ペアローンの説明では「2人とも団信に入れる」とよく書かれています。これは正しいのですが、そこで止めると大事なことが落ちます。入れることと、万一のときに住宅ローンが全部なくなることは別です。ペアローンは契約が2本なので、一方に保険事由が起きても、もう一方の契約は残ります。残った契約は、2人の収入を前提に決めた返済額のまま続きます。
団信は、保険金を債務に充てる仕組み
団体信用生命保険は、住宅ローンの債務者を被保険者とする生命保険です。被保険者が死亡したり、所定の身体障害の状態になったりしたときに、保険金が支払われ、それが債務の返済に充てられます。遺族が現金を受け取るのではなく、債務のほうが消える形になります。
ここから2つのことが決まります。ひとつは、被保険者になっていない人に何が起きても、保険金は出ないこと。もうひとつは、消えるのは保険金が充てられた債務だけだということです。契約が複数あるときに、この2つが効いてきます。
住宅金融支援機構の新機構団信では、加入できるのは申込書兼告知書の記入・入力日現在で満15歳以上満70歳未満の人で、幹事生命保険会社の加入承諾が必要です。保障は満80歳の誕生日の属する月の末日までです。健康状態によっては加入できず、その場合はその商品では借りられないことになります。
ペアローンでは、消えるのはその人の契約だけ
ペアローンは、AさんとBさんがそれぞれ自分の名前で借ります。契約が2本あり、団信もそれぞれの契約に付きます。
Aさんに保険事由が生じると、Aさんの契約に保険金が充てられ、その契約は完済されます。Bさんの契約は、何も変わりません。残高も、毎月の返済額も、返済期間もそのままです。
問題は、その返済額がどう決まっていたかです。ペアローンを選ぶ理由の多くは、単独では希望額に届かないことにあります。つまり2人の収入を前提に借入額を決めている。そこから片方の収入が失われて、残った契約だけを1人で払い続けることになります。
- Aさんの契約は完済される(Aさんが被保険者だったので)
- Bさんの契約は残る(Bさんには何も起きていないので)
- Bさんの収入は変わらないが、世帯の収入は減る
- Bさんの返済額は変わらないが、生活費の負担は重くなる
生命保険で補うという考え方もあります。残る側の債務の額にあわせて保険金額を決めれば、形のうえでは同じことができます。ただし団信と違って保険料は別に払うことになり、年齢が上がってから入ると保険料も上がります。どちらが有利かではなく、どの形なら続けられるかで見ることになります。
加入できないことがある、というのも先に知っておく点です。団信は生命保険なので、申し込むときに健康状態を告知します。告知の内容によっては加入が認められず、その場合はその商品では借りられません。引受けの基準を緩めたワイド団信を扱う金融機関もありますが、金利の上乗せがあります。2人で借りる前提を立てていても、片方が加入できなければ形そのものを組み直すことになります。
どれくらいの額が残るのかは、借入割合で変わります。Aさんの割合を大きくしていれば、Aさんに起きたときに消える額は大きく、Bさんに起きたときに消える額は小さくなります。借入割合を決めることは、万一のときに誰の債務がどれだけ残るかを決めることでもあります。
ここで、割合の決め方に3つの見方が重なります。住宅ローン控除を使い切るための割合、登記の持分に合わせるための割合、そして万一のときに残る額を小さくするための割合です。3つが同じ答えになるとは限りません。収入の大きいほうに多く割り当てれば控除は使いやすくなりますが、その人に何かあったときに消える額が大きくなる一方で、もう一方に何かあったときに残る額は変わりません。どれを優先するかは、計算では決まらない部分です。
自分たちの条件で、どちらにいくら割り当てるとどうなるかは借入割合ごとの返済額を試算すると、毎月の返済と2人それぞれの負担まで出ます。
連生の団信なら、どちらに起きても消える
双方を保障する形もあります。住宅金融支援機構の【フラット35】にはペア連生団信があり、2023年10月1日までは夫婦連生団信、通称デュエットと呼ばれていました。
これは連帯債務でひとつの債務を2人で負っている場合に、2人とも被保険者になる仕組みです。どちらかに保険事由が生じると、住宅の持分や返済の割合にかかわらず、残りの債務が弁済されます。片方が消えて片方が残る、ということがありません。
