証券口座に入る配当は、すでに税金が引かれたあとの金額です。 そのまま何もしなければ納税は終わりますが、申告して別の方式を選ぶこともできます。 選べるものが3つあり、どれを選ぶかで結果が変わります。
配当は、入る前に引かれている
上場株式の配当は、支払われる時点で源泉徴収されます。 引かれるのは所得税・復興特別所得税と地方税を合わせた率で、 預金の利息と同じ率です。
率は金額によって変わりません。1万円の配当でも100万円の配当でも同じです。 給与にかかる所得税のように、金額が大きいほど率が上がる仕組みではありません。
15.315%という半端な数字は、所得税15%に復興特別所得税が上乗せされているためです。 復興特別所得税は所得税額の2.1%と決まっているので、15% × 1.021 で15.315%になります。 この上乗せには期限があり、期間が終われば率は下がります。
いまの率と内訳は配当から引かれる税金のページに、出典と確認日を付けて掲載しています。制度が変わったときに更新します。
課税方式は3つある
上場株式等の配当(大口株主を除く)は、次の3つから選べます。 何もしなければ「申告不要」です。
左の道が既定です。源泉徴収された時点で納税が終わり、確定申告に書きません。 真ん中と右は、確定申告をして選ぶ道です。選べるものが増えるかわりに、合計所得金額に入ります。
| 方式 | できること | 合計所得金額 |
|---|---|---|
| 申告不要 | 手続きが要らない | 入らない |
| 申告分離課税 | 上場株式等の売却損と相殺できる | 入る |
| 総合課税 | 配当控除を使える | 入る |
銘柄ごとに選ぶことはできません。その年に受け取った上場株式等の配当は、まとめて同じ方式になります。
よくある取り違えが、この表の2行目と3行目です。売却損と相殺できるのは、総合課税ではなく申告分離課税のほうです。 「損と相殺したいから総合課税」という組み合わせは、逆になっています。
申告分離課税:売却損と相殺する
その年に株を売って損が出ている場合、申告分離課税を選ぶと、 配当とその損を相殺できます。相殺した分だけ、源泉徴収された税金が戻ります。
税率は源泉徴収と同じです。つまり、損が出ていなければ、申告しても税額は変わりません。 この方式が意味を持つのは、相殺する損があるときだけです。
注意したいのは、相殺できる相手が決まっていることです。 配当と相殺できるのは上場株式等の売却損で、 給与の少なさや不動産の赤字とは相殺できません。 また、その年に売って損を確定させていなければ、相殺する材料そのものがありません。 含み損を抱えているだけでは使えない、ということです。
損が配当より大きい場合は、引ききれなかった分を翌年以降に繰り越せます (最長3年)。ただし繰り越すには、損が出た年から続けて確定申告をする必要があります。 途中でやめると、繰り越しは切れます。
- 特定口座(源泉徴収あり)で、配当も同じ口座で受け取っている場合、口座の中で自動的に相殺されます
- 複数の証券会社にまたがる損と配当を相殺するには、確定申告が必要です
- NISA口座で出た損は、この相殺に使えません
最後の点は見落とされやすいところです。詳しくはNISAの配当が非課税にならない理由にまとめています。
総合課税:配当控除を使う
総合課税は、配当を給与などと合算して申告する方式です。 所得税は累進税率で計算されるので、所得が低い人ほど税率が下がります。 さらに配当控除という税額控除が使えます。
配当控除があるのは、二重に課税されているためです。 配当は会社が法人税を払ったあとの利益から出ています。 それを受け取った人にもう一度課税すると、同じ利益に二度かかることになります。 その分を調整するのが配当控除です。
控除の率は、課税総所得金額等が1,000万円を境に半分になります。 株式の配当と投資信託の分配金でも率が違います。 いまの率は配当から引かれる税金のページにまとめています。
総合課税が有利になりやすいのは、所得税の税率が低い場合です。 課税所得が少なければ、累進税率と配当控除を合わせた負担が、 源泉徴収の率を下回ることがあります。 ただし住民税の側は総合課税でも10%かかり、配当控除を引いても源泉徴収より重くなる場合があるため、所得税だけを見て決められません。
「課税所得が◯◯万円以下なら総合課税が有利」という書き方をよく見かけますが、 その線は所得税だけを見た計算であることがあります。 住民税と、次に説明する外側の影響まで含めないと、答えは出ません。
