2人の収入を使って家を買う方法は、ひとつではありません。ペアローンと収入合算があり、収入合算はさらに連帯債務型と連帯保証型に分かれます。どれも「夫婦の収入を合わせて借りる」と説明されるので同じものに見えますが、契約の本数が違い、誰が債務者になるかが違います。そしてその違いから、住宅ローン控除を受けられる人と、団体信用生命保険の被保険者が決まります。
3つの形は、契約の本数と債務者の数で分かれる
いちばん外側の違いは、金銭消費貸借契約が何本になるかです。
ペアローンは、2人がそれぞれ自分の名前で借ります。契約は2本です。Aさんの契約とBさんの契約は別のもので、借入額も返済期間も、商品によっては金利も別々に決まります。お互いの契約について、相手の連帯保証人になるのが一般的です。
収入合算は、契約が1本です。借りるのは申込人で、もう一方の収入を審査のときに合わせて見てもらいます。合算した人がどういう立場になるかで、さらに2つに分かれます。連帯債務型では債務者になり、連帯保証型では保証人になります。
| 契約の本数 | 債務者 | 合算する人の立場 | |
|---|---|---|---|
| ペアローン | 2本 | 2人 | それぞれが自分の契約の債務者 |
| 収入合算(連帯債務型) | 1本 | 2人 | 連帯債務者 |
| 収入合算(連帯保証型) | 1本 | 1人 | 連帯保証人 |
契約の本数と債務者の数が、このあとの違いをすべて生みます。
連帯債務者と連帯保証人は、別のもの
名前が似ていますが、法律上の立場が違います。
連帯債務は民法第436条にあります。債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定または当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者はその連帯債務者の一人に対し、または同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができるとされています。2人とも、借りた本人です。
連帯保証は保証のひとつです。ふつうの保証人には2つの権利があります。民法第452条の催告の抗弁は、債権者が保証人に履行を請求したときに、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求できるというものです。民法第453条の検索の抗弁は、主たる債務者に弁済をする資力があり、執行が容易であることを証明すれば、まずそちらから執行してほしいと言えるというものです。
ところが民法第454条は、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは前二条の権利を有しないと定めています。連帯保証人には、この2つがありません。
実務上の意味はこうなります。連帯保証型で「自分は保証人だから、本人が払えなくなってからの話だ」とは言えません。請求されたら、自分が払うことになります。保証人という言葉から受ける印象より、負っているものは重いと考えたほうが実態に近くなります。
ペアローンでも、お互いが相手の契約の連帯保証人になるのが一般的です。つまりペアローンの人は、自分の契約の債務者であると同時に、相手の契約の連帯保証人でもあります。「自分の分だけ返せばよい」という形にはなっていません。
住宅ローン控除を受けられる人が変わる
住宅ローン控除は、住宅借入金等を有する人が受けるものです。だから債務者になっていない人は対象になりません。
- ペアローン … 2人とも債務者なので、2人とも対象になりうる
- 連帯債務型 … 2人とも債務者なので、2人とも対象になりうる
- 連帯保証型 … 債務者は1人なので、保証人は対象にならない
これは金額の話として効いてきます。住宅ローン控除は税額控除で、その人が納めている所得税額と住民税の一部までしか引けません。借入限度額も1人ずつに当たります。2人で受けられるかどうかで、使い切れる額が変わります。
ただし「2人とも対象になりうる」は「2人とも満額受けられる」ではありません。それぞれが自分の年末残高と自分の税額で計算されるので、片方の収入が小さければ、その人の分は引ききれずに余ります。
自分たちの年収と借入額で、単独とペアで実際にいくら違うかは借り方による実質負担の差を試算すると出ます。控除として使い切れずに残る額も、金額で出ます。
