預金の金利が0.3%ほどのときに、配当利回り4%という数字を見ると、 桁が違うように感じます。同じ「年に何%」という書き方なのに、10倍以上の開きがあります。 この差はどこから来ているのか、そもそも高配当株とは何を指すのかを整理します。
「高配当株」に決まった定義はない
高配当株という言葉に、法律や制度で決められた基準はありません。配当利回りが市場の平均より高い株を、ざっくりそう呼んでいるだけです。 「利回り3%以上」「4%以上」といった線を引く人もいますが、 その線に根拠があるわけではなく、書き手が決めているにすぎません。
そのため、同じ銘柄が「高配当株」と紹介されたり、されなかったりします。 株価が動けば利回りも動くので、去年は高配当と呼ばれていた銘柄が、 今年は呼ばれなくなることもあります。言葉のほうが動いている、ということです。
まず押さえたいのは、配当がどこから出ているかです。 配当は会社の外から降ってくるお金ではなく、 売上から費用と法人税を引いた残り、つまり利益の一部です。
利益のうちどれだけを配当に回すかは、会社が決めます。 全部を配当に回す会社はほとんどなく、多くは一部を社内に残して、 設備や研究に使ったり、将来に備えたりします。配当が多い会社は、社内に残す分が少ない会社でもあるという見方もできます。
利回りは、割り算で決まる
配当利回りは、次の式で計算します。
株価4,000円の会社が、1株あたり年160円の配当を出しているなら、 160 ÷ 4,000 で4%です。100株買えば40万円で、受け取る配当は年16,000円になります。
ここで注意したいのは、利回りは株を買った時点で固定されないことです。 預金の金利は、預けたときの利率がその預金に対して適用されます。 配当利回りは、株価が動けば毎日変わりますし、配当そのものも会社の判断で変わります。 「4%の商品を買った」のではなく、「いま計算すると4%になる株を買った」というほうが実態に近いです。
もうひとつ、証券会社の画面に出ている利回りが、 何をもとに計算されているかも確かめる価値があります。実際に支払われた配当(実績)で計算しているのか、会社が予想している配当(予想)で計算しているのかで、数字が変わるからです。 予想配当は、業績が悪くなれば下方修正されます。
| 何をもとにするか | 変わるとき | |
|---|---|---|
| 実績利回り | 直近1年に実際に支払われた配当 | 支払いがあったとき |
| 予想利回り | 会社が発表している今期の配当予想 | 会社が予想を変えたとき |
| 株価 | どちらも現在の株価で割る | 毎営業日 |
ToMiの計算機は、実際に支払われた配当で計算しています。これからの配当を約束するものではないためです。
利回りが高い理由は、2通りある
利回りは割り算なので、答えが大きくなる道が2つあります。 上(配当)が大きくなるか、下(株価)が小さくなるかです。
左は、会社が稼いで配当を増やした結果です。 右は、株価が下がった結果です。 どちらも「利回り6%」と表示されますが、中身はまったく違います。利回りの数字だけを見ても、どちらなのかは分かりません。
株価が下がるのには理由があります。 業績が落ちている、その業界の先行きが厳しいと見られている、 といった見方が市場に広がると、株価は下がります。 そして業績が落ちれば、その先で配当も減りやすくなります。利回りが極端に高い銘柄は、下がった理由のほうを先に確かめるのが順番です。
利回りだけで銘柄を並べ替えると、上位に来るのは 「株価が大きく下がった銘柄」になりがちです。 並べ替えた一覧の上から選ぶという買い方は、この点で危うさがあります。
配当を多く出すのは、どんな会社か
配当を多く出す会社には、いくつか共通した性格があります。 業種でいえば、商社、銀行、保険、通信、電力といったところに集まりやすい傾向があります。
- 事業が成熟していて、稼いだお金の使い道が限られている会社
- 設備投資の大きな波が過ぎていて、手元にお金が残りやすい会社
- 株主に返す方針(配当性向や還元方針)を、はっきり掲げている会社
