家計・ライフプラン

老後の生活費はいくら?

平均は出発点であって、答えではありません。どこで平均から離れるかを先に決めます。

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この記事の要点

  • 家計調査の消費支出は、二人以上の世帯で60代前半の月34.0万円から85歳以上の月23.7万円まで下がります。
  • 老後の30年を1つの額で置くと、前半は少なく、後半は多く見積もることになります。
  • 住居費だけは平均が使えません。家賃を払っていない持ち家の世帯が母数に入っているため、月1.7万円ほどにしかなりません。
  • 単身世帯の消費支出は二人以上の世帯の約56%で、半分にはなりません。人数が減っても住居費・光熱費・通信費は大きく減らないためです。
  • 年齢階級と地域を掛け合わせた表は、この統計には存在しません。

平均は「あなたの額」ではない

老後の生活費を調べると、月◯◯万円という数字がすぐ出てきます。 そのほとんどは、総務省統計局の家計調査から来ています。 高齢世帯の1か月あたりの消費支出の平均で、毎年公表されている公的な統計です。

数字そのものは確かなものです。問題は使い方のほうにあります。 平均はいろいろな人をならしたもので、持ち家の人と賃貸の人、 都市部の人と地方の人、健康な人と医療費のかかる人が、 全部ひとまとめになっています。 自分がそのどこに位置するかは、平均の数字からは分かりません。

それでも平均を見る意味はあります。老後の試算は生活費から始まりますが、 多くの人は自分の老後の生活費を知りません。 いまの支出は分かっても、働かなくなったあとにどう変わるかは分からない。空欄で止まってしまうくらいなら、公表値から始めて書き換えるほうがいい。 平均は出発点としては使えます。答えとしては使えません。

もうひとつ知っておきたいのが、この統計が何を数えているかです。 家計調査の消費支出には、税金と社会保険料が入っていません。 これらは非消費支出として別に集計されています。 年金からも所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料が引かれるので、 手取りで考えるときは、収入の側からこれらを引いておく必要があります。 支出の側に足すのではなく、収入の側から引くのが筋です。

住宅ローンの返済も消費支出には入りません。借入の返済はお金の貸し借りであって、 消費ではないという扱いだからです。老後もローンが残っているなら、 統計の額に返済額をそのまま足してください。ここを忘れると、いちばん大きい支出が丸ごと抜け落ちます

平均は出発点であって、答えではありません。使うなら、自分がどこで平均から離れるかを 先に決めてください。離れる場所はたいてい住居費と医療費です。

年齢が上がるほど、消費は減る

この統計でいちばん見落とされているのが、年齢によって金額が大きく変わることです。 「老後は月◯◯万円」という1つの数字だけが引かれるので、 老後の30年をずっと同じ額で過ごすように読めてしまいます。

年齢が上がるほど、1か月の消費支出は減る世帯主の年齢と、1か月の消費支出60〜64歳34.0万円65〜69歳31.5万円70〜74歳28.9万円75〜79歳26.6万円80〜84歳24.0万円85歳以上23.7万円60代前半と85歳以上の差は、月10.4万円
家計調査2025年平均・二人以上の世帯の消費支出です。60代前半と85歳以上では月10万円以上違います。老後の30年を1つの額で置くと、前半は少なく、後半は多く見積もることになります。ただし減るのは平均の話で、介護や医療が必要になれば逆に増えます。

二人以上の世帯で見ると、世帯主が60代前半のときは月34万円ほどですが、 85歳以上では月23.7万円ほどまで下がります。差は月10万円を超えます。 30年ぶんにすれば、どの額を使うかで数千万円の違いになります。

減る理由は想像がつきます。旅行や外食が減り、 車を手放し、服を買う機会も減ります。 統計の内訳を見ると、実際に交通・通信費は60代前半の月5.7万円から 85歳以上では2.0万円まで下がっています。

ただし、減るのは平均の話です。介護が必要になったり、 入院が続いたりすれば、同じ年齢でも支出は増えます。 保健医療費だけは、85歳以上のほうが60代前半より多くなっています。 平均が下がるからといって、後半は安心という意味ではありません。
マネック案内役):30年をひとつの額で置くと、前半は少なく、後半は多く見積もることになります。 どちらにずれるかが年によって違うので、合計も合わなくなります。

住居費だけは、平均を使えない

家計調査の消費支出には住居費が含まれていますが、この項目だけはそのまま自分に当てはめられません。 平均では月1.7万円ほどにしかならないからです。

統計の住居費は、賃貸の家賃とは桁が違う1か月の住居費統計の平均1.7万円賃貸の家賃人によって大きく違う持ち家の世帯が母数に入っているため、平均は小さく出ます賃貸なら「住居費を除いた額」に自分の家賃を足してください持ち家なら固定資産税と修繕費を足します
家計調査の住居費は、家賃を払っていない持ち家の世帯も母数に入っているため、平均では月1.7万円ほどにしかなりません。賃貸の人がこの平均をそのまま生活費に使うと、数万円ぶん少なく見積もることになります。

理由は母数にあります。高齢世帯は持ち家の割合が高く、家賃を払っていない世帯が平均に入っているためです。 住宅ローンの返済も消費支出には入りません(借入の返済は消費ではないという扱いです)。 その結果、統計上の住居費は修繕費や共益費が中心の小さな額になります。

賃貸で老後を過ごす予定なら、この平均は使えません。住居費を除いた額に、自分が払う家賃を足すのが正しい組み立てです。 持ち家でも、固定資産税・修繕費・管理費・修繕積立金はかかり続けます。 こちらも平均には十分に反映されていないので、別に足してください。

