親の家を相続して、誰も住まないまま持っている。売る予定も貸す予定もまだ決まっていない。この状態でも、毎年決まった額が出ていきます。住んでいないので実感が薄く、通帳を見て初めて気づくことも珍しくありません。この記事は、空き家を持ち続けるときに何にいくらかかるのかを、費目ごとに分けて整理します。
住んでいなくても出ていく費用がある
空き家の費用は、大きく2つに分かれます。所有していることに対してかかるものと、使っていることに対してかかるものです。空き家にすることで止まるのは後者だけで、前者は誰も住んでいなくてもそのまま続きます。
所有していることに対してかかる費用には、固定資産税、都市計画税、火災保険料、マンションなら管理費と修繕積立金、戸建てなら庭木の手入れや見回りの費用が入ります。遠方にあるなら、年に何度か見に行く交通費も実際に出ていく費用です。
水道や電気を止めれば使用量の分は減りますが、基本料金は契約を残している間かかります。郵便物の確認や通気のために契約を残しているケースは多く、この場合は「止めたのに請求が来る」という形になります。
- 固定資産税・都市計画税(毎年、市町村から課される)
- 火災保険料(空き家は住宅用の契約が使えないことがある)
- 管理費・修繕積立金(マンションの場合。空室でもかかる)
- 管理・見回り・草刈り・庭木の剪定(自分で行くか、業者に頼むか)
- 水道・電気の基本料金(契約を残している場合)
- 見に行くための交通費(距離と回数で決まる)
空き家にして減るのは、水道光熱の使用量と日々の消耗だけです。税・保険・管理費は、住んでいないことを理由に下がりません。
固定資産税と都市計画税の決まり方
固定資産税は、売れる値段ではなく固定資産税評価額から計算します。評価額は市町村が決めるもので、売買価格とは別のものです。評価額に特例などを当てはめて課税標準を出し、それに税率をかけたものが税額になります。
固定資産税の標準税率は、地方税法第350条第1項で100分の1.4と定められています。これは標準であって、市町村の条例で別の率にすることができます。自分の家にかかる率は、納税通知書か市町村の公表しているもので確かめるのが確実です。
都市計画税は、都市計画区域のうち市街化区域などに課されるもので、どこにでもかかるわけではありません。税率は地方税法第702条の4第1項で100分の0.3を超えることができないとされています。固定資産税と合わせて1枚の納税通知書で届くため、2つの税が入っていることに気づいていない人もいます。
土地と家屋は別に評価され、別に課税されます。ここが効いてくるのは、建物を取り壊すかどうかを考えるときです。取り壊せば家屋の分はなくなりますが、土地の課税標準のほうは次の節の特例が外れることで上がります。建物を壊すと税が安くなる、とは限りません。
誰に課されるかは日付で決まります。固定資産税の賦課期日は、地方税法第359条により当該年度の初日の属する年の1月1日です。その日の所有者に、その年度の1年分が課されます。年の途中で売っても、その年度の納税義務者は変わりません。売買の際に日割りで精算することはありますが、それは当事者間の取り決めで、市町村から請求が届くのは1月1日の所有者のほうです。
免税点があります。地方税法第351条により、同一の市町村内で同じ人が持つ課税標準となるべき額が、土地は30万円、家屋は20万円に満たない場合は固定資産税を課すことができません。評価額が低い土地では、税額が0円になることがあります。
住宅用地の特例が、税額を決めている
住宅の敷地になっている土地には、課税標準を下げる特例があります。地方税法第349条の3の2が定めているもので、割合は面積の区分で変わります。
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
地方税法第349条の3の2第1項・第2項、第702条の3第1項・第2項。200㎡を超える土地は、住居の数で除した面積で区分を判定します。
下げる幅が大きいので、この特例が当てはまるかどうかで税額は大きく変わります。そして空き家の場合、当てはまらなくなる道が2つあります。1つは建物を取り壊して住宅がなくなること。もう1つは、空家法の勧告を受けることです。
