家計・ライフプラン

FIREに必要な額の計算方法

必要額は生活費に比例します。ここが1割違えば、必要額も1割違う。率や利回りを動かす前に、辞めたあとの生活費を固めるほうが効きます。

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この記事の要点

  • 必要額=辞めたあとの年間生活費 ÷ 取り崩し率。順番として、生活費を先に固めます。
  • いまの支出をそのまま使えません。通勤費や教育費は無くなり、健康保険料と国民年金保険料は増えます。
  • 働いて稼ぐ分は生活費から引きます。月5万円で必要額は1,500万円下がります(生活費300万円・年4%)。
  • 届くまでの年数は、いまの資産と積立を実質の利回りで伸ばして出します。積立は年末に入る形が控えめな置き方です。
  • 早めるために動かせるのは、積立額と生活費の2つだけです。利回りの前提を上げて帳尻を合わせないでください。

計算の4ステップ

FIREに必要な額は、次の順番で出します。 どれか1つでも飛ばすと、出てくる数字の意味が変わります。

  1. 1辞めたあとの年間生活費を出す。いまの支出とは違います。
  2. 2それを取り崩し率で割って、必要な資産額を出す。
  3. 3いまの資産と積立額から、何年で届くかを出す。
  4. 4物価の分を引いて、今のお金の価値にそろえる。
いちばん重いのは1番目です。必要額は生活費に比例するので、 ここが1割違えば必要額も1割違います。率や利回りをいじるより、 先に生活費を固めるほうが効きます。
必要額を出す順番1辞めたあとの生活費いまの支出とは違う2÷ 取り崩し率何年分ためるかを決める3= 必要な資産額目標にする金額4いまの資産と積立から年数実質の利回りで伸ばす
必要額は生活費に比例します。1番目が1割ずれれば、必要額も1割ずれます。率や利回りを動かす前に、生活費を固めるほうが効きます。

1. 辞めたあとの生活費を出す

いまの家計の支出をそのまま使ってはいけません。 辞めたあとには、無くなるものと増えるものがあります。

項目どうなるか理由
通勤費・仕事用の被服費無くなる通勤しなくなる
教育費終わっていれば無くなる子どもの卒業で終わる
住宅ローンの返済完済していれば無くなる返済が終わる
健康保険料増える会社が半分払っていた分がなくなる
国民年金保険料増える60歳まで自分で払う
光熱費やや増える家にいる時間が増える
食費・住居費・通信費変わらない暮らし方が変わらなければ同じ

辞めたあとに変わるもの

この増減を足し合わせたものが、FIRE後の生活費です。 教育費と住宅ローンが終わっているなら大きく下がりますし、 どちらも残っているなら、それも含めて計算します。

手元に残す生活防衛資金は、この計算とは別に確保します。取り崩しの元手に数えてしまうと、 必要額に届いたつもりで、いざというときの現金ごと取り崩す計画になります。

2. 必要額を出す

必要な資産額 = 年間の生活費 ÷ 取り崩し率

年300万円の生活費を年4%で取り崩すなら、300万円 ÷ 0.04 で7,500万円。 生活費の25年分にあたります。

働きながらの形にするなら、稼ぐ分を先に引きます。 月5万円(年60万円)を稼ぐなら、資産でまかなうのは年240万円。 240万円 ÷ 0.04 で6,000万円まで下がります。月5万円で、必要額が1,500万円変わります

働いて稼ぐ額が増えるほど、必要な資産額は下がる働かない7,500万円月5万円6,000万円月10万円4,500万円月20万円1,500万円「早く辞める」より「稼ぎを減らす」ほうが、届く時期は近くなります
年間の生活費300万円、取り崩し率4%とした場合の例です。月5万円を稼ぐだけで必要額は1,500万円下がります。金額は形を見せるための仮の値です。
働いて稼ぐ額資産でまかなう額必要な資産額
0円年300万円7,500万円
月5万円(年60万円)年240万円6,000万円
月10万円(年120万円)年180万円4,500万円
月20万円(年240万円)年60万円1,500万円

働いて稼ぐ額と、必要な資産額(生活費300万円・年4%)

