結論|額面は守られる。利息と実質価値は別
個人向け国債は、満期前に換金しても買った金額を下回ることはありません。 財務省も「元本割れのリスクなし」と明記しています。この点は事実です。
ただし「元本保証」という言葉から想像する範囲と、実際に守られている範囲にはずれがあります。 守られているのは額面の金額です。 受け取れるはずだった利息、そしてお金の実質的な価値は守られていません。
| 守られるか | |
|---|---|
| 買った金額(額面) | 守られる。市場価格が下がっても影響しない |
| 受け取る利息 | 守られない。中途換金では直近2回分が差し引かれる |
| 換金のタイミング | 守られない。発行から1年間は原則換金できない |
| お金の実質的な価値 | 守られない。物価が上がれば購買力は下がる |
以下、それぞれについて具体的に見ていきます。
なぜ元本割れしないのか
債券は本来、市場で売買される商品です。市場金利が上がれば債券価格は下がり、 途中で売れば買った金額を下回ることがあります。これが通常の債券の値動きです。
個人向け国債は、この仕組みを使いません。満期前に換金したいときは国が額面どおりの価格で買い取ります。 市場で売るのではなく、発行体である国に直接引き取ってもらうかたちです。
買取価格は市場の状況に左右されません。 金利がどれだけ上がっていても、額面100円につき100円で買い取られます。 そのため元本が目減りしないのです。
購入価格も額面100円につき100円です。買うときも換金するときも額面どおりなので、 価格の差で損得が生まれる余地がありません。
この安心には対価があります。個人向け国債の利率は、 基準金利に0.66を掛けたり、0.05%を引いたりして計算され、市場金利より低く設定されます。利回りの低さが、価格変動をなくすための費用だと考えると納得しやすいと思います。
例外1|受け取る利息は減ることがある
満期前に換金すると、中途換金調整額が差し引かれます。
利子は半年ごとに年2回支払われるので、直前2回分はおよそ1年分にあたります。 つまり直近1年分の利息がほぼ失われるということです。
元本は減らないが、受取総額は減る
ここは混同しやすい部分です。差し引かれるのは利子であって元本ではないため、 手元に戻る金額が買った金額を下回ることはありません。
ただし、2年間持って換金した場合、実際に手元に残る利息は約1年分になります。 「2年分の利息がもらえる」と思っていると、想定と食い違います。 損はしないが、期待したほど増えない、というのが正確な理解です。
利率が高いときに買ったものほど、差し引かれる金額も大きくなります。 有利な条件で買えたときほど、途中でやめるコストが高くつく構造です。
例外2|1年間は換金できない
発行から1年間は、原則として中途換金できません。 元本が守られていても、その間はそもそも引き出せないということです。
しかも起算点は購入日ではなく発行日です。 募集期間に申し込んでから発行までにおよそ1か月あるため、 実際には申込から1年1か月ほど資金が固定されます。
例外として認められる場合
- 災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害により被害を受けた場合
- 保有者本人が亡くなった場合
失業、病気、急な出費といった個人的な事情は含まれません。 「元本保証だからいざというときも安心」という理解は、この点で成り立ちません。 生活防衛資金は預金に置いておくほうが確実です。
例外3|インフレには対応しない
額面の金額は守られますが、そのお金で買えるモノの量は守られません。
100万円を5年間持ち、額面どおり100万円が戻ってきたとします。 その5年で物価が10%上がっていれば、戻ってきた100万円で買えるものは、5年前の約91万円分にとどまります。 利息を加えてもインフレ率に届かなければ、実質的には目減りです。
これは個人向け国債に限った話ではなく、預金にも同じことが起きます。 むしろ利率がより低い預金のほうが影響は大きくなります。 ただし「元本保証」という言葉がこの部分まで守ってくれると 誤解されやすいため、区別しておく価値があります。
変動10年であれば、金利上昇局面で利率が見直されるぶん、ある程度は追随します。 詳しくは個人向け国債のリスクで整理しています。
預金保険との違い
銀行預金は預金保険制度によって、1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までが保護されます。 国債はこの制度の対象外です。
