個人が買える国債は2種類ある
個人が金融機関の窓口で買える国債には、個人向け国債と新窓販国債の2つがあります。 新窓販国債は「新型窓口販売方式による利付国庫債券」の略で、 機関投資家が売買しているものと中身は同じ利付国債です。
どちらも発行体は日本国で、満期まで持てば額面どおりの金額が戻ります。 そこだけ見ると同じ商品に思えますが、満期前に換金したときの扱いが根本的に違います。 利回りの数字だけを比べて選ぶと、この点で想定と食い違います。
7つの軸で並べて比べる
| 個人向け国債 | 新窓販国債 | |
|---|---|---|
| 年限 | 変動10年・固定5年・固定3年 | 10年・5年・2年 |
| 購入単位 | 1万円から1万円単位 | 5万円から5万円単位 |
| 購入価格 | 額面100円につき100円(常に額面どおり) | 回号ごとに決まる(額面を上回ることも下回ることもある) |
| 利率の決まり方 | 基準金利から算式で計算(下限0.05%) | 市場実勢に応じた表面利率 |
| 満期前の換金 | 発行1年後から国が額面で買取 | 市場でいつでも売却できるが時価 |
| 満期前の元本 | 目減りしない | 元本を下回ることがある |
| 買える人 | 個人のみ | 個人・法人とも可 |
表のうち、判断を分けるのは下の3行です。順に見ていきます。
違い1|買う価格が額面どおりかどうか
個人向け国債は、額面100円につき100円で買います。 額面10万円分なら、支払うのはちょうど10万円です。いつ買っても変わりません。
新窓販国債は違います。募集価格は回号ごとに決まり、額面100円につき99円32銭のように、額面からずれます。 この場合、額面10万円分を買うのに9万9,320円しかかかりません。 満期には額面どおり10万円が戻るので、差額の680円も利益になります。
だから「表面利率」だけを見ると判断を誤る
新窓販国債には2つの利率が表示されます。
- 表面利率|額面に対して毎年支払われる利子の割合。クーポンとも呼ばれます。
- 応募者利回り|募集価格で買って満期まで持った場合の、年あたりの収益率。
額面より安く買えるときは、応募者利回りが表面利率を上回ります。 逆に額面より高く買うときは、応募者利回りのほうが低くなります。比べるべきは応募者利回りです。表面利率だけを見ると、実際の収益を取り違えます。
当サイトのシミュレーションでは、新窓販国債を応募者利回りで計算しています。 表面利率と募集価格も画面に併記しているので、関係を確かめられます。
違い2|途中でやめたときに何が起きるか
ここが最大の違いです。同じ「途中でやめる」でも、起きることがまったく違います。
個人向け国債|国が額面で買い取る
発行から1年が過ぎれば、いつでも国が額面どおりに買い取ります。 そのときの市場金利がどうなっていても、買取価格は変わりません。 そのため元本が目減りすることはありません。
代わりに、直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。減るのは利子であって元本ではない、という構造です。
新窓販国債|市場で売るので時価になる
いつでも売れますが、売却価格はそのときの市場価格です。 債券の価格は市場金利と逆に動くため、買ったときより金利が上がっていれば、価格は下がっています。
満期10年の債券を買った2年後に金利が1%上がっていれば、 売却価格は数%下がっていてもおかしくありません。 残り期間が長いほど、値動きは大きくなります。
新窓販国債は「いつでも売れる」ため流動性は高いのですが、 それは「いつでも損なく現金化できる」という意味ではありません。 満期まで持てば額面が戻る、というのが正確な理解です。
この違いをまとめると、個人向け国債は時間を縛る代わりに価格変動をなくし、 新窓販国債は時間を自由にする代わりに価格変動を負う、という関係になります。
違い3|利率の決まり方と、見るべき数字
個人向け国債の利率は、基準金利から決まった算式で計算されます。
固定5年 :基準金利 − 0.05%
固定3年 :基準金利 − 0.03%
いずれも市場金利より低くなる設計です。 満期前でも額面で買い取るという条件のぶん、利率が抑えられていると考えられます。
新窓販国債にはこうした割引がありません。市場の実勢がそのまま反映されるため、同じ年限で比べると、新窓販国債のほうが利回りは高くなるのが通常です。 このページの上に出している最新の利率でも、その関係が見て取れると思います。
利回りの差は、そのまま「満期前に換金できる安心を買うための費用」だと解釈できます。 高いほうが得とは限らず、その差額で何を得ているのかを見る必要があります。
