給料から引かれる主な項目
給与明細の「控除」欄に並んでいる項目は、性質の違う2つに分かれます。 法律で決まっていて誰の給与からも同じ仕組みで引かれる法定控除と、 勤務先ごとに違う控除です。
法定控除はさらに、社会保険料と税金に分かれます。 社会保険料は保険の掛金で、払った見返りとして給付を受ける権利が生まれます。 税金は公共サービスの費用負担で、個別の見返りとは結びつきません。 同じ「引かれるもの」でも、性格はかなり違います。
この違いは、家計を考えるうえでも意味があります。 社会保険料を払っていることで、病気で働けなくなったときの傷病手当金、 失業したときの基本手当、老後の年金といった給付が受けられます。 自分で同じ保障を民間の保険で用意しようとすれば、 それなりの保険料がかかります。 引かれる金額だけを見て「損」と考えると、 すでに持っている保障を二重に買ってしまうことがあります。
給与明細を見るときは、まず控除欄の項目名を上から順に確認するところから始めます。 知らない項目があれば、それは会社独自の控除である可能性が高くなります。 法定控除の項目名は勤務先が違っても大きくは変わりません。
健康保険と介護保険
健康保険は、病院にかかったときの自己負担を抑えるための保険です。 会社員の場合、保険を運営しているのは次のいずれかになります。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ):中小企業に多い。料率は都道府県の支部ごとに違う
- 健康保険組合:大企業や業界単位。組合ごとに料率が違い、独自の給付を持つこともある
- 共済組合:公務員・私学の教職員
どこに加入しているかは、保険証に書かれています。料率は運営主体ごとに違うので、手取りを正確に出したいときはここを確認する価値があります。
介護保険は40歳から
介護保険料は、40歳の誕生日の前日が属する月から発生し、 65歳になる月の前月まで、健康保険料と合わせて給与から引かれます。 40歳になった月の給与から急に手取りが減るのは、これが理由です。
65歳からは、介護保険料は給与からではなく、原則として年金から差し引かれる形に変わります。 支払いがなくなるわけではなく、引かれる場所が変わります。
健康保険には、保険料の見返りとしての給付があります。 病院の窓口負担が軽くなるだけでなく、 医療費が高額になったときに自己負担の上限を超えた分が戻る高額療養費、 病気やけがで働けない期間の傷病手当金、出産のときの出産手当金などです。 健康保険組合では、これに加えて独自の給付を持っていることもあります。 料率だけを比べると組合のほうが高く見えても、給付を含めると評価が変わることがあります。
厚生年金
厚生年金は、将来の老齢年金、障害を負ったときの障害年金、 亡くなったときに遺族が受け取る遺族年金の原資になります。 料率は法律で固定されていて、健康保険のように運営主体ごとに変わることはありません。
保険料は「月給 × 料率」では決まりません。 報酬月額を等級の値に丸めた標準報酬月額にかけます。 報酬には基本給だけでなく、残業手当や通勤手当も含まれるため、 残業が多い時期が続くと標準報酬月額が上がり、保険料も上がります。
厚生年金には標準報酬月額の上限があり、健康保険より低い水準で頭打ちになります。 このため、月給が一定を超えると、厚生年金の保険料はそれ以上増えません。 高収入の人ほど、額面に対する厚生年金の負担割合は下がります。
雇用保険
雇用保険は、失業したときの基本手当(失業給付)や、 育児休業給付、教育訓練給付の原資になります。
ほかの社会保険と違って、労使折半ではありません。 本人負担より事業主負担のほうが大きく設定されています。 また、標準報酬月額ではなく、実際に支払われた賃金の総額に料率をかけて計算します。 残業手当も賞与も、そのまま対象になります。
雇用保険がかかるかどうかは、勤務時間と雇用の見込み期間で決まります。 週の所定労働時間が短い働き方では、対象にならないことがあります。 その場合、給与明細に雇用保険の行が現れません。
料率は年度ごとに見直されます。いま適用されている率は会社員の社会保険料率にまとめています。
所得税
所得税は、その年の所得に対してかかります。 給与からは毎月おおよその額が差し引かれ(源泉徴収)、 年末調整で1年分を精算する仕組みです。
注意したいのは、年収に税率を直接かけるのではない点です。 まず給与所得控除を引いて「給与所得」にし、 そこから基礎控除や社会保険料控除などを引いた「課税所得」に税率をかけます。 控除が重なるほど、税率をかける対象そのものが小さくなります。
税率の段階と控除額は所得税の税率・給与所得控除・基礎控除に載せています。改正で動くため、記事本文には書いていません。
住民税
住民税は、住んでいる自治体に納める税です。 所得に応じてかかる所得割と、所得にかかわらず定額の均等割で構成されます。
均等割は所得の多い少ないにかかわらず同じ額です。 このため、所得が少ない人ほど、住民税に占める均等割の割合が大きくなります。 一定の所得以下であれば所得割も均等割もかからない、非課税の限度額も設けられています。
この1年のずれがあるため、年収が大きく変わった年は、 「今年の年収から計算した手取り」と「実際の振込額」が食い違います。 仕組みは住民税はなぜ前年の年収で決まる?で詳しく扱っています。
会社独自の控除
社宅や寮の費用、労働組合費、持株会の拠出金、財形貯蓄、 団体保険の保険料などがこれにあたります。 法定控除と違い、勤務先の制度によって有無も金額も変わります。
| 法定控除 | 会社独自の控除 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 法律 | 勤務先の規程・本人の申込み |
| 金額 | 収入と制度で決まる | 会社ごとに違う |
| 外部の計算機での再現 | できる | できない |
持株会や財形貯蓄のように、引かれても消えていないものもあります。 手元の現金は減りますが、株式や貯蓄として残っているため、資産としては減っていません。 家計を見るときは、この違いを分けて考えると数字がぶれません。
社宅費も、単純な支出とは言い切れません。 給与から引かれてはいますが、そのぶん自分で家賃を払わずに済んでいます。 市場の家賃より安く借りられているなら、実質的には収入に近い性質を持っています。 転職を考えるときに額面だけで比べると、この部分が抜け落ちます。
給与明細と計算結果の差が説明できないときは、 勤務先の給与担当に確認するのが確実です。 標準報酬月額がいつの報酬で決まっているか、 どの控除がいくらかかっているかは、社内でしか分かりません。
法定控除の部分は、額面年収と年齢、扶養している人数から計算できます。自分の年収で内訳を確認すると、どの項目にいくらかかっているかが分かります。 そのうえで給与明細と差がある場合、その差が会社独自の控除にあたります。
