保険と税

低解約返戻金型保険の注意点

保険料が安い代わりに、払込期間中にやめると大きく損をします。途中でやめないことを前提にした設計です。

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この記事の要点

  • 払込期間中の解約返戻金を低く抑え、そのぶん保険料を安くした設計です。
  • 途中でやめると大きく元本割れし、払込満了後に返戻率が上がります。
  • 自分の契約がそうかは、返戻金予定表で払込満了の前後に段差があるかを見れば分かります。
  • いまの返戻率を伸ばしても将来の金額は出せません。段差があるため、計算で近似できません。
  • 払済に変更した場合、もとの予定表の満了後の金額はそのまま当てはまりません。
  • 「満了まで待てば得」とは限りません。待つあいだに払う保険料のほうが大きいこともあります。

低解約返戻金型とは

低解約返戻金型は、保険料の払込期間中の解約返戻金を低く抑えた設計です。 その代わりに毎月の保険料が安くなり、払込が終わったあとの返戻率は高くなります。 終身保険や学資保険で見かける形で、商品名に「低解約返戻金型」と入っていることが多くあります。

低解約返戻金型は、払込が終わると跳ねる返戻金年数払込の累計払込満了この間に解約すると大きく割れる
払込期間中の解約返戻金を低く抑え、そのぶん払込満了後の返戻率を高くした設計です。途中で解約すると大きく元本割れし、満了まで持つと戻る額が増えます。いまの返戻率をそのまま将来に伸ばしても、この段差は再現できません。
払込期間中にやめると大きく元本割れし、 払込を終えるまで持てば戻る額が増えます。途中でやめないことを前提にした設計です。

名前が難しく見えますが、やっていることは単純です。 通常の終身保険なら、途中でやめたときに戻る額がそれなりにあります。 この型は、払込が終わるまでのあいだ、その戻る額を意図的に低くしてあります。やめにくくする代わりに、毎月の保険料を下げているという交換です。

抑えられる割合は商品によりますが、 払込期間中の返戻金を通常の7割程度に設定したものが一般的だとされています。 正確な割合は契約ごとに違うので、設計書か返戻金予定表で確かめてください。

なぜ保険料が安くなるのか

保険会社にとって、途中で解約されることは不確実な要素です。 解約に備えて多くの資金を手元に置いておく必要があり、 そのぶん運用に回せる額が減ります。

払込期間中の返戻金を低くすると、途中解約が起きにくくなります。 解約されにくいお金は長く運用でき、その利益を保険料の割引として返せます。やめにくくすることと引き換えに、保険料を下げているという構造です。

マネック(案内役):「同じ保障なのにこっちのほうが安い」には、だいたい理由があるよ。 この商品の場合は、途中でやめられないこと。

同じ理屈は、保険会社にとっての利点でもあります。 途中で解約されない前提が立つと、 集めたお金をより長い期間の運用に回せます。 長く運用できるほど見込める利益は大きくなり、 その一部が契約者側に戻ってくる形になっています。やめない約束と引き換えに、条件が良くなっていると考えると分かりやすくなります。

だから、この型を選ぶかどうかは 「払込期間を最後まで払い続けられるか」の見通しと表裏です。 保険料が安いこと自体は良い面ですが、 その安さは、途中でやめる可能性を自分で引き受けた対価でもあります。

自分の契約がそうか確かめる

確かめ方は3つあります。いちばん早いのは返戻金予定表です。

見るもの何が分かるか
商品名「低解約返戻金型」と入っていれば、ほぼ確定
返戻金予定表払込満了の前後で金額が不連続に増えていれば、この型
設計書の注記払込期間中の返戻金を抑えている旨が書かれている

確かめ方

商品名で分からないこともあります。 ペットネームだけが大きく書かれていて、 正式名称が小さく載っているような設計書では見落とします。 その場合は予定表の形で判断するのが確実です。

予定表を見るときは、払込満了の年を境に金額が跳ねているかを見ます。 なだらかに増えているだけなら、通常の型です。 満了の翌年で急に増えていれば、低解約返戻金型だと判断できます。

学資保険でも同じ設計が使われています。 進学の時期に合わせて受け取る前に解約すると、戻る額が大きく減ります。 子どもの教育費という、使う時期が決まっているお金を預けているぶん、 途中で崩すことの影響はさらに大きくなります。

予定表が手元にない場合は、保険会社に請求できます。 経過年数ごとの解約返戻金が並んだ表で、 契約者向けのページから見られることもあります。

いちばん効くのは、途中でやめられないこと

この型でいちばん効いてくるのは、返戻率の数字そのものより、やめる自由が小さいことです。

払込期間が長いほど、その期間に何が起きるか分かりません。 収入が下がる、転職する、家族が増える、大きな支出が必要になる。 そのときに保険料を払い続けられなければ、 返戻率がいちばん低い時期に解約することになります。