3. 何年かかるかを出す

いまの資産に毎年の積立を足しながら、運用で伸ばしていったときに 必要額へ届く年を探します。式にすると次の形です。

n年後の資産 = いまの資産 ×(1+利回り)n + 積立額 ×〔(1+利回り)n − 1〕÷ 利回り

後半が積立の合計です。積立をいつ入れるかで結果が変わるので、年末にまとめて入る形で計算するのが控えめな置き方になります。 年の初めに入れる前提にすると、初年度から丸1年ぶんの利回りが付いて、実際より早く届きます。

逆算する

「何歳で届くか」が出たあとに知りたくなるのは、 「もっと早く辞めるには何をいくら変えればよいか」です。 動かせるのは2つだけです。

  • 積立額を増やす。目標の年数から必要な積立額を逆算できます。
  • 辞めたあとの生活費を下げる。必要額そのものが下がります。
3つ目として「利回りを上げる」を数えないでください。 自分で決められるものではないうえ、目標から逆算して必要な利回りを決めると、それを取りにいく理由になります。 年10%が必要だと出たとき、必要なのは商品選びではなく、目標のほうの見直しです。

4. 今のお金の価値にそろえる

名目のまま伸ばすと「20年後に1億円」という数字が出ますが、 そのころの1億円で買えるものは今より少なくなっています。 物価上昇分を引いた実質の利回りで伸ばし、生活費は今の金額のまま置くと、 出てくる年数がそのまま「今の暮らしを続けられるまで何年か」になります。

実質の利回り = (1 + 名目の利回り) ÷ (1 + 物価上昇率) − 1

名目5%・物価2%なら、5 − 2 = 3% ではなく 2.94% です。 引き算は近似で、率が大きいほどずれが積み上がります。

実質で計算すると、必要額も年数も名目より厳しく出ます。 それは計算が悲観的なのではなく、名目の数字が物価の分だけ甘く見えていたということです。

ひとつ通してみる

46歳・いまの金融資産500万円・年120万円を積み立てている場合で、 最初から最後まで通します。

1. 辞めたあとの生活費

いまの生活支出が年420万円だとします。ここから、 通勤費と仕事関係で年30万円が無くなり、教育費が年60万円終わる。 一方で健康保険料と国民年金保険料で年30万円増える。 差し引きで年360万円が、辞めたあとの生活費になります。

2. 必要額

360万円 ÷ 0.04 で9,000万円。生活費の25年分です。 率を3%にすれば1億2,000万円、5%にすれば7,200万円。率の置き方だけで、5,000万円近く動きます

3. 届くまでの年数

いまの500万円に年120万円を足しながら、実質の利回り年2.94%で伸ばします。 この条件だと、9,000万円に届くのは30年以上先です。 「46歳+30年で76歳」となると、 目標として現実的かどうかを考え直す段階に入ります。

4. どこを動かすか

  • 積立を年120万円から年300万円に増やす。届く年が大きく前倒しになります。
  • 生活費を年360万円から年240万円に下げる。必要額が6,000万円になります。
  • 月10万円を働いて稼ぐ形にする。資産でまかなうのは年240万円になり、必要額は6,000万円です。

3つ目がいちばん現実的なことが多い、というのがこの計算をやってみて分かることです。 月10万円の収入は、辞めたあとでも作れる幅があります。 それだけで必要額が3,000万円下がります。

この例で使った数字は、形を見せるための仮のものです。 自分の数字で通すと、動かす先の優先順位が変わります。

出た数字の確かめ方

必要額と年数が出たら、そのまま予定にせず、 次の3つを確かめてください。どれも、計算では見えないところです。

辞めた直後に下がっても成り立つか

必要額ぎりぎりで辞めた直後に3割下がると、 取り崩しながら回復を待つことになり、元本が削られます。下落を想定しても足りるかを別に見ておくと、 どれだけ余裕を持つべきかが決まります。

年金が始まるまでのつなぎがあるか

50歳で辞めて65歳から年金を受け取るなら、15年ぶんの生活費を 別に用意しておく必要があります。「年金があるから」で必要額だけ下げると、 いちばん資産が要る期間が抜け落ちます。

