配当を受け取る形には、個別の銘柄を買う方法と、 多くの銘柄をまとめた商品を買う方法があります。 受け取るお金の名前も、かかる費用も、起きることの大きさも違います。
高配当ETFとは何をまとめたものか
ETFは、証券取引所に上場している投資信託です。 株と同じように、取引時間中にいつでも売り買いできます。 高配当ETFと呼ばれるものは、配当利回りの高い銘柄を一定の基準で選んでまとめた指数に連動するように作られています。
個別の銘柄を買うと、その会社から配当を受け取ります。 ETFを買うと、中に入っている多くの会社から集まった配当が、 分配金という名前で支払われます。 お金の出どころは同じ「会社の利益」ですが、経路が1つ増えます。
| 個別の銘柄 | 高配当ETF | |
|---|---|---|
| 受け取るお金の名前 | 配当金 | 分配金 |
| 出どころ | その会社の利益 | 中に入っている多くの会社の配当 |
| 支払いの回数 | 会社ごと(年1〜2回が多い) | 商品ごとに決まっている |
| 中身が入れ替わるか | 自分で売買しない限り変わらない | 指数の見直しで入れ替わる |
どちらも上場しているので、取引時間中に売り買いできます。値段は市場で決まります。
最後の行が、意外と大きな違いです。 高配当の指数は定期的に中身を見直します。 配当を減らした銘柄は外れ、条件に合う銘柄が入ります。自分で判断しなくても、入れ替えが起きるということです。
1社が減配したときの当たりどころ
いちばん実感しやすい違いは、1社が減配したときです。
1銘柄に集めていれば、その会社の減配は受け取る額を直接減らします。 株価が下がれば、動かした額の全部がその影響を受けます。 多くの銘柄に分かれていれば、同じ減配でも減るのはそのぶんだけです。
ただし、分かれていれば安全という話ではありません。 高配当の指数に入る銘柄は、銀行・商社・保険・通信といった業種に偏りがちです。銘柄数が多くても、業種が同じなら一緒に下がります。 景気が悪くなると、こうした業種はまとめて逆風を受けます。
受け取る額の動き方も違います。 個別株を1銘柄だけ持っていると、その会社が年2回まとめて配当を出すので、 入ってくる月が偏ります。ETFは中の多くの会社の配当をまとめて、 商品ごとに決められた回数で分配します。受け取る回数と時期を、自分で組み立てるかどうかの違いでもあります。
言い換えると、ETFで避けられるのは「1社の固有の事情」で、 「市場全体や業種全体の下げ」は避けられません。 リスクとして何が残るかは高配当株のリスクにまとめています。
まとめる仕組みには費用がかかる
個別の銘柄を持っているあいだ、保有そのものに費用はかかりません (売買のときの手数料は別です)。 ETFは、まとめる仕組みを維持する費用が中で引かれています。
この費用は、分配金として出てくる前に差し引かれています。 表示されている分配金利回りは、費用を引いたあとの分配金で計算されているので、利回りに費用を足し引きする必要はありません。 すでに反映されています。
気にする意味があるのは、同じような中身の商品どうしを比べるときです。 連動先の指数が同じなら、費用の低いほうが受け取る分配金は多くなります。 率の差が長期でどれくらいの金額になるかは、 投資信託の信託報酬の考え方がそのまま当てはまります。
100万円分を持っていて率が0.1%なら、年1,000円です。 個別の銘柄にはこれがかかりません。 そのかわり、分散させるだけの銘柄数を自分でそろえる必要があります。
買える単位と、必要な金額
日本の個別株は、原則として100株単位でしか買えません。 株価4,000円の銘柄なら、1単位で40万円です。 10銘柄に分けたいなら、単純計算で数百万円が必要になります。
ETFは1口単位で買えるものが多く、1口が数千円から数万円です。少ない金額で、多くの銘柄に分けた状態を作れます。 これがいちばん実務的な違いです。
| 個別の銘柄 | 高配当ETF | |
|---|---|---|
| 買える単位 | 100株単位が原則 | 1口単位 |
| 1単位に必要な金額 | 株価 × 100 | 商品による(数千円〜数万円) |
