いつから換金できるのか|1年ルール
個人向け国債は満期まで持たなくても換金できます。ただし、発行から1年が経過するまでは原則としてできません。 変動10年・固定5年・固定3年のいずれも同じです。
注意したいのは、起算点が「購入日」ではなく「発行日」である点です。 個人向け国債は毎月募集され、発行はその翌月中旬になります。 月初に申し込んだ場合、実際には申込から1年1か月ほど資金が動かせません。
たとえば8月の募集期間に申し込むと、発行は9月中旬です。 換金できるようになるのは、その1年後にあたる翌年9月中旬以降になります。
1年を過ぎれば、あとはいつでも換金できます。 満期を待つ必要はなく、月に1度といった回数の制限もありません。
1年以内でも換金できる2つの例外
次の場合には、発行から1年以内でも中途換金が認められています。
- 1災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害により被害を受けた場合。 地震や豪雨などで被災し、災害救助法が適用された地域に該当するケースです。
- 2保有者本人が亡くなった場合。 相続人が手続きを行うことで換金できます。相続してそのまま保有を続けることも可能です。
失業した、病気で医療費が必要になった、住宅の購入資金が足りなくなった、 といった個人的な事情は例外に含まれません。 この点を踏まえると、生活防衛資金や近く使う予定のあるお金は 預金に置いておくほうが確実です。
差し引かれる金額の計算
1年を過ぎて換金する場合、額面どおりの金額から中途換金調整額が差し引かれます。
利子は半年ごとに年2回支払われるので、直前2回分はおよそ1年分にあたります。 つまり、直近1年分の利息がほぼ手元に残らないということです。
0.79685という数字の意味
受け取る利子からは、すでに20.315%の税金が差し引かれています。 残るのは79.685%です。中途換金で返すのは「実際に受け取った金額」なので、 税引後の割合である0.79685を掛けています。
税引前の金額を丸ごと返すわけではない、という調整です。 利用者に不利にならないようにするための計算だと理解しておけば十分です。
差し引かれるのは利子であって元本ではありません。 そのため、手元に戻る金額が買った金額を下回ることはありません。 減るのは受取総額であって、元本ではない、という区別が重要です。
実際にいくら戻るのか|3つの例
年率1.00%の個人向け国債を100万円分買った場合で考えます。 税引前の利子は年1万円、半年ごとに5,000円ずつ支払われます。
| 保有期間 | 受け取った利子(税引後) | 差し引かれる額 | 手元に残る利息 | 戻る元本 |
|---|---|---|---|---|
| 1年2か月で換金 | 約7,968円(2回分) | 約7,968円 | ほぼ0円 | 100万円 |
| 3年で換金 | 約23,905円(6回分) | 約7,968円 | 約15,937円 | 100万円 |
| 5年(満期) | 約39,842円(10回分) | なし | 約39,842円 | 100万円 |
税率20.315%で計算した概算です。実際の金額は保有日数や端数処理により前後します。
表から分かるのは2点です。ひとつは、元本の100万円はどのケースでも減らないこと。 もうひとつは、換金が早いほど手元に残る利息が少なくなることです。
1年2か月で換金した場合、受け取った利子とほぼ同額が差し引かれるため、 実質的には利息がほとんど残りません。それでも損はしていない、という状態になります。
長く持つほど、差し引きの影響は小さくなる
差し引かれるのは常に直近2回分だけです。 保有期間が長くなるほど、受け取った利子の総額に対する割合は下がります。 5年持って換金すれば、失うのは受け取った利息の2割程度にとどまります。
利率が高いときに買ったものほど、差し引かれる金額も大きくなります。 「金利が上がったから、より有利な国債に乗り換えよう」という判断は、 この費用を差し引くと思ったほど有利になりません。
一部だけ換金することもできる
保有している全額を換金する必要はありません。額面1万円単位で、必要な分だけ換金できます。
100万円分を保有していて30万円だけ必要になった場合、 30万円分だけ換金して、残り70万円はそのまま持ち続けられます。 残した分の利率や条件は変わりません。
差し引かれる中途換金調整額も、換金する額面に対応する分だけです。 全額を換金しなければならないと思って躊躇する必要はありません。
手続きの流れ
