預金の金利が0.3%、配当利回りが4%。同じ「年に何%」という書き方をしていると、 10倍以上の差があるように見えます。この2つは、そのまま比べてよいのでしょうか。
同じ「年に何%」でも、中身が違う
どちらもパーセントで書かれていますが、計算しているものが違います。
式の形は同じです。違うのは、分母に置いたものが動くかどうかです。 預金の元本は動きません。株価は毎営業日動きます。分母が動く割り算と、動かない割り算を、同じ数字として並べているのが、この比較の実態です。
もうひとつ、分子の決まり方も違います。 利息は契約した利率で計算されますが、配当は会社が毎期決めます。 利率が変わることはありますが、そのときは新しい利率が適用されるだけで、 預けた元本が減ることはありません。
受け取るまでの確実さも違います。 預金の利息は、決められた日に必ず付きます。銀行が「今年は付けない」と決めることはありません。 配当は、会社が決算のたびに決めます。 業績が悪ければ減らされますし、出さないという判断もありえます。同じ「年に何%」でも、片方は約束で、もう片方は予定だということです。
違うのは、台が動くかどうか
図にすると、差がはっきりします。 利息も配当も、元本の上に積まれる部分です。違うのは土台のほうです。
預金は台が動きません。付いた利息の分だけ、確実に増えます。 株は台そのものが動きます。配当が積まれても、台が下がれば合計は減ります。利回りの数字を並べても、この差は出てきません。
具体的な大きさで見ると、差の意味が分かります。 500万円を利回り4%の株に回すと、配当は年20万円です。 同じ500万円を年利0.3%の預金に置けば、利息は年15,000円です。 差は185,000円で、確かに大きく見えます。
一方で、株価が1割下がると50万円減ります。 増えた配当の差185,000円の、およそ2.7年分です。1年ぶんの差を2.7年ぶん失うのに、必要なのは1割の下落だけです。 株価が1割動くことは、めずらしいことではありません。
この計算は「株価が下がったら」という仮定の話ですが、 上がる可能性も同じだけあります。 言いたいのは損をするということではなく、預金には無い振れ幅が乗っているということです。
比べるなら、どちらも税引後で
配当にも利息にも、受け取るときに税金がかかります。率は同じです。 ところが、表示されている数字は税引前であることが多く、片方だけを税引後にすると、比較がずれます。
率が同じなので、税引前どうしで比べても順番は変わりません。 変わるのは金額です。「年20万円増える」と思っていた配当は、 税を引くと16万円ほどになります。この差は無視できません。
もうひとつ、日本株には100株単位でしか買えないという制約があります。 株価4,794円の銘柄に500万円を回そうとしても、買えるのは1,000株で479万円ぶんまでです。 残りの21万円ほどは現金のまま残り、配当を生みません。「500万円ぶんの配当」ではなく「479万円ぶんの配当」になる、ということです。 預金にはこの端数がありません。全額がそのまま利息を生みます。
引かれる率と仕組みは配当から引かれる税金のページに、出典と確認日を付けて掲載しています。 預金の利息のほうは預金利息にかかる税金にまとめています。
ToMiの計算機は、配当も預金の利息も税引後にそろえて並べています。預金の一部を高配当株に回したら、年間配当はいくら増える?で、自分の金額で確かめられます。
利率は決まっている。利回りは決まっていない
預金の利率は、預けたときに決まります。定期預金なら満期まで変わりません。 普通預金の利率は変わることがありますが、変わったことは通知されますし、 変わっても元本は減りません。
配当利回りは、買った時点で固定されません。 株価が動けば毎日変わりますし、会社が配当を変えれば分子も変わります。 「利回り4%の商品を買った」のではなく、「いま計算すると4%になる株を買った」というほうが実態に近いです。
| 預金 | 配当のある株 | |
|---|---|---|
| 受け取る額の決まり方 | 契約した利率で計算 | 会社が毎期決める |