| 10銘柄に分けるには | 銘柄ごとに100株ずつ | 1口買えば中に多数入っている |
| 余った現金 | 単位に満たない分は残る | 残りにくい |
端数の株を買える仕組みを用意している証券会社もありますが、扱いは会社ごとに違います。
売るときにも、この単位が効いてきます。 個別株で200万円ぶんを持っていて、50万円だけ現金にしたいとします。 株価によっては、100株単位で切ると40万円か60万円にしかなりません。必要な額をぴったり取り出せないということです。 ETFは1口単位なので、必要な額に近いところまで刻めます。
100株に届かない分は、現金のまま残ります。 この分は配当を生みません。 自分の金額でいくら残るかは、預金の一部を高配当株に回したら、年間配当はいくら増える?で確かめられます。
選べるものと、選べないもの
個別の銘柄は、自分で選びます。 事業の内容に納得できる会社だけを持つこともできますし、 気に入らない会社を外すこともできます。 そのかわり、選ぶための時間と判断が要ります。
ETFは、中身を選べません。 指数の基準に合う銘柄が自動的に入ってきます。納得できない会社が入っていても、それだけを外すことはできません。 そのかわり、選ぶ手間はかかりません。
- 個別 … 選ぶ自由がある。決算や配当方針を自分で追う必要がある
- ETF … 選ぶ手間がない。中身は指数の基準で決まる
- 個別 … 好きなときに売り買いを決められる
- ETF … 入れ替えのタイミングは自分で決められない
手間の差は、続けられるかどうかにも関わります。 個別株を10銘柄持てば、決算は年に40回発表されます。 配当の方針が変わっていないか、業績が落ちていないかを追うのは、 始めた当初は苦にならなくても、数年続けると負担になります。途中で追わなくなった個別株は、選んだ意味が薄れます。 最初に決めるべきは、銘柄よりも、どれだけ手をかけ続けられるかのほうかもしれません。
どちらにも「株価が下がる」というリスクは残ります。 ETFにしても、値下がりが小さくなるわけではありません。 減るのは、1社に固有の出来事で受ける影響のほうです。
どちらを見るかの決め方
ToMiは、どちらが良いとは言いません。 決めるための材料として、次の3つを自分に当てはめてみてください。
1. 動かせる金額はいくらか。数十万円なら、個別では1〜2銘柄しか持てません。 2. 銘柄を追う時間があるか。決算と配当方針を年に何度か確かめられるか。 3. 中身に納得したいか。それとも基準に任せたいか。
この3つに正解はありません。 分散が効いているほうが良いように見えますが、 中身を選べないことを不満に感じる人もいます。 逆に、選ぶ自由があっても、忙しくて追えなければ意味がありません。自分が続けられる形かどうかが、結局のところいちばん効きます。
金額が小さいうちは、個別だと分けようがありません。 時間をかけたくないなら、選ぶ手間のかからない形が合います。 逆に、その会社の事業に納得したうえで持ちたいなら、個別のほうが向きます。
少額で試す場合も、金額を先に決めてから始めてください。 「様子を見ながら増やす」と考えていると、 上がった局面で足していくことになりがちです。
どちらを選ぶにしても、確かめる順番は同じです。 手元に残す額を決め、数年以内に使う予定のあるお金を外し、 2割下がった金額を見てから、残った額で考えます。生活防衛資金をまだ決めていないなら、そちらが先です。
両方を持つという形もあります。 まとまった部分をETFで持ち、納得している会社だけを個別で少し持つ、といった組み方です。 この場合も、全部を合わせた金額で下げの大きさを見てください。分けて考えると、引き受けている振れ幅の合計が見えなくなります。
決めきれないうちは、少額から始めて感覚をつかむ手もあります。 実際に配当が入り、株価が動くのを見てから、 自分がどちらの形を続けられそうかを判断できます。最初にすべてを決めきる必要はありません。
受け取る配当や分配金にかかる税金は、どちらも同じです。 NISA口座で非課税にできる点も同じですが、個別株の配当だけは、受取方法の設定によって非課税にならないという落とし穴があります。詳しくはNISAの配当が非課税にならない理由を読んでください。