対象外と聞くと不利に思えますが、守る仕組みが違うだけです。 預金保険は銀行が破綻したときに保険機構が補填する仕組みであるのに対し、 国債は国そのものが返済義務を負っています。
| 銀行預金 | 個人向け国債 | |
|---|---|---|
| 守る主体 | 預金保険機構 | 日本国 |
| 上限 | 元本1,000万円と利息 | 上限なし |
| 守られない場合 | 1,000万円を超える部分 | 国が返済できない場合 |
| 途中での引き出し | 定期でもいつでも可(利率は下がる) | 1年間は原則不可 |
1つの銀行に1,000万円を超えて預けている場合、超過分は保護対象外です。 その部分を国債に振り分けることが、結果的に分散になるという整理も成り立ちます。
他の「元本保証」とは何が違うのか
「元本保証」「元本確保」という言葉は、いろいろな商品で使われます。 ただし、守られる仕組みも、守られない場面もそれぞれ違います。
定期預金
満期前でも解約できます。その場合は約定した利率ではなく、 中途解約利率が適用されて受取利息が減ります。元本は減りません。
構造としては個人向け国債とよく似ています。違いは、定期預金はいつでも解約できるのに対し、個人向け国債は1年間できない点と、 保護の枠組みが預金保険か国かという点です。
元本確保型の保険商品
「満期まで持てば払込額を下回らない」とうたう商品がありますが、 途中解約すると解約返戻金が払込額を下回るのが一般的です。 保証されるのは満期時点の話で、途中でやめると元本割れしうるという点が異なります。
整理すると
| 満期前の解約 | そのとき元本は | |
|---|---|---|
| 個人向け国債 | 1年経過後ならいつでも | 減らない(利子が差し引かれる) |
| 定期預金 | いつでも | 減らない(利率が下がる) |
| 元本確保型の保険 | いつでも | 下回ることがある |
| 新窓販国債 | いつでも | 下回ることがある |
商品ごとの一般的な取り扱いです。個別の条件は約款や目論見書でご確認ください。
同じ「元本保証」という言葉でも、指している範囲がこれだけ違います。 読むときは「途中でやめたらどうなるか」を確認すると、実態がつかめます。
預金保険と比べると、守り方の形が違う
預金は預金保険制度によって、1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までが保護されます。 守っているのは金融機関が破綻した場合で、それを超える部分は保護の対象外です。
個人向け国債は、国が額面で買い取ることによって金額が守られます。 金額に上限はありませんが、守っているのは国が支払う限りにおいてです。 どちらも「絶対に減らない」ではなく、守る範囲がそれぞれ決まっている、という形は同じです。
金額が大きい場合、預金だけに置くと1,000万円の枠を超えた部分が保護の外に出ます。 これを理由に国債を検討する人もいますが、その場合も1年間は換金できないという制約は残ります。 守り方が違うだけで、どちらかが一方的に安全ということではありません。
もうひとつの違いは、資金が必要になったときの動かしやすさです。 預金は原則いつでも引き出せます。定期預金でも、途中解約すれば利息が下がるだけで元本は戻ります。 個人向け国債は1年間の制限があり、その後も換金には手続きが要ります。守られている金額は同じでも、取り出しやすさは同じではありません。
実際に自分の金額でどう変わるかは 預金と国債の比較 で確認できます。受け取る利息の差と、途中で換金する場合の条件を並べて見られます。
新窓販国債では話が変わる
同じ国債でも、新窓販国債(利付国庫債券)では前提が変わります。 こちらは市場で売買するため、満期前に売れば元本を下回ることがあります。
金利が上がると債券価格は下がるため、 買ったときより金利が高い局面で売却すると、その差が損失になります。 満期まで持てば額面が戻る点は同じですが、途中でやめる場合の扱いが根本的に違います。
| 満期前に換金すると | 個人向け国債 | 新窓販国債 |
|---|---|---|
| 買取・売却の相手 | 国 | 市場 |
| 価格 | 常に額面どおり | そのときの時価 |
| 元本割れ | しない | しうる |
| 差し引かれるもの | 直近2回分の利子相当額 | なし(価格に反映される) |
| 換金できる時期 | 発行1年後から | いつでも |
「国債は元本保証」とひとくくりにされがちですが、 それが当てはまるのは個人向け国債です。新窓販国債は別の商品として見てください。
両者の違いは個人向け国債と新窓販国債の違いで7つの軸から比べています。 実際の利率でどれくらい差が出るかは、金額を入れて確かめるのが早いと思います。

