役員報酬

役員報酬の社会保険料はいくら?

役員報酬を動かすと、個人と会社の両方に社会保険料がかかります。ただし報酬に比例して増え続けるわけではなく、途中で止まる位置があります。

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この記事の要点

  • 保険料は報酬そのものではなく、段階に区切った標準報酬月額にかかります
  • 上限は厚生年金のほうが先に来て、健康保険はそれより高いところまで続きます。止まる位置が2つあります
  • 子ども・子育て拠出金は事業主が全額を負担します。本人負担を2倍しても会社の負担にはなりません
  • 報酬を変えても保険料は同じ月から切り替わらず、条件を満たした場合に4か月目から改定されます
  • 厚生年金の保険料を下げると、将来受け取る年金額も下がります。単純なコスト削減ではありません

保険料は報酬そのものにかからない

役員報酬にかかる社会保険料は、報酬の額に料率をかけて出すものではありません。 報酬の額を段階に区切った標準報酬月額という額に、料率をかけて計算します。 段階に区切ってあるので、報酬が数千円変わっても保険料が変わらないことがあります。

区切りは隣り合う段階の中間に置かれています。 自分の報酬がどの段階に入るかで保険料が決まるため、 段階の境目をまたぐかどうかで、同じ1万円の増額でも効き方が変わります。

段階に区切ってある理由は、事務の手間を減らすためです。 1円単位で報酬が違う人それぞれに保険料を計算するのではなく、 近い額の人をまとめて同じ保険料にします。 そのため、報酬を少し動かしたときに保険料が変わるかどうかは、 その額が段階の境目をまたぐかどうかで決まります。

段階は標準報酬月額の等級表として公表されていて、 下のほうは数千円刻み、上のほうは数万円刻みになっています。 報酬が大きいほど刻みも大きくなるので、 役員報酬の水準では、月に数万円動かしても等級が変わらないことがあります。

かかる保険は、健康保険・介護保険・厚生年金・子ども子育て関係の負担です。 このうち介護保険は40歳から64歳までの人にだけかかります。 39歳までと65歳以降は、この分がありません。

役員は原則として雇用保険の被保険者になりません。 給与明細に雇用保険料が出てくる会社員とは、ここが違います。 使用人兼務役員など、労働者としての性質が認められる場合には例外があります。

上限は2つあり、止まる位置が違う

標準報酬月額には上限があります。 報酬がその額を超えても、標準報酬月額はそれ以上には上がりません。 つまり、報酬を増やしても保険料が増えなくなる位置があるということです。

報酬を増やしても、保険料の土台は途中で止まる月額の報酬報酬保険料の土台上限
右へ行くほど月額の報酬が大きくなります。保険料は報酬そのものではなく、標準報酬月額という段階に区切った額にかかります。その段階には上限があるため、上限から先は報酬を増やしても保険料が増えません。

注意したいのは、この上限が保険によって違うことです。 厚生年金のほうが先に止まり、健康保険はそれより高いところまで続きます。 そのため、報酬を上げていくと、 まず厚生年金が止まり、しばらくしてから健康保険も止まる、という順番になります。

マネック(案内役):「社会保険の上限」とひとことで言われるけど、止まる位置は1つじゃないよ。 間の範囲では、健康保険だけが増え続けるんだ。

上限の具体的な金額は、等級表の改定で動きます。 いまの金額と、自分の報酬だとどこに当たるかは、自分の会社の数字で個人と法人の増減を試算すると、グラフの上に止まる位置が示されます。

上限の手前が得だ、という意味ではありません。 保険料が増えなくなるだけで、個人で必要な現金を満たすかどうかは別の話です。 上限の位置を目標に報酬を決めると、生活費が足りなくなることがあります。

会社の負担は、本人の2倍ではない

健康保険・介護保険・厚生年金・子ども子育て支援金は、労使で折半します。 本人の給与から引かれる額と同じ額を、会社も負担しているということです。 ここまでは「会社の負担=本人の負担」で合っています。

ただし、事業主だけが負担するものがもう1つあります。 子ども・子育て拠出金です。これは全額が会社の負担で、 本人の給与からは引かれません。

会社の負担には、本人が払わないものが1つ多い毎月の社会保険料本人が払う健康保険介護保険厚生年金子ども・子育て支援金会社が払う健康保険介護保険厚生年金子ども・子育て支援金子ども・子育て拠出金
上の4つは労使で折半するので、会社と本人が同じ額を負担します。子ども・子育て拠出金は事業主だけが負担するため、会社側にだけ乗ります。本人の負担を2倍しても、会社の負担にはなりません。

名前が似ている2つを混同しないようにしてください。 子ども・子育て支援金は労使で折半し、健康保険の標準報酬月額を土台にします。 子ども・子育て拠出金は事業主が全額を負担し、 厚生年金の標準報酬月額を土台にします。 土台が違うので、報酬が高いほど2つの差は開きます。

負担する人土台になる額
健康保険・介護保険労使で折半健康保険の標準報酬月額
厚生年金労使で折半厚生年金の標準報酬月額
子ども・子育て支援金労使で折半健康保険の標準報酬月額
子ども・子育て拠出金事業主が全額厚生年金の標準報酬月額

会社から見ると、役員報酬の総額は「報酬そのもの+会社負担の社会保険料」です。 本人の手取りを基準に考えていると、この分が抜け落ちます。 報酬を上げたときに会社から出ていく額は、報酬の増加分だけではありません。

