同じ投資信託を買うとき、NISA口座と特定口座のどちらで買うかを選べます。 商品も値動きも同じなので、違うのは税金の扱いだけです。 ただしその違いは、利益が出たときと損したときで向きが逆になります。
違うのは税金だけ
特定口座は、証券会社が損益を計算してくれる課税口座です。 「源泉徴収あり」にしておけば、利益が出たときに証券会社が税金を引いて納めてくれます。 確定申告をしなくてよいのは、そのためです。
NISA口座は、その税金そのものがかからない口座です。買える商品も、値動きも、手数料の考え方も同じで、 違うのは利益に税金がかかるかどうかだけです。
| 特定口座 | NISA口座 | |
|---|---|---|
| 利益への課税 | かかる | かからない |
| 確定申告 | 源泉徴収ありなら不要 | そもそも対象外 |
| 投資できる額 | 上限なし | 枠の範囲まで |
| 損失の扱い | 相殺・繰越ができる | 無かったものとみなす |
なお、課税口座には「特定口座」と「一般口座」があります。特定口座は証券会社が 年間の損益をまとめてくれる口座で、いま新しく開くならほとんどがこちらです。 一般口座は自分で損益を計算して申告する必要があり、手間が大きく違います。 この記事では、断りがなければ特定口座(源泉徴収あり)を前提にしています。
もうひとつ、口座の数が違います。課税口座は複数の証券会社にいくつでも持てますが、 NISA口座は1人につき1つです。証券会社を分けて枠を増やすことはできません。
利益が出た場合
特定口座では、増えた分に対して税金が引かれます。引かれるのは利益に対してで、 元本に対してではありません。
NISA口座なら、この引かれる部分がありません。利益がそのまま手元に残ります。
帯の長さは利益で、投資した額ではないことに注意してください。 投資額が大きくても利益が小さければ、差も小さくなります。
差が出るのは、実際に売って利益を確定させたときです。持っているあいだに 評価額が増えても、その時点では税金はかかりません。課税されるのは売ったときで、 NISAとの差もそこで初めて出ます。
特定口座(源泉徴収あり)なら、売った時点で証券会社が税金を差し引いて納めます。 自分で申告する必要はありませんが、引かれていること自体は取引の明細に残ります。 「気づかないうちに引かれていた」と感じるのは、この仕組みのためです。
配当が出た場合
配当や分配金も、特定口座では受け取るときに税金が引かれます。 NISA口座なら、こちらも非課税です。
上場していない投資信託の分配金には、この設定は関係ありません。 証券会社の口座で受け取る形しかないためです。
特定口座で配当を受け取った場合、申告のしかたを3つから選べます。申告しない、 申告分離課税、総合課税の3つです。総合課税を選ぶと配当控除が使えますが、 合計所得金額が増えるため、国民健康保険料や扶養の判定にまで影響します。 どれが有利かは人によって変わるので、こちらで一律には決められません。
NISA口座の配当には、この選択がそもそもありません。非課税なので、 申告の対象になりようがないためです。判断する場面が減る、という違いもあります。
損失が出た場合
ここで向きが変わります。特定口座で出た損失は、同じ年のほかの利益と相殺できます。 相殺しきれなければ、確定申告をすることで翌年以降3年間まで繰り越して、 将来の利益と相殺できます。
NISA口座で出た損失には、これができません。 税務上「無かったもの」として扱われるためです。
たとえば、特定口座で50万円の利益、NISA口座で50万円の損失が同じ年に出たとします。 特定口座どうしなら相殺されて税金はかかりませんが、 NISAの損失は相殺の相手になれないので、特定口座の50万円の利益にはそのまま税金がかかります。
繰り越しについても違います。特定口座の損失は、その年の利益で相殺しきれなければ、 確定申告をすることで翌年以降3年間まで持ち越せます。将来の利益と相殺できるので、 損失そのものが税金の面では資産のように働きます。NISAの損失にはこれがありません。
NISAには上限がある
特定口座には投資額の上限がありません。NISAには年間の枠と、 一生のあいだに持てる額の2つの上限があります。
そのため「全部NISAで」とはいかない場面が出てきます。投資する額のほうが 残っている枠より大きければ、はみ出した分は課税口座に置くことになります。
- 投資額が枠に収まる … 全額をNISAに置ける
- 投資額が枠より大きい … はみ出した分は課税口座
- 枠が残っていない … その年はすべて課税口座
この「はみ出した分」の扱いは、意外と大きな金額になります。たとえば投資する額が 残枠の2倍なら、利益の半分には税金がかかります。全額をNISAに入れられた場合と比べて、 税金の差は半分になる計算です。診断で残枠を聞いているのは、この補正をするためです。
また、課税口座で持っているものをNISAへ移すことはできません。移したい場合は、 課税口座でいったん売って、NISA口座で買い直すことになります。売った時点で 利益が出ていれば、そこには税金がかかります。「あとでNISAに移せばいい」という 前提で課税口座に置くと、移すときに税金が発生することになります。
同じ利益なら、税金はいくら違うか
差の大きさは、利益の額と税率だけで決まります。保有期間は関係ありません。 10年持って出た20万円の利益も、1年で出た20万円の利益も、税額は同じです。
ここは誤解されやすいところです。「長く持つほどNISAの効果が大きい」と言われることが ありますが、正確には「長く持つほど利益が大きくなりやすいので、結果として差も 大きくなりやすい」という意味です。期間そのものが税率を変えるわけではありません。
つまり、差を見積もるのに必要なのは、投資する額と、そこから出る利益の2つだけです。 何年で、年何%で増えたかを先に決める必要はありません。 「100万円が120万円になった場合」と置くだけで、税額は計算できます。
税率の内訳は上場株式等の譲渡益・配当にかかる税率に掲載しています。所得税・復興特別所得税・住民税の3つに分かれています。
自分の金額でいくら違うのかは、NISAを使わないと税金はいくら違う?で計算できます。投資する額と利益の2つを入れるだけです。
使い分けの結論としては、こうなります。投資する額が残っている枠に収まり、 その商品がNISAの対象で、当面使う予定のないお金なら、NISAを使わない理由は ほとんどありません。枠からはみ出す分は、課税口座に置くことになります。
迷いが残るのは、課税口座に損失や繰り越しがある場合です。そこは金額と残りの期限で 答えが変わるため、この記事では決めきれません。詳しくはNISAで損失が出たらどうなる?で扱っています。
もうひとつ、投資に回してよいお金かどうかは、口座の選び方より前にある話です。 NISAで税金が減ることは、近いうちに使う予定のあるお金を投資に回してよい理由には なりません。値下がりしている時期に必要になれば、税金の差より大きな金額が動きます。 先に生活防衛資金を分けたうえで、投資する額を決めるほうが順番としては自然です。
