「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」という言い方を見かけます。これは罰金ではなく、住宅用地の特例から外れるという仕組みの話です。そして外れるのは放置した瞬間ではなく、市町村長から勧告を受けたときです。この記事は、勧告に至るまでの段階と、何が起きると税が変わるのかを、空家法と地方税法の条文に沿って整理します。
空家法には2つの区分がある
根拠になっているのは、空家等対策の推進に関する特別措置法です。この法律は、空き家を2つの区分で扱っています。管理不全空家等と特定空家等です。
特定空家等は、同法第2条第2項で定義されています。そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等です。
管理不全空家等は、同法第13条第1項に出てきます。空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められるものです。つまり、特定空家等の一段手前にある状態を指しています。
この区分が2023年の改正で加わったことが、話を変えました。それまでは特定空家等にならない限り措置の対象になりませんでした。いまは一段手前の状態でも、指導と勧告の対象になります。
| 区分 | どんな状態か | 措置 |
|---|---|---|
| 空家等 | 居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの | 所有者等に適切な管理の努力義務 |
| 管理不全空家等 | そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態 | 指導 → 勧告 |
| 特定空家等 | 倒壊等の危険、衛生上有害、景観を著しく損なう等の状態 | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行 |
空家等対策の推進に関する特別措置法第2条、第5条、第13条、第22条。
管理不全空家等は、指導のあとに勧告
管理不全空家等に対する措置は2段階です。同法第13条第1項で、市町村長は所有者等に対し、特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができます。
第13条第2項は、その先です。指導をした場合において、なお状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の必要な具体的な措置について勧告することができる、としています。
読み取れる順番は決まっています。指導が先で、勧告は指導をしたあとです。指導なしに勧告が来ることはありません。そして勧告は、指導のあとも状態が改善されないと認められたときのものです。手紙が1通届いただけで特例が外れるわけではない。
- まず指導が来る(第13条第1項)
- 指導を受けても状態が改善されないと認められると、勧告になる(同条第2項)
- 勧告の時点で、住宅用地の特例から外れる(地方税法第349条の3の2第1項)
- 管理不全空家等の段階には、命令や代執行の規定はない
特定空家等は、勧告のあとに命令と代執行
特定空家等に対する措置は、同法第22条にまとまっています。段階は4つです。
第1項は助言又は指導です。除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう助言又は指導をすることができます。ただし、倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態または著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却が除かれています。
第2項は勧告です。助言又は指導をした場合において、なお状態が改善されないと認めるときに、相当の猶予期限を付けて措置をとることを勧告することができます。
第3項は命令です。勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合で、特に必要があると認めるときに、相当の猶予期限を付けて措置をとることを命ずることができます。命令の前には、意見書を提出する機会が与えられます(同条第4項)。公開による意見の聴取を請求することもできます(同条第5項)。
第9項は行政代執行です。命じた措置が履行されないとき、履行しても十分でないとき、または期限までに完了する見込みがないときに、行政代執行法の定めるところに従い、市町村長が自ら行うか第三者に行わせることができます。かかった費用は所有者から徴収されます。
命令に違反すると過料が科されます。同法第30条第1項は、第22条第3項の規定による市町村長の命令に違反した者を50万円以下の過料に処するとしています。また、立入調査を拒み、妨げ、忌避した場合などは20万円以下の過料です(同条第2項)。
所有者が分からない場合も規定があります。同条第10項は、過失がなくて命令対象者を確知することができないときに、市町村長がその者の負担において措置を自ら行うか、措置実施者に行わせることができるとしています。連絡がつかなければ進まない、という形にはなっていません。
命令をした場合には、標識の設置その他の方法でその旨を公示しなければならないとされています(同条第13項)。標識は当該特定空家等に設置することができ、所有者等はその設置を拒み、妨げてはならないとされています(同条第14項)。
勧告を受けると、住宅用地の特例から外れる
税が変わるのは、勧告の時点です。地方税法第349条の3の2第1項は、住宅用地を定義する括弧書きで、次の2つの敷地を除いています。
- 空家法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた、同法第13条第1項に規定する管理不全空家等の敷地
- 空家法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた、同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地
除かれる、というのは住宅用地として扱わないという意味です。住宅用地であれば課税標準は価格の3分の1になり、200㎡以下の小規模住宅用地なら6分の1になります(同条第1項・第2項)。この根拠がなくなるので、課税標準は下げる前の額に戻ります。
都市計画税も同じ構造です。地方税法第702条の3は、第349条の3の2の適用を受ける土地について課税標準を3分の2、小規模住宅用地に当たる部分は3分の1にするとしています。固定資産税の特例から外れれば、都市計画税の特例も当てはまらなくなります。
注意したいのは、税率が上がるわけではないことです。評価額も変わりません。課税標準を下げる根拠が無くなるだけで、その結果として税額が上がります。だから「何倍になる」という形では言えません。負担調整措置や、土地の面積の区分、都市計画税が課される区域かどうかで結果が変わります。
管理不全空家等と特定空家等で、税の扱いに差はありません。どちらの勧告でも住宅用地から除かれます。段階が手前だから税は変わらない、ということはない。
空き家の維持費の全体は空き家の維持費はいくら?で整理しています。税はそのうちの1つで、保険と管理費も住んでいなくてもかかります。
どこで止められるのか
段階があるということは、止められる場所があるということです。指導の時点で状態を改善すれば、勧告には進みません。条文が「なお状態が改善されないと認めるとき」を条件にしているためです。
何をすれば改善なのかは、状態によって違います。倒壊のおそれなら修繕か除却、立木竹が伸びているなら伐採、衛生上の問題ならその除去です。市町村からの指導には、何が問題で何をとるべき措置なのかが書かれています。そこに書かれていることが答えです。
| いまの段階 | 次に来るもの | 止めるためにすること |
|---|---|---|
| 何も来ていない | 指導 | 状態を保つ。見回りと手入れの間隔を決める |
| 指導が来た | 勧告(税の特例が外れる) | 指導に書かれた措置をとる |
| 勧告が来た | 命令(特定空家等の場合) | 勧告に係る措置をとる。できない事情は伝える |
| 命令が来た | 代執行と過料 | 期限内に措置をとる。費用は自己負担より重くなる |
管理不全空家等には命令と代執行の規定がありません。特定空家等と認められてからの段階です。
措置をとるにはお金がかかります。修繕も除却も、見積もりを取ってから金額が分かります。そして持ち続ける限り、維持費と並行して出ていく費用になります。直して持ち続けるのか、売るのか、という比較はここで出てきます。
市町村には空き家の相談窓口があります。空家等管理活用支援法人を指定している市町村もあり(同法第23条)、管理や活用の相談を受ける業務が定められています(同法第24条)。自分で業者を探す前に、窓口に聞くほうが早いことがあります。
持ち続ける費用と、売る場合を並べて確かめると、累計の維持費と、いま売る場合に並ぶ将来の売却価格が出ます。
税が変わるのは勧告の時点で、勧告の前には必ず指導があります。指導に書かれた措置をとれば勧告には進まず、管理不全空家等と特定空家等のどちらの勧告でも住宅用地の特例から外れます。