生活費のうち、削れる部分がどれだけあるか

下がった年に取り崩す額を減らせれば、資産はもちます。 固定費と変動費を分けておいて、いざというとき何万円まで減らせるかを知っておくと、 計算より実際には強くなります。

マネック案内役):出た数字を信じ切らないのが大事だよ。 計算は前提を確かめる道具であって、 未来を当てる道具じゃないからね。

この計算に入っていないもの

「生活費 ÷ 率」で出す必要額は、簡易な見積もりです。 次のものは入っていません。どれも金額を大きく動かします。

  • 年金。受け取りが始まれば取り崩す額は減ります。ただし始まるまでは全額を資産から出します。
  • 退職金。辞める年に一度だけ入るので、必要額に届く時期が早まります。
  • 教育費や住宅ローンの終わり。年ごとに支出が変わるので、一律の生活費では表せません。
  • 資産が生むインカム。家賃や配当が入るなら、その分は取り崩さずに済みます。
  • 取り崩し時の税金。値上がり益にあたる部分に約20.315%かかります。
  • 下がる年があること。毎年きっちり同じ利回りで増える前提の計算です。

年ごとの家計に乗せて計算すると、これらが全部入ります。 必要額という一つの数字ではなく、何歳で辞めても最後まで資産が尽きないかという形で答えが出ます。

もう一点、計算の前に確かめておくことがあります。いまの資産のうち、実際に取り崩せるのはどれかです。

住んでいる家は、売らないと使えません。売れば住むところが要ります。 取り崩しの元手にはならないので、必要額の計算から外します。 同じ理由で、車や貴金属といった現物資産も外して考えます。

手元に残す生活防衛資金も、元手には数えません。 収入が止まったときに使う分なので、 運用して減っては困るお金です。ここを元手に数えてしまうと、必要額に届いたつもりで、手元の現金ごと取り崩す計画になります。

総資産が5,000万円あっても、家が3,000万円で生活防衛資金が300万円なら、 FIREの元手になるのは1,700万円です。 この切り分けをしないまま必要額と比べると、 達成率が実際より高く出ます。

簡易な計算でも、やる意味はある

年金もイベントも入っていない計算に意味があるのか、 と思うかもしれません。あります。桁が分かることと、何を動かせば効くかが分かることの2つです。

必要額が3,000万円なのか1億円なのかで、話がまったく変わります。 そして生活費を1割下げたら必要額がどれだけ動くか、 月5万円稼いだら何年早まるか、といった効き方は、 簡易な計算でも正しく出ます。細かい前提を積む前に、 この2つを掴んでおくほうが順番として早いです。

そのうえで、年金・退職金・教育費の終わり・ローンの完済まで入れた計算に進みます。 年ごとの家計に乗せると、必要額という1つの数字ではなく、何歳で辞めても最後まで資産が尽きないかという形で答えが出ます。 簡易な計算と大きく違う答えが出ることもありますが、 それは数えているものが違うからで、どちらかが間違っているわけではありません。

マネック案内役):まずは計算機で桁を掴んで、そのあと診断で前提を確かめる。この順番が早いよ。年金やローンの完済まで入れた計算はFIREシミュレーションのライフプラン連動でできる。

よくある質問

いまの生活費をそのまま使ってはいけないのですか?
初期値としては使えますが、そのままにしないでください。辞めたあとは通勤費や仕事関係の支出が無くなり、教育費や住宅ローンが終わっていればその分も減ります。逆に健康保険料と国民年金保険料は自分で払うことになり、増えます。この増減を反映した額が、必要額を決めます。
必要な利回りから逆算してはいけないのですか?
おすすめしません。「30年で3倍にするには年3.8%」のような計算はできますが、その率を目標にすると、それを取りにいく理由になります。利回りは自分で決められるものではありません。動かせるのは積立額と生活費の2つです。
年金や退職金は計算に入れますか?
「生活費 ÷ 率」の簡易計算には入っていません。どちらも必要額を大きく下げますが、年金は受け取りが始まるまで使えないので、早く辞めるほどつなぎの期間が長くなります。年ごとの家計に乗せて計算すると、この効果が正しく入ります。

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては総務省統計局の家計調査のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。