連帯債務型で2人が控除を受ける場合、それぞれの借入金の額をどう計算するかには決まりがあります。実際の負担割合で按分するのが原則で、持分の決め方とも関係します。金融機関と税務署に確認してください。
団信の被保険者が変わる
団体信用生命保険は、被保険者に保険事由が生じたときに、保険金が債務に充てられる仕組みです。誰が被保険者になるかは、形によって変わります。
ペアローンは契約が2本なので、団信もそれぞれの契約に付きます。Aさんに保険事由が起きればAさんの契約が完済されますが、Bさんの契約は残ります。
連帯債務型は契約が1本です。住宅金融支援機構の【フラット35】では、夫婦で連帯債務となる場合、どちらか1人が加入するか、ふたりでペア連生団信(デュエット)に加入するかを選べます。ペア連生団信では、どちらかに保険事由が生じると、住宅の持分や返済の割合にかかわらず残りの債務が弁済されます。
連帯保証型は、被保険者は債務者だけです。保証人に万一のことがあっても債務は残り、しかもその人の収入を前提に組んだ返済が続きます。
団信で何が残るかは、金額の比較より先に確かめる価値があります。詳しくはペアローンの団信で、何が残るかに分けて書いています。
合算には条件があり、期間が短くなることもある
収入合算は、誰の収入でもよいわけではありません。住宅金融支援機構の【フラット35】では、収入合算者について次の条件がすべて必要だとしています。
- 申込人本人の親、子等の直系親族または配偶者であること
- 申込時の年齢が満70歳未満であること
- 申込人本人と同居すること
- 連帯債務者になること
合算できる額は、収入合算者の年収の全額までです。ただし、ここに見落としやすい条件があります。合算額が年収の50%を超えると、借入期間が短くなる場合があります。
借入期間の上限は、80から基準となる年齢を引いた年数と35年の、短いほうです。基準になる年齢は、合算額が年収の50%以下なら申込人本人の年齢ですが、50%を超えると申込人本人と収入合算者のうち年齢が高いほうになります。
機構のページには具体例が載っています。申込人30歳・収入合算者55歳の場合、合算者の年収を全額合算すると基準年齢が合算者のほうになり、借入期間の上限は24年になります。合算額を抑えて50%以下にすれば、基準は申込人の年齢になり、上限は35年のままです。
配偶者がいない場合に同居する兄弟姉妹の収入を合算できる、親子リレー返済の後継者には同居要件がない、といった例外もあります。民間の金融機関の条件はこれとは別なので、申し込む先で確かめてください。
どこから決めるか
順番があります。最初に決めるのは、金額ではありません。
- 単独で希望額に届くかどうかを確かめる。届くなら、わざわざ2人で借りる必要はない
- 届かないなら、どの形なら借りられるのかを金融機関に聞く。扱っていない形もある
- 選べる形が複数あるときに、はじめて控除・団信・費用で比べる
この順番にするのは、選べない形を比べても意味がないからです。ペアローンを扱っていない金融機関もありますし、連帯債務型を扱っていない金融機関もあります。
そして、どの形を選んでも変わらないことがあります。借入総額・金利・返済期間・返済方式が同じなら、契約を分けても元利返済総額はほとんど変わりません。変わるのは、控除を実際に使い切れる額と、契約の本数で動く費用(消費貸借契約書の印紙税など)です。
もうひとつ、決める前に見ておきたいことがあります。あとから形を変えるのが難しいという点です。ペアローンの2本の契約を1本にまとめるには借り換えが必要で、残ったほうの人が単独で全額を借り直せるかという話になります。連帯債務型で一方を債務者から外す場合も、連帯保証型で保証人を外す場合も、金融機関の承認が要ります。どれも「話し合って決めた」だけでは動きません。
離婚のときに問題になるのはここです。家を出た側が債務者や連帯保証人のまま残ると、住んでいない家の返済を負い続けることになります。住み続ける側が単独で借り換えられれば整理できますが、借り換えには審査があり、収入が足りなければ通りません。契約の形を決めるときに、解消の手順も一緒に見ておくほうが、あとで動けなくなりません。
「2人で借りると安くなる」のではありません。2人で借りると借りられる額が増え、控除を使える人が増えるのであって、同じ額を借りるなら返す総額は同じです。