逆に、成長している会社は配当を出さないか、出しても少額です。 稼いだお金を配当に回すより、事業を広げるほうが株主のためになると考えるからです。配当の多さは、会社の良し悪しではなく、お金の使い方の違いを表しています。
利益のうちどれだけを配当に回しているかは、配当性向という指標で表されます。 この割合が高すぎる会社は、利益が少し落ちただけで配当を維持できなくなります。 利回りの数字と合わせて見ておくと、その配当がどれくらい無理をしているかの見当がつきます。
近年は、配当の方針をあらかじめ公表する会社が増えました。 「配当性向◯%を目安にする」「1株あたりの配当を減らさない」といった書き方で、 決算資料や株主向けの説明資料に載っています。 こうした方針があるからといって配当が保証されるわけではありませんが、会社がどこまでを約束しようとしているかは読み取れます。
ただし方針は変えられます。業績が想定を大きく下回れば、方針そのものが見直されます。 実際、景気が大きく落ち込んだ局面では、 それまで配当を維持すると掲げていた会社も減配に踏み切っています。 方針は判断の材料にはなりますが、確約ではありません。
利回りを、金額に直す
率のままでは、大きさが実感できません。 自分が動かそうとしている金額を当てはめて、円に直してみてください。
たとえば500万円を利回り4%の銘柄に回した場合、 税引前の配当は年20万円です。同じ500万円を年利0.3%の預金に置けば、 利息は税引前で年15,000円になります。差はおよそ185,000円です。
この差だけを見ると大きく感じますが、同時に見るべき数字があります。 その500万円ぶんの株価が1割下がれば、50万円減ります。1年ぶんの差の、およそ2.7年分です。 株価が1割動くことは、めずらしいことではありません。 増える側と減る側は、必ず同じ画面に、同じ円で並べてください。
もうひとつ、日本株には100株単位でしか買えないという制約があります。 株価4,794円の銘柄なら、100株で479,400円です。 50万円を用意しても100株しか買えず、残りの2万円あまりは現金のまま残ります。 この残った分は配当を生みません。
自分の金額でいくらになるかは、預金の一部を高配当株に回したら、年間配当はいくら増える?で計算できます。銘柄コードを入れると、買える株数と受け取る配当、 同じ額を預金に置いた場合との差が並びます。
このとき、必ず税引後の額で比べてください。 配当からは税金が引かれるので、税引前の配当と税引後の利息を並べると、 配当のほうが実際より大きく見えます。 引かれる率と仕組みは配当にかかる税金にまとめています。
配当は、約束された収入ではない
預金の利息と配当は、どちらも「持っているだけで入ってくるお金」に見えます。 しかし、性質はまったく違います。
| 預金の利息 | 株の配当 | |
|---|---|---|
| 受け取る額 | 利率で決まっている | 会社が決める |
| 元本 | 減らない | 上にも下にも動く |
| 減る可能性 | 利率の見直しはあるが元本は残る | 減配・無配になることがある |
| 受け取りをやめる判断 | 銀行はしない | 会社がする |
預金保険の対象となる預金の場合です。株には元本を保証する仕組みがありません。
配当は会社が毎期決めるもので、業績が悪くなれば減らされます(減配)。 まったく出さなくなること(無配)もあります。配当は約束された収入ではありません。 この一点が、預金の利息との最大の違いです。
高配当株を考えるときは、増える配当だけでなく、 株価が下がったときに減る額を同じ画面に並べてください。 配当は年に数回入ってくるので目立ちますが、 値下がりは売るまで数字にならないので、見落とされます。
もうひとつ、配当がいつ入るかも預金とは違います。 日本の会社は年1回か2回の配当が多く、権利確定日にその株を持っていた人に支払われます。 実際に振り込まれるのは、権利確定日から2〜3か月あとです。買ってすぐに入ってくるわけではありません。 年の途中で買った場合、最初の配当を受け取るまでに半年近くかかることもあります。
何が起きうるかは高配当株のリスクで具体的に見られます。 預金の金利と利回りを並べてよいのかについては配当利回りと預金金利の比べ方を読んでください。