もうひとつ見落とされやすいのが、払込期間の長さそのものです。 保険料を下げようとして払込期間を長く取ると、 返戻率が上がる時期も同じだけ先に延びます。 60歳払込満了にするか65歳にするかで、やめにくい期間が5年変わります。月々の保険料だけで比べると、この差は見えません。

払込期間中に家計が苦しくなった場合、 解約よりも先に、減額・特約の解約・払済への変更が選べるかを確かめてください。 いちばん不利な時期に解約するのは、最後の手段です。
戻らない部分と、これから動かせる部分いまこれまで払った保険料戻らない。判断に使えないこれから払う/受け取るここだけで比べる左を取り戻すために右を決めると、ほぼ必ず「続ける」になる
すでに払った保険料と現在の解約返戻金の差は、続けても解約しても戻りません。判断に使えるのは、これから払う保険料と、これから受け取る額だけです。左側を取り戻そうとすると、右側の損得と関係なく「続ける」を選ぶことになります。

すでに払い込んだ分は、どの道を選んでも戻りません。 ここで考えるのは、これから払う保険料と、これから受け取る額だけです。「ここまで払ったから続ける」ではなく、「あと何年でいくら増えるか」で見ます。

もうひとつ、保険料の払込が難しくなる前に気づける合図があります。 自動振替貸付です。引き落としができなかったときに保険会社が立て替える仕組みで、 これが始まっていると、すでに払うのが苦しい状態になっています。 利息も付くので、気づいた時点で選択肢を並べ直したほうが損が小さくなります。

将来の額を、率から逆算しない

この型でもっとも間違えやすいのが、将来の金額の見積もりです。 いまの返戻率が70%だからといって、10年後に何%になるかを計算で出すことはできません。

返戻率は年ごとの金額から計算した結果であって、 一定の率で増えていく利回りではないからです。 とくにこの型は払込満了で段差があるので、 いまの率を伸ばした線は、実際の金額とまったく違うところを通ります。

将来いくら戻るかは、保険会社の予定表に書いてある金額を見る以外に方法がありません。 「返戻率◯%なので、10年後はこれくらい」という試算は、この型では成立しません。

比べるときは、時点をそろえて数字をもらいます。 5年後・10年後・払込満了時・満期時のように指定すると、 続けた場合と解約した場合を同じ土俵に乗せられます。

いま持っている人が確かめること

すでに契約している場合、確かめる順番があります。

順番確かめること
1払込満了まであと何年か
2満了時と、その翌年の解約返戻金はいくらか
3あと何年ぶんの保険料を払うことになるか
4いま解約した場合、いくら戻るか

確かめる順番

順番に意味があります。1と3が分かれば「あといくら払うか」が出て、 2と4が分かれば「待つといくら増えるか」が出ます。この2つを突き合わせます。

この4つは、1回の電話でまとめて訊けます。 契約番号を伝えて「満了時と、その翌年の解約返戻金を教えてください」と頼むと、 予定表そのものを送ってもらえることが多いはずです。 予定表があれば、4の「いま解約した場合」も同じ表から読めます。

2と3を並べると、「待つ価値があるか」が数字で見えます。 満了まであと2年で、払う保険料が合計50万円、 満了時と現在の返戻金の差が80万円なら、待つ側が多く残ります。 逆に、あと15年で払う保険料が大きければ、待つことが有利とは限りません。

もうひとつ、待つあいだはそのお金を動かせません。 満了まで10年あるなら、10年間は保険の中に置いたままになります。 その間に使いたい場面が来ても、崩せば返戻率がいちばん低い時期の解約になります。金額の差だけでなく、動かせない期間の長さも含めて見てください。

「満了まで待てば得」とは限らない、というのがここでの要点です。 待つあいだに払う保険料のほうが大きいこともあります。 数字を並べれば、どちらなのかは判断できます。

続ける・払済・解約を、同じ条件で比べる

返戻金そのものの仕組みは生命保険の解約返戻金とは?にまとめています。

よくある質問

自分の保険が低解約返戻金型か、どう確かめますか?
いちばん早いのは返戻金予定表です。払込満了の年を境に金額が不連続に増えていれば、この型です。商品名に「低解約返戻金型」と入っていることも多くあります。予定表が手元に無ければ、保険会社に請求できます。
払込満了まで待ったほうがいいですか?
満了までに払う保険料の合計と、満了時の返戻金と現在の返戻金の差を比べてください。待つあいだに払う額のほうが大きければ、待つことが有利とは限りません。あわせて、満了までそのお金を動かせないことも考慮します。
払込期間中に家計が苦しくなったら?
解約の前に、減額・特約の解約・払済への変更が選べるかを保険会社に確かめてください。返戻率がいちばん低い時期の解約は、最後の手段です。引き落としができず自動振替貸付が始まっている場合は、利息も付くので早めに相談してください。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁の生命保険料控除のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。