「NISAの枠はいくら残っているか」を確かめようとすると、 すぐに分からなくなります。上限が2種類あり、数え方も戻り方も違うためです。 ここでは、その2つを分けて整理します。
上限は2種類ある
NISAの上限は、1年に入れられる額と一生のあいだに持てる額の2つです。 どちらか一方を満たせばよいのではなく、両方の範囲に収まっている必要があります。
年間の枠が残っていても、保有限度額が埋まっていれば買えません。 逆に、保有限度額に余裕があっても、その年の枠を使い切っていれば その年はもう買えません。
この2つは、性格がまったく違います。年間の枠は毎年リセットされる流量の上限で、 保有限度額は積み上がっていく残高の上限です。前者は使わなければ消え、 後者は使った分だけ減っていきます。
長く続けていくと、はじめのうちは年間の枠のほうが制約になり、 何年も経つと保有限度額のほうが先に効いてきます。どちらを気にすべきかは、 続けてきた年数によって変わる、ということです。
1年に入れられる額
年間の枠は、その年の1月1日にリセットされます。 使い切らなかった分を翌年に持ち越すことはできません。
枠は、つみたて投資枠と成長投資枠に分かれています。 この2つは併用でき、同じ年に両方を使えます。
どちらの枠を使うかは、買う商品で決まります。個別株は成長投資枠でしか買えません。 つみたて投資枠で買えるのは、積立・分散投資に適した一定の投資信託だけです。
積立で買っている場合、毎月の買付額の合計がその年の枠を使っていきます。 年の途中で増額すると、年末までに枠を使い切ることがあります。 使い切ったあとの買付は、NISA口座では執行されず、設定によっては課税口座で 買われることもあります。証券会社ごとに扱いが違うので、確かめておくと安全です。
逆に、年の後半に始めた場合でも、その年の枠は満額使えます。 月割りにはなりません。12月に始めても、その年の枠が残っていれば その範囲まで一度に入れられます。
一生のあいだに持てる額
こちらは非課税保有限度額と呼ばれます。数え方が独特で、買ったときの値段(簿価)で数えます。
たとえば100万円で買ったものが150万円に値上がりしても、 消費している枠は100万円のままです。評価額が増えても枠は減りません。 これは利用者にとって有利な数え方です。
| 状況 | 枠の消費量 |
|---|---|
| 100万円で買った | 100万円 |
| 150万円に値上がりした | 100万円のまま |
| 70万円に値下がりした | 100万円のまま |
| 150万円で売った | 100万円分が翌年戻る |
値下がりしているときも、消費量は買ったときの値段のままです。 損したまま売ると、戻ってくる枠も買った値段の分で、 実際に戻ってきたお金より大きくなります。
この数え方は、値上がりした人にとって有利に働きます。評価額が2倍になっても 枠の消費量は変わらないので、値上がりした分だけ非課税で持てる資産が増えることになります。 時価で数える仕組みだったら、値上がりするたびに枠が足りなくなっていたはずです。
同じ商品を何度かに分けて買った場合は、それぞれの買付額を足したものが消費量になります。 平均取得単価ではなく、実際に払った金額の合計です。
成長投資枠だけの上限
非課税保有限度額の中には、成長投資枠で持てる額の上限が別に設けられています。 全体の枠の一部(内数)として決まっているので、 成長投資枠だけで全体を埋めきることはできません。
個別株だけで枠をすべて使うことはできない、ということです。 逆に、つみたて投資枠の対象商品だけで全体を埋めることはできます。
この内数の上限があるため、成長投資枠だけを使い続けると、 全体の保有限度額に余裕があるのに成長投資枠のほうが先に埋まる、 という状態になります。個別株を中心に買っている場合は、 この上限のほうが先に効いてきます。
逆に、つみたて投資枠の対象商品だけで全体の保有限度額を埋めることは可能です。 つみたて投資枠には内数の制限がないためです。ただし年間の枠は小さいので、 埋めきるまでの年数は長くなります。
売却すると枠はどうなるか
売却すると、その商品の簿価の分だけ非課税保有限度額が戻ります。 これが「枠の再利用」と呼ばれるものです。
戻るのは、買ったときの値段の分です。値上がりして売っても、 増えた分まで枠が広がるわけではありません。
複数回に分けて買ったものを一部だけ売った場合、戻る枠は 売った分に対応する簿価です。どの買付分から売ったことになるかは 証券会社の計算方法によるので、正確な額は口座画面で確かめることになります。
そして、戻るのは保有限度額のほうだけです。 その年の年間投資枠は戻りません。
いつ再利用できるか
翌年からです。売った年のうちに、その枠を使って買い直すことはできません。
- 今年売る → その年の年間投資枠は戻らない
- 翌年になる → 売った商品の簿価の分だけ、保有限度額が戻る
- 翌年に買う → その年の年間投資枠の範囲で買う
つまり、枠が戻ったあとに買うときも、その年の年間投資枠の制限は受けます。 保有限度額が大きく戻っても、1年で買える額には上限があります。
たとえば保有限度額を使い切っている人が、まとまった額を売ったとします。 翌年にはその簿価の分だけ保有限度額が戻りますが、実際に買えるのは その年の年間投資枠までです。戻った枠が年間投資枠より大きければ、 残りは翌々年以降に持ち越されます。
この仕組みがあるため、「売って買い直す」を短期間でくり返す使い方には向きません。 枠が戻るまでに1年かかり、戻ってからも年間の枠に縛られるためです。 もともと長く持つことを前提にした制度である、という性格がここに表れています。
自分の枠を確かめる方法
残っている枠は、証券会社の口座画面にしかありません。制度の上限から 計算で出すことはできません。買った額も売った額も、人によって違うためです。
- 今年の年間投資枠の残り(つみたて・成長それぞれ)
- 非課税保有限度額の残り
- 複数の証券会社を使っている場合も、NISA口座は1人1口座なので合算されている
残枠が分かれば、投資する額のうちいくらをNISAに入れられるかが決まります。 そこまで分かると、税金の差もはっきりします。
画面での呼び方は証券会社ごとに違います。「NISA投資可能額」「非課税投資枠の残り」 「利用状況」といった名前で、口座管理やNISAのメニューのあたりにあります。 年間の枠と保有限度額が別々に出ているはずなので、両方を見てください。
表示が更新されるタイミングにも注意が要ります。買付の注文を出した時点ではなく、 約定した時点で枠が消費されるのが一般的です。月末や年末に駆け込みで買うと、 約定が翌月・翌年になって、思っていた年の枠を使えないことがあります。
NISAを使わないと税金はいくら違う?では、残枠を入れると、はみ出した分を課税口座に置いた場合の差まで出します。
枠の使い方について、最後にひとつ。上限まで使うことが目的になってしまうと、 本来なら投資に回さないお金まで入れることになります。枠は毎年戻ってきますが、 値下がりしたときに必要になったお金は戻ってきません。
埋めきれなかった枠は、翌年以降も使えます。急いで埋める理由は、 制度の側にはありません。年間の枠だけは翌年に持ち越せませんが、 保有限度額のほうは残り続けます。
枠の残りを把握しておくと、投資する額を決めるときに迷いが減ります。 全額をNISAに入れられるのか、一部は課税口座になるのかで、税金の差が変わるためです。 そこまで分かってから買うほうが、あとで「入れられたのに課税口座で買っていた」 と気づく事態を避けられます。