地方税法第349条の3の2第1項の括弧書きは、空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項により勧告がされた管理不全空家等と、同法第22条第2項により勧告がされた特定空家等の敷地を、住宅用地から除いています。勧告を受けた時点で、特例の対象から外れます。
外れたときに何倍になるかは、一律には言えません。土地の面積が200㎡以下なら6分の1から1に戻る形になりますが、負担調整措置や都市計画税の有無で結果は変わります。いまの税額を単純に何倍かして出せるものではありません。市町村に確認するのが確実です。
勧告までの段取りは管理不全空家とは?で整理しています。指導や勧告は突然来るものではなく、段階があります。
分からない費目を0円にすると、答えが変わる
維持費を数えるときに、いちばん結果を狂わせるのがここです。火災保険料が分からない、管理費の額を覚えていない、交通費を数えていない。こういった費目を0円として足すと、合計は「調べていない分だけ安い答え」になります。
分からないことは、金額が小さいことではありません。むしろ、分からないまま放置されている費目のほうが大きいことがあります。保険は空き家になると住宅用の契約が使えず、別の区分になって保険料が上がるケースがあります。遠方の家を年に4回見に行く交通費は、1回の額が小さくても年額にすると目につく大きさになります。
対処はひとつだけです。分からないものは0円にせず、未計算として分けて置きます。合計の下に「まだ入っていないもの」が並んでいれば、その合計を読み違えることがありません。足せる費目だけで出した額を、全部の額だと思い込むのが危ない。
管理費と修繕積立金は、マンションでは空室でもかかります。修繕積立金は、長期修繕計画の見直しで値上がりすることがあります。いまの額を将来にそのまま伸ばすと、後ろの年ほど実際より小さく出ます。
同じ年額でも、年数をかけると桁が変わる
年額で見ているあいだは、どの費目も大きく感じません。問題は、空き家の期間が年単位で続くことです。年額に年数をかけた時点で、見え方が変わります。
年額が同じでも、5年なら5倍、10年なら10倍、20年なら20倍です。そしてここに、物価や管理費の上昇が乗ります。上昇率を年1%か2%で見込むだけで、10年後・20年後の累計は、年額の単純な掛け算より大きくなります。
1年目は上昇前なので、かけるのは2年目からです。上昇率を何%と見るかで答えが変わるため、試算では上昇率を自分で動かせるようにしておくほうが使えます。0%で置いた累計と、2%で置いた累計を並べて見ると、どこまで気にする必要があるかが分かります。
長さを決めずに累計だけ見ても意味がありません。「いつまで持つか決めていない」こと自体が、累計を伸ばしています。期間を決めるというのは、売る時期を決めるか、使う時期を決めるか、どちらかです。
1年・5年・10年・20年の累計を出すと、上昇率を変えたときの差と、いま売る場合に並ぶ将来の売却価格も一緒に出ます。
調べる順番を決めておく
費目は多いので、全部を同時に調べようとすると途中で止まります。順番を決めると進みます。
| 順番 | 調べるもの | どこで分かるか |
|---|---|---|
| 1 | 固定資産税・都市計画税の年額 | 納税通知書、課税明細書 |
| 2 | 管理費・修繕積立金(マンション) | 管理組合の通知、引き落ちの記録 |
| 3 | 火災保険の契約区分と保険料 | 保険証券、保険会社への問い合わせ |
| 4 | 水道・電気の基本料金 | 検針票、各社の明細 |
| 5 | 管理・見回りの費用と回数 | 自分の記録、業者の見積もり |
1と2は書類が残っているので早く埋まります。3以降は問い合わせが必要になることがあります。
納税通知書は最初に見ます。固定資産税と都市計画税の年額が載っているうえ、課税明細書には土地と家屋それぞれの評価額と課税標準が書かれています。住宅用地の特例が当てはまっているかどうかも、ここから読み取れることが多い。
この5つが埋まれば、年額の大部分は出ます。残りを未計算として分けておけば、累計の読み方を間違えません。全部そろうまで判断を止める必要はありません。
税・管理費・保険・基本料金・見回りの5つを押さえれば、年額の大部分は出ます。残りは0円にせず未計算として分け、年数をかけた累計で判断します。
