繰上返還は、思い立った日に好きな額を振り込む、という手続きではありません。申し込める状態かどうかの条件があり、受付の期間があり、申し込んだ金額がそのまま引き落とされるとも限りません。減る利子を計算する前に、手続きの形を知っておくと、予定が立てやすくなります。
まず、申し込める状態かを確かめる
いまの返還の状態によっては、繰上返還そのものができません。機構は、返還期限猶予・減額返還の適用期間中は繰上返還ができないとしています。
この2つは、返還を軽くしたり待ってもらったりしている状態なので、同じ時期に「先に返す」手続きを重ねられません。適用を受けている間は、繰上返還の試算をしても実行できないということです。
どちらも、返還が難しいときに願い出て適用を受ける制度です。適用が終われば繰上返還を申し込めるようになります。いま適用中かどうかが分からない場合は、スカラネット・パーソナルで確認してください。
「特に優れた業績による返還免除」を申請している場合、機構は認定結果が判明する前に繰上返還をしないよう案内しています。免除されるはずだった分まで返してしまうことになりかねません。
延滞している場合も、繰上返還の損得より先に整理したほうがよいことがあります。延滞が続くと延滞金が加算され、返還の負担そのものが変わるためです。機構には減額返還と返還期限猶予の制度があり、どちらも願い出と審査を経て利用します。返還そのものが苦しい状態なら、そちらの相談が先になります。
申込方法は、スカラネット・パーソナルか郵送
機構は、繰上返還の申込方法として、スカラネット・パーソナルからの申込と、郵送による申込を案内しています。
スカラネット・パーソナルから申し込めるのは、口座振替(リレー口座)に加入済みの場合です。郵送による申込は、スカラネット・パーソナルが利用できない場合に限られるとされています。つまり、通常はスカラネット・パーソナルが入口で、使えない事情があるときだけ郵送という位置づけです。
| 申込方法 | 使える条件 | 受付の期間 |
|---|---|---|
| スカラネット・パーソナル | 口座振替(リレー口座)に加入済み | 機構が掲載するスケジュールによる |
| 郵送 | スカラネット・パーソナルが利用できない場合 | 繰上返還希望月の4か月前の振替日翌日から、1か月前の振替日まで |
スカラネット・パーソナルの受付開始日は、当月のみの場合と前月・当月の両方を行う場合で異なります。最新の日程は機構の案内で確認してください。
郵送を選ぶと、受付期間が繰上返還希望月の数か月前から始まる形になります。書類を取り寄せ、記入し、届くまでの日数を見込む必要があるため、思い立ってすぐ翌月に反映させるという進め方は難しくなります。口座振替に加入しているなら、スカラネット・パーソナルのほうが日程を組みやすくなります。
スカラネット・パーソナルの受付開始日は、申し込む内容によって変わります。機構は別途スケジュールを掲載しているので、申し込む前にそちらを見てください。この記事に日付を書くと、変わったときに嘘になります。
受付期間と振替日には決まりがある
繰上返還は、申し込んだその場でお金が動くわけではありません。申し込みが受け付けられ、繰上返還を希望した月の振替日に口座から引き落とされます。振替日は原則として27日です。
郵送で申し込む場合の受付期間は、繰上返還希望月の4か月前の振替日翌日から、繰上返還希望月の1か月前の振替日までとされています。郵送にかかる日数も含めて、余裕をもって送る必要があります。
引き落としの日が決まっているということは、その日に口座へ残高を用意しておく必要があるということでもあります。通常の毎月の返還と同じ日なので、一部繰上返還なら、その月は通常の返還額と繰上返還額の両方が必要になる点に注意してください。
口座振替(リレー口座)そのものにも加入が要ります。スカラネット・パーソナルから繰上返還を申し込めるのは加入済みの場合なので、まだ加入していないなら、その手続きが先になります。加入していない状態では郵送による申込になり、受付期間の制約も厳しくなります。
- 申し込んでから引き落としまでに時間がある
- 振替日は原則27日
- その日に口座残高が足りないと、手続きが進まない
- 一部繰上返還なら、通常の返還額も同じ月に引き落とされる
金額で申し込むと、金額は調整される
