低解約返戻金型とは
低解約返戻金型は、保険料の払込期間中の解約返戻金を低く抑えた設計です。 その代わりに毎月の保険料が安くなり、払込が終わったあとの返戻率は高くなります。 終身保険や学資保険で見かける形で、商品名に「低解約返戻金型」と入っていることが多くあります。
名前が難しく見えますが、やっていることは単純です。 通常の終身保険なら、途中でやめたときに戻る額がそれなりにあります。 この型は、払込が終わるまでのあいだ、その戻る額を意図的に低くしてあります。やめにくくする代わりに、毎月の保険料を下げているという交換です。
抑えられる割合は商品によりますが、 払込期間中の返戻金を通常の7割程度に設定したものが一般的だとされています。 正確な割合は契約ごとに違うので、設計書か返戻金予定表で確かめてください。
なぜ保険料が安くなるのか
保険会社にとって、途中で解約されることは不確実な要素です。 解約に備えて多くの資金を手元に置いておく必要があり、 そのぶん運用に回せる額が減ります。
払込期間中の返戻金を低くすると、途中解約が起きにくくなります。 解約されにくいお金は長く運用でき、その利益を保険料の割引として返せます。やめにくくすることと引き換えに、保険料を下げているという構造です。
同じ理屈は、保険会社にとっての利点でもあります。 途中で解約されない前提が立つと、 集めたお金をより長い期間の運用に回せます。 長く運用できるほど見込める利益は大きくなり、 その一部が契約者側に戻ってくる形になっています。やめない約束と引き換えに、条件が良くなっていると考えると分かりやすくなります。
だから、この型を選ぶかどうかは 「払込期間を最後まで払い続けられるか」の見通しと表裏です。 保険料が安いこと自体は良い面ですが、 その安さは、途中でやめる可能性を自分で引き受けた対価でもあります。
自分の契約がそうか確かめる
確かめ方は3つあります。いちばん早いのは返戻金予定表です。
| 見るもの | 何が分かるか |
|---|---|
| 商品名 | 「低解約返戻金型」と入っていれば、ほぼ確定 |
| 返戻金予定表 | 払込満了の前後で金額が不連続に増えていれば、この型 |
| 設計書の注記 | 払込期間中の返戻金を抑えている旨が書かれている |
確かめ方
商品名で分からないこともあります。 ペットネームだけが大きく書かれていて、 正式名称が小さく載っているような設計書では見落とします。 その場合は予定表の形で判断するのが確実です。
予定表を見るときは、払込満了の年を境に金額が跳ねているかを見ます。 なだらかに増えているだけなら、通常の型です。 満了の翌年で急に増えていれば、低解約返戻金型だと判断できます。
学資保険でも同じ設計が使われています。 進学の時期に合わせて受け取る前に解約すると、戻る額が大きく減ります。 子どもの教育費という、使う時期が決まっているお金を預けているぶん、 途中で崩すことの影響はさらに大きくなります。
予定表が手元にない場合は、保険会社に請求できます。 経過年数ごとの解約返戻金が並んだ表で、 契約者向けのページから見られることもあります。
いちばん効くのは、途中でやめられないこと
この型でいちばん効いてくるのは、返戻率の数字そのものより、やめる自由が小さいことです。
払込期間が長いほど、その期間に何が起きるか分かりません。 収入が下がる、転職する、家族が増える、大きな支出が必要になる。 そのときに保険料を払い続けられなければ、 返戻率がいちばん低い時期に解約することになります。
もうひとつ見落とされやすいのが、払込期間の長さそのものです。 保険料を下げようとして払込期間を長く取ると、 返戻率が上がる時期も同じだけ先に延びます。 60歳払込満了にするか65歳にするかで、やめにくい期間が5年変わります。月々の保険料だけで比べると、この差は見えません。
すでに払い込んだ分は、どの道を選んでも戻りません。 ここで考えるのは、これから払う保険料と、これから受け取る額だけです。「ここまで払ったから続ける」ではなく、「あと何年でいくら増えるか」で見ます。
もうひとつ、保険料の払込が難しくなる前に気づける合図があります。 自動振替貸付です。引き落としができなかったときに保険会社が立て替える仕組みで、 これが始まっていると、すでに払うのが苦しい状態になっています。 利息も付くので、気づいた時点で選択肢を並べ直したほうが損が小さくなります。
将来の額を、率から逆算しない
この型でもっとも間違えやすいのが、将来の金額の見積もりです。 いまの返戻率が70%だからといって、10年後に何%になるかを計算で出すことはできません。
返戻率は年ごとの金額から計算した結果であって、 一定の率で増えていく利回りではないからです。 とくにこの型は払込満了で段差があるので、 いまの率を伸ばした線は、実際の金額とまったく違うところを通ります。
比べるときは、時点をそろえて数字をもらいます。 5年後・10年後・払込満了時・満期時のように指定すると、 続けた場合と解約した場合を同じ土俵に乗せられます。
払済にすると段差はどうなるか
払込期間中に払済へ変更した場合、 もとの契約の予定表にあった段差が、そのまま再現されるとは限りません。
払済は、その時点の解約返戻金を原資に別の保険へ組み替える手続きです。 組み替えたあとの契約には、あらためて返戻金の形が決まります。もとの予定表の「払込満了後」の金額を、払済後の金額として読まないでください。
払済そのものの仕組みは払済保険とは?で扱っています。
いま持っている人が確かめること
すでに契約している場合、確かめる順番があります。
| 順番 | 確かめること |
|---|---|
| 1 | 払込満了まであと何年か |
| 2 | 満了時と、その翌年の解約返戻金はいくらか |
| 3 | あと何年ぶんの保険料を払うことになるか |
| 4 | いま解約した場合、いくら戻るか |
確かめる順番
順番に意味があります。1と3が分かれば「あといくら払うか」が出て、 2と4が分かれば「待つといくら増えるか」が出ます。この2つを突き合わせます。
この4つは、1回の電話でまとめて訊けます。 契約番号を伝えて「満了時と、その翌年の解約返戻金を教えてください」と頼むと、 予定表そのものを送ってもらえることが多いはずです。 予定表があれば、4の「いま解約した場合」も同じ表から読めます。
2と3を並べると、「待つ価値があるか」が数字で見えます。 満了まであと2年で、払う保険料が合計50万円、 満了時と現在の返戻金の差が80万円なら、待つ側が多く残ります。 逆に、あと15年で払う保険料が大きければ、待つことが有利とは限りません。
もうひとつ、待つあいだはそのお金を動かせません。 満了まで10年あるなら、10年間は保険の中に置いたままになります。 その間に使いたい場面が来ても、崩せば返戻率がいちばん低い時期の解約になります。金額の差だけでなく、動かせない期間の長さも含めて見てください。
「満了まで待てば得」とは限らない、というのがここでの要点です。 待つあいだに払う保険料のほうが大きいこともあります。 数字を並べれば、どちらなのかは判断できます。
