年金

年金の繰下げ受給とは?

繰下げは「待つ」ことでできています。待った月数だけ年金額が増えるかわりに、そのあいだ年金は1円も入りません。増額率だけを見て決めると、ここで詰まります。

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この記事の要点

  • 増額率は「65歳から待った月数 × 増額率」で決まります。年単位ではなく1か月きざみで選べます。
  • 65歳の次に選べるのは66歳0か月です。受給権の発生から1年待つ必要があるため、65歳1か月〜11か月という開始月はありません。
  • 繰り下げられる上限年齢は生年月日で決まります。昭和27年4月1日以前生まれは70歳までです。
  • 待っているあいだ年金は入りません。その期間の生活費を、働いた収入か資産から出すことになります。
  • 加給年金・振替加算と、在職老齢年金で支給停止になっている部分は、繰り下げても増えません。
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げられます。片方だけ繰り下げることもできます。

繰下げ受給とは

老齢年金は、本来の65歳より遅らせて受け取ることができます。これを繰下げ受給といいます。 遅らせた月数だけ年金額が増え、増えた額は生涯続きます

ただし、増えるのは「これから受け取る毎月の額」であって、 待っているあいだの分がまとめて入るわけではありません。 待っている期間、年金は1円も入ってきません。ここが繰下げのすべてです。

繰り下げているあいだ、年金は入らない65歳請求65歳からずっと同じ額繰り下げる年金なし増えた額が続くこの期間の生活費が別に要る
上は65歳から受け取る場合、下は繰り下げる場合です。下の帯は、請求するまでのあいだ年金が1円も入りません。その期間の生活費は、働いた収入か資産から出すことになります。増えるのは、そのあとに受け取る毎月の額です。
繰下げは「待つ」ことでできています。 増額率は待った代金として受け取るもので、 待つあいだの生活費は別に用意することになります。
マネック案内役):「75歳まで待てば84%増」って聞くと得しかないように見えるけど、10年分の生活費をどこから出すかが 先に決まってないと、そもそも待てないんだよね。

増額率はどう決まるか

増額率は、受給権が発生した月から請求する月の前月までの月数で決まります。 年単位ではなく1か月きざみです。

年金額 = 65歳からの年金額 × {1 +(繰り下げた月数 × 増額率)}

「70歳か75歳か」という二択ではありません。 71歳7か月から受け取る、という選び方ができます。 実際、何歳まで受け取るかを決めて累計額を比べると、 いちばん多くなるのは節目の年齢ではなく、その途中にあることが多いです。

繰り下げられる上限の年齢は、生年月日で決まります。 令和4年4月の改正で上限が延びましたが、対象は昭和27年4月2日以降に生まれた方です。 それ以前に生まれた方の上限は変わっていません。

もうひとつ、増額率が65歳から受け取る場合の年金額に対する割合である点も 押さえておいてください。もとの年金額が大きい人ほど、増える金額も大きくなります。 率は誰でも同じですが、金額の効き方は人によってまったく違います。 「◯%増える」という説明だけでは、自分にとっていくらの話なのかは分かりません。

増額率と上限年齢の実際の数字は、生年月日の区分ごとに繰上げ・繰下げの増減率に並べています。法改正で動く値なので、記事の本文には書かず、出典と確認日をつけて別に置いています。

66歳が最初の選択肢になる理由

65歳の翌月から繰り下げられる、と思われがちですが、そうではありません。 繰下げ請求ができるのは、受給権が発生してから1年を過ぎてからです。 65歳から受け取る方の場合、最初に選べるのは66歳0か月になります。

選べる開始時期と、選べない11か月繰上げ繰下げ(1か月きざみ)60657075点線の11か月は、制度上そもそも選べません(65歳の次に選べるのは66歳0か月)
繰上げは60歳から1か月きざみで選べます。65歳の次に選べるのは66歳0か月です。繰下げは受給権が発生してから1年待つ必要があるため、65歳1か月〜65歳11か月という開始月は制度上ありません。上限年齢は生年月日で決まります。