持ち家にかかり続けるお金は持ち家の維持費とは?にまとめています。固定資産税の率は住まいにかかる税の率に載せています。

単身世帯は、二人以上の半分にはならない

一人暮らしなら生活費も半分、とはなりません。 65歳以上の単身世帯の消費支出は月15.6万円ほどで、 二人以上の世帯の27.6万円に対しておよそ56%です。

人数が減っても同じだけかかるものがあるからです。 住居費、光熱・水道、通信費は、一人でも二人でも大きくは変わりません。 食費のように人数に比例するものと、そうでないものが混ざっています。

  • 食料は人数に応じて減る(二人以上の8.5万円に対して単身は4.4万円)
  • 住居・光熱・通信は人数ほどには減らない
  • 結果として、一人あたりで見ると単身世帯のほうが割高になる

この比率は、世帯の人数が変わる場面で効いてきます。 子が独立して夫婦二人になるとき、配偶者と死別して一人になるとき。 人数が半分になっても支出は半分にならないので、 「一人あたりの生活費」で考えると必ず足りなくなります。 世帯の単位でそれぞれの額を持っておくほうが確かです。

配偶者と死別したあとの生活費を考えるときに、ここが効きます。 二人ぶんの生活費が半分になるわけではないのに、 年金は一人ぶんに近づきます。支出の減り方より、収入の減り方のほうが大きいことがあります。

地域別の数字は、この統計には無い

「東京だといくら、地方だといくら」を知りたくなりますが、 家計調査で年齢階級まで分かれているのは全国の値だけです。 地域別の数字は都道府県庁所在市の単位で公表されていますが、 そちらには年齢階級の内訳がありません。

つまり「65〜69歳・東京都」という表は、この統計には存在しません。 ToMiが地域別の生活費を出していないのはそのためです。 無い数字を推定で埋めると、統計の値と見分けがつかなくなります。

もっとも、地域差を気にしすぎる必要もありません。 住む場所によって大きく変わるのは家賃と、物価のうちの一部です。 食料や光熱費にも地域差はありますが、家賃ほどの開きはありません。 結局のところ、住まいの費用を自分の実額に置き換えれば、 残りの費目の地域差は誤差のうちに収まることが多い。

地域の差を見たいなら、差の大部分を占めるのは家賃と物価です。 住居費を除いた額を全国平均から取り、 自分が住む場所の住居費を足すほうが、推定よりも確かです。

自分の額を決める順番

ここまでを踏まえると、順番は次のようになります。

  • 年齢と世帯(二人以上か単身か)で、統計の額を引く
  • 住居費を除いた額を取る
  • 自分の住まいにかかる額を足す(家賃、または税と修繕費)
  • 介護や医療に上乗せする額を決める
  • いまの支出と見比べて、違和感があれば調整する

1つめで年齢を選ぶとき、迷うのは「いま何歳か」なのか 「取り崩しを始める年齢」なのかという点です。使うのは後者です。 60歳で辞めて取り崩しを始めるなら60代前半の額、 65歳まで働いてから始めるなら60代後半の額を出発点にします。 いま50代でも、老後の生活費として使うのは老後の年齢の額です。

4つめの上乗せ額は、置き方がむずかしいところです。 介護がどれだけ必要になるかは誰にも分かりませんし、 分からないものに大きな額を置くと、今度は必要以上に厳しい計算になります。 先に公的な制度の上限を確かめてから、そのうえでいくら上乗せするかを決めてください。 医療は高額療養費、介護は高額介護サービス費で、 1か月あたりの自己負担に区分ごとの上限が決まっています。

5つめが意外と大事です。統計は他人の平均なので、 自分のいまの支出と桁が違えば、どこかで前提を取り違えています。 働かなくなると減るもの(通勤費・昼食代・仕事着)と、 増えるもの(在宅時間が延びるぶんの光熱費)を思い出しながら見てください。

額が決まったら、年金などの収入と比べて毎月いくら足りないか、 その不足を資産から取り崩すと何歳まで持つかまで出せます。老後、毎月いくら足りない?資産は何歳まで持つ?では、ここで書いた統計の額を初期値として置けるようにしています。 置くだけなので、自分の額に書き換えてください。

年齢階級別の実際の金額は老後の生活費は、年齢でどれくらい変わる?に、10大費目の内訳つきで載せています。

よくある質問

老後の生活費は月いくらが平均ですか?
家計調査2025年平均では、二人以上の世帯で世帯主が65歳以上の消費支出が月27.6万円、65歳以上の単身世帯が月15.6万円です。ただし年齢階級で大きく変わり、60〜64歳では月34.0万円、85歳以上では月23.7万円です。持ち家か賃貸かでも住居費が大きく変わるため、平均をそのまま自分の額として使うことはできません。
統計の住居費が安いのはなぜですか?
家計調査の住居費は、家賃を払っていない持ち家の世帯も母数に入っているためです。高齢世帯は持ち家の割合が高く、平均では月1.7万円ほどにしかなりません。住宅ローンの返済も消費支出には含まれません。賃貸で老後を過ごす予定なら、住居費を除いた額に自分が払う家賃を足してください。
年齢が上がると生活費は減るのですか?
平均では減ります。旅行・外食・被服・交通費が下がるためで、交通・通信費は60代前半の月5.7万円から85歳以上では月2.0万円まで下がります。ただし保健医療費だけは85歳以上のほうが多く、介護が必要になれば同じ年齢でも支出は増えます。減るのは平均の話だという点に注意してください。

参照した一次情報

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