税額だけで選ぶと、外側が動く
申告分離課税と総合課税を選ぶと、配当は合計所得金額に入ります。 ここが、税額よりも影響の大きいところです。
合計所得金額は、税の計算だけに使われる数字ではありません。 国民健康保険料や後期高齢者医療の保険料、 配偶者控除や扶養の判定、各種の給付や助成の所得制限にも使われます。
そのため、申告して税金が数万円戻っても、 保険料がそれ以上に上がって差し引きで損をすることがあります。 特に、国民健康保険に加入している方(自営業・退職された方など)は、 保険料が所得に応じて決まるため、影響が出やすくなります。
| 立場 | 影響が出やすいところ |
|---|---|
| 会社員(健康保険) | 保険料は給与で決まるため、影響は小さめ |
| 自営業・無職(国民健康保険) | 保険料が所得に応じて決まるため、影響が出やすい |
| 扶養に入っている | 扶養から外れる判定に使われる |
| 年金を受け取っている | 後期高齢者医療の保険料や、医療費の自己負担割合 |
どれも自治体や制度によって計算が違います。実際の額は、お住まいの市区町村や加入先に確認してください。
申告不要のままにしておくのは、手抜きではありません。 合計所得金額に入れないという選択でもあります。税額だけを比べて申告すると、外側の判定が動きます。
所得税と住民税で、違う方式は選べない
以前は、所得税と住民税で違う方式を選ぶことができました。 「所得税は総合課税で配当控除を使い、住民税は申告不要にして 合計所得金額に入れない」という組み合わせが可能だったのです。
この扱いは変わりました。 いまは所得税で選んだ方式が、住民税にもそのまま適用されます。 片方だけを申告不要にすることはできません。
この変更で影響を受けやすいのは、 総合課税で配当控除を使おうとしていた方です。 以前は住民税だけを申告不要にして、合計所得金額に入れずに済ませられました。 いまは所得税で総合課税を選べば、住民税でも総合課税になり、国民健康保険料などの計算にも配当が入ります。 有利かどうかの計算が、以前とは変わったということです。
変わった時期と根拠は配当から引かれる税金のページに書いています。 この組み合わせを紹介した解説がまだ多く残っているので、 古い記事を読むときは日付を確かめてください。
上場でない株・外国株の場合
ここまでは上場株式の話です。次の場合は扱いが変わります。
- 非上場株式(一般株式等)… 引かれる率が違い、地方税が含まれません。原則として総合課税で申告します
- 大口株主等 … 発行済株式の一定割合以上を持つ個人は、上場株式でも総合課税のみです
- 外国株 … 現地でも課税されるため、日本の税と二重になります。配当控除の対象にはなりません
非上場株式には、少額配当なら所得税の確定申告をしなくてよいという扱いがあります。 ただし申告しなくてよいのは所得税だけで、住民税の申告は必要です。 ここが抜けやすいところです。
外国株の場合、二重になる仕組みはこうです。 まず現地の国が、その国の税率で配当から差し引きます。 残った額が日本に入ってきて、そこから日本の税率で差し引かれます。2回引かれたあとの額が、実際に受け取る配当です。 表示されている利回りが4%でも、手元に残るのはそれよりかなり少なくなります。
外国株の配当は、現地で引かれたあとに日本でも引かれます。 申告して外国税額控除を使えば、二重になった分の一部を取り戻せますが、 手続きが必要で、全額が戻るとは限りません。 外国株を検討するときは、この分を利回りから差し引いて考えてください。
最後に、確定申告そのものについて。 配当の申告は義務ではなく、選択です。 何もしなければ申告不要のまま終わり、それで問題ありません。申告しないことが不利になる場面は、相殺できる損があるときだけです。 手続きの手間と、外側への影響を考えると、 そのまま置いておくという選択にも十分な理由があります。
どの方式を選ぶにしても、まず自分がどの立場かを確かめてください。 会社員か自営業か、扶養に入っているか、年金を受け取っているか。同じ配当額でも、立場によって答えが変わります。 判断に迷うなら、税務署や自治体の窓口、税理士に確かめるのが確実です。
自分が受け取る配当がいくらになるかは、預金の一部を高配当株に回したら、年間配当はいくら増える?で確かめられます。税引後の額と、同じ額を預金に置いた場合の利息を並べて出します。