違い4|購入単位と年限
個人向け国債は1万円単位、新窓販国債は5万円単位です。 少額から始めたい場合や、金額をきっちり合わせたい場合は個人向け国債のほうが扱いやすくなります。
年限は、個人向け国債が3年・5年・10年、新窓販国債が2年・5年・10年です。2年という短い年限があるのは新窓販国債だけで、 比較的近い時期に使う予定がある資金では選択肢になります。
ただし新窓販国債は、回号によっては募集期間中でも利率が未発表の期間があります。 月の途中で条件が確定するため、「今月は5年ものだけまだ出ていない」という状態が起こります。
同じ10年でどれくらい差が出るか
仮に個人向け国債の変動10年が年1.9%、新窓販国債の10年が年2.8%だったとします。 100万円を10年間持った場合の税引後の受取利息を並べると、次のようになります。
| 個人向け国債 変動10年 | 新窓販国債 10年 | |
|---|---|---|
| 年率(前提) | 1.9% | 2.8% |
| 10年間の税引前利息 | 19万円 | 28万円 |
| 税引後の受取利息 | 約15万1,000円 | 約22万3,000円 |
| 満期前に換金したら | 元本100万円は戻る | そのときの時価。下回ることもある |
年率を仮置きした概算です。実際の利率は毎月変わります。変動10年は現在の利率が続いた前提での目安です。
10年で7万円前後の差が出ます。この差だけを見れば新窓販国債が有利です。 ただし、この差は10年間まったく動かさなかった場合にのみ実現します。
途中で市場金利が1%上がった時点で売却した場合、 残存期間が長いほど価格の下落は大きくなり、 受け取った利息を差し引いても手元が減る可能性があります。 一方の個人向け国債は、同じ状況でも元本100万円がそのまま戻ります。
利回りの差は「満期まで持ちきれる人へのご褒美」です。 持ちきれるかどうかが読めないなら、その差を受け取れない可能性も込みで考える必要があります。
判断を分けるのは、途中で使うかどうか
7つの違いを並べましたが、実際に判断を分けるのはほぼ1点です。満期まで置いておけるかどうか。ここが決まれば、残りの違いは付随的なものになります。
満期まで置ける見込みが高いなら、年率の高い方を選べば受け取る利息は多くなります。 このとき比べる数字は、新窓販国債では表面利率ではなく応募者利回りです。 募集価格が額面100円と異なるため、表面利率だけを見ると実際の年率とずれます。
途中で使う可能性があるなら、個人向け国債の方が扱いやすくなります。 国が額面で買い取るため、売るタイミングによって受け取る金額が変わりません。 その代わり、発行から1年間は原則として換金できず、直前2回分の利子相当額が差し引かれます。
迷ったときは、金額を分けるという考え方もあります。 当面使わないと言い切れる分だけを年率の高い方に回し、 使うかもしれない分は換金しやすい方に置く、という分け方です。 全額をどちらか一方に寄せる必要はありません。
もうひとつ見落とされやすいのが、購入できる期間です。 どちらも毎月募集がありますが、条件は回号ごとに変わります。 「来月にしよう」と待った結果、利率が下がっていることも、上がっていることもあります。 いま出ている条件は、いま判断するための材料でしかありません。
いま募集されている両方の条件で受け取る利息がどれだけ違うかは 利息の比較シミュレーション で確認できます。満期の長さが違う商品どうしを、同じ期間で並べて比べられます。
結局どちらを選ぶか
利回りだけで選ぶなら新窓販国債になります。 ただし、それは満期まで持ちきれる場合の話です。
| こういう場合 | 向いているのは |
|---|---|
| 満期まで動かさない自信がある | 新窓販国債(利回りが高い) |
| 途中で使うかもしれない | 個人向け国債(額面で買い取ってもらえる) |
| 1万円単位で細かく調整したい | 個人向け国債 |
| 2年程度の短い期間で置きたい | 新窓販国債(2年もの) |
| 金利上昇に付いていきたい | 個人向け国債の変動10年 |
| 受け取る額を先に確定させたい | どちらの固定型でも可 |
なお、どちらか一方に決める必要もありません。 当面動かさない分を新窓販国債、使う可能性が残る分を個人向け国債、 という分け方も成り立ちます。
金額を入れると、いま募集中の両方の商品を並べて比較できます。 満期ごとに預金のままの場合と比べたうえで、 使う時期と優先したいことを答えると、条件に合うほうまで絞り込めます。
仕組みそのものをもう少し詳しく知りたい場合は個人向け国債とはを、元本の扱いが気になる場合は元本保証の正確な意味をご覧ください。