| 元本 | 減らない | 上にも下にも動く |
| 受け取りが止まること | ない | 減配・無配がある |
| いつでも引き出せるか | 普通預金は可 | 売る必要があり、値段は選べない |
| 元本を守る仕組み | 預金保険(1金融機関1,000万円まで) | ない |
預金保険の対象となる預金の場合です。詳しくは預金保険のページを見てください。
途中で現金にしたいときの動きも違います。 普通預金なら、必要な額だけを引き出せます。額も日も自分で決められます。 株を現金にするには売る必要があり、そのときの値段は市場が決めます。下がっている日に必要になれば、下がった値段で売ることになります。 さらに、100株単位でしか売れないので、必要な額だけを取り出すこともできません。
表の最後の行が、いちばん大きな違いです。 預金には、金融機関が破綻したときに元本と利息を守る仕組みがあります。 株にはありません。 金融機関が破綻したときに元本と利息が守られる範囲は、 預金保険の仕組みで決まっています。
それでも比べたいときの並べ方
「そのまま比べられない」で終わると、判断ができません。 比べるなら、次の3つを同じ画面に置いてください。
- 税引後の受け取り額(配当と利息を、同じ円で)
- その株が1割・2割・3割下がったときの金額
- その金額が、増える配当の何年分にあたるか
1つめだけを見ると、配当のほうが必ず大きく見えます。 2つめと3つめを並べてはじめて、何を引き受けて、その差を得ようとしているのかが見えます。
預金と株を「どちらが得か」で比べることはできません。 比べられるのは「受け取る額の差」と「引き受ける振れ幅の大きさ」で、 そのどちらを重く見るかは人によって変わります。
もうひとつ、時間軸をそろえることも大切です。 「1年で185,000円の差」は、1年だけを切り取った数字です。 10年持つつもりなら、配当の差は10年分積み上がりますが、 その10年のあいだに減配や大きな下落が起きる確率も上がります。差が積み上がる時間は、下げに出会う時間でもあります。 長く持てば有利になるという言い方は、この両面を含んでいません。
比べるときは、期間を先に決めてから並べてください。 3年で使う予定のお金と、20年使わないお金では、同じ金額でも答えが変わります。 期間が短いほど、下げた局面に当たったときに戻る時間が残っていません。
判断が分かれるのは、手元にいくら残るかによっても変わるからです。 預金が生活防衛資金しかない人と、それを超えて積み上がっている人とでは、 同じ金額でも意味が違います。
その中間にあるもの
預金と株のあいだには、振れ幅の小さい選択肢もあります。 値動きを抑えたいけれど、預金の利息では物足りないという場合に、 先に見ておく価値があります。
- 個人向け国債(変動10年)… 元本割れしない仕組みで、金利には下限があります
- 定期預金 … 普通預金より利率が高く、預金保険の対象です
- 複数の銘柄をまとめて持つ形 … 1社の減配で受け取る額がまとめて減ることは避けられます
どれを見るにしても、順番は変わりません。 先に手元へ残す額を決め、数年以内に使う予定のあるお金を外し、 残った額の中で考えます。比べる前に、比べてよい額を決めるということです。 この順番を飛ばすと、利回りの差だけを見て額を決めることになります。
この3つは、値動きの小ささの順に並べています。 上にあるものほど元本の動きが小さく、下にいくほど動きます。 自分がどのあたりまでなら落ち着いていられるかを、金額で確かめてみてください。
最初の2つは、台が動かないほうの仲間です。個人向け国債の仕組みを知っておくと、 「元本が動かないこと」を重く見る場合の選択肢が増えます。
振れ幅の小さいものから順に見ていくと、 自分がどこまでの動きなら受け入れられるのかが分かってきます。 最初から利回りの高いものだけを見比べると、受け入れられる範囲を確かめないまま額を決めることになります。 順番を逆にするだけで、判断の質が変わります。
3つめは台が動くほうですが、当たりどころが分かれます。 違いは高配当株とETFの違いにまとめています。