一部繰上返還を金額で申し込んだ場合、希望した金額がそのまま引き落とされるとは限りません。機構は、希望金額の範囲内で繰上可能な回数を計算し、金額を調整するとしています。
繰上返還は「何回分を先に返すか」という形で処理されるためです。1回分の割賦金に満たない端数は繰り上げられないので、希望額より少ない額に調整されます。たとえば割賦金が1万円台のときに50万円で申し込めば、50万円ぴったりではなく、その範囲に収まる回数分の金額になります。
この調整は、少なく返す方向にしか働きません。希望より多く引き落とされることはないので、用意した額を超える請求が来る心配は要りません。ただし「ちょうどこの額を返して残額をいくらにしたい」という狙い方はできないので、残額を特定の数字にそろえたい場合は、機構に確認しながら進めることになります。
したがって、ToMiを含むどの試算も、正式な繰上返還の金額とは一致しません。試算は「このくらい返すと、このくらい利子が減る」という見当をつけるためのもので、確定するのは機構の手続きの中です。減る利子の概算を出したい場合は、自分の残額と利率で試算すると、返したあとに手元へ残る現金まで並べて確認できます。
全額繰上返還の場合は、残っている元金と利子を清算する形になるため、この調整は関係ありません。
申し込む前にそろえておくもの
手続きそのものは難しくありませんが、申し込む前に自分の契約内容を確かめておくと、金額の判断が早くなります。スカラネット・パーソナルにログインすれば、返還残額、返還回数、返還月額などを確認できます。
- 1いまの返還状況を確認する(減額返還・返還期限猶予の適用中でないか)
- 2返還残額と、残りの返還回数を確認する
- 3第一種か第二種か、第二種なら利率と算定方法を確認する
- 4勤務先や自治体の返還支援を受けているなら、完済時の取扱いを確かめる
- 5繰上返還したあとに手元へ残る現金を計算する
- 6受付期間を確認して、スカラネット・パーソナルから申し込む
3番目の利率は、第二種の効果を見積もるのに要ります。利率は貸与が終了した月に決まるので、自分の貸与終了年月が分かれば引けます。機構が公表している一覧を、ToMiでは第二種奨学金の利率一覧として取り込んでいます。
5番目は、返す額を決めるための項目です。繰上返還は何回かに分けて申し込めるので、一度で全部を返すかどうかを先に決める必要はありません。手元に残しておきたい生活費を引いて、残りの範囲で考えると、返しすぎを避けられます。
4番目は見落としやすい項目です。勤務先が機構へ直接返還する代理返還の制度を使っている場合、完済するとそのあとの支援が無くなることがあります。自己負担の額だけで判断しないでください。
返還が完了したあとに起きること
全額繰上返還をすると、その時点で返還が完了します。以後の引き落としはなくなります。口座振替の設定が残っていても、返還すべき残額がないので引き落とされることはありませんが、完了したことは通知や残高表示で確認しておくと確実です。
機関保証を選んでいる場合は、保証料が一部戻ってくる可能性があります。機構は、繰上返還により返還期間を短縮して返還が完了した際に、保証料の一部を返還する場合があるとしています。返戻される保証料は、保証機関である公益財団法人日本国際教育支援協会から、奨学金の振込口座または振替用口座へ振り込まれます。
金額は事前に確定できないため、繰上返還するかどうかを決める段階では計算に入れないほうが安全です。戻ってきたら、その分を別に数えます。人的保証を選んでいる場合は保証料そのものがないので、この返戻もありません。
一部繰上返還の場合は、完了ではなく返還が続きます。翌月からの引き落としは通常どおりなので、残高の用意も続けてください。繰り上げたことで返還回数が減っているため、返還予定表の最終返還年月が前にずれます。次の明細で、残額と最終返還年月が変わっているかを確かめると、手続きが反映されたことを確認できます。
返還が完了しても、記録は残しておいてください。住宅ローンなどの審査で借入の状況を聞かれたときに、完済した時期を答えられると話が早くなります。
申し込める状態かの確認が最初です。次に受付期間。金額は希望どおりにならず、繰上可能な回数で調整されます。機関保証なら、完了後に保証料が一部戻ることがあります。
