家計・ライフプラン

老後資金が足りないときは

増やす方法を考える前に、その計算が正しく立っているかを確かめるほうが早いことが多い。

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この記事の要点

  • 年金の見込額を月2万円取り違えると、30年で700万円以上の差になります。
  • ねんきん定期便の額は税と社会保険料を引く前です。試算には手取りを入れます。
  • 生活費は多く見積もることより、介護・修繕・車の買い替えを入れ忘れることのほうが多い。
  • 動かせる場所は、資産・生活費・収入の3つだけです。
  • 働く期間を延ばすことが最も効きます。収入が増え、取り崩しの開始も後ろにずれるためです。

足りないと分かったら、まず前提を疑う

老後資金の試算をして「足りない」と出たとき、すぐに どう増やすかを考えたくなります。けれど順番としては、その計算が正しく立っているかを先に確かめるほうが早いことが多い。

この計算は入力が少ないぶん、1つのずれが結果を大きく動かします。 年金の見込額を月2万円取り違えていれば、30年で700万円以上の差になります。 足りない額が400万円なら、その誤差だけでひっくり返ります。

増やす方法を考える前に、年金・生活費・住まいの3つを確かめてください。 この3つで前提が変われば、足りない額そのものが変わります。

前提を疑うのは、楽をするためではありません。 前提が正しくないまま対策を決めると、 必要のない我慢をするか、必要な手当てを打たないかのどちらかになります。 足りないと出たのに実は足りていた人が生活費を切り詰めるのも、 足りていると出たのに実は足りていなかった人が何もしないのも、同じ一つの誤りから起きます

マネック案内役):出た数字をどうにかする前に、その数字が何でできているかを見ます。 入れた値が違っていたら、どんな対策も的外れになります。

1. 年金の見込額を確かめる

いちばん影響が大きいのに、いちばん当てずっぽうで入れられているのが年金です。 「だいたい月15万円くらい」と思っていても、実際には数万円違うことがあります。

見込額はねんきん定期便ねんきんネットで確かめられます。 50歳以上の人の定期便には、このまま働き続けた場合の 65歳からの見込額が年額で出ています。それを12で割った額が出発点です。

定期便に出ているのは税と社会保険料を引く前の額です。 試算に入れるのは手取りなので、そのまま使うと多く見積もります。 年金からも所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料が引かれます。 目安は額面の8〜9割ですが、ほかに収入があると変わります。

配偶者がいるなら、その人の年金も忘れずに足してください。 世帯としての収入で計算するので、片方だけでは足りない額が大きく出ます。 逆に、どちらかが先に亡くなったあとは世帯の年金が減ります。 遺族年金が出る場合もありますが、金額も条件も別の仕組みなので、 そこまで織り込むなら年金事務所で確かめるのが確実です。

50歳未満の定期便には、これまでの加入実績に応じた額しか出ていません。 これから納める分が入っていないので、そのまま使うと少なく出ます。 ねんきんネットなら、働き方の条件を入れた見込みを出せます。

受け取りを遅らせると年金額そのものが増えます。どのくらい増えるか、 何歳から受け取ると累計で多くなるかは年金、何歳から受け取ると累計額が多くなる?で出せます。

2. 生活費に何が入っていないかを見る

生活費のほうも、多く見積もっていることより入れ忘れていることのほうが多い。 毎月の額だけで計算していると、次のものが落ちます。

  • 介護や医療が増えたぶん(後半になるほど増える)
  • 住宅の修繕(外壁と屋根で1回100〜200万円規模)
  • 車の買い替え(1回で100〜300万円)
  • 家電の更新、冠婚葬祭、子や孫への支援

どれも毎月の支出ではないので、月額で考えているうちは出てきません。 けれど金額は大きい。300万円は、毎月の生活費を25年にわたって1万円削るのと同じ重さです。 月額で考えていると同じ重さに見えないだけで、資産寿命への効き方は変わりません。

時期については、思っているほど単純ではありません。 「早く出ていくほど痛い」と言われますが、それは資産を運用している場合の話です。運用しないなら、 遅い時期の支出のほうが痛いことすらあります。 そのころには物価で金額そのものが膨らんでいるからです。 気にするべきなのは、まず金額のほうです。

入れ忘れを防ぐいちばん簡単な方法は、 いまから老後までのあいだに起きることを、年ごとに書き出してみることです。 車を何年ごとに買い替えているか、家の修繕を前回いつしたか。 過去の実績があるものは、次がいつ来るかも見当がつきます。 思い出せないものは、そのくらいの頻度でしか起きないということでもあります。

逆に、減るものもあります。働かなくなれば通勤費と昼食代と仕事着が減り、 子が独立すれば教育費と食費が減ります。住宅ローンが終われば返済も消えます。 いまの支出をそのまま老後の生活費にすると、今度は多く見積もることになります。

介護や医療には公的な上限があります。医療は高額療養費、介護は高額介護サービス費で、 1か月あたりの自己負担に区分ごとの上限が決まっています。 金額を当てずっぽうで置く前に、高額療養費の自己負担限度額で自分の区分を確かめてください。

3. 住まいをどうするかを決める

老後の生活費で金額がいちばん大きく、人によっていちばん違うのが住居費です。 賃貸なら家賃が生涯続き、しかも物価とともに上がります。 持ち家でローンが終わっていれば、住居費は固定資産税と修繕費だけになります。