つまり、65歳1か月から65歳11か月という開始月は、制度上そもそも存在しません。 60歳から75歳までを等間隔に並べて比べると、この11か月が候補に紛れ込み、選べない開始月が「いちばん多くなる」として出てくることがあります。

65歳を過ぎてしまったから繰下げできない、ということはありません。 66歳を過ぎていれば、その時点で繰下げ請求ができます。 ただし、65歳から請求までのあいだの年金をさかのぼって一括で受け取ることを選ぶと、 増額はなくなります。どちらかを選ぶことになります。

待っているあいだの生活費

繰下げを検討するときに最初に決めるのは、増額率ではなく何歳まで年金なしで暮らせるかのほうです。 ここが決まれば、繰り下げられる上限も自動的に決まります。

65歳から70歳まで待つなら、5年分の生活費を、働いた収入か資産から出すことになります。 年間の生活費が240万円なら1,200万円です。 この額を、増えた年金額と並べて見ないと、待つ価値があるかは分かりません。

請求する年齢待つ期間受け取らない年金
66歳1年1年分
68歳3年3年分
70歳5年5年分
75歳10年10年分

待つあいだに、受け取らずに済ませる年金(65歳からの年金額を基準にした年数)

この表は増額率を含んでいません。含めなくても分かることがあるからです。待った年数ぶんの年金を、先に手放しているという事実は、 増額率がいくらでも変わりません。

もうひとつ、待つ期間には健康保険料や介護保険料も発生し続けます。 年金が入っていなくても、これらの支払いは止まりません。 「年金なしで暮らせるか」を考えるときは、生活費だけでなく、 こうした固定的な支払いも数えてください。

働いて収入がある期間なら、この手放しは家計に響きません。 年金なしでは足りない期間があるなら、そこが繰下げの上限になります。生活防衛資金を取り崩して待つ形は、下がった相場と重なると苦しくなります。

繰り下げても増えないもの

「繰り下げれば年金の全部が増える」わけではありません。 増額の対象にならない部分があります。

繰り下げても増えない部分がある65歳から老齢厚生年金加給繰り下げる受け取らない増えた老齢厚生年金加給年金は、待っても増えない待っているあいだの分も、後から受け取れない
老齢厚生年金に上乗せされる加給年金は、繰り下げても増額されません。待っているあいだは受け取れず、その分は後から取り返せません。配偶者が65歳になると加給年金は終わるので、繰り下げるあいだに受け取れる期間そのものが短くなることもあります。

加給年金・振替加算

厚生年金の加入が20年以上あり、65歳の時点で年下の配偶者や一定の子がいる場合に上乗せされるものです。 老齢厚生年金を繰り下げているあいだは受け取れず、待った分が増額されることもありません。 配偶者が65歳になると加給年金は終わるので、繰り下げると受け取れる期間そのものが短くなることもあります。

在職老齢年金で支給停止になっている部分

厚生年金に加入して働き、賃金と老齢厚生年金の合計が一定額を超えると、 老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります。 この止まっている部分は、繰り下げても増額の対象になりません。 増額率だけで計算すると、実際より多く見積もることになります。

どちらも、当てはまるかどうかで繰下げの損得がはっきり変わります。 ねんきん定期便には加給年金の額が載っていないので、記載がないことを「対象外」と読まないでください。 年金事務所かねんきんネットで確かめるのが確実です。

基礎年金と厚生年金は、別々に繰り下げられる

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、それぞれ独立して繰下げを選べます。 両方を同時に繰り下げる必要はありません。

  • 両方とも65歳から受け取る。
  • 両方とも繰り下げる。増額は最大になるが、加給年金も止まる。
  • 老齢厚生年金だけ65歳から受け取り、老齢基礎年金を繰り下げる。加給年金を受け取りながら、基礎年金を増やせる
  • 老齢基礎年金だけ65歳から受け取り、老齢厚生年金を繰り下げる。

