります。 数字が確定していないものを「ないもの」として比べると、残クレの側だけが軽く見えます。 返却を前提に比べるなら、精算の見込みをいくらか置いて計算しておくほうが実態に近くなります。
逆に、銀行ローンにも見積書に出てこない負担があります。売るときの手間です。 買取業者を回って査定を取り、名義変更の書類を用意して、値段の交渉をする。 残クレの返却なら、販売会社に持ち込んで査定を受けるだけで終わります。 この差を金額に直すことはできませんが、数年おきに乗り換える人にとっては毎回かかる手間です。 残クレが選ばれている理由のひとつが、ここにあります。
同じ条件に並べるには
2つを比べるときに、ほとんどの比較が崩れるのはここです。 残クレを返却で終わらせると最終回の支払いがありません。 銀行ローンで買った人は、同じ時期に車を持っていて、売れば代金が入ります。片方だけ車が残っている比較をすると、残クレが実際より安く出ます。
| そろえる条件 | 銀行ローン | 残クレ |
|---|---|---|
| 手放す | 売って残債を完済。代金が手元に入る | 返却。最終回なし。精算が出ることがある |
| 乗り続ける | 返済を続ける。車は手元にある | 残価を払う(または組み直す)。車は手元にある |
| 比べる数字 | 払った総額 − 売却代金または車の価値 | 同じ考え方で計算する |
この引き算を自分の見積書の数字で見たい場合は、計算機を用意しています。 支払総額・金利・残価・乗る年数を入れると、3つの買い方が同じ条件で並びます。
どちらを先に検討するか
どちらが正しいという話ではなく、どちらが自分の使い方に合うかです。 判断の順番としては、次のように見ると早く決まります。
| こういう場合 | 先に検討するもの |
|---|---|
| 長く乗るつもり | 銀行ローン。距離や傷の制限がなく、払い終われば終わる |
| 数年で乗り換えるつもり | 残クレ。売却の手間と相場の変動を自分で負わずに済む |
| 走る距離が多い・読めない | 銀行ローン。距離の条件が重く効く |
| 手元の現金を残したい | どちらも。頭金を抑えられるが、利息の総額は増える |
| 返済に不安がある | 買い方の前に、借りる額と時期の見直し |
最後の行だけは性質が違います。金利を0.5%下げて得られる額より、 払えなくなったときに失うもののほうがはるかに大きくなります。 月々いくらまでなら確実に払えるかを先に決めて、その範囲に収まる買い方だけを比べてください。 収まらないなら、車両価格を下げる、購入の時期をずらす、いま乗っている車を長く使う、 という選択肢のほうが先にあります。
「手元の現金を残したい」の行も、少し補っておきます。 どちらを選んでも頭金を抑えれば現金は残りますが、その分だけ借りる額が増え、利息も増えます。現金を残すことには値段が付いているということです。 それでも残す判断には理由があります。急な出費や収入の変動に対応できる幅が、現金の量で決まるからです。 大事なのは、いくら払って何を残しているのかを金額で把握しておくことで、 「なんとなく頭金ゼロ」にしないことです。
残クレそのものの仕組みは残クレとは?に、契約が終わるときの選び方は残クレの最終回はどうなる?にまとめています。