加入できる関係は、戸籍上の夫婦に限られません。機構は、婚約関係、内縁関係、同性パートナーの関係にあるふたりも含まれるとしています。
ペア連生団信は連帯債務型の仕組みです。契約が1本であることが前提になっています。契約が2本になるペアローンでは、同じものは使えません。民間の金融機関には、ペアローンでも双方を保障する商品を扱っているところがありますが、保障の範囲も条件も商品ごとに違います。扱いがあるかどうかから確かめてください。
連生には条件と費用がある
双方を保障する形は、ただ有利なだけではありません。機構のペア連生団信には、次のような制約があります。
- 借入金利に上乗せがある
- 新3大疾病付機構団信では利用できない
- 加入を希望するふたりが、同時期に申し込む必要がある
- ふたりとも、年齢と健康状態の条件を満たす必要がある
上乗せの幅は改定されるので、この記事には書きません。申し込む時点の値を、金融機関の金利表で確かめてください。
3大疾病の保障と一緒に使えない、というのは選択の問題になります。「どちらかに万一があれば全額」と「病気になったときの保障」は、同時には取れないということです。どちらを重く見るかは、2人の年齢や健康状態、ほかに入っている保険によって変わります。
そして、上乗せ分は借入期間のあいだずっとかかります。返済期間が長いほど、積み上がる額は大きくなります。保障が厚くなることと、その費用を払い続けられることを、別々に見てください。
債務が消えたときの税の扱いを確かめる
連生の団信を検討するときに、見落としやすい論点があります。自分が被保険者ではない債務が消えた場合、その分をどう扱うかです。
片方に保険事由が生じて、生存しているもう一方の債務まで消えるという形になると、生存している人は自分の債務を自分で払わずに免れたことになります。この取り扱いについては、金融機関が注意を促していることがあります。
保障の対象にならない場合があることも、先に見ておく点です。団信は生命保険なので、保険金が支払われない免責の定めがあります。また、申し込みのときの告知に事実と違うところがあると、保険金が支払われないことがあります。加入できたことと、そのときに必ず支払われることは別です。約款で、どういう場合に支払われないのかを確かめておいてください。
ToMiでは、ここに具体的な税額や課税区分を書きません。商品の作りによって、誰が被保険者で、保険金がどの債務に充てられ、その結果どういう経済的利益が生じるのかが変わるためです。商品ごとに違うものを、一般論として断定できません。
連生の団信を検討するときは、保障の範囲と上乗せの金利に加えて、保険事由が生じたときの税の取り扱いを、その商品について金融機関か税理士に確かめてください。「2人とも守られる」という説明だけで決めないことです。
契約の前に確かめること
団信は、契約してしまうとあとから形を変えにくいものです。返済途中で連生に切り替える、という扱いがない商品もあります。契約の前に、次を確かめておくと判断の材料がそろいます。
| 確かめること | なぜ要るか |
|---|---|
| どちらかに起きたとき、いくら残るか | ペアローンでは片方しか消えない。残る額は借入割合で決まる |
| 双方を保障する商品の扱いがあるか | 連帯債務型の仕組みで、ペアローンでは使えないことがある |
| 上乗せの金利と、保障の対象外になる条件 | 上乗せは期間のあいだ続く。告知の内容で加入できないこともある |
| 3大疾病などの保障と併用できるか | 併用できない組み合わせがある |
| 保険事由が生じたときの税の取り扱い | 商品の作りによって変わる。一般論では決まらない |
どれも金額の計算では出てこない項目です。扱いの有無から金融機関に聞くことになります。
団信で残る債務は、ToMiの試算には含めていません。上乗せ金利も保障の条件も商品ごとに違い、公表値として置ける数字がないためです。計算に出てくるのは返済額・費用・住宅ローン控除までで、団信の差はそこに入っていません。
借り方による金額の違いと、残る債務の話は、分けて見てください。金額で選んだあとに保障の形が希望と合わない、ということが起きます。契約の形と保障の違いそのものはペアローンと収入合算の違いに整理しています。
