結論から
ドルコスト平均法は、名前のわりに中身が単純な話です。 やっていることは「毎月の投資額を決めて、それを守る」だけで、 値段を見て買う量を変えたりはしません。
それなのに平均買付単価が下がるのは、金額を固定したことの裏返しで、 買う量のほうが勝手に増えたり減ったりするからです。 仕組みが分かると、この方法が何を減らしてくれて、 何は減らしてくれないのかもはっきりします。
ドルコスト平均法とは
一定の金額で、同じ商品を、決めた間隔で買い続ける方法です。 日本では「積立投資」と呼ばれることのほうが多く、 金融庁は積立投資を 「一括で投資するのではなく『あらかじめ決まった金額』を『続けて』投資すること」 と説明しています。
ここで大事なのは、固定しているのは金額のほうだという点です。 毎月30,000円と決めたら、値段が上がっても下がってもその金額を投じます。 買える量は値段しだいで変わり、そこは自分では決めません。
間隔は毎月でなくてもかまいません。毎週でも隔月でも、 金額を決めて続けているならドルコスト平均法です。 金融機関の積立サービスを使うと自動で買い付けられますが、 自分で毎月手動で買っても、やっていることは同じです。
間隔を細かくすれば効果が上がる、という性質のものでもありません。 買う回数が増えれば値段のばらつきを拾う機会は増えますが、 毎月を毎週に変えたところで、平均買付単価が目に見えて動くわけではありません。 それよりも、決めた金額を途中で止めずに続けられるかのほうが、 結果にはるかに大きく効きます。金融庁も積立投資の利点として、 「安いときに買わなかったり、高いときにだけ買ってしまうことを避けられる」 という点を挙げています。値段を見て判断する回数を減らすこと自体が、 この方法の中身だということです。
なぜ平均買付単価が下がるのか
金額を固定すると、買える量は値段の逆数に比例します。 値段が半分になれば同じ金額で2倍、3分の1になれば3倍買えるということです。 逆に値段が2倍になれば、買えるのは半分になります。 この「安いときほど多く買い、高いときほど少なく買う」が自動的に起きることが、 平均買付単価を押し下げます。
狙って安い日を待つのとは違います。待つ場合は、 いつが安いのかを自分で当てる必要があり、外せば何も買えません。 金額を固定する方法では、当てる作業そのものがありません。 安かったかどうかは、買ったあとに結果として分かるだけです。
実際の数字で確かめます。1口の値段が月ごとに動く商品を、 毎月30,000円ずつ4か月買った場合です。
| 買った月 | 1口の値段 | 買えた口数 |
|---|---|---|
| 1月 | 10,000円 | 3口 |
| 2月 | 8,000円 | 3.75口 |
| 3月 | 5,000円 | 6口 |
| 4月 | 12,000円 | 2.5口 |
| 合計 | 120,000円を投じた | 15.25口 |
投じた総額を、買えた口数で割ると平均買付単価が出ます。
一方、4か月の値段をそのまま平均すると (10,000+8,000+5,000+12,000)÷4で8,750円です。 平均買付単価のほうが881円低く出ています。 安かった3月に6口も買えたことが、全体を引き下げました。
「必ず下がる」のはどこまでか
さきほどの例はたまたまではありません。 金額を固定して買い続けるかぎり、平均買付単価は値段の単純平均を上回ることがありません。値段が全部同じだったときだけ一致し、 少しでもばらつけば必ず下回ります。
理由は、高い月ほど口数への寄与が小さいからです。 12,000円の月に買えたのは2.5口で、5,000円の月には6口買えています。 平均買付単価は買えた口数で割って出すので、 口数の多い安い月のほうが、計算の中で重く効きます。 値段をそのまま足して割る単純平均は、この重みを無視しているわけです。
比べると分かりやすいのが、口数のほうを固定した場合です。 同じ4か月を「毎月3口ずつ買う」に変えると、こうなります。
| 買い方 | 固定するもの | 支払った総額 | 平均買付単価 |
|---|---|---|---|
| 毎月30,000円ずつ | 金額 | 120,000円 | 約7,869円 |
| 毎月3口ずつ | 口数 | 105,000円 | 8,750円 |
口数を固定すると、平均買付単価は値段の単純平均とぴったり同じ8,750円になります。 金額を固定したほうだけが、それより低くなるわけです。 ドルコスト平均法の効果と呼ばれているものの正体は、ここです。
別であることは、下がり続ける相場に当てはめるとはっきりします。 10,000円から4,000円まで下げていく4か月に、同じく毎月30,000円ずつ買った場合です。
| 買った月 | 1口の値段 | 買えた口数 |
|---|---|---|
| 1月 | 10,000円 | 3口 |
| 2月 | 8,000円 | 3.75口 |
| 3月 | 6,000円 | 5口 |
| 4月 | 4,000円 | 7.5口 |
| 合計 | 120,000円を投じた | 19.25口 |
平均買付単価は120,000円÷19.25口で約6,234円。 値段の単純平均7,000円をきちんと下回っています。 それでも4月末の評価額は19.25口×4,000円で77,000円、 投じた120,000円に対して43,000円の損です。
つまり「平均買付単価が単純平均より低い」は常に成り立ちますが、 それは損益について何も約束していません。 約束しているのは、同じ期間に同じ商品を買うなら、 口数を固定するより安く手に入るということだけです。
減らせるもの、減らせないもの
この方法が減らしてくれるのは、買う時期を1点に賭けてしまう危険だけです。 たまたま高い日に全部買ってしまった、という事態は起きにくくなります。
減らしてくれないものは、はっきりしています。
- 買い終わったあとの値動き。積み立てた資産も、相場が半分になれば半分になります
- 下がり続ける相場での損。平均買付単価が単純平均より低くても、最後の値段がそれを下回れば損です
- 商品そのものの値動きの大きさ。振れ幅の大きい商品を選べば、買い方を変えても結果は大きく振れます
積立を続けるほど資産は大きくなるので、 1回の下落で動く金額もだんだん大きくなります。 始めたころは数万円の上下でも、10年続ければ同じ下落率で数百万円動きます。 買い方で和らぐのは最初のうちだけ、と考えておくほうが実際に近いはずです。
買うのをやめた時点で、この方法の出番は終わります。 そこから先は、持っている口数をそのまま持ち続けているだけで、 一括で買った人とまったく同じ値動きを受けます。 「積立だから安心」が効くのは買っているあいだだけで、 積み上がった資産のほうは、どう買ったかを覚えていません。
効く場面と、効かない場面
もうひとつ、混同されやすい区別があります。これから入ってくるお金を積み立てる場合と、すでに手元にあるお金を分けて入れる場合です。
毎月の給料から積み立てるなら、待っている現金はそもそも存在しません。 受け取るたびに投じるので、ほかの選び方がなく、比べる相手もいません。
一方、まとまった余裕資金がすでに手元にあるなら話が変わります。 分けて入れているあいだ、まだ投じていないお金は現金のまま置かれます。 その期間、そのお金は値上がりにも値下がりにも参加していません。 平均買付単価は下がっても、市場に置いていた時間が短くなるぶんが差し引かれます。
手元の余裕資金をどう入れるかで迷っているなら、 過去の同じ条件で一括と分割がそれぞれ何回上回ったかを、自分の金額で確かめられます。
