配当は年に数回、口座に入ってきます。金額が見えるので、増えたことは実感できます。 一方で株価が下がった分は、売るまで数字になりません。 この見え方の差が、高配当株でいちばん多い読み違えを作ります。
値下がりは、配当の何年分か
いちばん大きなリスクは、株価が下がることです。 配当が年4%入ってきても、株価が1割下がれば、その年の損得はマイナスです。 しかも下がった分は、配当を受け取っても戻りません。
同じ物差しで並べると、大きさの違いが見えます。株価が1割下がった額は、1年に増える配当の何年分にもあたります。 追いつくには、その年数のあいだ配当が減らず、株価も下がったままでない、 という条件がそろう必要があります。
仮に配当利回りが4%で、株価が2割下がったとします。 配当だけで取り戻すには単純計算で5年かかります。 その5年のあいだに減配が1度でもあれば、もっと長くなります。時間が味方になるのは、配当が続き、株価が戻る場合だけです。
減配は、株価と一緒に来る
配当は会社が毎期決めるものです。業績が悪くなれば減らされますし(減配)、 出さなくなること(無配)もあります。 リーマンショックやコロナ禍のような局面では、多くの会社がまとめて減配しました。
このとき起きるのは、受け取る額が減ることだけではありません。
配当を目当てに持っていた人にとって、減配は持つ理由が減ったということです。 売る人が出れば株価も下がります。 つまり減配は、受け取る額と資産の額の両方を同時に減らしにきます。
減配にも段階があります。配当を少し減らすだけで済む場合もあれば、 いったん見送って翌期以降に戻す場合、まったく出さなくなる場合まであります。 どこまで下がるかは、その会社の財務の余力と方針で変わります。「減配はあっても半分まで」といった線は、どこにも引かれていません。
もうひとつ、業績が悪くなくても減配が起きることがあります。 大きな投資をする、事業を買う、財務を立て直すといった理由で、 配当に回していたお金を別の用途に振り向ける判断です。 会社にとっては前向きな決断でも、配当を目当てに持っていた人にとっては減収になります。
しかも、減配が起きやすいのは景気が悪いときです。 自分の収入が減ったり、支出が増えたりする時期と重なりやすい、ということでもあります。 「配当が入るから大丈夫」と考えていた前提が、いちばん必要なときに崩れます。
| 起きること | 受け取る額 | 資産の額 |
|---|---|---|
| 増配 | 増える | 上がりやすい |
| 据え置き | 変わらない | 業績次第 |
| 減配 | 減る | 下がりやすい |
| 無配 | 無くなる | 大きく下がることがある |
株価がどう動くかは、発表の内容と、市場がすでにどこまで織り込んでいたかで変わります。
利回りが高いこと自体が、合図のことがある
配当利回りは、1株あたりの配当を株価で割って求めます。
割り算なので、株価が下がるだけで利回りは上がります。 市場が「この会社は今の配当を続けられない」と見ていれば、株価は下がり、 その結果として利回りだけが高く表示されます。高い利回りは、市場の不安がそのまま数字になったものであることがあります。
この状態を見分ける手がかりは、いくつかあります。
- 配当性向が高すぎないか … 利益のほとんどを配当に回していれば、少し業績が落ちただけで維持できません
- 利益が続いているか … 特別利益で一時的に増えた利益から出している配当は、翌期には続きません
- その業界に何が起きているか … 業界全体の株価が下がっているなら、個社の問題ではないかもしれません
- 利回りが急に上がっていないか … 配当が増えたのか、株価が下がったのかを確かめます
利回りの高い順に並べた一覧の上から選ぶ、という買い方は避けてください。 上位に来るのは、株価が大きく下がった銘柄になりがちです。 ToMiが銘柄を並べるときに利回り順にしていないのは、この理由からです。
1社に集めると、当たったときに大きい
預金からまとまった額を動かすとき、1銘柄に集めるか、複数に分けるかで、 起きることの大きさが変わります。