手続きは、購入した金融機関の窓口またはオンラインで行います。 国に直接申し出るわけではありません。
- 1購入した金融機関に中途換金を申し込みます。銘柄と換金したい額面金額を指定します。
- 2金融機関が国に対して買取請求を行います。
- 3指定した口座に代金が入金されます。入金までの日数は金融機関により異なります。
- 手数料は原則としてかかりません。差し引かれるのは中途換金調整額のみです。
- 購入した金融機関以外では手続きできません。どこで買ったか分からない場合は、まず取引明細を確認してください。
- 相続による換金の場合は、戸籍謄本などの追加書類が必要になります。
換金の受付から入金までの所要日数、オンラインで完結するかどうかは 金融機関によって差があります。使う日が決まっている場合は、余裕をもって手続きしてください。
満期を迎えたときはどうなるか
満期まで持ち切った場合は、中途換金とは扱いが変わります。差し引かれるものはありません。
満期日に、額面どおりの金額が指定口座へ入金されます。 最後の利子もあわせて支払われます。こちらから手続きをする必要はありません。
自動で次の国債に乗り換わることはない
定期預金の自動継続のような仕組みはありません。 満期を迎えたお金は普通預金に入ったままになるため、そのまま置いておくと利率の低い状態に戻ります。
続けて運用したい場合は、あらためてその月の募集に申し込むことになります。 満期日と、次の募集期間を確認しておくと、資金が寝る期間を短くできます。
満期の案内が金融機関から届くこともありますが、確実ではありません。 発行日と満期日は購入時点で確定しているので、 控えておくか、資産管理ツールなどで満期を管理しておくと取りこぼしを防げます。
途中換金と満期の違いをまとめると
| 中途換金 | 満期 | |
|---|---|---|
| 時期 | 発行1年後からいつでも | 満期日 |
| 手続き | 金融機関へ申し込みが必要 | 不要(自動で入金) |
| 戻る元本 | 額面どおり | 額面どおり |
| 差し引き | 直近2回分の利子相当額 | なし |
| 単位 | 額面1万円単位で一部も可 | 全額 |
換金する前に確かめること
手続きそのものは難しくありませんが、実行する前に確かめておくと後悔しにくい点があります。
- いま換金すると、手取りがいくらになるか。調整額を引いた後の金額で見る
- 全額でなく一部だけ換金できないか。1万円単位で部分換金できます
- 換金せずに済む方法がないか。手元の他の資金で足りるなら、そちらを先に使う
一部だけ換金すれば、残った分はそのまま満期まで持てます。 必要な金額だけを取り出せば、差し引かれる調整額もその分だけで済みます。 全額を解約する前に、いくら必要なのかをはっきりさせておいてください。
手続きにかかる日数も確認しておくと安心です。 申し込んだその日に入金されるとは限らず、金融機関によっては数営業日かかります。 支払期限が決まっている用途に充てる場合は、余裕をみて動いてください。
なお、換金したこと自体で不利になる扱い(今後の購入が制限されるなど)はありません。 差し引かれるのは直前2回分の利子相当額だけで、それ以外のペナルティはない、と考えて差し支えありません。
そもそも途中で使う可能性が高いお金であれば、満期の短い商品を選ぶか、 預金に置いたままにするという判断もあります。使う時期から選ぶ診断 では、その点も含めて条件に合う商品を絞り込めます。
換金すべきかを判断する材料
途中で換金するかどうかを考えるとき、見るべき点は次の3つです。
1. そのお金を本当に今使うのか
使う予定が確定しているなら、迷う必要はありません。元本は戻ります。 直近1年分の利息を手数料として払った、と整理すれば十分です。
2. 乗り換えが目的なら、差額と費用を比べる
より高い利率の商品に乗り換えたい場合は、差し引かれる金額を、乗り換えで増える金額が上回るかを確認します。 利率差が小さいうちは、多くの場合コストのほうが大きくなります。
3. 残りの保有期間を確認する
満期まであと数か月であれば、待ったほうが有利です。 差し引かれるのは常に直近2回分なので、満期まで持てばその負担がなくなります。
なお、こうした判断をそもそも迫られないようにするには、 購入する段階で満期と使う時期を合わせておくのが確実です。 3年後に使う予定があるなら満期3年、というかたちです。
金額と使う時期を入れると、いま募集中の商品のうち どれが期間に収まるかを含めて確認できます。 元本の扱いについては元本保証の正確な意味、他のリスクについては個人向け国債のリスクで整理しています。