生活費は上がり、年金は同じだけ上がらない毎月の生活費と、年金などの収入65歳生活費年金不足85歳生活費(物価で上がる)年金(据え置き)不足が広がる同じ率で増える前提にすると、この差は広がりません
生活費は物価とともに上がります。年金にも物価に応じて調整する仕組みがありますが、マクロ経済スライドによって物価より遅れて上がります。同じ率で増える前提にすると不足が広がらず、資産寿命は実際より長く出ます。

統計の平均を使うときは特に注意が要ります。 家計調査の住居費は月1.7万円ほどしかありませんが、これは家賃を払っていない持ち家の世帯が母数に入っているためです。 賃貸の人がこの平均を使うと、数万円ぶん少なく見積もります。

持ち家なら住居費は小さくなりますが、0にはなりません。 固定資産税・都市計画税は毎年かかり、マンションなら管理費と修繕積立金が続きます。 修繕積立金は築年数とともに上がるのが普通で、いまの額のまま続く前提にはできません。

持ち家にかかり続けるお金は持ち家の維持費とは?に、統計の住居費と実額の違いは老後の生活費はいくら?にまとめています。

動かせる場所は3つある

前提を確かめてもなお足りないなら、ここから先が対策の話です。 動かせる場所は3つしかありません。

足りない分を埋める道は、3つある目標の年齢まで持たせるには目標の年齢に届かない資産を増やす働く期間を延ばす・貯める生活費を減らす固定費から見直す収入を増やす年金の繰下げ・働き続けるどれか1つで届くなら、現実的なものを選べます
どれも同じ資産寿命という尺度で測れるので、必要な額を並べて比べられます。生活費を減らすほうが同じ額の収入増より効くのは、生活費が物価で毎年増えていくぶんも一緒に下がるためです。

大事なのは、この3つが同じものさしで測れることです。 「95歳まで持たせるには、資産を◯◯万円増やすか、生活費を月◯◯円減らすか、 収入を月◯◯円増やすか」という形に並べれば、 どれが自分にとって現実的かを金額で比べられます。

並べてみると、生活費を減らすほうが、同じ額の収入を増やすより効きます。 生活費は物価で毎年増えていくので、元の額を下げると その先の増えていく額もまとめて下がるからです。 一方で年金などの収入は物価ほどには増えないので、 足した額はそのままの価値では残りません。

効く順番と、手を出さないほうがいいもの

手を付ける順番としては、次のようになります。

  • 働く期間を延ばす(収入が増え、取り崩しの開始も後ろにずれる。二重に効く)
  • 年金の受け取り開始を遅らせる(増えた額が生涯続く)
  • 固定費を見直す(一度直せば毎月続く)
  • 資産を増やす(時間がかかるが、額は大きく動く)

順番に意味があります。上にあるものほど、 決めてから効き始めるまでが短く、しかも効果が生涯続きます。 働く期間を延ばすのも年金を繰り下げるのも、 決めたその年から先の収支がまるごと変わります。 資産を増やす話は額としてはいちばん大きく動きますが、 積むのに時間がかかるぶん、老後が近い人ほど間に合いません。

1つめがいちばん効きます。65歳で辞める予定を67歳にするだけで、 2年ぶん取り崩さずに済み、そのあいだの収入も入ります。 資産寿命でいえば、資産を数百万円増やしたのと同じくらい動くことがあります。

逆に、足りないと分かったあとに手を出すと危ないものがあります。 利回りの高い商品に資金をまとめて移すことです。 取り崩す時期に入ってからの運用は、下がった年に多く売ることになるため、 同じ平均利回りでも下がる順番によって結果が変わります。 足りない額を運用の利回りで埋めようとすると、足りない人ほど大きなリスクを取ることになります。

もう一つ、足りないと分かったあとに増えるのが 「増やします」と近づいてくる相手です。老後資金が足りないという不安は、 そこに付け込みやすい状態でもあります。 利回りの高さだけで選ばず、途中で換金できるか、 手数料がいくらかかるか、元本が減る可能性がどれだけあるかを、 同じ紙の上で比べてください。

取り崩しながらの運用については辞めた直後の下落が、いちばん効く理由を先に読んでください。

自分の場合にどれをどれだけ動かせば届くかは、老後、毎月いくら足りない?資産は何歳まで持つ?で出せます。3つの道をそれぞれ金額で並べたうえで、 5問に答えるとその資産寿命をそのまま信じてよい条件かどうかまで出します。

よくある質問

老後資金が足りないと出たら、まず何をすべきですか?
増やす方法を考える前に、年金・生活費・住まいの3つで前提が正しいかを確かめてください。年金の見込額はねんきん定期便かねんきんネットで確認でき、月2万円の違いが30年で700万円以上の差になります。前提が変われば、足りない額そのものが変わります。
足りない分を埋める方法にはどんなものがありますか?
動かせる場所は3つです。資産を増やす、生活費を減らす、収入を増やす。どれも同じ資産寿命という尺度で測れるので、必要な額を並べて比べられます。生活費を減らすほうが同じ額の収入増より効くのは、生活費が物価で毎年増えていくぶんも一緒に下がるためです。
足りない分を運用で埋めてもよいですか?
取り崩す時期に入ってからの運用には注意が必要です。下がった年は同じ生活費のために多くの口数を売ることになるため、同じ平均利回りでも下がる順番によって結果が変わります。足りない額を利回りで埋めようとすると、足りない人ほど大きなリスクを取ることになります。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては総務省統計局の家計調査のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。