3番目の形は、加給年金の対象になる方にとって現実的な選択肢になります。 ただし加給年金の額と、基礎年金の増額分のどちらが大きいかは人によって違うので、 自分の額で比べる必要があります。

繰上げのほうは、両方を同時に請求することになります。片方だけ繰り上げることはできません。繰下げだけが選び分けられる、と覚えておくと迷いません。

待っている途中で亡くなったら

繰下げを待っているあいだに亡くなった場合、それまでの年金が消えるわけではありません。 遺族が未支給年金として請求できます。

ただし、そのとき受け取れるのは65歳にさかのぼった額(増額なし)です。 待った分の増額がそのまま残るわけではありません。 「10年待ったのだから84%増しで10年分」とはなりません。

この点は、繰下げが「長生きしたときに効く」仕組みであることの裏返しです。 増額は、これから受け取る期間に対して効きます。 受け取る前に終われば、効くはずだった期間そのものが無くなります。

マネック案内役):繰下げは長生きしたときの保険みたいな性格なんだ。 長く生きるほど効くし、そうでなければ効かない。 損得というより、どちらのリスクに備えたいかの話なんだよね。

何を見て決めるか

繰下げを決めるとき、順番があります。増額率から入ると、たいてい行き止まります。

  • 何歳まで年金なしで暮らせるか。これが繰下げの上限を決めます。
  • 65歳以降も厚生年金に加入して働くか。支給停止の分は増額の対象外です。
  • 加給年金の対象か。当てはまるなら、基礎年金だけ繰り下げる形も候補になります。
  • 何歳まで受け取る前提で比べるか。ここで累計額の順位が変わります。

最後の項目は見落とされがちです。 80歳まで受け取る前提と95歳まで受け取る前提では、 累計額がいちばん多くなる開始年齢がまったく違う場所に来ます。1つの正解を探すより、条件を変えたときにどう動くかを見るほうが役に立ちます

自分の生年月日で、選べる開始時期をすべて計算した結果は年金、何歳から受け取ると累計額が多くなる?で確かめられます。年金の見込額を入れなくても、 いちばん多くなる開始年齢と、追いつく年齢は出ます。

累計額がいちばん多くなる開始年齢は、最適な受け取り方ではありません。 何歳まで受け取るかは選べませんし、税金・社会保険料・加給年金・在職老齢年金は この比較に入っていません。判断の材料の1つとして使ってください。

最後に、急いで決める必要はない、ということも書いておきます。 繰下げは、あらかじめ「何歳まで待つ」と申し出る制度ではありません。 増額率は待った月数で決まるので、待っている途中で気が変わればそこで請求できます。 65歳の時点で決めきる必要はなく、毎年決め直せるものだと考えてください。

よくある質問

繰下げは、何歳まで待てますか?
昭和27年4月2日以降生まれの方は75歳まで、昭和27年4月1日以前生まれの方は70歳までです。上限を過ぎてから請求しても増額率は増えず、上限の年齢にさかのぼって決定されます。生年月日ごとの上限は /data/pension-claim-rules に一覧で置いています。
65歳の翌月から繰り下げられますか?
できません。繰下げ請求は、受給権が発生してから1年を過ぎてからになります。65歳から受け取る方の場合、最初に選べるのは66歳0か月です。65歳1か月〜65歳11か月という開始月は制度上ありません。
繰下げを申し出たあと、途中でやめられますか?
やめられます。増額率は待った月数で決まるので、67歳で請求すればそこまでの月数ぶんが反映されます。繰上げと違って、あらかじめ何歳までと決めておく必要はありません。ただし、待たなかった分の年金は後から受け取れません(65歳にさかのぼって一括で受け取る場合は、増額なしになります)。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては日本年金機構の老齢年金のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。