1社に集めた場合、その会社が減配すれば、受け取る配当はまとめて減ります。 株価が下がれば、動かした額の全部がその影響を受けます。当たりどころが1つしかないということです。
分けて持てば、1社の減配で減るのはその分だけです。 ただし、分けるには銘柄ごとに100株の単位をそろえる必要があり、 株価によっては1銘柄で数十万円かかります。 少額から分けたい場合の選択肢は高配当株とETFの違いにまとめています。
もうひとつ見落としやすいのが、業種の偏りです。 高配当の銘柄を選んでいくと、銀行・商社・保険といった業種に自然と集まります。 銘柄数を増やしても、同じ業種ばかりでは、 その業種に逆風が吹いたときにまとめて下がります。
偏りは、自分の収入とも重なることがあります。 勤めている会社の株を持っている場合が、いちばん分かりやすい例です。 その会社の業績が悪くなると、配当が減り、株価も下がり、 給与や賞与にも影響が出ます。同じ出来事で3つが同時に減る形になっているので、 働いている業界と持っている銘柄が近くないかは、一度確かめておく価値があります。
売らざるを得なくなる場面
値下がりが確定するのは、売った時点です。 裏を返せば、売らずに持ち続けられるなら、下げた局面をやり過ごせます。 問題は、持ち続けられない事情のほうが先に来ることがあることです。
- 手元の現金が足りなくなった … 医療費、修繕、失業といった予定外の出費
- 使う予定の日が来た … 学費や住宅の頭金など、時期が決まっているお金
- 下げに耐えられなくなった … 数字が減り続けるのを見ていられなくなる
最初の2つは、投資に回す額を決める前の話です。 生活防衛資金を確保し、数年以内に使う予定のあるお金を外してから、 残った額で考えれば避けられます。生活防衛資金をまだ決めていないなら、そちらが先です。
3つめは、額の問題であることが多いです。 2割下がった金額を先に見て、それでも持ち続けられるかを考えてみてください。 持ち続けられないと思うなら、投じる額が大きすぎるという合図です。
率で聞かれると答えにくい質問ですが、金額にすると答えやすくなります。 「2割下がっても平気ですか」ではなく、 「100万円減った画面を見て、売らずにいられますか」と考えてみてください。率で我慢できると思っていた人が、金額を見ると考えを変えることは、 めずらしくありません。
2割下がるといくらになるかは、預金の一部を高配当株に回したら、年間配当はいくら増える?で、増える配当と並べて確かめられます。
買う前に確かめる3つ
銘柄を選ぶ話ではなく、自分の側を確かめる話です。 ToMiは特定の銘柄を勧めませんが、この3つは金額で答えが出ます。
1. そのお金を5年以内に使う予定がないか。 2. 生活防衛資金は別に残るか。 3. 2割下がった金額を見て、それでも持ち続けられるか。
この3つを先に確かめるのは、銘柄選びより手前の話だからです。 どんなに良い会社を選んでも、下げた局面で売らざるを得なければ、 そこで損が確定します。逆に、売らずにいられる状態を作ってあれば、下げをやり過ごすという選択肢が残ります。 持ち続けられるかどうかは、銘柄ではなく、自分の側の条件で決まります。
3つとも「はい」なら、増える配当と値下がりの大きさを金額で比べる段階です。 どれかが「いいえ」なら、先に決めることがあります。 額を小さくすれば解決する場合と、そうでない場合があるので、順番が大切です。
もうひとつ、時間が経つほど有利になるとは限らない点も押さえておいてください。 長く持てば配当は積み上がりますが、その期間は減配や大きな下落に出会う期間でもあります。 20年持つあいだに景気の落ち込みが2回来れば、そのたびに配当が減り、株価も下がります。積み上がる時間は、下げに出会う時間でもあるということです。 「長期なら大丈夫」という言い方は、この片面しか見ていません。
最後に、配当そのものについても確かめておくことがあります。 配当からは税金が引かれるので、受け取る額は表示された利回りより少なくなります。 NISA口座なら非課税にできますが、買っただけでは非課税になりません。 条件はNISAの配当が非課税にならない理由にまとめています。