報酬を変えても、保険料はすぐ変わらない

役員報酬を改定しても、社会保険料が同じ月から切り替わるわけではありません。 固定的な賃金が大きく変わり一定の条件を満たした場合に、 変更後3か月の報酬をもとに、4か月目から標準報酬月額が改定されます。 これを随時改定といいます。

  • 報酬を上げた月から、すぐに保険料が上がるわけではない
  • 下げた月からも、すぐには下がらない
  • そのため、改定した年度は手元の現金の動きが「平常時」とずれる

資金繰りを見るときは、この時間差を入れておく必要があります。 報酬を下げて会社の負担を軽くしようとしても、 数か月のあいだは前の金額に応じた保険料がかかり続けます。

毎年、一定の時期の報酬をもとに標準報酬月額を見直す定時決定もあります。 随時改定は、それとは別に、期の途中で大きく変わったときの仕組みです。

賞与にも保険料がかかる

役員に賞与を出す場合、その賞与にも社会保険料がかかります。 毎月の報酬とは別に、賞与の額を区切った標準賞与額という額に料率をかけます。 料率そのものは毎月の保険料と同じです。

ここでも上限があり、しかも数え方が毎月の保険料とは違います。 健康保険は1年度の累計額に上限があり、 厚生年金は1回の支給ごとに上限があります。 年に複数回に分けて出すか、まとめて1回で出すかで、効き方が変わるということです。

役員報酬を毎月の報酬だけで組むか、賞与を混ぜるかで、 社会保険料の総額は変わります。 ただし役員賞与は事前確定届出給与という別の制度になり、 届け出た金額と実際の支給額がずれると損金に算入されません。 社会保険料だけを見て組み立てる話ではありません。

この記事では毎月の役員報酬を扱っています。 賞与を含めた組み立てを検討する場合は、 損金算入の要件と届出の期限を先に確認してください。

扶養家族が増えても、保険料は変わらない

健康保険では、一定の条件を満たす家族を被扶養者にできます。 被扶養者になった家族は、自分で保険料を払わずに健康保険を使えます。

ここで誤解されやすいのが、扶養する家族が増えても、本人の保険料は増えないことです。 保険料は標準報酬月額にかかるもので、家族の人数は計算に入りません。 3人を扶養していても、誰も扶養していなくても、同じ報酬なら保険料は同じです。

国民健康保険とはここが違います。 国民健康保険には世帯の人数に応じてかかる部分があるため、 家族が増えれば保険料も増えます。 会社を辞めたあとにどちらを選ぶかを比べるときは、この違いが効きます。

  • 健康保険の保険料は、扶養している家族の人数では変わらない
  • 国民健康保険には、世帯の人数に応じてかかる部分がある
  • 厚生年金の保険料も、家族の人数では変わらない

なお、配偶者が国民年金の第3号被保険者になる場合、 その配偶者は保険料を自分で納めなくても国民年金に加入している扱いになります。 この分の保険料が本人の給与から追加で引かれることもありません。

被扶養者になれるかどうかには、収入の基準と同居の有無の条件があります。 基準を超えると、その家族は自分で保険に加入することになります。

下げると、将来の年金も下がる

社会保険料は、払って終わりの費用ではありません。 厚生年金は、納めた保険料の計算に使われた標準報酬月額が、 将来受け取る年金額の計算にも使われます。

つまり、報酬を下げて保険料を減らすと、その期間に対応する将来の年金額も下がります。 「社会保険料が年◯万円減る」という数字だけを見て判断すると、 受け取る側の減少が勘定に入りません。

マネック(案内役):保険料は単純なコストじゃないよ。減らした分は、将来の受け取りからも減るんだ。

どれだけ下がるかは、下げた期間の長さで決まります。 厚生年金の額は加入していた期間すべての標準報酬月額をもとに計算されるので、 1年だけ下げた影響と、10年下げ続けた影響は同じではありません。 短期の資金繰りのために一時的に下げる場合と、 これから長く続ける水準として下げる場合とでは、意味が変わります。

健康保険のほうは、保険料を下げても受けられる医療が変わるわけではありません。 ただし、傷病手当金や出産手当金のように、 標準報酬月額をもとに計算される給付はあります。 下げたときに何が連動するかは、保険ごとに違います。

保険料は報酬そのものではなく、段階に区切った標準報酬月額にかかります。 上限は厚生年金と健康保険で位置が違い、会社側には事業主だけが負担する拠出金が1つ多くあります。 下げれば将来の年金も下がるため、単純なコスト削減としては扱えません。

よくある質問

役員報酬を上げ続けると、社会保険料も上がり続けますか?
上がり続けません。保険料の土台になる標準報酬月額には上限があり、それを超えると報酬を増やしても保険料は増えません。上限は厚生年金と健康保険で位置が違い、厚生年金のほうが先に止まります。
会社の負担は、本人の負担と同じ額ですか?
健康保険・介護保険・厚生年金・子ども子育て支援金は労使で折半するため同額です。ただし子ども・子育て拠出金は事業主が全額を負担するため、会社側にはこの分が多く乗ります。
役員報酬を下げたら、保険料はいつから下がりますか?
下げた月からではありません。固定的な賃金が大きく変わり一定の条件を満たした場合に、変更後3か月の報酬をもとに4か月目から標準報酬月額が改定されます。それまでは前の金額に応じた保険料がかかり続けます。
役員も雇用保険に入りますか?
原則として被保険者になりません。そのため役員報酬からは雇用保険料が引かれないのが通常です。使用人兼務役員など、労働者としての性質が認められる場合には例外があります。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁 役員に対する給与のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。